バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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26 勝ち取った権利

 『設備交換権は放棄する』

 

 僕のその一言でFクラスの連中が騒ぎ出した。

 

『おいテメェどういうことだ!!』

『何のつもりだこの野郎!!』

『紐無しバンジーとグロテスク、どっちが良い!!』

『濃硫酸だ!! 目と耳と鼻に濃硫酸だ!!」

『シュミはベンキョウ! ソンケイするヒトはニノミヤキンジロウ!!』

 

「落ち着け落ち着け。最後の奴は特に。

 まぁ、順を追って説明してやる。結論から言うと、Aクラスの設備を入手しても維持が不可能なんだ」

「……どゆこと?」

「明久、少しは自分で考えろ。

 僕達がAクラスを取ったらどうなると思う?」

「嬉しい!」

「……訊き方が悪かった。他のクラスはどう動く?

 Fクラスに勝つだけでAクラスの設備が手に入るんだぞ?」

「そりゃ勿論、戦争を仕掛けてくるだろうね」

「よく分かってるじゃないか。だが、現状では防衛はほぼ不可能だ。

 DクラスやEクラスならどうとでもなるだろうが、CクラスやBクラス相手だとかなり厳しい。

 姫路が使い物にならないのが痛いな」

「えっ、私ですか……?」

「ああ、お前の今の総合科目の点数は0点だろ? 補充に何日かかるんだ?

 仮に2日でなんとかしたとしてもかなり疲れてるだろ。姫路抜きで防衛を行うのは分が悪い」

「私のせいですか……ごめんなさい」

「いや、貴様の責任ではない。

 久保相手に無傷で勝ってくれてたならこんな問題は発生していないが、それは流石に無茶というものだ。

 総合科目勝負を挑んできた久保が有能だっただけであり貴様が無能という話ではない」

「そうですか? 分かりました」

「……これは僕は褒められているのだろうか?」

「ああ。貴様の戦闘の結果、Aクラスが守られる。AクラスのMVPを挙げるなら間違いなく貴様だ。

 意図してなかったとしてもな」

「……そうか、そういう事もあるのか。なるほど」

「というわけで、Aクラスの設備は放棄する。ついでに3ヶ月間の停戦も加えておこう。

 その代わり、何らかの条件を突きつけたいと思うんだが……どうしたものかなぁ」

 

 Aクラスに勝つための条件をAクラスに突きつけるのは流石に不可能か。

 と言うかそもそも、僕の目的も雄二の目的も一応勝利した事で概ね達成している。できれば完全勝利が望ましいが……無理にまた勝つ必要はあんまり無い。

 ……であれば、こんなのはどうだろうか?

 

「よし、学園長と交渉して振り分け試験の再試験でも頼むか」

「何? どういう事だ」

「Aクラスの連中がゴミ溜めに送られてやる気を失くす事による損害より、Aクラス生徒が1人増える出費の方が圧倒的に安いだろう。恐らくは通せるはずだ。

 この提案ならFクラスがほぼ全員納得してくれるだろう?」

「…………確かにな」

 

 Fクラスの連中が再試験を受けた所で再びFクラスになるだけだが……バレなければ何の問題も無い。

 

「じゃあ雄二、Fクラスの連中の説得は頼んだ。

 僕は学園長と交渉してくる」

「分かった。行ってこい!」

「という訳で高橋先生、学園長とアポ取ってください」

「分かりました。電話するので少々お待ちを。

 ……高橋です。はい、Fクラスの生徒が学園長と交渉したいと。

 ……はい……はい…………はい、分かりました。今から行きます。

 空凪くん、今から大丈夫だそうです」

「分かりました。お願いします」

 

 

 

 というわけで学園長室まで辿り着いた。

 高橋先生がドアをノックする。

 

『誰だい?』

「第二学年主任の高橋です」

『入んな』

 

 部屋の中に居るのは1人の老婆。この人こそが藤堂(とうどう)カヲル学園長だ。

 確か、教師と言うよりは試験召喚システムの研究者だったはずだ。

 

「アンタがアタシと交渉したいっていうFクラスの生徒かい?」

「はい、2年Fクラス副代表の空凪剣と申します」

「あたしは忙しいんだ。とっとと用件を言いなウスノロ」

 

 何て言い草だ。

 でも、貴重な時間を割いてもらっているのは確かだ。サクッと済ませよう。

 

「僕達、2年Fクラスは先ほどAクラスに勝利しました」

「ほぅ? バカな事やってると思ってたが本当に勝っちまったのかい」

「はい。しかし、良いんですか?

 このままだとAクラスの優等生たちがF教室とかいうゴミ溜めに送られますけど」

「フン、そういう学校だって事は承知の上で入ったはずさね。

 設備を防衛できなかったクラスの自業自得だよ!」

「理屈の上ではそうでしょうが、それだけで感情論まで押さえつけるのは不可能でしょう。

 罪に問われる事はなくても風評被害がエラい事になりますよ?」

「……何が言いたい、いや、何が目的だい? クソジャリ」

「Fクラスの連中の中から希望者を対象に振り分け試験の再試験をお願いしたいです」

「ふむ……なるほど。確かにそっちの方が損害は抑えられそうだ。

 いいだろう。再試験、実施しようじゃないか。

 今週末の土日で構わないね?」

「はい。構いません。ありがとうございました。

 失礼します」

「もう来るんじゃないよ!」

 

