「んじゃあ『り』から」
「リール」
「ルール」
「るっ!? えっと……ルート」
「トール。雷神な」
「……剣」
「何だ? 『つ』じゃないぞ?」
「暇つぶしのしりとりなのに何でそんなにガチで勝ちに来てるの? もうちょい殺意薄目でのんびり楽しむんじゃダメなの?」
「お前が先にリールとか言って仕掛けたんだろうが」
「それはそうだけどさ……」
僕たちの役目はチェックポイントに繋がる道の見張り。
他の人がどうにかしてくれるまでメッチャヒマだし、マイクも無いから多少大声でも全く問題ないので暇つぶしにしりとりをやっていた。
「ほら、『る』からだぞ」
「る……ルビ
「
「ろ……ロール!」
「……ルーブル」
「ぐぬっ! る……ルアー」
「
「まさかルール以外で『る』を『る』で返せるものがあるなんて……」
「……しりとりは止めておくか。微妙につまらん」
「それじゃあ何する?」
「トランプもカードも無いからなぁ……
……ん? ちょっと静かにしてくれ」
壁の向こうの方から声が聞こえた気がした。
いや、ただの声だったら3年のものを何度か耳にしてるんだが、そうじゃなくて2年生の声が聞こえた気がする。
『ようやく着いたみてぇだな』
『そうみたいね。無駄に面倒をかけられたわ。
ったく、何でアタシが代表の旦那さんと組まなきゃならないのよ』
『おい待て木下姉。俺は翔子の旦那じゃ無ぇよ』
『体験とはいえ結婚式やってたんだから似たようなものでしょう』
会話の内容からも誰の声か察する事ができる。
それ以前に声質から大体わかるが。
「優子さんと雄二の声だね」
「やはりそうか。このまま勝ってくれると楽できるな」
「ここの科目って何だっけ?」
「物理だ。ちなみに、あの常夏が指定した科目でもある」
「あの常夏が? って事は得意科目って事だよね……?」
「そういう事になるな。まぁ、所詮はあの常夏だ。そこまでの点数は……」
『何っ! 常夏が2人とも400点超えだと!?』
……おやぁ?
色々と迂回させられながらも俺たちは何とかチェックポイントまで辿り着いた。
後はそこの番人をやっている常夏をぶっ飛ばせば勝ちだったんだが……
[フィールド:物理]
2ーF 坂本雄二 218点
2ーA 木下優子 315点
3ーA 常村勇作 412点
3ーA 夏川俊平 408点
まさかあのバカっぽい見た目の常夏が腕輪持ちだったとはな。腐ってもAクラスって訳か。
これ……勝てるか? いや、無理だな。
点数で負けてる上に操作技術も俺と比べたら3年の連中の方が上だ。
木下姉が明久並みに動けるならまだ勝算はあるが、そんなの無理に決まってる。
だったら俺にできるのは可能な限り削る事、そして後続に向けて情報を流す事くらいだ。
カメラは俺が持っているし、マイクも木下姉が持っていた。このまま普通に戦うだけでも相手の情報を記録する事はできるが、どうせ剣は明久と一緒に組んで、そして戻る気なんてあんまり無いだろう?
戦闘が始まった後であれば大声で失格になるルールは無効化される。なるべく大声で情報を伝えるとしよう。
「何っ! 常夏が2人とも400点超えだと!?」
「ちょっ、いきなり大声出さないでよ」
「スマン、だが必要な事だ」
「……ああ、そういう。分かったわ」
「へへっ、どうした坂本、今から土下座してこれまでの事を謝るって言うなら少しは手加減してやるぜ」
「そいつは良いな! 俺たちセンパイの威厳って奴を教え込んでやらねぇとな!」
土下座しても手加減するだけなのか。
それと常夏、カメラ回ってるぞ? そんな舐めた態度だと内申に響くぞ?
「常村が412点、そして夏川が408点!
オカルト召喚獣は牛頭と馬頭か!」
「……先輩たち、試験召喚システムからもペア扱いされてるのかしらね?」
「ホントこのシステム謎だらけだな。一体全体どうやって判定してやがるんだ?」
「普段の生活態度まで監視されてるとか考えたら少し怖いわね……」
今更だが、こんな胡散臭いシステムがこの学校の根幹を成しているんだよな。
竹原教頭はわざわざ暴走事故を起こさせて学園を潰そうとしていたが、そんな事せずともどうにかなったんじゃないのか?
「何をブツブツ言ってやがる! 土下座する気が無ぇならサッサと戦死させてやんよ!」
「せいぜい良い声上げろよザコどもが!」
あの常夏に一方的に負けるというのもムカつくな。
だが今の俺に必要なのはそんな感情論じゃない。相手のペースに乗せられずに、自分なりに、最大限削る。それだけだ。
……そして数分後……
[フィールド:物理]
2ーF 坂本雄二 218点 → Dead
2ーA 木下優子 315点 → Dead
3ーA 常村勇作 412点 → 251点
3ーA 夏川俊平 408点 → 239点
案の定、普通に負けた。
戦略クラスや戦術クラスでの不利ならまだ何とかなるが、戦闘クラスだと小細工のしようもない。
……もう少し何とか鍛えられないものか。打倒Aクラスに向けて。
「ざまぁ無いな坂本ぉ!」
「これでセンパイの有難みってもんが理解できたかぁ?」
常夏が何か煽ってくる。もうどうでも良い連中だが言われっぱなしなのもシャクなので反論しておくとしよう。
「何を言ってやがる。俺たちは『勝った』」
「はぁ? ついに勝敗の区別が付かないくらいバカになっちまったか? ああ、元からか」
「逆に聞かせてくれ。その点数でどうやって翔子に勝つ気だ?」
「あんだと?」
「おおかた怖がりな生徒……姫路とかとくっつけて失格に追い込もうとしたんだろうが、俺はまだ姫路の悲鳴を聞いていない。
あいつらがチェックポイントに辿り着いた時、どうやって凌ぐのか是非とも聞かせてほしい。俺も参考にしたい」
「ハンッ、なら来る前に失格に追い込んでやるまでだ」
「その程度か。つまんねぇなぁ」
教頭の企みに加担するようなバカだから元からあんまり期待していなかったが、やっぱりただの考えなしのバカだ。
そのたった1つの策が失敗した時の事を考えていない。これじゃあ何の役にも立たない。
「せいぜい無事を祈ってやるよ。じゃあな、センパイ」
もう間もなく決着が着くな。教室のモニターでのんびり観戦するとしよう。
「常夏……普段あんなにバカっぽいのに成績は良いのよね」
「二次創作書いてると忘れそうになるが、400点とか取るのは化け物の領域であり一般的な優等生はせいぜい200~300点くらいなんだよな」
「化け物筆頭のキミが何を言ってるのよ」
「ブーメランだぞ化け物代表」
「……まあいいわ。
坂本くんはもう勝った気で居るけど本当に大丈夫かしらね? 姫路さんが悲鳴を上げる可能性は十分にあると思うけど」
「それこそ心配要らない。あの瑞希だぞ? そんな下らない理由で失格になるなど有り得ない」
「瑞希……ね。確かに尤もな意見ね。
それでは、次回もお楽しみに!」