バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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その願いは純粋に

 剣の頼みで仕方なく屋上までやってきた。辺りを見回してみるけど誰も居ない。

 にしても僕をこんな所に呼び出すなんて、一体何の用だろう?

 屋上と言えば告白スポットだけど……まさか僕に告白するような酔狂なヒトは姉さんと木下さんくらいしか心当たりが無い。いや、木下さんは告白ともちょっと違った気がするけど。

 という事は……何だろう? 見当も付かない。

 

「あの……」

「うわっと、誰……って何だ、姫路さんか」

 

 突然声を掛けられてビックリしたけど振り向いて確認したら姫路さんだった。

 こんな辺鄙な所に一体何の用だろうか?

 

「どうしたの姫路さん」

「あの……その……」

「えっと……もしかして、僕を呼んだのって……」

「……はい、私です」

 

 僕を呼び出したのはまさかの姫路さんだった。同じ教室に居たはずなのに、どうして普通に呼ばなかったんだろう?

 ……まいっか。とりあえず話を聞いてみよう。

 

「どうしたの? わざわざこんな所で」

「その……吉井くんにどうしても話しておきたい事がありまして……」

 

 姫路さんは恥ずかしそうに言い淀んでいる。言いにくい事なんだろうか?

 という事はまさか……僕のズボンのチャックが開いているとか?

 女子の口からそんな事を指摘させる訳にはいかない! すぐに直して……あれ? 特に何ともないみたいだ。

 

「ど、どうしたんですか?」

「う、ううん、何でも無かったよ」

 

 チャックではないらしい。タイがずれてるとかそういう方向性で自分の服装をチェックしてみたけどやっぱり問題無さそうだ。

 じゃあ一体全体何だろうか? 余計な事は考えずにじっくり聞くとしよう。

 

「すー、はー……

 ……吉井くん、聞いて下さい」

「うん」

「私は……あなたの事が好きです!」

「うん……うん?」

 

 スキ……鋤? アレかな? 農業に(クワ)は邪道だとかそういう……

 いや待って待って。スキって、『好き』の事? 告白では定番のあの単語の事!?

 お、落ち着け吉井明久。こういう時はアレだ、えっと……黄土色の脳細胞を活性化させるんだ!

 

 姫路さんが僕の事を好いているという事が有り得ない以上、姫路さんには何か別の理由があってこんな告白っぽい事をしているはずだ。

 例えば……嘘の告白で僕をからかっている……いや、姫路さんに限ってないか。工藤さんとかなら思わせぶりな態度を取る事は有り得そうだけど……それでも告白まではしないか。

 じゃあ、誰かに脅されてやってる可能性は……あるかもしれないけど、誰に脅されてるかは全く分からない。そんな事をする人がうちの学校に居るんだろうか? ……結構居そうだ。

 ……ダメだ。僕じゃどうにもならない。雄二や剣だったら即座に黒幕を突き止めるんだろうけど僕には無理だ。

 

「分からない……どうして姫路さんは嘘の告白なんて……」

「吉井くん!? 嘘なんかじゃないですよ!?」

「えっ、アレ? 声に出てた?」

「思いっきり出てましたよ! 私だって勇気をふり絞って告白したんですから嘘にしないで下さい!!」

「わ、分かった。ゴメン」

 

 どうやら嘘じゃないらしい。嘘じゃないというのが嘘の可能性もあり得るけどここまで必死な姫路さんが嘘を吐くなんて言われたら嘘だと即座に言ってやれるくらいに嘘だとは思い難い。

 という事は……えっと……あれ? 何が嘘なんだっけ?

 と、とりあえず姫路さんは嘘を言ってないという事で進めよう!!

 

「告白は嘘じゃない。姫路さんは僕の事が好きだ……と」

「何でそこに辿り着くまでにこんな遠回りしなきゃならないんですか……」

「ご、ごめん。ちょっとビックリしてさ」

「……確かに突然でしたから驚くのも無理は無いですね。

 それで、その……付き合ってください!!」

 

 なるほど。姫路さんは僕が好きで付き合って欲しい……と。

 何だか唐突過ぎてイマイチ現実感が湧かないけど、つまりはそういう事なんだね。

 この誘い自体はとても光栄な事だと思う。もし僕以外の誰かが僕の代わりにここに居たら須川くんも呼んで一緒に袋叩きにしていただろう。

 もし告白されたのが2~3ヵ月くらい前だったら喜んで首を縦に振ってたと思う。

 だけど……

 

「……ごめん。無理だ」

「…………そう……ですか……」

 

 絞りだすように返事をした姫路さんの表情は悲しそう……と言うよりは呆然としているようだった。

 

「……あの、すいません。理由を、聞かせて頂けないでしょうか?

