バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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きっとそれは運命だから

 剣からのメールを受け取った僕は全力でダッシュしていた。

 屋上から1分以内に校門は無茶では? そう思うかもしれない。しかし僕にはとっておきの手がある。

 

「とうっ!!」

 

 3階の窓から勢いよく飛び降りる。

 この高さから地面に叩きつけられたら流石の僕でもひとたまりもないだろう。でも心配はご無用だ。

 

「うぉぉおおお!!」

 

 僕が選んだ窓には丁度良い高さの木がある。そこの枝に捕まって勢いを殺し、そのまま降りれば完璧だ!

 

「あとは校門までダッシュするだけ!!」

 

 上履きのままなので少し走りづらいけど平地を短時間走るくらいなら大丈夫!

 これで1分以内に……到着っ!!

 

「さぁ剣どこに……あれ? どこにも居ない?」

 

 おかしい。姿が見当たらない。あいつめ、僕を急がせたくせに自分は遅刻したんだろうか?

 仕方がないので携帯から電話をかけてみる。

 

『もしもし? どうした?』

「どうしたじゃないよ!! 剣が呼んだんでしょう!? もう校門まで着いたよ!!」

『マジで1分で到着したのか。ほんの冗談のつもりだったのに』

「ちょっと!? どういう事!?」

『うるさいな。貴様が姫路との会話を切るタイミングに困ってそうだったからこちらで口実を作ってやったまでだ』

「…………え? まさか聞いてたの?」

『うん。そういう訳だから用事なんて無い。じゃあな』ブツッ

 

 あいつ、切りやがった。

 屋上ではどうすれば良いか途方に暮れていたから助かったと言えば助かったんだけど……ちょっと納得行かない。普通に電話して口裏合わせをすれば良かっただけなのでは?

 

「……まいっか。今日はもう帰ろう……ちょっと疲れた……」

 

 荷物は……置きっぱなしでいいか。鍵とか財布はポケットに入れてあるから盗まれるようなものは入ってない。

 あ、でも靴だけは履き替えよう。上履きのまま下校するのはちょっと面倒だから。

 

 

 

 

「「あっ」」

 

 下駄箱の前で、バッタリと優子さんに出会った。

 姫路さんに告白された後だという事を考えると何となく気まずい。告白された事は言った方が良いのかな……?

 

「……ここでバッタリ会ったのも良い機会か。吉井くん」

「えっ、何?」

「ちょっと話したい事があるんだけど、この後時間は空いてる?」

「ん~っと……大丈夫!」

 

 姉さんには剣から『遅くなる』という連絡を入れてもらっている。

 ……そもそも姉さんに監視されてるから自由時間が無いっていうのが剣をあしらう為の方便だったんだけどさ。

 

「決まりね。ここだとマズいわね……近くの喫茶店にでも行きましょうか」

「うっ……なるべく安い所でお願いします……」

「……善処するわ」

 

 

 

 

 喫茶店に移動して優子さんは紅茶を、僕は優雅に水を注文する。

 

「……良かったわね。追い出されなくて」

「うん、良い店だね! これからも学校帰りに通おうか?」

「キミ一人で毎日通ったら流石に追い出されるでしょうね。

 良い店だと思うなら普通に売り上げに貢献しなさい」

「う~ん……それもそうだね。

 ところで、話って?」

「……その、もしもの話よ?

 アタシなんかよりも君の事がずっと大好きな女子が居たら、どうする?」

「う~ん……? 質問の意味がよく分からないんだけど……」

「……そうねちょっと曖昧過ぎた。アタシなんかよりもずっと可愛い女の子が君に告白してきたらどうする?」

「木下さん、さっきから『アタシなんか』なんて言い方しなくても……」

「それは置いておいて、どうなの?」

 

 優子さんなんかよりも……という所は置いておいて、可愛い女の子が告白してきたら……か。

 ……あれ? 何か凄く最近同じような事があったような……

 

「勿論断るよ」

「えっ……迷いなく言い切ったわね。もう少し悩むかと思ったのに」

「ははは……」

「理由を聞いてもいいかしら?」

「えっ、理由? そんなの、木下さんが居るからだけど……」

「……アタシの存在以外で、理由は無いの?」

「う~ん……」

 

 ついさっき、僕は姫路さんの告白を断ってきた。

 断った理由というのは優子さんが居るからで……それ以外の理由は特に無いと思う。

 もし優子さんが居なかったら、多分頷いていたんじゃないかな。

 

「そうだね。それ以外に理由は無いよ」

「……そっか。そうよね。もし何か別の理由があったらアタシとも付き合ってないでしょうし」

「確かに」

 

 ここまで話して、ふと思った。さっきからいやに具体的で、経験がある話しかしてないって。

 もしかしてだけど……

 

