オカルト仕様の召喚獣のお披露目が概ね終わった所でとある疑問を口にする。
「……ところで雄二、このイカれた仕様の召喚獣は一体全体いつまで続くんだろうな?」
「奇遇だな。俺も同じ事を考えていた」
「となると、やるべき事は一つだね」
僕と雄二だけでなく明久までもが同じ事を考えていたようだ。話が早くて助かる。
この召喚獣に関する大事件。生徒として放っておくわけにもいかない。
ならばどうすれば良いか。決まってる。一番詳しいであろう学園長に殴りこみだ。
「よし、学園長の所に行こう」
「おいおい剣、学園長じゃなくてババァ長だろう?」
「えっ? 新種の妖怪じゃなくて?」
「どれも同じ意味だな……まあいい。学園長室に行こう。部屋の名前は流石に変わってないだろ」
こうして、僕たち3人はこの奇妙な事件を解き明かす為に学園長室へと向かうのだった……
『って、ちょっと待て! 授業をサボるのは許さんぞ!!』
「チィッ、バレたか!」
「明久、足止めは頼んだぜ! これはお前にしか任せられない大役だ!」
「うん! って、都合よく丸め込もうとしてない!?」
「ハハハ、そんな事ある訳が無いだろう?」
う~む、明久を言いくるめて囮にする以外の解決方法は……よし、これだ。
「ここは一旦バラけるとしよう! 学園長室で集合だ!」
「うわっ、どうしたのいきなり大声出して」
「3方向にバラければあの鉄人こと西村先生も短時間で全員捕獲するのは不可能だ!
そうなると次の授業に間に合わない!!」
「なるほど、そういう事か。だからわざわざ聞こえるように大声出したんだな?」
「ククッ、そういう事だ」
これで鉄人は苦渋の選択を迫られる。
僕たちを追ってFクラスの連中を放置するか、あるいは逆かを。
明久ほど目立つ問題児はそう居ないから忘れがちだが、残りの連中も十分過ぎるくらい問題児である。例外は秀吉と伊織くらいのものだ。
さぁ鉄人、たった3人の捕まるかどうかも分からない生徒と、それ以外の多数の生徒、貴様はどちらを優先する?
『逃がさんぞ貴様ら!』
「そ、そんなバカな!」
「くそっ、とにかくバラけて逃げるぞ! 最悪1人くらいなら諦めるかもしれねぇ!!」
……そして数分後……
「という訳で、奇跡的に3人がここに集まれたという訳です」
「アンタ達、アタシの部屋を勝手に集合場所にするんじゃないよ」
3人にバラけて逃げたのがしっかり効いてくれたのか、無事に3人揃って学園長室まで到達できた。
学園長が嫌そうな顔をしている気がするがきっと気のせいに違いない。
「んで、クソババァ、召喚獣の不調は一体どうなってやがんだ?」
「質問する気があるならまずはその態度を改めな」
「失礼しましたクソババァ」
「僕たちに色々と洗いざらい吐いて下さいクソババァ」
「……現国の補習を増やした方が良いかねぇ?」
「学園長、バカ達は放っておいてシステムの不調について教えて下さい。
じゃないとずっとここに居座りますよ?」
「やれやれ……確かにサッサと追っ払った方が良さそうだねぇ。
で、何だって? システムの不調だって?」
「はい」
「アンタらねぇ……そんなもんがどこにあんのさ」
……おや? これは一体どういう事だろう?
