バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

26 / 183
25 瞬間最高得点者

 Aクラスとの試召戦争は引き分けに終わった。

 いや、まだ終わってはいないか。

 

「で、どうする気だ? 代表」

「全部お前に任せる、ちょっと休ませてくれ」

「へいへい。人遣いが荒いこって」

 

 再び前の方に歩み出る。向こうからは光が来ているようだ。

 

「さて、どうする?」

「まさか同点になるとは思ってなかったわ。この後の事なんて全く考えてないわよ」

「……とりあえず適当に候補を挙げてみるぞ。

 1、総力戦を行う

 2、引き分けにして和平交渉を行う

 3、延長戦を行う

 4、対談にてどちらかの勝利とする

 こんな所か」

「本当にとりあえず並べてるわね。

 まず、4は論外ね」

「だな」

 

 どちらも譲るわけがない。却下だな。

 

「1にしてくれたら私としては有難いけど、やっぱり論外ね」

「だな」

 

 雄二が戦死している今、1を選んだ瞬間に負ける。4の下位互換以外の何物でもない。

 

「となると、和平か延長戦だな。僕としては和平がオススメだが」

「そっちから喧嘩売ってきたくせに何言ってるのよ。

 延長戦以外有り得ないわ」

「……こちらは和平以外は有り得ない。平行線だな」

 

 こういう交渉ってのは難しいよな。例えば和平を強硬に主張すればするほど『延長戦の場合の対抗手段が無い』と大声で暴露しているようなものだ。

 

「……平行線なら仕方ないわね。手札を切りましょう。

 Cクラスの教室を見てきなさい」

「何? ……おい明久、頼めるか?」

「Cクラスを見てくるの? 見てくるって言われても……」

「とにかく行ってこい。ダメならその時考える」

「う、うん分かった」

 

 

  ……1分後……

 

 

「見てきたけど、特に何事も無かったよ?

 フツーのいつも通りな感じだった」

「……設備に関しては?」

「設備? 特に変な所は無かったと思うよ? ちょっと前に見たときと同じ感じの……あれ?」

「……そう来たか」

「ええ。Fクラスの真似をしてみたわ」

 

 こいつ、Cクラスに止めを刺さずに取引したな。

 延長戦の提案に従わないならCクラスが攻めてくる……と。

 延長戦を行うのとCクラス相手に戦うのでは実はリスクはあんまり変わらない気もするが……まあいいさ。

 

「……はぁ、仕方ない。延長戦、受けよう」

「そうこなくっちゃ」

「ただ、命令権に関しては除外させてくれ」

「そうね。私は別に構わないわ」

「それと、科目選択権くらいはくれ。そのくらいは別にいいだろ?」

「ん~……まあいいか。そのくらい。好きにしなさい」

 

 姉よ、最後の最後で油断したようだな。

 言質は取った。反撃開始だ!

 

「よし、高橋先生、聞いていましたね?」

「ええ。ではこれより、延長戦を始めます。科目選択権はFクラスです。

 互いの代表者は前に出てきてください」

 

 それが告げられると同時に光はAクラスの方に戻って行った。

 それに対して僕は……その場に留まりつづけた。

 

「あれ? 剣? 何やってるの? サッサと代表者を出して?」

「もう出ているぞ」

「……はっ?」

「だから、もう出ている。僕が代表者だ」

「…………はぁぁぁぁっっ!? いやいやいやいや、アンタはもう戦ったでしょうが!!」

「? それがどうかしたか?」

「どうかしたかって……いや、おかしいでしょ!」

「何もおかしくはないさ。

 そもそも、5人の代表を選抜して戦うルールなんだ。誰かが2回戦うのはある意味当然の事だ」

「いやいや、普通に考えたら新しい人を選ぶでしょう!」

「そんな普通、一体誰が考えた。少なくとも僕は6人目を選ぶだなんて一言も言ってないぞ?」

「ぐっ……あ~もう、完っ全に騙された!

