「……ファイナルクエストのコマンド『捕食』の効果は?」
「敵味方いずれか1体を対象に発動。自身と対象のHPの値の比により成功率が変動。
効果は様々であり、毒っぽいモンスターを食べると食中毒で死ぬ、栄養がありそうな奴なら回復や能力値上昇。
捕食成功時には対象は除外されて、その戦闘中は一切の蘇生が効かなくなる。
バグかは不明だが自分を捕食する事も可能。その場合、実行者と対象者のHPが同値となるため最低確率の1/256でしか成功しない」
「何でそこまで細かく覚えてるの……」
「じゃ、次は僕の番だな。さてどんなクイズ出すかなぁ……」
引き続き板が張られた道の監視なう。
やっぱりヒマなので今度はクイズを出して遊んでいる。明久はゲーム関係ならマニアックな知識を持っているので意外と飽きない。
「でもさ、本当にこんなのんびりしてて良いのかな……」
「姫路の悲鳴は今のところは聞こえていない。まだバッチリ攻略中のはずだ。
奴らのサポートという意味ではここに居座るのがベストだ」
「理屈では何となく分かるけど、うーん……」
しかし時間かかってるな。そろそろ到着してもおかしくない気がするんだが……
そんな事を考えていたら、不意に目の前の板が開いた。
「「「………………」」」
板を運ぼうとしている先輩と目が合い、無言のままに数秒の時間が流れる。
「よし突入!」
「OK!」
『ちょっ、待っ!! くっ!!』
残念ながら板に手が届く前に閉じられてしまった。
だが問題あるまい。そもそも何故ここの板を外す必要があったのか。それを考えればな。
『おい、何やってんだよ! 早く板を張り替えて……』
『いやいや、あいつらまだそこに居たんだよ! 幽霊なんかよりもビビったよ!』
『バカヤロウ! そっちは通しても良いんだよ! あんな奴らよりもこっちを……』
『……瑞希、着いた』
『あっ……やっと、ですか。ふぅ……』
わざわざリスクを承知の上で板を外す理由、それは反対側から挑戦者がやってきたから以外に有り得ないだろう。
『げっ、常村! こいつら辿り着いちまったじゃねぇかよ! どうすんだよ!』
『んな事言ったって、勝負するしかねぇだろ!』
ククッ、慌てているようだな。
連中が状況をしっかりと把握しているかは不明だが、常夏の点数は合計で500点届かない程度。
それに対して今の霧島なら科目が物理だから調子が良ければ普通に600点を超えるはずだ。姫路も調子が良ければ400点以上の点数は叩き出せる。
よっぽど調子が悪くない限りは楽勝だろう。これにてチェックメイトだ。
『チッ、こいつらをサッサと失格にした上であのクズどもを痛めつけてやろうと思ってたのにつまんねぇミスしやがって』
『確かこいつら相当点数高かったよな。誰だよ2年はザコしか居ないから楽勝とか言ってたの』
『俺も言ったがお前も言ってただろ』
『はいはい、観察処分者のあの2人は先輩に対する敬意の欠片もないどうしようもないクズだけど中には比較的マシな奴も居る。これで良いか?』
『言い直せば良いって問題じゃないんだが……はぁ、何だってこんな優秀な連中がどうしようもないカスどもとつるんでやがるんだ? 掃き溜めに鶴ってヤツか』
「常夏の奴……なかなか見所があるじゃないか」
「え? どうしたの? トチ狂った?」
「『カスどもと
まさかそんな下らないギャグが言える才能があったとは……感心した」
「褒めてるのかけなしてるのかどっちかにしてあげようよ。分かりづらいから」
……ところで、まだ戦闘は始まらないのか? いいかげんヒマなんだが。
『ああいう連中が居るから文月学園ってだけでヤバイ連中扱いされるんだよなぁ。普段の振る舞いが俺たちに迷惑かけてる事を自覚して……』
『……クズじゃない』
『あん?』
『……吉井も、剣も、私の大切な友達。クズやカスなんかじゃない』
おや、珍しいな。普段は無口な霧島が柄にもなく主張している。
だが、本人が気にしてないからそんな反論は要らんぞ?
