バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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06 第1チェックポイント

 いよいよ肝試しが始まった。

 本気で勝ちに行くなら色々と戦略を練るべきだろうが……2年生の空気としては楽しむことが優先な緩い感じだ。

 なので行きたい人からカメラとマイクを持って適当に突入している。

 

「確か悲鳴を上げたら失格だっけ?」

「ああ。失格の条件は規定以上の大声を上げる事、何らかの不正をする事、あとチェックポイントでの戦死だな」

「流石はFクラスの副代表、詳しいのね」

「ルール作成したのは僕ではなく代表の雄二だが……まぁ、本人を除けば一番詳しいかもな」

「なるほど。しっかし、悲鳴なんてそう簡単に上げるものかしらね? 要はただの立体映像付きお化け屋敷でしょ?

 カメラの前で不正する人も居ないし、実質だたのチェックポイントでの戦いだけに……」

 

『きゃぁぁぁっっっっ!!!!!!』

 

「……丁寧なフラグ建てだったな。早速脱落したようだ」

「早すぎない? 最初の曲がり角でしょ? どれだけ怖がりなのよ」

「半分くらい同意するが……もう半分は相手の仕掛け方が上手いって事だろ。

 さっきの見てたか? 上手い事カメラの死角から現れて脅かしてたぞ」

「え? カメラの映像って3年生も見てるの?」

「不正防止も兼ねてるから当然だ。それに、チェックポイントで待ってる人はただひたすら待つだけだなんてかわいそうだろ」

「た、確かに」

 

 なお、カメラは突入者の視界をジャックして映している……等という事は流石に無いが、顔の横に構えるようにしているので視界と概ね一致する。

 どの方向に注意を払っているかという事は余裕で分かるな。

 

「ま、カメラを有効活用できるのは連中だけじゃない。今の初見殺しくらいなら余裕で突破できる。

 連中の次の手を見せてもらおうじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 代表たちが休みたいがために起こした茶番劇だったけど3年の連中は意外と真面目にやってるんだな。

 副代表の近くの席で解説を盗み聞きするのも意外と面白い。

 

「何だかワクワクしてきた。なぁ島田さん……島田さん?」

 

 オレのパートナーである島田さんと雑談しようと話題を振ったのだが……当の島田さんは顔をうつむかせて震えていた。

 

「もしかして……怖いのか?」

「逆にどうして伊織は怖くないのよ。あんな……こう、首がみょ~んって伸びたり、口の端っこが切れてるような化けモノたちが」

「ろくろ首に口裂け女かどっちも日本じゃメジャーな妖怪……ああ、そういう事か。日本じゃ有名な妖怪だ」

「そうよ! 日本で有名でもウチは知らないのよ! ドイツのお化けならどうってこと無いのに!」

 

 よく知らないからこそ怖がる……というのは少々飛躍しているかもしれないけど、少なくともそれなりに動揺する事は間違いないだろう。

 そうなると感情が大げさに現れる。もちろん、恐怖という感情も。

 そんな感じかな。

 

「でも、それとは別に単に怖がりなだけなのでは?」

「そ、そそそそんな事無いわよ?」

「自信無さそうだな」

 

 この調子だと突入してすぐ悲鳴を上げるとかいう事になりかねない。

 何とかしたいけど……何とかできる事じゃないか。

 

「……とりあえず、アレだ。映像見てれば慣れるだろ」

「慣れるまではずっと怖がってなきゃいけないじゃないの!」

「仕方ないだろ」

 

 それじゃ、次の突入者の様子を見てみようじゃないか。

 

『うぅぅ、怖いよタッくん』

『安心して! どんな霊が来ても大丈夫だよ! ミッチーはこの僕が護る!!』

『ステキ! タッくん!!』

 

 チッ、リア充爆発しろ。

 そう思ったのはオレだけではなかったらしく、教室のあちこちから舌打ちが聞こえた気がした。

 ただ、その舌打ちした中にはFクラスは多分居ない。何故なら……

 

『会長、チャッカマンと灯油の用意はできています』

『うむ、ウェルダンにした後にミンチにする釘バットの用意は?』

『3ダースほど』

『宜しい!』

 

 彼らは舌打ちなどという何の効力も無い事で満足する連中じゃないからだ。

 あいつら、無事に帰ってきたとしても死んだな。いや、本当に死ぬ事は……無いといいな。

 

『あの曲がり角だよね。何か出たのって』

『大丈夫。僕がついてるから!!』

 

 カメラの映像がある以上、初見殺しは1回しか通用しない。

 そんな事は3年生も分かってるはず。どう攻めてくるのか。

 

『ほらね、何も無いよ』

『そうね。きっとタッくんに恐れをなして逃げ出したのね♪』

『そうそう。僕に任せておけば……』

 

 と、油断した所で突然モニタに何かの妖怪の姿が飛び込んできた。

 

『きゃー、タッくんこわ

『ひぎゃぁぁぁぁぁぁああああああ!!!! ゆ、幽霊なんか嫌いだぁぁああああああああ!!!!』

『え、ちょ、タッくん!?』

『もうやだぁああああ!! 帰るぅぅうううう!!!』

『ちょっとぉぉぉおお!?』

 

 当然のように悲鳴を検知するブザーが鳴り、モニタの映像がぐるぐると動く。どうやらカメラを放り投げたらしい。

 

『あ、あいつっ! カメラに傷が着いたらどうする気だ!』

『えっ、気にするとこそこ?』

 

 副代表は会話の内容よりもカメラの方が気になるらしい。確かに、傷付いてないといいけど。

 カメラはあらぬ方向を映しているが、マイクの方はまだ生きている。そこから女子の声が聞こえた。

 

『……チッ、あんな奴はダメね。次の出会いを探しましょう』

 

 ……あの、マイクはまだ生きてるんですけど? 分かってて言ってるならある意味幽霊なんかより怖い気がする。

 

「まぁ、見物する分には面白いか。なぁ島田さ……島田さん?」

「あははは……ウチはもう死んだ。だから幽霊なんて怖くない。あはははは……」

「あかん」

 

 彼女が行くべきはお化け屋敷などではなく保健室なのではないだろうか?

 最悪突入はできないかもなぁ……まぁ、オレの点数なんてそれなりでしかないからそれでもいいけどな。

 自分なりの方法で、この茶番を楽しむとしようか。







「一般人視点も結構面白いな」

「肝試し、楽しそうね。ホント参加したかったわ」

「姫路や島田のような怖がりにとっては地獄かもしれんが、そうでないならば普通に面白いよな。
 やってる事は頭脳戦の応酬だから本質的にはいつもの奇策まみれの試召戦争と変わらなかったりする」

「どう考えても楽しいヤツじゃないの! どうして教えてくれなかったのよ!!」

「いや、教えたからこそ今向かってる最中なわけだが」

「……そうだったわね。
 それじゃあ次回もお楽しみに!」
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