オレ達がカメラとマイクを持って準備万端になった所で副代表がこんな事を言い出した。
「島田、もし悲鳴を上げない自信が無いならペアを編成し直して僕と組むぞ」
「え? 悲鳴とペアに関係があるの? むしろ空凪を道連れにしちゃうんじゃない?」
「簡単な事だ。僕は常夏に喧嘩を売られている。
その状態で僕自身が悲鳴を上げたならまだしも、相方を狙い撃ちにして失格させたなんて事になったらどう思うよ」
「直接対決を避けた腰抜けって思われるでしょうね。真偽は置いておいて、そういう噂を流すならこの私に任せなさい!」
なるほど。そういう保護方法もあるのか。
マイクの前で話してるから今の会話は3年にも2年にも伝わってる。小野寺さんが噂を流すまでもなくバッチリ知れ渡るだろう。
組み換えをすれば島田さんへの攻撃がゼロに……までは下がらないと思うけどかなり減るはずだ。
「と、いう訳だ。どうする?」
「……折角の申し出だけど、止めておくわ。ウチの実力で、この肝試しを挑んでみたい」
「そうか……分かった。余計な事を言ったようだな」
気を取り直して突入を開始する。副代表たちが前、オレ達は後ろだ。
しばらくして、小暮先輩の居る所まで進んだ。今は着物姿だ。
モニタ越しではなく直接見てもやっぱり美人さんだなと思うけど、その言動のせいで台無しになってると思う。
物理的に止められるわけでもないのでスルーして進もう。
「あらあら、ようこそお越し下さいまし……あの、無視しないで下さいませんか?」
何か声が聞こえたけど気のせいだという事にして先に進もう。
……そう思ったのだが副代表は流石に可哀そうだと思ったのか反応を示した。
「……風紀委員、何か露出狂が紛れ込んでるんで捕縛してくれ」
露出狂こと小暮先輩には一切視線を向けずに小野寺さんが持っているマイクに話しかけている。
更に扱いが可哀そうになった気がするのはきっと気のせいだろう。
「お待ち下さい。先ほどカメラの前で名乗りましたよね? 私は決して不審者ではありません」
「ったく、不審者は皆そうやって言うんだよなぁ」
「空凪くん、『皆』って言えるほど不審者に会った事があるの?」
「いや、この人が初めてだ」
「……突っ込まないでおくわ。こんな所で失格になっても嫌だし」
「だな。それが良い」
このヒト達は何でこんな状況でもマイペースに話せるんだろうか?
これだから副代表どもは。
「……仕方ないですね。私では貴方たちを止める事はできないようです。
どうぞお通り下さい」
「言われなくともだ。
……あ、そうそう。貴様が血で汚した床の掃除代は後で請求するんで」
「待って下さい。アレはどちらかと言うと貴方たちの自爆では?」
「クックックッ、そう思うのならば法廷で語り合おうじゃないか」
「空凪くん、遊んでないで行くわよ」
「りょ。じゃあな。機会があればまた会おう」
恐らく相手はもう会いたくないと思っているだろうな。
まあいいや、副代表のおかげで全く怖くなかった。先に進むとしよう。
「ひぅっ……ふぅ……」
「大丈夫か島田さん」
小暮先輩を突破してもお化け屋敷として至って普通の仕掛けは普通に機能している。
その度に島田さんが悲鳴を上げそうになるが、何とか頑張って耐えてくれている。
「もうそろそろチェックポイントのはずだ。頑張れ」
「副代表たちは平気そうだなぁ……」
「何て言うか……怖さは感じないのよね。次は何を仕掛けてくるのかっていうワクワク感の方が大きい感じ?」
「あ~、確かに。それはオレも分かる。かなり手の込んだことやってくれてるもんな。
最終チェックポイントとかどんな感じなんだろう。ネタ切れになってなきゃいいけど」
「そんな拍子抜けな事にはならんだろう。
……島田にとっては酷な話かもしれんが」
「うぅぅ……まだ着かないの?」
「本当にもうそろそろ……お、着いた」
向こうの方に明かりが見える。おそらくはチェックポイントだろう。
「ふぅ、ようやく終わ……」
島田さんが安心した言葉を放つその瞬間、何か柔らかいものがペチャリとぶつかった音がした。