ああ、そうか。ついにボケたか。学園長ほどのご老体であれば仕方あるまい。
「アンタ、失礼な事考えてないかい?」
「え~、では学園長、今現在のこの妖怪が跋扈する現状はシステムの不調ではない……と?」
「そういう事さ。このアタシのシステムに不具合なんて発生する訳無いだろう?」
……なるほど、つまりそういう事か。
「やっぱりボケちゃったんだね……可哀そうに」
「明久、僕のモノローグに被せるんじゃない。僕までバカに見えるだろ」
「え、何? 何で突然文句言われたの……?」
「……それはさておき、今から言うのは独り言だ。
あ~、学園長も大変だなぁ……システムに問題が起こったなんて言っちゃったら一大事だもんな~。学園長の立場だとこれは正式な仕様だって言い張るしか無いよな~」
「……随分と大きな独り言だねぇ?」
「気のせいでしょう。じゃあ雄二、バトンタッチな」
弱点を暴いて突く所までやれば僕の仕事は終わりで良いだろ。後は雄二に任せるとしよう。
「おうよ。今の学園長サマの話には妙な点がある。それは、何でわざわざそんな仕様変更をしたのかって事だ。
この学園の根幹を成す大事なシステムだ。当然、ただの気まぐれじゃなくてそれなりの理由があるはずだ」
「フン、これは純粋な善意って奴だよ。
最近は暑い日が続くからねぇ。少しでも涼んてもらおうというアタシからの粋な計らいさ」
「ハハッ、それだけだったら何もクラス単位でわざわざいじる必要な無ぇ。せいぜい教師陣をいじるくらいでも十分だし手間も少ないだろ。
ここまでやってるからにはクラス単位、下手すると学年単位で動かすレベルの大規模なイベントをやるはずだ。
まさか調整失敗して偶然オカルト仕様になっちまったって訳も無いもんな!」
「……つまり、何が言いたいんだい?」
「学校主催の肝試し大会! やらないとは言わせねぇぞ?
ああそうそう、ただの休日にやっても人が集まらないかもしれないな。夏期講習の予定日ならきっと沢山集まるだろうなぁ」
「そこまでして勉強したくないのかいアンタ達は……」
ははっ、何を当たり前の事を。
授業を潰せるチャンスがあるならいくらでも食らいついてやるさ。
「分かった。良いだろう。肝試し大会、やろうじゃないか。
開催日は夏期講習の最終日……いや、準備も含めたらもう一日かかるかね。明日から準備してもらうよ」
「話が早くて助かるぜ」
「但し、試験召喚システムを使う以上は『召喚獣同士の戦い』の要素を入れる事。
あと、終わったら一般公開もするからそれに相応しいクオリティにする事。
これはしっかりと守ってもらうよ」
「戦いだと? 面倒だな……じゃあ、肝試しのチェックポイントで番人と戦わせる感じにするか」
「そうそうそんな感じだよ」
「……って言うか、俺が勝手にルールを作って良いのか?」
「なんだってアンタ達がサボる為のゲームのルールをアタシが考えてやらなきゃならないのさ。
それにアンタ達はサボる為なら全力を尽くすだろう? アタシが考える意味が無い」
ごもっともな発言である。学園長も面倒な事はサボりたいもんな。
「分かった。んじゃあルールまとまったらまた連絡させてもらう。
ああそうだ、参加者は結局どうなるんだ? 俺たちFクラスだけか、それとも……」
「やるからには徹底的にやるよ。夏期講習に出てる2年全員強制参加にしようかねぇ。
あと、教室1個とかケチ臭い事は言わない。フロア丸ごとお化け屋敷に改装するくらいの事はしてもらおうかねぇ」
「それはそれで面倒そうだな……鉄人の授業よりは数百倍マシだが」
「質問はもう無いかい? 無いね?
じゃあサッサと出ていきな。アタシは忙しいんだ」
夏期講習なんて鬱陶しいだけだと思っていたが思いのほか面白そうなイベントに遭遇できたようだ。
面倒そうな所は雄二が頑張ってくれるだろう。僕は適当に手伝いつつ楽しむとしよう。
「以上、肝試し大会開催決定までだ」
「学園長も大変よね……わざわざ仕様だって言い切らなきゃいけないんだもの」
「全くだよな。きっと他にも色々苦労してるんだろうな」
「……Fクラスを率いている君が言うセリフじゃないと思う」
「……それはそうと、あれだけの規模のお化け屋敷への改装、たった1日でこなせるのだろうか?」
「……た、確かに」
「こういう時に備えて色々と準備をしている……のかもしれんな」
「……では、次回もお楽しみに!」