続けて2回戦だ。
科目選択権を使う奴はもう決まってるからな。僕が出る事になる。
運良く戦える科目である事を祈るだけだな。
「これより第2回戦を始めます。科目選択権はAクラスです。
互いの代表者は前に出てきてください!」
「はいはいっと」
サッサと前の方に出る。
さて、お相手は?
「へぇ~、キミが相手なんだね。えっと、何日振りだっけ?」
「数日振りなのは確かだ。工藤愛子だったな?」
「名前、ちゃんと覚えててくれたんだネ。もしかして、ボクに気があるのかな?」
「……これは弁論による喧嘩を売られていると解釈して良いのか?
戦争が終わった後にしてほしいんだが」
「じょ、冗談だよ。も~、面白くないなぁ……」
「だったら変なちょっかいをかけるな。
で、科目は何にするんだ?」
「保健体育でお願いするよ」
「……珍しいな。Aクラスは実技科目をそこまで重要視していないと思っていたが」
「確かに肌に合わないって人は結構居るみたいだネ。
と言うか、この学校全体がセンター試験を意識してるから実技科目が得意って人はAクラスじゃなくてもあんまり居ないんじゃないカナ」
「確かに、そうかもな。
その上、貴様の得意科目なのであれば非常に有効な手だと言えるな」
「うん。それに、ボクの場合はペーパーテストも勿論得意だけど……実技も得意だから♪」
「……筋肉の付き方からして、水泳か何かか?」
「うわっ、そんな事まで分かっちゃうの!? 凄いね……
でも、それだけじゃないヨ。ボクが得意なのは保健の実技だから」
「……言いたい事は何となく察したんだが……その上で1つ、質問がある」
「何カナ?」
「……それらの実技の知識は果たしてテストの点に影響があるのか?」
「…………えっ?」
何だかいたたまれない空気が流れる。
まぁ、いいや。サッサとケリを付けよう。
「えっと、保体だったな? 高橋先生、承認お願いします」
「分かりました。承認します!」
「ふ、フン! ボクの点数を見てから後悔しても遅いよ!
「それはこちらの台詞だ、
[フィールド:保健体育]
Aクラス 工藤愛子 446点
Fクラス 空凪 剣 400点
「……えっ、何その点数」
「実技科目が選ばれる確率は低いと踏んでいたんだが、それでも一応やっておいて良かった。
良かった。これなら確実に勝てる」
新しい学年になってから、僕は毎日1科目ずつ補充試験を受けておいた。
保健体育は昨日くじ引きで決めた科目だ。運が良かったよ。
そして、もう一つ勝てる要因がある。
それは、いつもは補充試験に使っていた『集中』を戦闘に回せるという事だ。
というわけで、眼帯を取ってポケットにねじ込んだ。
「さぁ、始めようか」
「そ、そうだね! ってアレ? 空凪くんって左右の目の色が違うんだね」
「ん? ああ、オッドアイというやつらしいな」
「へ~、何かカッコいいね」
「ほぅ? 不気味だと言われる事の方が多いんだが、これの良さが分かるか。だからと言って手加減はせんぞ」
「ちぇっ。それじゃ、行くよ!」
さて戦闘開始だが……カットでいいな。
だって、工藤の召喚獣って斧にセーラー服とかいう破壊力特化の装備なんだもん。
その上、工藤は転校生だ。1年の時の召喚実習すら行っていない。召喚獣の操作に慣れておらず動きは直線的だ。
そういうわけで……召喚獣の軌道上にナイフを放り投げるだけの簡単な作業で完封できた。
[フィールド:保健体育]
Aクラス 工藤愛子 446点 → Dead
Fクラス 空凪 剣 400点 → 390点
「ひ、ヒドいよ……何もできずに終わったよ……」
「これが、観察処分者の力だ」
そう言い放ちながらそっと眼帯を戻す。
ふぅ、少し疲れたな。
「それじゃ、僕は貴様に対する命令権を得たわけだが……」
「どんな命令をされちゃうのカナ? すっごく不安だな~」
「お前、意外と元気そうだな。
とりあえず……保留でいいか? 良いのが思いつかん」
「……何か肩透かしを喰らった気分だよ。
まあいいよ。キミなら大丈夫だと思うけど、常識の範囲内で頼むよ」
「ああ。程々のものにしておくよ」
何はともあれ、これで2回戦終了。リーチがかかった。
次で決まってくれれば楽だが……どうなるかな。
「これより第3回戦を始めます。科目選択権はFクラスです。
互いの代表者は前に出てきてください!」
こちらの2回目の科目選択だ。
うちにはバカみたいにある科目に特化した奴が居るんでな。議論の余地なくそいつに決まったよ。
「…………」
奴の保健体育に対する情熱は留まる所を知らない。それこそ、Aクラストップの霧島すら上回るレベルだ。
「まぁそりゃそう来るわよねぇ……科目選択権使ったのは結果的に失敗だったわね。
……仕方ないか。Aクラスからは私が出ます!」
Aクラスから名乗り出てきたのはうちの姉だ。
その実力は……まぁ、見てもらった方が早いか。
「土屋くん、科目は何にしますか?」
「…………保健体育」
「分かりました。では承認します」
「…………
「
[フィールド:保健体育]
Fクラス 土屋康太 572点
Aクラス 空凪 光 428点
マイナー科目であっても当然のように腕輪ラインを超えてくる天才。それが光だ。
しかしまぁ、一騎打ちかぁ……これはちょっと厳しいな。
康太の点数が399点だったらまだマシだったかもしれん。
何故なら……
