それじゃ、解説を行うとしよう。
「んじゃ、暇つぶしの解説の時間だ。
お前さんが人質に取られて状況を把握した時点で、うちの副代表の肚は決まってた。お前を見捨ててでも突破するってな」
「そ、そうね……確かにそんな感じだったわ」
「でもまぁ、なるべくなら助けたいとも思っていたはずだ。貴重な戦力だしな」
オレが副代表に会ったのは今年度が初めてなんでキャラを掴みきれてるとは言いきれんけど……まぁ、きっとそんな感じだろう。
他人からの感情論の批判なんて気にせず我が道突き進むタイプの傍若無人な人間だ。きっとな。
だからこそ、見捨てるべきだと判断したら即座に行動に移すだろう。おっかない人だ。
「でもな、助けるにしても問題がある。
あの副代表の召喚獣の操作精度と速度があれば一気にBクラスの奴を仕留める事も不可能ではなかったと思し、実際やろうとはしていたと思う。
けど、一回しくじるだけでほぼアウトだ。相手がもたついてくれたらまだ助けられるが……Fクラスのオレでも即座に人質を道連れにする判断はできる。
Bクラスのあいつらならしっかりと同じ判断を取れるだろう。
だから……オレが止めた。Bクラスの連中をな」
「えっ、どういう事?」
「オレがやったのは副代表に反抗するフリしてBクラスを躊躇わせたって事だ。
完全に見捨てられた人質に価値なんて無いが……仲間割れを引き起こせるなら十分価値はあるだろう?
そうなると即座に切り捨てるってのは躊躇われる。Bクラスの心情としては、このまま利用してやろうって感じになるはずだ」
「ちょ、ちょっと待って? えっと……
……う、うん。飲み込めた。アンタ達、一瞬でそんな色々考えてたの……?」
「いやいやまさか。オレはずっと考えてただけさ。
正統な指揮者が来た時にどう責任を押しつけてどう立ち回るかってな」
「押しつけるって、アンタねぇ……」
「……そもそもオレは指揮権をお前さんに押しつけられたようなものなんだが」
「うぐっ、ご、ごめんなさい……」
「気にするな……とは言わないでおこう。ちゃんと反省してくれ。
さて、話を戻そう。
オレとしては適当に反抗した時点で仕事終了だと思ってたんだが……あろう事かあの副代表。オレを蹴っ飛ばしやがった。敵の近くに」
「……えっ、アレって計算ずくの事だったの!? 適当に蹴っ飛ばしたとかじゃなくて!?」
「多分な。少なくともオレは確信したよ。コイツ、オレの事をこき使う気だ……と」
あの時はいきなり蹴られてガードするのが精一杯で自分で飛ぶ方向を調節したりとかはできなかった。
あのヒト、オレの反射神経とかを読んだ上で最適な速度と角度で蹴ってたよ。多分。
「しょうがないから仲間割れのフリしてさり気なく召喚獣を呼び出し、副代表が『オレの右手から攻める』って露骨に伝えてくれたんで2人居たBクラス生徒のうちの反対側を倒して終了だ。
……振り返ってみるとヒデぇ綱渡りだな。完全アドリブで合わせてきやがったあの副代表は一体何モンなんだよ」
「えっと……ちょっと何か理解できない所もあったけど……要するに、アンタはウチを助けようとしてくれたのよね?」
「……まぁ、そうなるか」
「そっか。それだけ分かれば十分よ。ありがとね」
「……確かにシンプルな話だったな。どういたしまして」
オレが島田さんを助けたのは戦力として利用したいからという理由が強いんだが……まぁ、わざわざ言うことはないか。
キーンコーンカーンコーン……
そうこうしているうちに午後4時を告げるチャイムが鳴った。今日はもう停戦だったな。
「さて、帰るか」
「あ、ちょっと待って!
そう言えば、アンタの名前、まだ聞いてなかった。せっかくだから教えてよ」
「そう言えばそうだったな。
オレの名は
「イオリ? 何か女子っぽい名前ね」
「まぁ……そうだな。歴史的には一応男性名らしいけどな」
「へ~。それじゃ、宜しくね、伊織」
「……ああ」
島田さんの脳内では上の名前ではなく下の名前が定着したようだ。
まぁ、別にいいか。どうでも。
キーンコーンカーンコーン……
前線で指揮を取っていた僕の耳にチャイムの音が鳴り響いた。
「停戦時刻のようだな。諸君、お疲れさま」
現在の戦況はBクラスを教室に押し込む一歩手前といった所か。
翌日にはこの状態で再開される予定になっている。
生徒たちの大まかな位置情報が学園のシステムに保存されるのを待ってから撤収する。
「雄二、戻ったぞ」
「お疲れさん。首尾は?」
「上々だ。ところで、Bクラスと結んだ協定についてなんだが、条文の控えはあるか?
一応確認しておきたい」
「ああ。コレだ」
どれどれ?
