……翌日 朝……
「……これで、お願いします」
いつものように早朝に補充試験を行う。
今日は補充期間で戦争はできないからAクラスとの決戦は明日になる予定だ。
万全の状態で挑む事を考えると、今の補充試験が実質最後の補充になるか。
「問題なさそうだな?」
「ああ雄二。完璧に問題ない。
まぁ、欲を言えば完全に補充し終えた状態で挑みたかったが……まぁ、その為だけに何日も待つのは非効率だからな」
「そうだな……まぁ、何とかなるだろう。と言うか何とかしてくれ」
「ああ。善処する」
「微妙に不安になる返答だな」
「……で、雄二。Cクラスはどうするんだ?
このままだと攻め込まれそうだが」
「安心しろ。対策はちゃんと考えてある。
秀吉が来たら説明し……」
「ワシがどうかしたのかのぅ?」
何故か都合の良いタイミングで秀吉がやってきた。
話が早くて助かるな。
「秀吉、早いな」
「部活の朝練があるから毎日この時間には学校に来ておる。
今日はちょっと早く切り上げてきただけじゃ」
「そういうもんか」
「そういうお主らこそ早いのぅ。確かお主らは帰宅部じゃろう?」
「ああ。帰宅部だ。
帰宅の速さを競ってコンマ1秒台に一喜一憂する部活、そう、帰宅部だ」
「堂々と嘘を言うでない!」
「おいお前たち、話が進まないから一旦落ち着いてくれ」
「う~む、そうじゃな」
「チッ、サーセン」
「……我慢、我慢だ俺っ!
……コホン。それじゃ、対Cクラスの作戦を発表する」
「わ~、パチパチ~」
「そこうるさい。
ではまず、秀吉にはコレを着てもらう」
「お主、どこからそんなものを……」
雄二がどこからか取り出したのは文月学園の女子制服(2着目)だ。
雄二の奴、女子制服をそんなに持ってるなんて……心が病んでしまっているのだろうか?
「……まぁ、出所は問わんでおこう。
ワシが着るのは別に構わぬが、何をする気じゃ?」
「いや、そこは構っとけよ。男だろお前」
「女装も演劇部ではたまにやるからのぅ」
演劇部ってそういう部活だっただろうか?
いや、秀吉が秀吉なだけか。
「秀吉にはコレを着て、Cクラスを挑発してもらう。
双子の姉の木下優子としてな」
「なるほど。大体理解したのじゃ。
宣戦布告はしてはならぬのじゃな?」
「その通りだ。よく分かってるじゃないか」
もし秀吉が宣戦布告したらどういう扱いになるんだ?
『AクラスがCクラスに戦争を仕掛けます』という文言であれば……他クラスが勝手に言っただけだから無効。
主語を省略して『Cクラスに戦争を以下略』であれば……Fクラスは現在補充期間中だからやっぱり無効。
目的としてはCクラスはどこかと戦争して、敗北してもらう事だ。
戦争で負けたクラスは宣戦布告の権利が3ヶ月ほど剥奪される。負けた時に即奪い返そうとして泥沼になる事への対策だな。
だから、宣戦布告をCクラスからAクラスにしてもらうのが目標となる。
「しかし、そう都合良く行くのか?
冷静に考えれば勝ち目の薄い戦いを挑ませるなんてかなり厳しいと思うんだが」
「そこは秀吉の手腕にお任せだ。
お前ならやれるだろう?」
「責任重大じゃな……最善を尽くそう」
「ああ、頼んだぞ。だが、気負い過ぎるな。
失敗したら失敗したでまた別の手を考える」
今から考えるのか。果たして間に合うんだろうか?