「…………加速」
「甘いっ!」
「っ!?」
康太が腕輪を使おうとしたのだろう。あいつの能力は『加速』。速度はそのままエネルギーとなり、攻撃力は増す。上手くやれば一撃で仕留める事も可能だ。
だから、開幕で使って初見殺しを行うという選択肢は間違ってはいない。相手が腕輪持ちの光じゃなければな。
[フィールド:保健体育]
Fクラス 土屋康太 572点
Aクラス 空凪 光 428点
「やはりこうなるか……」
「剣、何か知ってるのか?」
「……この状況なら言っても構わないか。
光の腕輪の能力は……封印だ。
デフォルトの設定ではフィールドの敵全てを対象にし、腕輪の発動に合わせてその効果を無効化する。
コストは払い損になる上に一瞬だけ召喚獣がフリーズさせられる。
フリーズに関しては乱戦ならそこまで大きな要素ではないが……一騎打ちだと確実に追撃を喰らうな。今みたいに」
「おいおい、知ってるならどうして言わなかったんだ?」
「あいつとは契約しててな。試召戦争におけるお互いの能力を漏らさない……と。
だから僕の能力も相手には伝わってないしな」
「……なるほど、そういう事なら仕方ない」
……その後、康太は結局逆転できずじわじわと削られて敗北を喫した。
[フィールド:保健体育]
Fクラス 土屋康太 312点 → Dead
Aクラス 空凪 光 398点 → 121点
「…………負けたか」
「ふぅ、何とか勝てた。
えっと、命令権だけど……うちの兄さんと同じく保留にさせてもらうわ。特に思いつかないから」
「…………分かった」
これにて第3戦終了。
負けはしたものの依然リーチはかかったままだ。
「第4回戦を始めます。科目選択権はAクラスです。
互いの代表者は前に出てきてください!」
「んじゃ姫路、頼んだぞ」
「はいっ! 行ってきます!」
当然、こちらが出すのは姫路だ。まんべんなく強いからな。科目選択権は必要無いだろう。
……まぁ、家庭科とかを選ばれると面倒なんだが……姫路は料理ができないだけなんで決して0点ではないし、相手も実技はそんなに得意ではないからきっと大丈夫だろう。
「では、Aクラスからは僕が」
現れたのは、久保利光だ。同性愛者という噂があるが真偽は不明だ。
性癖はともかくその実力は本物。確か姫路とほぼ互角だったはずだ。
「科目は何にしますか?」
「総合科目でお願いします」
「えっ、良いんですか? 久保くんが得意な科目を選んだ方が得なんじゃ?」
「別に構わないさ。僕も姫路さんの苦手科目を把握しているわけじゃないから狙う事にあまり意味はない。
それに、君とは一度全力で勝負してみたかったんだ」
「……分かりました。それでは全力で挑ませてもらいます」
「では、承認します」
「「
[フィールド:総合科目]
Aクラス 久保利光 3997点
Fクラス 姫路瑞希 4409点
いつもと桁が違うが、それは総合科目だからだな。
総合科目は5教科の科目2つずつの点数の合計、つまり、10科目の点数の合計となる。
平均点換算だとそれぞれ約400点と441点か。僅差だな。
腕輪の条件も10倍の4000点だ。久保はギリギリ満たしていないようだな。
「まさか、姫路さんがここまで強くなっていたとは……」
「……この戦争は、ある人が私の為に始めてくれたそうです。それだけが理由じゃないみたいでしたけど、大きな理由の一つだそうです」
ふと明久に視線を向けると、顔を背けて唇を尖らせてふーふーやっている。
おい、口笛吹けてないぞ。
「だから、頑張れたんです。少しでも貢献する為に、勝つ為に!」
「それだけで点数をここまで上げられるのは流石は姫路さんと言うべきか……
でも、僕もアッサリと負ける気は無いよ。さっきからどうも点数が低い方ばっかり勝ってる。点数が全てじゃない。
この第4回戦も、勝ってみせよう!!」
「……行きます!」
「ああ!!」
お互いに全力だったんだろうな。力が入っていたんだろうな。それは決して悪い事じゃない。
悪い事じゃあないんだが……そのせいか、その決着は非常にアッサリとしたものだった。
[フィールド:総合科目]
Aクラス 久保利光 3997点 → Dead
Fクラス 姫路瑞希 4409点 → Dead
「……あ、あれ?」
「あ、相打ち……?」
お互いに力が入っていたから、全力で攻撃したから、お互いにほぼ同時に大ダメージを与えてお互いに昇天したようだ。
平均点換算で40点程度の差だもんな。まぁ、こういう事もあるか。
「何だか不完全燃焼だが……仕方あるまい」
「そ、そうですね……はぁ……」
「そう言えば、命令権についてだが……こういう時はお互いに無しという事で構わないかい?」
「そうですね。私も久保くんに命令したい事は無いのでそれで構いません」
予想外の結果だが、4回戦も終了だ。
現在の戦績は2勝1敗1分。
最低でも引き分けか。その場合どうするんだろう、これ。
雄二が勝てば問題は無いが……ふむ。
「リメイク前でもそうだったが、この辺で僕の目的は概ね達成できている」
「目的って何だっけ?」
「『評価されなかった才能の証明』
テストの点数に意味が無い事を示したかった」
「ああ、そう言えばそうだっけ。
でも、なんでまたそんな目的を立てたの」
「……さぁ、そんなのは忘れたな」
「……まあいいわ。
それでは、次回もお楽しみに!」