それなりの犠牲を出しながらもチェックポイントを2つ突破できた。残りは2つだ。
「残りはBクラスとAクラスのチェックポイントね」
「さっきまではDクラスとCクラス……クラスと言うか教室だったから……どんくらい広くなるんだっけ?」
ルールで厳密に定義されてる訳じゃないけど、小さい教室のチェックポイントから順番に攻略していっている。
だから後半になればなるほど教室は広くなり、難易度は上がっていく。
『って話だけど、広さってどれくれらいだっけ?』
『貴様のDクラスの広さを1とした場合、C教室が2,Bが3、Aが6だ。
尤も、床に固定されて動かせない物とかもあるからあくまでも目安だな』
『あ~、そうね。Aクラスとかキッチンまで付いてるし。アレは流石に動かせないわね』
『目安の面積だけで物凄く単純に考えると全体12に対して3までしか攻略できていない。まだ1/4でしか無いな』
『意外と進んでない……って言うかAクラス広いわね……』
……という事らしい。
ああそうそう、副代表たちは一旦帰ってきている。土屋達は引き続き次のチェックポイントの攻略を続けている。
「1/4か。現時点で既に3~4割損耗してるっぽいから結構危ういかもしれないな」
「でも、今突入してる愛子と土屋のペアがそう簡単に悲鳴を上げるとは思えないわよ?
何だかんだで平気そうな人は結構温存できてる気がするし……どうにかなるんじゃない?」
「だと良いんだけどな……」
無事に進んでくれる事をぼんやりと祈りながらモニターに視線を戻す。
すると……何かよく分からないものが映っていた。具体的には、綺麗な着物をはだけさせた綺麗なおねーさんが。
あれ? おかしいな。これって肝試しの映像だよな? 誰かチャンネル変えたか?
『『『眼福じゃぁーっ!!』』』
教室の一角からそんあ歓声が上がってるけどそんな事はどうでもいい。
背景は……さっきまでのお化け屋敷っぽいな。じゃあ何だアレ。合成か?
「ちょっと伊織、何ジロジロ見てるのよ」
「え? ああいや、映像がおかしいのは何かのバグかなと」
「おかしい? 映像が?」
「ああ。だって、肝試しであんな恰好する訳が無いだろ」
『ブッ、くくくっ……確かに映像がおかしいな!』
『空凪くん、解説プリーズ』
『連中の勝利条件は声を上げさせる事。
それは悲鳴ではなく歓声でも問題ない』
『……ああ、そういう。これだから男子は。
って言うか……これ、肝試しのはずよね? 何で別のゲームになってるのよ』
……前回の汚物先輩は恐怖やその他に対する精神力を試すっていう意味では『肝試し』と言えなくもなかったけど……
このおねーさんの手法は完全に肝試しから逸脱してるだろ。
『…………この……程度で、この……俺がっ!』
『ムッツリーニ君。足が震えてるケド?』
あのムッツリスケベの土屋が歓声を上げるとは思えないが……戦闘不能に追い込むことはできそうだな。
元々土屋は保体以外はFクラス生なんだからそこまで期待してなかったけど……ここで脱落するのはちょっと残念だ。
『ようこそいらっしゃいましたお二方。私、三年A組所属の
お化け役が堂々と挨拶するのもおかしい。Aクラス所属ならそんな事が分からない訳も無いだろうから確信犯(誤用)だな。
『小暮先輩ですか。こんにちは。ボクは2ーAの工藤愛子です。その着物似合ってますね』
『ありがとうございます。こう見えてもわたくし、茶道部に所属しておりますので』
「……茶道部に所属している事と着物を今着てる事に何の因果関係も無い気がするのはオレだけか?」
「え? そ、そうね。えっと……ユニフォームみたいな感じで支給されてるとか?」