「……あのさ、もしかしてなんだけどさ、木下さんがしてるのって姫路さんの話?」

「えっ、ど、どうして知ってるの!?」

「やっぱり。実を言うとさ、丁度姫路さんから告白されたんだよ」

「っ……そう。遅かったのね……

 でも、それなら話が早いわ。吉井くん、アタシと別れなさい」

「えっ!? ど、どうして!?」

「勉強会の時に姫路さんと話して分かったのよ。

 ただ何となく付き合い始めたアタシなんかよりも姫路さんはずっと真剣に恋している。

 アタシの存在以外に断る理由が無いのなら、キミは彼女と付き合うべきよ」

「いや、でも……それだと木下さんはどうるすの?」

「別にどうもしないわ。元々付き合い始めたのはお試しみたいな感じだったんだし。キミとの関係がただの友達に戻るだけよ」

 

 確かに、あの時の姫路さんは凄く真剣で、それに比べたら優子さんの告白はずっと軽いものだったと思う。

 優子さんの言う通り、今からでも姫路さんに謝りに行って付き合うべき……いや、許してもらえるかも分からないけどとにかく謝るべきかもしれない。

 でもさ、僕が今気にしてるのは『そういう事』じゃないんだよ。

 

「……木下さんは、それで良いの?」

「ええ勿論よ」

「……あのさ、木下さん。僕は雄二みたいに頭も良くないし剣みたいなエスパーでもない。

 ムッツリーニみたいに録音や録画してるわけでもないし、秀吉みたいに演技を見破れるわけでもない」

「……何が言いたいの?」

「そんな僕でも、木下さんが無理してるって事は分かるよ」

「…………」

「根拠なんて無いから勘違いって言われたらそれまでだけど……正直に答えてほしい。木下さんは、本当に、それで良いの?」

 

 これは、ただの勘だ。本当に何となくそう思っただけだ。だから間違ってるかもしれない。

 でも、優子さんの沈黙からはそれが正しい事だって読み取れた。

 

「……はぁ……どうしてこういう時だけ無駄に察しが良いのよ」

「それじゃあやっぱり」

「ええ。どうやらアタシ自身が思ってた以上にキミの事が好きだったみたいだわ。

 黙っておくつもりだったのに、本当に空気が読めてないのね」

「空気なんて関係ないよ。優子さんがどうしたいのかを知るのが一番重要だから」

「……そういう言い方をするならキミがどうしたいのかも重要な事よ。告白の順番とかは一切合切無視して、アタシと姫路さん、どっちと付き合いたいの?」

「それは……」

 

 優子さんも姫路さんも、どっちも僕には勿体ないくらい魅力的な女の子だ。

 だからと言って両方選ばないという選択肢は無いし、両方選ぶという選択肢もラノベやアニメの中にしか存在しない選択肢だろう。

 どちらを選んだとしても選ばなかった方を傷つける事になってしまう。僕は2人のうちどちらかを傷つけなければならない。

 想像してみよう。2人がそれぞれ傷つく姿を。どちらの方が、僕にとって耐えられるかを。

 ……そうだなぁ、僕は……

 

「……やっぱり、姫路さんかな」

「……そう。結局そうなのるのね」

「あ、ごめん! 違う違う! 別れるのは姫路さんっていう意味だよ!

 僕は……優子さんの方が良い!」

「んなっ!? ちょっと、声が大きいわよ!」

「ご、ごめん……」

「……本当に、アタシで良いのね?」

「うん。さっきの優子さんの言葉を借りるなら……僕は僕自身が思ってた以上に優子さんの事が好きだったみたいだよ」

「……分かった。それならアタシからはもう何も言わないわ。

 あ、でも一言だけ……ありがとう。アタシを選んでくれて」

「お礼を言われるような事はしてないよ。これからも宜しくね、優子さん」

「……そういえば、いつの間にかアタシの呼び方が下の名前になってるわね」

「え? アレ? 確かに……ご、ごめん」

「別にそのままで良いわよ。明日からも宜しく頼むわ。明久くん」






「以上、肝試し編前日談は終了!」

「総括としては姫っちがフラれる話と、明久と優子が絆を確かめる話となるな。
 ……筆者曰く、恋愛描写は割と苦手、この章も上手く表現できてるか不安との事だ」

「前にラブコメの長編を書いておきながら今更何を……」

「うちの駄作者は脳筋だからな。ヒロインと言葉で殴りあって決着付けるみたいな少年漫画のバトルを置き換えたみたいな恋愛の方が得意だ。
 真っ当な恋愛描写は書いてて不安になるらしい」

「むしろ殴りあいの方が不安に聞こえるんですけど?」

「恋だの愛だのよりも信頼に重きを置く筆者らしいやり方だな。
 どちらがより正しい恋愛なのかは……ここで語る事ではないか」


「では、次回もお楽しみに!」
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