小暮先輩の奸計によりFクラスの捨て駒軍団が全滅してしまった。仕方ないのでアレに耐性がありそうな男子……秀吉を含むペアを突入させる。
『♪~♪~♪~』
『楽しそうじゃな光』
『トーゼン。好きな人と一緒にこんな楽しいお祭りに参加できるんだもの』
『う、うむ! そうじゃな!』
うちの愚妹が秀吉との関係をアピールしている。秀吉の方はマイクの前で演技を続ける事に一瞬ためらったようだがそのまま続けた。
「光さんは……キミの姉だっけ?」
「戸籍上は妹だ。奴なら悲鳴を上げる事はあるまい。
本物の妖怪が出てきても普通に物理で殴り倒せるような奴だからな」
「……何者なのよ。君の妹は」
「妹だ」
僕が知っている『人間』の中では最強だと思う。鉄人は『人外』だから除外されるんで。
そんな事を話しているうちに例の小暮先輩の所まで到着したようだ。
『おや、女の子同士のペアですか。それでは私にできる事はありませんね。
どうぞお通り下さい』
『むぅ、通れるのは有り難いのじゃが少々納得が行かぬのぅ……』
『安心して秀吉くん。秀吉くんを女扱いしたあの先輩は後日半殺しにしておくから』
『えっ』
はっはっはっ、こんな時も冗談を言う遊び心があるとは。なかなか可愛い奴だな。
……冗談だよな? 流石に。
『では、通らせてもらうのじゃ』
『ど、どうぞどうぞ』
心なしか怯えた様子の小暮先輩の横を通って先に進む。
小暮先輩以外にも至って普通のトラップが仕掛けられているようだが……あの2人が悲鳴を上げる事は無さそうだ。
こりゃ第三チェックポイントも突破できそうだな。秀吉の点数が少々不安だが、姉さんならきっと何とかなる。
……そんな僕の思考を読んだかのような音声がスピーカーから聞こえてきた。
『ちょっと待ってくれ!』
モニタに映っているのは常夏コンビの片割れのモヒカン。名前は……何だっけな。
坊主の方は汚物先輩で定着したからもう片方にも何か欲しいな。
『秀吉くん。行きましょ』
『そうじゃな』
『ちょっと待てや! スルーするんじゃねぇよ!! 俺は秀吉に用があるんだ!!』
『耳を貸しちゃダメよ。話してる間にヒートアップして大声になったら困るし』
『すぐに済む! いいか良く聞け。
いいか木下秀吉……俺はお前が好きなんだ!』
……この後のホモ先輩の言動を細かく描写すると精神が汚染される可能性があるので結論だけ述べておこう。
僕たちはこの日、初めて秀吉の本気の悲鳴を聞く事になった。
「秀吉くん、しっかりして! 秀吉くん!!」
モニタの向こうで色々あってから数分、ぐったりとした様子の秀吉を背負った光が帰ってきた。
外傷は見当たらないが……精神的なダメージは甚大だったのだろう。目を覚ます様子は無い。
「落ち着け光。今はサッサと保健室まで運んで休ませてやれ」
「くっ……そうね。あの変態め、骨の5~60本でも折ってやれば良かったわ」
秀吉がここまでのダメージを負う間、光もずっと見ていたわけではない。
あのホモ先輩の存在が危険だと判断を下した瞬間に飛び掛かり、全身の関節を片っ端から外していくとかいう反撃を行っていた。
全身がグニャグニャになりながらも秀吉への愛を訴えかけていたホモ先輩は本物の変態だろう。
「剣、奴と戦う事があるなら、絶対に仕留めなさい。最もダメージを与える形で」
「無論だ」
結局、残念ながら秀吉による突破作戦は失敗した。
次は僕か、あるいは伊織が行く事になるかな。
「つい最近も同じ事言った気がするけどあえて言わせてもらうわ。
あんなのどうやって突破しろって言うのよ!」
島田さんの心の底からの叫び声にオレも深く同意する。
何だよアレ。殺しに来てるだろ。
「ククッ、安心しろ。アレは秀吉にしか効かん」
「副代表? どういう意味だ?」
「あの秀吉であれば嘘の看破は容易い。
情報の真偽ならまだしも、感情の真偽を間違える事はあるまい。
つまり……あの変態はそれほど本気だったという事だ」
「うへぇ……ますます嫌なんですけど?」
「だからこそ、秀吉は大ダメージを受けた。
しかし、だからこそ本気の相手にしか通じない。そういう事だ」
「ホントかなぁ……」
「ホントじゃなかったら諦めるしか無いな。という訳で行くぞ」
「……へ?」
「何をボサッとしている。また個人特効の手段を取られたら敵わんからな。
僕たちと、貴様たちの2ペアでさっさと攻略するぞ」
「いや、待って待って。代表からはまだ何の指示も……」
『剣! 伊織! 出てきてくれ! お前たちが頼りだ!』
「……という訳だ。行くぞ」
「やれやれ……島田さん、大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ。大丈夫……ウチはやれるわ!」
「……声さえ上げなければ失格にはならない。だから全力で黙っててくれよ?」
「……(コクリ)」
島田さんが悲鳴を上げないか少し不安だけど……最悪オレ達は大した点数でも無いし突破できたらラッキーくらいに思っておこう。
初めての突入だな。頑張ろう。
「第三チェックポイント中編だ」
「第三チェックポイントは土屋くんの脱落と秀吉くんの脱落があるから長いわね」
「小暮先輩の出番とかもあったからなぁ……脱落者が一番多いチェックポイントは実はここなんじゃないか?」
「言われてみれば確かに」
「まぁ、長かったと言っても次で流石に終わるだろう」
「では、次回もお楽しみに!」