「うちの学校って部活動にそんな気合入れてないだろ。運動部の体操服とかなら機能面で必要だから分かるけど、茶道部の着物はただの雰囲気出しにしかならないだろ。制服で十分……いや、体操服とかの方が洗濯しやすいから良いかもな」
「う~ん……確かに」
『それじゃあボク達、先を急ぐので』
『お待ちください。実はわたくし……』
『? まだ何か?』
『……新体操部にも所属しておりますの』
そしてはだけていた着物は完全に脱ぎ捨てられ、その下からはレオタードを身に纏う姿が現れた。
そのコンマ数秒後、モニターが真っ赤に染まった。土屋の鼻血だな。
……カメラ大丈夫かな? 壊れてないか? 壊れてなかったとしても血なまぐさくなってそうだな。
『大変だ! 土屋が死んじまう!! 助けに行ってくる!!』
『待て! 1人じゃ危険だ! 俺も行く!!』
『おい待てよ。お前らだけに良い恰好はさせないぜ!!』
『俺たちは仲間だ!! お前たちだけを死地に送るわけには行かないぜ!!』
何か無駄にカッコいい台詞を吐きながらFクラスの捨て駒の皆さんが勝手に突入する。
恐らくはすぐに失格になるだろうな。モニタ越しでさっきの反応だったんだから。
「……優秀な斥候だったんだけどなぁ……こりゃ全滅だな」
「ちょっと、伊織! そんな呑気にコメントしてないで何とかできないの?」
「ハハッ、無理無理。暴徒と化したあの連中を止められるのは西村先生くらいだって」
『どう止めるかも問題だな。殴り倒して動けないようにする事はできるが……行動不能になってしまっては意味がない』
『説得して止めるのは……無理そうね』
『ああ。だから止める必要は無い。体力の無駄だ』
どうやら副代表とも意見が一致したようだ。
……さて、それじゃあどうするか。優秀な斥候が本当に1人も残らず全滅してしまった。
代表様の指示に期待しよう。
『まさかこんな手で来るとはな……あの小暮とかいうセンパイの前でも平常心で居られる男子が必要だな』
『……あんな声を上げない男子くらいいくらでも居ると思うけど』
『アレに耐えられても不意打ちで普通に脅かされる危険がある。なるべく乱されない奴を送った方が良いに決まってる』
『……具体的には、誰?』
『俺のクラスの連中に限ると……剣に秀吉、あと伊織とかも大丈夫そうだな』
……おや? オレの名前が呼ばれたぞ?
突入させられるんか? 面倒だな……
『とりあえず秀吉を送ってみるか。パートナーは空凪妹だろ? 悲鳴を上げる心配も無さそうだ』
『……分かった。連れてくる』
どうやらオレの出番はまだ先らしい。良かった良かった。
「……ねぇ伊織」
「どした?」
「伊織は……さっきの小暮先輩を見ても平然としてたわよね?
もしかして、女の人に興味がないとか……」
「どっから出てきたその発想!? 普通に女子が好きだよ!!」
「そうなの? じゃあ何で大丈夫だったのよ」
「あ~……何か色仕掛けが露骨過ぎて逆になぁ……」
「……そういうものなの?」
「……多分」
無意識の行動を説明するのは厄介だけど、きっと大体そんな感じだろう。
さてと、島田さんの疑問が一応解消された所で、秀吉たちの様子を見守るとしようか。
「第三チェックポイント前半戦終了だ」
「ついに出たわね小暮先輩。しっかし肝試しでコレをやるって正気じゃないわよね……」
「精神力を試すという解釈をするならギリギリ……アウトだな」
「……ルール的には別に禁止されてないし、実際問題かなり有効な手なのよね。
最初からやられてたら詰んでたんじゃないかしら?」
「Fクラスの捨て駒の皆さんが全滅したのが痛いな……斥候として本当に優秀だったのに」
「今回の肝試しでFクラスの一般生徒の株は結構上がったと思うけど……これで台無しね」
「全くだな。だからこそFクラスなわけだが」
「では、次回もお楽しみに!」