バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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17 鉋で削るように

[フィールド:物理]

 

3ーA 常村勇作 251点

3ーA 夏川俊平 239点

 

2ーF 空凪 剣 400点

2ーF 吉井明久  59点

 

 

 合計点で見るとギリギリ負けてるね。

 でも大丈夫。僕たちならこのくらいの点数差は簡単にひっくり返せる。

 

 剣の方は相手の点数を細かく削っていくとかいう無駄に手の込んだ事をやるらしい。

 僕は当然そんな事はできない。ただ普通に戦って、そして普通に勝つだけだ。

 さて、どっちから倒そうか。どちらから攻撃が飛んできても良いように召喚獣に身構えさせた。

 

ポロッ、カラカラ……

 

 そして、召喚獣の首が落ちた。

 

「うぉっ、何だこりゃ!?」

「吉井の召喚獣……ああ、頭が無いからバカって事か」

 

 おかしいな。何で3年生の間でも『僕=バカ』って事になってるんだろうか?

 

「でもこれ弱点丸出しじゃね?」

「おおそうだな。サッサと掃除してやるぜ」

「なっ、そんな卑怯だぞ!!」

「うるせぇ! 卑怯もラッキョウもあるか!!」

 

 や、ヤバイ。カッコよく登場したはずなのにアッサリ退場するハメになろうとしている。

 ど、どうにか、どうにかしないと!

 例えば……そう、剣ならどうするだろうか?

 

「せ、先輩。僕が怖いんですか?」

「何だと?」

「普通にやりあって勝てる気がしないからそんな事をするんでしょう?

 そうじゃないって言うなら頭を狙うのを止めて下さい」

 

 さぁ、どうなる。

 この人たちは無駄にプライドが高い。だから半ば言いがかりであっても反発するはず……!

 

「……チッ、確かにそうだな。あからさまな弱点なんざ突かなくてもテメェ如き倒せる。サッサとこの頭を片付けやがれ」

 

 よし、上手く行ったみたいだ。成す術もなく退場という悲しい事は避けられた。

 

「明久にしてはやるじゃないか。先生、首を預けておきますね」

『はい分かりまし……重っ!』

 

 剣が怒っているのと同様に僕だって結構怒ってる。

 遠慮なくやらせてもらうよ!!

 

 

 

 

 

 明久にしては機転が効くな。

 首が落ちた時には2対1も覚悟したが、これなら普通に戦えそうだ。

 

「さて、相手を殺す気でやるのは得意なんだが、鉋で削るように少しずつやるのは初めてなんだ。

 お手柔らかに頼むよ」

「ハッ、言ってろ。俺たちを舐めてかかった事を後悔させて……」

 

3ーA 夏川俊平 239 → 200点

 

「すまない、隙だらけだったからうっかり攻撃してしまった。

 意外と削れたな……手加減って難しい」

「この野郎っ!!」

 

 坊主先輩こと汚物が逆上して召喚獣で殴りかかってくる。

 普段なら近接戦闘はなるべく避けたいのだが、今は問題ない。いつもは無い接近戦向きの武器が今はあるから。

 

「さて、その力を見せてもらおう。魔剣ダーインスレイヴ……の、鞘!!」

「抜かねぇのかよ!? 舐めてやがんのか!?」

「舐めてなどいないさ。手加減するなら刃物より鈍器の方が都合が良いだろう?」

「やっぱり舐めてんじゃねぇかよ!!」

「鈍器だって立派に凶器になるんだぞ? こんな風に」

 

 相手の斧による攻撃を鞘で受け流し、そのまま思いっきりフルスイング……の直前で何とか殺意を抑えてそれなりの打撃を与えた。

 

3ーA 夏川俊平 200 → 128点

 

「くそっ、思ったより削れやがる!

 ここからは自分との戦いになるな。どれだけ殺意を抑えられるか……

 イメージしろ……イメージするのは常に最弱の自分だ……!」

「ふざけやがって!! おい常村、そっちはまだ終わんないのか!」

「まだだよ! くそっ、Fクラスの分際で……!」

 

 明久の方も普通に善戦してるっぽいな。

 

3ーA 常村勇作 251 → 199点

 

2ーF 吉井明久  59点

 

「1発! 入れば! ぶちのめしてやれるのに!