 私に……何か悪い所があったんでしょうか?」

「いいや、そんな事は無いよ」

「じゃあどうして!?」

「実は……もう付き合ってる人が居るんだ」

「ええええええっっっっ!?!? だ、だだ誰ですか!?

 美波ちゃん……は違いますよね? まさかお姉さんの玲さん……」

「違うよ姫路サン!? どうして姉さんと付き合わなきゃいけないのさ!!」

「玲さんでもないとなると……ま、まさか坂本くん……」

「どうしてそっち方向に行くの!? それだったら姉さんの方がまだマシ……いや待て、あの姉さんと比べたら雄二の方がマシの可能性も……」

「そ、そんなっ!! ど、どっちなんですか!?」

「いやいやいやいや、どっちでもないからね!?

 と、とりあえず落ち着こう!」

「そ、そうですね……すーはー……」

 

 僕も深呼吸して一度落ち着く。

 何も難しい事は無い。今現在付き合ってる人の名前を言うだけだ。

 

「それで、誰なんですか?」

「Aクラスの木下さんだよ。木下優子さん」

「木下優子さん……ですか? えっ、優子さんですか!?」

「うん、優子さん」

 

 その名前が余程意外だったんだろう。オウム返しに呟いた後にようやく呑み込めたみたいだ。

 もし逆の立場だったら……例えば姫路さんから『久保くんと付き合ってる』とか言われるようなものか。驚くのも無理は無いかな。

 

「つい最近……ではないですよね? 一体いつから……?」

「付き合い始めたのは……2ヵ月くらい前だったかな」

「そんなに前だったんですか!? 全然気付かなかった……

 ……あれ? でも……」

 

 ……さてと、どうしようかな。

 姫路さんからの告白を僕は断った。そうするしか無かったから。

 これで終わり。サッサと帰るべきなのかもしれない。けど、姫路さんをこのまま放っておくのも……

 

 立ち去るべきか、声をかけるべきか悩んでいたら突然携帯が振動した。(授業中からマナーモードだったから音は鳴らない)

 ポケットから取り出して確認すると僕をここに呼んだ中二病野郎からのメールが来ていると表示されていた。

 

『貴様に大至急用事がある。全速力で校門まで降りてこい』

 

 何の用事か知らないけどやっぱり姫路さんは放ってはおけない。そもそも呼び出したのは剣じゃないか。

 そう考えて断るメールを打とうとする前に再び携帯が振動した。

 

『追記 1分で来ないと玲さんにあることないこと言いふらす』

 

 あの野郎、卑怯じゃないか! 姉さんに告げ口しようだなんて!!

 くっ、仕方ない……

 

「ごめん姫路さん! 急用ができた! 悪いけど、行かせてもらうよ!」

「……あ、はい。大丈夫です。

 あの……吉井くん!」

「何だい?」

「……いえ、何でもないです。それじゃあ、また明日……」

「……うん。じゃあね!」

 

 こんな事があっても、また明日教室で顔を合わせる事になる。

 これからはどんな顔で接すれば良いんだろう? 僕には……分からないよ。






「筆者の二次創作の書き方の癖として、『初期条件をなるべくいじらない』というものがある」

「今回言いたいのは、姫路さんの好感度の事かしらね」

「そうだ。故に明久を別の奴とくっつけようとすると今回のような失恋イベントは不可避と言えるな。
 島田くらいなら自身の好意を自覚してなかったんで徐々にフェードアウトさせる事はできるんだが」

「一応方法としては姫路さんと、ついでに島田さんもアンチ・ヘイト対象にすれば『敵』として除外できるけどね」

「筆者は実際それをやろうとして失敗したからこそ本作がある訳で……結局無理って事だな」

「そうね。やっぱりこのイベントが不可避である以上、このイベントをどれだけ有効活用できるかが大事と言えるかしらね」

「自称だがロジカルな恋愛描写を心がけている筆者にとってこのイベントは極めて重い意味を持っている。
 まぁ、その辺はまたいつか解説するとしようか」

「では、次回もお楽しみに!」
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