・Bクラス、Fクラス間の試験召喚戦争が本日午後4時までに決着が着かなかった場合、翌日午前9時まで停戦とする。
・両クラスは停戦期間中は試験召喚戦争に関する行為を一切禁止する。
実にシンプルな条文だ。
気になる所はいくつか……いや、いくつもあるが、まぁ大した問題にはならんだろう。
「しかしまぁ……『戦闘禁止』ではないんだな。
戦闘行為に関しては教師の承認が必要だから破るのが難しいし、補充試験も同様だ。
だが、クラス間で協定を結ぶ行為は簡単に破れるぞ?」
「……確かにそうだな。まぁ、気にすることはないだろ」
「だな」
相手は卑怯者と名高い根本だ。
だが、自由度が高いようで割と低い試召戦争で打てる手など限られている。
試召戦争の勝利条件はあくまでも『代表の撃破』だ。戦闘以外で代表を仕留める方法が皆無というわけではないが……まぁ、まず無い以上は雄二を避けて通るのは不可能だ。
そうだな、例えば……
「…………雄二」
「お、ムッツリーニか。どうした?」
「…………Cクラスの動きが怪しい」
「なるほどな、漁夫の利を狙おうとしていると」
「…………(コクリ)」
この時、FクラスがBクラスと結んでいるのが普通の停戦協定だったなら問題は無い。
Cクラスに乗り込んで交渉しに行くだけだ。成功するかはまた別の話だが。
だが、『試験召喚戦争に関する行為を一切禁止する』っていう状態でそんな動きをしている……怪しいなぁ。
「おい康太、一つ質問だ。
その動き、無駄に派手じゃなかったか?」
「…………確かに。かなり露骨だった」
「だそうだ雄二。次に取るべき手は分かってるな?」
「当然だ」
嵌める方法が限られている以上、それを予想して嵌め返す事もそう難しい事ではない。
敵の代表さんに策を凝らすという事の弱点を教えてやるとしよう。
「とうとう伝令の人の名前が出てきたぞ」
「『
「天星の作品における命名規則では『天や空』の文字、それから転じて『虚空』、更に転じて『
「空凪、御空。あと、私の『零』と……『凪』なんかも規則通りね」
「ああ。だが、この伊織は完全に無視されている。
これはアレだ。命名規則に則った連中がある種の『超人』であるのに対して伊織は『普通の人間』だからだ」
「自分で超人って……いや、確かにそうだけど」
「宮霧伊織は一応は『凡人』として設計されている。
あんまり頭がキレ過ぎると雄二と被るし、アホだと明久と被るからな。塩梅が難しいようだ。工藤と同じく常識人枠に……なってくれるといいな。
ただ……うちの駄作者は明言されてない場所を悪用してインフレさせる悪癖があるからな。
何か後でとんでもない特徴や属性が付与される可能性がある事を述べておこう」
「うわぁー、たのしみだなぁー」
「まぁ、5教科に関してはFクラス副代表レベルだと明言しておこう。急成長はあってもAクラスレベルになることは多分無い。
多分な!」
「……多分、ねぇ。
そう言えば、伊織って珍しい名前よね。微妙に女子っぽいし」
「そうだな。念のため明言しておくが、こいつは男子だ。
本人が本文中に言っていた通り、歴史的には男子名だしな」
「何でその名前にしたんだろう?」
「何となく思いついたらしい。
補足だが、筆者はもし自分に子供ができたとしたらこの名前だけは絶対に付けないなと思ったそうだ」
「……何でそんな名前を宮霧くんに付けたのかとツッコむべきか、そもそも何で付けないのかと質問するべきか……」
「どっちもいっぺんに答えられる。
画数が多くて書きにくそうだからだ!!」
「……ああ、なるほど。確かに」
「対Bクラス戦法はリメイク前と変えてるのね」
「ああ。当時の没案だな。
リメイク版では僕が最初から自重を捨てたキャラになってるんでその影響だな。
今の僕なら多分コッチの戦法を使うだろう、と。
具体的な内容については明日まで自由に想像してほしい」
「そう言えば、キミのキャラもリメイク前と結構変わってるのよね」
「あくまでも自重を捨てただけなんだけどな。
あと、謎の情報網とかも削除されてる。
人名もロクに覚えないキャラになってるしな」
「いや、自分の事でしょうに……
でも、確かにリメイク前だとやたらと情報が早かったわね」
「多分、リメイク前の更に前の前、所謂『初稿』における設定の名残りだろうな。
あんときはオリキャラの副代表が各クラスに居て、お互いに幼馴染みの設定だった。
だからやたらと情報が早かったんだろう」
「……ヒドい状況になりそうね。色んな意味で」
「筆者も書ききれなくなって破棄してたからな。
その後、僕以外のオリキャラを一旦抹消し、出落ちの為に光を復活させ、物語の都合の為に貴様を復活……いや、再構築したわけだな」
「再構築……そうねぇ」
「……ああ、再構築だ。決して復活ではない」
「……それじゃ、次回もお楽しみに!」