……まぁ、言わないでおこう。秀吉に不安を与えたくないし。
「……Cクラスに対しても、Bクラスに対しても行動を起こすまでまだ時間があるか。
お前たち、茶でも飲むか?」
「茶だと? わざわざパシらせてまで飲みたくはないぞ?」
「安心しろ。ここをこうして……セイッ!」
卓袱台をちょっとズラして、畳を勢いよく踏み抜く。
すると忍者屋敷のように畳がくるりと跳ね上がり、中からポットと茶葉が出てきた。
「……お前、いつの間にこんな物を?」
「そんな細かい事はどうでもいいだろう」
「勝手に床下を改造して怒られぬのじゃろうか?」
「この程度で怒るくらいならまずFクラスの環境に対して僕達が怒るべきだな」
「いや、コレの場合は『健康被害』みたいな分かりにくい被害と違って分かりやすく怪我しそうな仕掛けなんだが……」
「卓袱台を動かさない限りはほぼ開かないようになっている。だから問題ない。多分」
「……まぁ、いいか。それじゃあお茶を貰おう」
「ああ。緑茶と紅茶、どっちがいい?」
「選べるのかよ。無駄に凝ってるな……」
そんな感じでしばらく時は過ぎて行った。
そしてしばらくして、雄二が腰を上げた。
「よし、じゃあそろそろ動くか。
秀吉と剣は俺と一緒にCクラスだ。
Bクラスの方は……明久と康太、頼んだ」
「えっ、僕とムッツリーニだけで大丈夫かなぁ……」
「向こうのBクラス副代表には全部しっかりと伝えてあるから問題ない」
やるべき事は雄二が既に指示してあるから問題ない。
あの副代表ならなおさらだろう。
「坂本ー、ウチらは?」
「待機だ。戦争をおっぱじめるわけじゃないからな。人手は要らん。
消耗した科目があるなら適当に補充しておいてくれ」
「りょーかい。何するか知らないけど、頼んだわよ」
それじゃ、始めるとしようか。
……Cクラス前……
「じゃ、頼んだぞ秀吉」
「うむ」
女装して髪型も微妙に変えた秀吉がCクラスの扉を開け放ち、そして堂々と怒鳴りつけた。
『静かにしなさいこの薄汚い豚ども!!』
……おい秀吉、これは演技なんだよな?
木下優子は優等生を演じる猫かぶりだが、その本性はここまで酷くはないはずだぞ?
『な、何よアンタ!』
『口を開かないで! 豚臭い!!』
確かに非常に強力な挑発だが……ここまで強すぎると逆に本物か疑われ……
『あ、アンタ、Aクラスの木下優子ね!? ちょっと点数が良いからって調子に乗ってるんじゃないわよ!!』
……疑われることなくアッサリと騙されてくれた。チョロい。
「なぁ雄二」
「ん?」
「Cクラス代表ってこんなチョロかったのか」
「……らしいな」
『私はね、こんな醜くて薄汚いあなた達が同じ校内に居るってだけで我慢ならないの!
あなた達なんて豚小屋で十分だわ!!』
『何ですって!? 言うに事欠いて、私たちにはFクラスがお似合いですって!?』
おい小山、Fクラスは豚小屋ではないぞ? 流石に豚小屋よりはマシ……あれ? マシだよな?
『手が穢れてしまうから本当は嫌だけど、この私が直々にあなた達に相応しい教室に送ってあげるわ。感謝しなさい。
丁度試召戦争の準備もしてるみたいだし、近いうちに始末してあげるわ!』
そして再び扉が開かれて秀吉が帰ってきた。
「ふぅ……こんなもんかのぅ」
『Fクラスなんかにかまってなんていられないわ!! Aクラス戦の準備を始めるわよ!!!』
「……大成功のようだ。お疲れさん」
「そんじゃ、バレないうちに撤収するぞ」
「お、おかしい。私の出番がカットされている」
「ん? ああ、そうだな。リメイク前だと僕がお前の所に寄ってたからな。
今回は明久と康太が代わりに行っている」
「って事は、次回は吉井くん視点で私の出番になるわね!!」
「どうかなぁ……やることも根本を女装させてAクラスに喧嘩売るだけだろ?
カットだな」
「そ、そんなっ!! そうなるともう私の出番無いじゃん!!」
「まぁ……そうだな。我慢しろ」
「空凪くんのバカヤロー!」
「文句なら駄作者に言ってくれ」
「……はぁ、
それじゃ、次回もお楽しみに!」