 何で! 全然! 当たんねぇんだよ!!」

「今日の召喚獣はいつもより軽い気がする……何でだろ」

「そりゃ明久、首が無いからだろ」

「あ、そっか!」

 

 運がいい事に明久のオカルト召喚獣の最大の弱点が長所になっているようだ。

 首が無いと軽くなると同時にバランス感覚も狂いそうだが……そこは明久の手腕でカバーしているな。感覚フィードバックがある観察処分者の特性もプラスに働いていそうだ。

 

「あっちが終わるまでには相当な時間がかかりそうだな。じっくりといたぶってやるとしよう」

「まだだ! 俺はまだ負けちゃいねぇ!! うぉぉぉおおお!!!!」

 

 向こうはまだやる気があるようだ。現実が見えていないのか、あるいは秘策でもあるのか……

 油断せずにじわじわと削り取っていくとしようか。

 

「召喚獣は頭や心臓等、急所を狙う事で大ダメージが期待できる。

 となると末端……手足を狙えばいいのか? 実験開始だ」

 

 試しに相手の武器を持っている手を狙ってみる。

 相手も回避しようとするが、それに合わせて召喚獣の動きを補正して最適なタイミングで……あっ、

 

3ーA 夏川俊平 128 → 90点

 

 しまったな。勢いを付け過ぎた。思ってたより強く叩いてしまったようで相手の武器が明後日の方向にすっ飛んでいった。

 

「くそっ、いちいち避けるなよ。手加減しにくいだろうが」

「ムチャクチャ言いやがるなテメェ!!」

「ダメージはそれなりに抑えられたか? もっと弱く……やってみるか」

 

 武器でも拳でも、振りかぶって勢いを付けた方が威力が上がる。

 ならば武器を突き出した状態で構えてペシッと叩く感じならばどうだろうか?

 

「何だその構えは……ハッ、ならこれでどうだ!!」

 

 驚いた事に相手は正面から突進してきた。このまま黙って見ていれば相手から武器にぶつかってきて自爆する事になりそうだな。

 それはそれで見てみたい気もするが、手加減して削り取るという最初の計画を阻止されるのもシャクだ。

 慌てて武器を逸らすとそのまま懐に入られそうだな。そうなってしまうと相手も武器がすっ飛んで身軽になってるし、手加減を続けるのは厳しいかもしれない。

 ……じゃあ逆に考えよう。武器を捨てれば互角だと。

 召喚獣に武器を自由落下させ、相手の召喚獣をただの素手で迎え撃つ!

 

3ーA 夏川俊平 90 → 82点

 

「な、何だと!?」

「よし、会心の手加減だ!」

「ば、バカが! 自分から武器を捨てやがって。

 コイツは俺が貰っていくぜ!」

「ふむ……別に構わんぞ。その点数でまともに振れるかは知らんが」

「グッ……武器なんざ要らねぇよ! 殴り倒してやる!!」

 

 手加減にもようやく慣れてきた。

 後は少しずつ削っていくだけ。目指せ1点ダメージ!

 

 

 

 

 ……数分後……

 

[フィールド:物理]

 

3ーA 常村勇作 Dead

3ーA 夏川俊平 2 → 1点

 

2ーF 空凪 剣 400 → 375点

2ーF 吉井明久  59点

 

 手加減を意識していたから完全に無傷とはいかなかったが……終わってみれば圧倒的だったな。明久なんか結局被弾ゼロだったし。

 最後の最後で何とか1点ダメージを叩き出せて非常に満足だ。

 

「無様だな。良い眺めだ」

「テメェら……Fクラスの分際でこんな……!

