少し出遅れたが姫路と一緒に誰も通ってなさそうな道を選んで進んでいく。
いずれかのペアが辿り着けば良いという発想でバラバラに突入しているが……常夏に喧嘩売られている事を考えると僕が招かれる可能性もあるか?
いや、姫路が居る以上はそれは危ういと連中も分かってるだろう。最後は脇役に徹する事になりそうだ。
……と、偉そうに失格にならない前提でモノローグを語ってみたが、それ以前の問題が浮かび上がってきた。
『……うら……めしや……』
「ひうっ! ……すーはー……」
姫路の反応が何か見たことある。より具体的には島田の反応とソックリである。
「おい貴様……肝試し苦手なのか?」
「な、何の事ですか? 全然、全く、完璧に問題ないですよ?」
「ふん……まぁ悲鳴を上げないのなら構わん。
おい3年ども、常夏に伝えてくれ。僕との戦いから逃げたいのであれば思う存分パートナーを狙うといい……と」
これである程度牽制になるだろう。こんなのお構いなしに仕掛けてくる奴は居るだろうし、手加減された仕掛けでも悲鳴を上げるかもしれんが。
「空凪くん、あなたという人は……」
「何か文句でも?」
「……いえ、何でもありませんよ。先に進みましょう」
姫路は何かを考えている。それは分かるが何を考えているのかまでは分からない。
何の目的があってわざわざパートナーなんかになったのか。何故、わざわざ僕に近づいたのか。
……読めないな。
「お。壁が開いてる。ラッキー」
「ここを通れればチェックポイントまでかなり近い……ですよね?」
「ああ。もう少しのはずだ」
「……じゃあ何で開いているんでしょう?」
「罠かもな。だが、罠だからと言って止まる訳にもいかないだろう?」
「それは……そうですけど」
「じゃ、行くぞ」
開いている壁を超えて先に進む。
しかし、僕が通った瞬間にただでさえ少ない照明が完全に落ちた。
「む?」
「っ!?」
続けて、勢いよく板がスライドする音が背後から聞こえる。
殆ど反射に近い反応で後ろに手を伸ばすが、腕を差し込む前に板が閉じられてしまったようだ。
「分断……か。危ない事するな」
『空凪くん、無事ですか?』
「こっちは心配要らん。再び合流……ってのは厳しいか。
わざわざ手の込んだ真似をしておいて再合流されたら水の泡だろうからな」
『……どうしましょう?』
「一旦ペアを解消するぞ。そしてチェックポイントに集合だ。僕に限らず誰かと合流できるだろう」
『……分かりました。失礼します』
板の向こう側で足音が遠ざかっていく。
分断の目的は……孤立させる事……にはあんまり意味は無いか。多少悲鳴を上げやすくなるかもしれんけど、ペアが解消状態になるから道連れ失格も成立しなくなる。かなり非効率的になるな。
となると……強制的にペアを組み換えさせて動じない高得点の人……例えば霧島とかを道連れで失格にさせる算段か。
しかしまさか人が居る時に板を動かすとはな。危ない真似をする。もう少し早く反応できていれば手を挟んで怪我をする事で相手を失格に追い込めたんだが。
何? それはただの当たり屋だと? いやいや、まさか人が居る時に板を動かすとは思ってなかったし、照明が落ちた時にパートナーの方に手を伸ばすのは決して不自然な行為じゃないだろう。
次回以降も一応故意に狙ってみるが……1回見た後だと失格まで追い込むのは厳しいかな。
さて、過ぎた事を悔やんでもしょうがない。気を取り直してチェックポイントまで向かうとしよう。
「地図的には……この板の向こうだな」
目の前にはいかにも外れそうな安っぽいベニヤ板が張られている。
他の小物も壁際には置かれていないし、ここが道だと見て間違いないだろう。
ここが塞がれている以上は別の場所が開いているはず。ここに居座っているだけでも敵の動きは制限されるだろう。
……座ってのんびり待つとしよう。雄二と霧島もほぼ間違いなく分断されているだろうし、きっと雄二が来るだろう。
そう思っていたんだが……
「あ、剣! どうしたのこんな所に1人で」
「明久か。それを言ったら貴様も1人のようだが」
「あ~……うん、優子さんとはぐれちゃってね……」
どうやら明久ペアまで分断されたらしい。
何でわざわざそんな事を? 霧島を分断するなら納得だが。
もしかすると、清涼祭での召喚大会と同じペアに誘導したかったのかもな。
という事は、今のペア分けは……
明久+僕
姫路+霧島(推定)
雄二+木下姉(消去法)
こんな感じか。
他にも数ペア入っているはずだが、ほぼ確実に生き残っているである連中だけを考えるならこうなる。
「こんな所で何してるの?」
「……明久、貴様の担当はマイクとカメラどっちだ?」
「え? カメラだけど」
「奇遇だな。僕もカメラ担当だ。なら、小声であれば喋っても3年の連中にはバレないか。
カメラ及びマイクの携帯は義務だ。
しかし、相手からの妨害があった場合は仕方ないとしている。カメラやマイク狙いの攻撃をして失格させるとかいう姑息な手に対する措置だな。
今回は相手の策略によりマイクを持てない状態に追い込まれた訳で、マイク無しの状態で明久とペアを組むのは何らルール違反とはならないだろう。
マイクが無いので音声が相手に伝わる事は無い。バレて困る事を話すつもりはあんまり無いんだが……自由に話せるので少し気が楽だ。
ついでに、いくら大声を上げても失格になることはほぼ無いだろう。無敵状態だ。
ただ、他のペアのマイクに声を拾われたら……どういう裁定になるんだろうな?
「さて、状況を説明しよう。
目の前のこの板、この板の向こうがチェックポイントだ」
「ここも開閉式の板って事だね?」
「ああ。ここが閉じているという事は別の場所が開いているはずだ。
ここを閉じさせ続ける事が僕たちの役割だな」
「つまり……見張ってれば良いって事?」
「そういう事だ」
とりあえずしばらく休憩だな。のんびりと待つとしよう。
「最終チェックポイント回その1が終了だ」
「原作通りにペアの組み換えとかやってるけど、アレって何気に凄く危ないのよね。
自動ドアが高速で閉まるようなものでしょ?」
「まったくだな。原作では描写されてなかったが、霧島と雄二の分断とかどうやったんだ?
ずっと腕を組んでいてもおかしくないと思うんだが」
「そこは……小暮先輩とかが頑張ったんでしょうね。そういう事にしておきましょう」
「……そだな。突き詰めて考えると面倒な事になりそうだ」
「では、次回もお楽しみに!」