 なんて言い草だろう。

 まあいい、目的は達成した。雄二の方も多分問題ないだろう。

 Fクラスのバカ供は『女子と一緒のクラスになれるチャンス』とか言っておけばどうとでもなるからな。

 

 

 

 というわけで場所は再びAクラス。

 

「学園長と話を付けてきた。良かったなお前ら。教室を失わなくて済むぞ」

「……一応礼を言っておくわ。ありがと、兄さん」

「まぁ、一応受け取っておくか。

 ところで、お前の持ってる命令権についてなんだが……」

「ああ、あったわねそんなの」

「僕のヤツと相殺でいいか?」

「ええ。問題ないわ」

「……そう言えば、命令権と言えば明久と霧島だが……2人の姿が見えないな。

 ついでに雄二と木下姉の姿も見えないが」

「ああ、うん。代表は、何か坂本くんに告白してた。そしてどっか行っちゃった」

「……この時間帯だとまだ授業が残ってると思うんだが」

「止める間もなく行っちゃったわ。

 別に皆勤賞を目指してるわけじゃないから良いんじゃない?」

「……そうか、で、明久は?」

「優子と一緒に保健室に行ったみたいね」

「……そうか。分かった」

 

 あいつの命令は『秀吉に謝れ』だったな。

 どうなることやら。

 

 

 

 

 

 

 突然だけど、今回はアタシの視点の話よ。

 え? 誰かって? アタシよ。木下優子よ。

 代表が何か勝手に作った命令権のせいで秀吉に謝らなきゃいけなくなったけど、気が重い。

 まぁ、アタシもちょっと、ちょっとだけやり過ぎたかもしれないけど、そもそも秀吉が悪いのよ!

 

「秀吉は保健室だったわよね」

「う、うん、そ、そのはずだよ」

 

 さっきから吉井くんの挙動がおかしい気がするけど……気にしないでおきましょう。

 サッサと謝って、それでこの戦争も終わりよ。

 

 

 保健室の扉を開けると秀吉がベッドに横たわっていた。

 こちらに気づくと上半身を起こしてこちらに視線を向けた。

 

「あ、姉上……」

「秀吉、えっと、その……」

 

 謝らなきゃいけないんだけど、何か釈然としない!

 ……負けたのはアタシのせい。アタシのせい。これくらいはやらないと……

 

「ご、ごめ……」

「すいませんでしたぁっっ!!!」

「…………はい?」

 

 アタシが謝ろうとしたら何か吉井くんが土下座してきた。どゆこと?

 

「よ、吉井くん? どうしたの一体」

「えっと、その、実は……木下さんとの勝負の後に剣から秀吉の所業を聞かされて……

 流石にこれはやり過ぎな気もするけど、木下さんの気持ちも分かったと言いうか、何というかその……

 えっと……何も知らずに謝らせようとしてすいませんでした!」

 

 ……吉井くん、本当に何も知らなかったのね。

 まったく、これだからバカは。

 

「……はぁ、それじゃ、アタシはどうすればいい?」

「え?」

「だって、君の命令は『秀吉に謝らせる事』でしょ? それが無いなら、何か別の事があるんじゃないの?」

 

 代表はさっき坂本くんに告白してたけど、理屈の上では同じ事ができるわね。

 このバカと、付き合う?

 テストの結果が全ての学園だって知ってて入ったわけだけど、ここまでとは聞いてないわよ。

 

 だけど、吉井くんはこんな事を言い出した。

 

「別の事? そんなの無いけど……」

「……えっ?」

「ああ、強いて言うなら僕の事を許してほしいかな。無神経な事を言っちゃったし」

「……それだけで良いの? 代表みたいに『付き合って欲しい』って言われても断れないけど」

「あっ、その発想は無かったよ。でも、別にいいや。

 無理矢理付き合うなんて、嫌だし可哀想じゃないか」

 

 ……何故だろう、その点ではうちの代表よりも吉井くんの方が人間できている気がしてきた。

 バカなのに。ただのバカなのに!

 

「……分かった。いいわ。許してあげる」

「ホント? ありがとう!」

「あと、秀吉……悪かったわね」

「なぬ!?」

「え、あれ、木下さん? 謝らなくても……」

「キミの命令とは別に、謝りたかったのよ。

 ちょっと、ほんのちょっとだけやり過ぎたから」

「ちょっと……かのぅ?」

「何か言ったかしら?」

「な、何でもないのじゃ!」

「そう。これで命令に関しても終わりね。

 それじゃ、アタシはAクラスに戻るわ」

「うん。じゃあね!」

 

 吉井明久……か。

 ただのバカだと思ってた、いや、実際にバカだけど……ちゃんと筋を通す所は通してるのね。

 謝るべき時にはしっかり謝ってくれたし、命令権の使い方に関しては関節技を極めて連行していた代表よりも真っ当な使い方をしていた。

 ……借りができたかしら。今度機会があれば返すとしましょうか。







「今更だが、木下姉の性格は原作寄り……と言うかアニメ寄りになっている」

「確かに、リメイク前ではもうちょっと丸かったわね」

「その理由は簡単。『この状態から攻略する方が、面白そうだから』との事だ」

「筆者さんの基準はそこなのね……」

「今のところ、攻略の進捗状況は前回より遅いな。
 この先どう発展していくか……非常に楽しみにだな」


「では、明日もお楽しみに!」
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