 チクショウ! サッサと止めを刺しやがれ!!」

「だってさ剣。派手に一発かましてやってよ!」

「派手に……か。まぁ、それには完全に同意だ」

「うんうん。じゃあやっちゃって。僕はモヒカンの方に止めを刺したし……あれ、剣? どうして僕の召喚獣を掴んでるの?」

「そぉい」

 

 回避が得意な明久であっても捕まれた状態からの投げ技を回避するのは不可能だった。点差もあるし。

 

「ちょっ、突然何するの!?」

「やるな明久。ダメージゼロとは。綺麗な受け身だった」

「そんな事はどうでも良いよ。剣がやらないなら僕が止めを刺して……」

「残念ながらさっきの投げ飛ばしで場外に行った。貴様はリタイヤだ。

 そして僕も降参する。いや~、負けた負けた」

 

 流石は三年生の先輩たちだなー。強かったなー。勝てなかったやー。

 

「ど、どういうつもりだ! 情けでもかけたつもりか!?」

「え? うん。

 だって、普通に倒すよりその方がダメージ大きそうだろ?」

「へ、へへ……それでテメェら2年の勝利を逃してどうするんだ!

 このチェックポイントまで来れるような骨のあるやつは2年にはもう居ないだろ!」

「……ちょっと前だったら確かにそうだったな。

 しかしな、何のために僕が小暮先輩と交渉して組み換えを禁止させたと思ってるんだ。

 僕と明久であればあんな仕掛けは力技でどうとでもなったよ」

 

 例えば全力で走り回って、その際に仕方なくカメラを思いっきり振りながら相手の目を攪乱させ、その隙に通過する……とか。

 そういう手っ取り早い方法を使わずにわざわざ交渉したのは、後続の為だ。

 時間ピッタリだったな。ほら……聞こえるだろ? 足音が。

 僕たちが通った道を辿って最短ルートで2人の生徒がやってくる。

 どちらも女子だが、この程度で悲鳴を上げるようなやわな存在じゃない。

 

「お待たせ。よくここまで長引かせてくれたわね。感謝するわ」

「それじゃ、剣くん、吉井くん、最後の見せ場、有り難く貰うネ」

 

 片方は、昨日の夜にこの肝試しの存在を知ってようやく戻ってきた女子生徒。

 

「2年Bクラス、御空零」

 

 もう片方は、パートナーがかなり特殊な攻撃を受けてダウンしたが、悲鳴等は一切発していなかった為に失格を免れた女子生徒。

 

「2年Aクラス、工藤愛子」

 

「「試験召喚勝負を挑みます! 試獣召喚(サモン)!!」」

 

 

[フィールド:物理]

 

2ーB 御空 零 663点

2ーA 工藤愛子 368点

 

 

「なん……だと……!?」

「合計点数で言ったらなんと1031倍だな。頑張って奇跡を起こしてみせたまえ。

 ……まぁ、まず無理だと思うがな」

 

 その後の結果は……語るまでもない。

 2年生の、勝利だ。







「以上、最終チェックポイント終了!
 いや~、やっと出番が貰えたわ」

「今回は長かったな……良い切り時が分からなかったから一気に書き上げたそうだ。
 決着自体はリメイク前と大体同じだな」

「原作だと工藤さんは既に失格になってるけど、私たちの世界だと失格になってないのよね。
 原作では大きな音全般がアウトだけど、こっちでは大きな『声』に限定してるから」

「原作の表記だと『一定以上の大きさの音声』が対象だから実は原作でも大丈夫だった気もするが……康太の鼻血の噴射音で失格扱いになっちゃってるっぽいな。
 ……音全般がアウトになると3年の脅かし役がマイクの側で大声出すだけでアウトになる気がするんだが」

「流石にそれは穿ちすぎなのでは? せめて自分が発した音に限定するとか」

「床に地雷のようにブザーを仕込んだらその扱いはどうなるんだろうな?」

「仕掛けたのは3年だけど起動したのは2年……判断に凄く苦しみそうね」

「そういう問題の一切合切が鬱陶しかったんで本作では『自身が発した声』に限定した訳だな。
 その結果工藤が生き残った。後は流れで最後に貴様のパートナーになった訳だな」

「工藤さん居なかったら誰と組んでたのかしらね私は」

「……さぁなぁ」


「それじゃ、また明日会いましょう」

「またな」
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