『そう言っても事実だろ。2人とも学校始まって以来の問題児である観察処分者。
吉井はゴミみたいな点数だし、空凪はテストでカンニングか何かしてるんだろ?』
「カンニングとか言われちゃってるけど?」
「何だってカンニングなんて面倒極まりない事をやらなきゃならないんだ」
「だよね~」
鉄人こと西村先生の監視をかいくぐるのは至難の技だし、カンペなどを見れたとしてもそのカンペを見て答えを確認するのに時間がかかる。
普通の学園の100点満点のテストならまだしも、この学園で効果的なカンニングをやるならテスト問題を予め盗み出しておいて答えを丸暗記するくらいしか方法が無さそうだ
しかし答えを丸暗記するにしても限界があるわけで……400点分を全て暗記できる程の記憶力があるなら真っ当にテストを解いた方が多分楽だ。序盤か中盤の数問を覚えておいて少し加速するのがせいぜいじゃないかな。
結局、不正行為を働くにしても本人の実力が必要なので、もし不正があってもある意味本人の実力を反映された点数になりそうだ。いや、不正行為を容認するわけじゃないが。
『あいつらは他人様に迷惑をかける事しかしちゃいない。
ゴミはゴミらしくゴミ溜めに埋まってろってんだ』
「はっはっはっ、明久~、うっかり怒鳴り返したらダメだぞ~。
姫路はマイク持ってるからなるべく反応させないようにしないとな~」
「あっはっはっ、剣こそ大声出して常夏を半殺しにしたらダメだよ~」
「はははっ、光じゃあるまいし、半殺しだなんてそんな無駄な事はしないさ。
あんな程度の低い連中に構うだけ人生の無駄だ」
明久ですら全く動じていない。こんな下らない挑発に引っ掛かる奴はまず居ないだろう。
と言うか、まだ始まらないのか? そろそろ眠くなってきて……
『ふざけた事を言うのは大概にして下さい! あなた達に何が分かるって言うんですか!?』
……眠気が一気に吹っ飛んだ。
おい姫路……まだ戦闘始めてないよな? その声量は失格ものだぞ?
『んだテメェ、文句でもあんのか!?』
『ええありますよ!
そうやって噂を聞いたり行動の外面だけを見て人を理解した気になって!
最初からその人となりを決めつけて!
それだけで酷く言うなんて、ふざけないでください!!
あの人たちの本質を理解しようとした事があるんですか!?』
『っせえな! お前こそアイツらがどんだけバカなのか知らねぇんじゃねぇのか!?
ちょっとアイツらの点数調べりゃ分かんだろうが!』
『その程度のもので人の本質が測れると本気で思っているんですか!?
良い点数を取る事が全てだとでも言うんですか!?』
『ぎゃんぎゃんわめくな! あんな連中、カスに決まってんだろ!』
『2人共カスなんかじゃありません! 絶対に!!』
『いいから出て行け! お前らは今の大声で失格だ!!』
『ああ、そうだった。こりゃラッキーだな』
『……言われるまでもない。行こう、瑞希』
『…………はい』
案の定、失格になってしまったようだ。
はぁ……面倒くさい。本当に、面倒くさい。
「剣……姫路さん、僕たちを庇ってくれた……んだよね」
「それ以外の何かに聞こえたか?」
「そうじゃないけど……僕は姫路さんに恨まれてるんじゃないかって思ってたから」
「告白を断った件か。確かに姫路であれば包丁片手に襲い掛かってくるくらいに恨んでいてもおかしくはないな」
「さ、流石にそこまでは……」
「人の話を聞かずに石畳を持ってくるような奴だぞ?」
「……い、いや、今は反省してくれてるはずだから!」
「……ま、そうだな。
しっかし面倒な事をしてくれた。あんなどうでもいい挑発に乗らずに普通に戦ってくれれば楽できたってのに」
「そんな言い方は無いんじゃない? 姫路さんなりに怒ってくれたんだから」
「いや、事実だ。あのバカのせいで……普通に勝つだけじゃなくて徹底的に叩きのめしてやらないと気が済まなくなってしまったじゃないか。
ああ、本当に面倒くさい」
「あ、あれ? もしかして……剣も怒ってる?」
「はっはっはっ、何をバカな事を言っているんだ。
そんなの……当たり前だろ」
「次回『常夏死す!』
サモンスタンバイ!」
「次回予告早いな……まぁ、結末が見えてるもんなぁ……」
「これで何事もなく2年が負けたら逆にびっくりよ。
どういう事をするのかは知らないけど、勝ちは確定でしょう」
「まぁな。戦闘描写は例に倣って大幅にカットされると思うが……僕たちが勝つ事だけは保障しておこう」
「では、次回もお楽しみに!」