 一体いつから狙ってたのよ!」

「最初から。雄二が負けた時からだ。

 延長戦で科目選択権を得る事だけを考えて話してたぞ」

「それであの流れになる!? ヒドすぎるでしょ!」

「僕の得意分野は偽装と看破なんでな。悪く思うな」

「仕方ない……こっちからは代表を出す。それでいいね?」

「当然の判断だな」

 

 さて、さっきの戦いで消耗しているであろう数学1で戦えばかなりの高確率で勝てるだろう。

 ただ、それよりももっと確実に勝てる方法がある。

 温存していた切り札、使わせてもらおう。

 

「それでは空凪くん。科目選択を」

「科目は……そうだな、物理。

 但し、フィールドを展開する必要はないです」

「と言いますと?」

「試験召喚戦争のルールでは召喚獣はあくまでもテストの点を使う手段に過ぎず、その本質はテストの点数を使った勝負。

 だから僕は、純粋なテストの点数による対決を求めます」

「……それだと勝ち目が無いように思えますが?」

「はい。だから更に条件を。

 補充試験の時間は最大1時間ですが……今回はその時間は5分とします」

「5分……ですか。分かりました。

 では問題用紙を取ってくるので少々お待ち下さい」

 

 

 

「それでは、物理のテスト対決、5分間勝負を始めます。

 では……始め!」

 

 高橋先生の合図と共に問題用紙をひっくり返す。

 当然、眼帯は先に外してある。

 5分だけ集中力を持続させるなんて、楽勝だ。

 

「……止め! 鉛筆を置きなさい」

 

 

 

 ただでさえ採点の速い高橋先生だが、合計10分の分量の採点なんで更に早く終わった。

 

「それでは、採点結果を発表します。

 Aクラス 霧島翔子 76点」

 

 霧島の素の点数が約400点だったとするなら1/5か。1/12時間のテストとしてどうなんだろうな、これは。

 で、肝心の僕の点数だが……

 

「Fクラス 空凪 剣 121点」

「っ!?」

「……代表が平均最高得点者であるのに対して、うちの兄さんは短時間の集中力なら群を抜いている瞬間最高得点者。

 この短時間のテストじゃ代表ですら勝てないか」

 

 まぁ、そういう事だな。科目選択権、と言うより勝負の選択権を得た時点で勝負は決まっていた。

 

「延長戦はFクラスの勝利です。よって、Aクラス対Fクラスの試召戦争はFクラスの勝利となります!」

 

 高橋先生が宣言する。それと同時にFクラスの連中が沸き立ち、Aクラスの連中は暗い顔をしている。

 そう、勝てた勝てたんだが……

 

「やったね剣! とうとうやったんだ!!」

「ああ。やった。やったんだが……

 ……ここに居る全員に宣言しておこう。設備の交換権は放棄する」

「…………えっ?」

 

「「「「はぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?」」」」







「というわけで、光の盲点を一点突破した僕の勝利だ」

「この点数は……例の換算式を使ってるのかしら?」

「ああ。アレを使ったらこの点数になったようだ」

 ※ リメイク前版で行った30分テストの換算より

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=78178&uid=39849

 お互いの素の点数を『1時間で400点』と『30分で400点』とし、5分間のテストを与えたらあんな感じの点数になった。

「まぁ、この計算式って正答率とか持久力は完全に無視された計算なんだけどな」

「そこまで厳密にしたら流石に数式化するのは厳しいと思う」

「一応、厳密にする案はあったらしい。
 霧島ならほぼ完全に持続するとか、島田は国語だと極端に疲労しやすいとか。
 ただ、作成の手間がとんでもない事になるんで断念したようだ」

「そりゃそうでしょうねぇ……」

「まぁ、厳密にし過ぎると首絞めるだけだしな。
 テストの点なんてフィーリングで十分だな」


「では、明日もお楽しみに!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。