「きゃぁぁぁっっっっ!?!?」
直後に轟く悲鳴、そして失格を知らせるブザー音。
島田さんはふらりと体を傾かせ……
「って、危なっ!」
倒れる前に抱きかかえる事に成功する。
どうやら気絶してしまったようだ。
「……しまったな。勝利を確信した瞬間が一番怖いんだと伝えておくべきだった」
ビービーとうるさく鳴り響くブザーの音の中でも、副代表のその呟きは何故かよく聞こえた。
結局何もできずにリタイアか。まぁ、オレらしいか。
気絶してしまった島田さんを背負って来た道を引き返すとしよう。
「副代表たち、あとは頼んだぞ」
「無論だ」
「ええ。カッコいい所を見せてあげるわ」
オレ達が控室に戻る頃にはもう戦いは終わってるかと思ったけど、実際はまだ始まってすらいなかった。
何事かと思いながらも席に着く。するとモニターの中で携帯が鳴った。3年の門番……男女のペアのうち女子の携帯が鳴っているらしい。
『はいもしもし、ああ、葵ちゃんお疲れさま。
到着したっぽい? 分かった、ありがと!』
『そうか、伊織たちは着いたか。
せっかく頑張ったのに気付かない内に終わっていたなんて可哀そうだからな』
『3年の先輩たちもありがとうございました。わざわざ待って頂いて』
『いいって事よ! お前らのおかげで内申も上がるって話だしな!
ただ、手加減はしねぇぞ!』
会話の内容から察するにオレ達を待ってくれていたようだ。
島田さんは未だに気絶しているが……まぁ、待ってもしょうがないか。
『『『『
[フィールド:現代国語]
3-A 289点
3-A 277点
2-F 空凪 剣 400点
2-D 小野寺優子 155点
『ほぅ? Dクラスにしては中々の点数だな』
『それ、Fクラスのキミが言っても皮肉にしかならないんですけど?』
『……さ、始めようか』
『はいはいっと』
お互いのペアの合計点は大体同じっぽいが……あの副代表が居る時点で互角な勝負にはなり得ないな。
んっと……副代表の召喚獣は『剣が本体』とか言ってたっけ。何か武器が禍々しい事を除けば至って普通な召喚獣だ。
それに対して小野寺さんは……アレは、天狗か何かか? 目立ちたがり、見栄っ張り……そんな感じだろうか。
2人とも特におかしな召喚獣でもないし、普通に戦えそうだな。
のんびりと観戦して数分後、勝敗は決した。
3-A 289点 → Dead
3-A 277点 → Dead
2-F 空凪 剣 400点 → 210点
2-D 小野寺優子 155点 → Dead
『よし、完璧な勝利だな!』
『……空凪くん。私が完璧に戦死してるんだけど?』
『ハッ、即席のペアで連携など期待できるものか。
1対1が2つになるように立ち回ったらそうなるのは自明の理だ!』
『最初から見捨てる気だったと……いつか絶対に泣かす』
『……前向きに評価するなら足止め要員としては非常に助かった。
最悪2対1になる事も覚悟していたが……貴様が想像以上に生き延びてくれたおかげでそうならずに済んだ』
『私としてはもっと目立つ活躍をしたかったけどねぇ……
ま、チェックポイント突破の立役者って事で満足しときましょうか。
あ~、でもなぁ……』
残りはAクラスのチェックポイントだけか。
純粋な床面積は他のどの教室よりも広い。動かせない設備もあるらしいけど、それを差し引いても他のクラスよりは広い。
まぁ、オレは脱落した身だ。完全に観客気分で見物させてもらおう。
「第三チェックポイントはようやく終了だな」
「結局3話も使ったわね。
うちの戦力でまだ残ってるのって誰だっけ?」
「主要なキャラは……そうだな、雄二と霧島の代表コンビとか、未だにセリフが一切無い明久と優子とかだな。
清水とかも残ってるはずだが……筆者が面倒くさがって出してない」
「ヒドイ理由ね……」
「久保もそうだが同性愛者を書くのが単純に苦手っぽいな。だからこそ本作では出番は少ない」
「久保くんの出番が無いのそういう理由なのね……」
「……さて、残りのチェックポイントはあと1箇所だ。
果たして誰が突破するんだろうな」
「では、次回もお楽しみに!」