バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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01 問題の発端

「……今日はこんなもんね。

 皆、お疲れさま」

 

 Aクラス代表の霧島は雄二を追いかけ回しているようなので必然的にAクラスの副代表らしい光が指揮を取っている。

 まぁ、霧島の性格や性質は『皆を引っ張るリーダー』と言うよりも『冷静沈着な重鎮』といった感じなのでちゃんとこの場に居たとしても誰かに指揮を託しそうだが。

 

 帰りの支度を進めていると明久が声をかけてきた。

 

「ふ~、やっと終わった。

 剣~、帰ろ~」

「ああ、そうだな」

「ちょっと待って!!」

 

 明久と一緒に帰ろうとしたら島田が声を掛けてきた。

 

「ん? 何か用か? どっちにだ?」

「あ~、えっと……2人とも。

 ここじゃ話しにくいからちょっと場所を変えさせて」

「良かろう。明久も……どうせ家帰ってもゲームやるだけだから構わんな?」

「いや、構うけど……まぁいっか。どうしたの島田さん」

 

 

 

 とりあえず手近な場所……Fクラス教室に移動してから話をする事にした。

 まず告げられたのは、こんな事だった。

 

「えっと……結論から言わせてもらうと、瑞希が転校するかもしれないの」

「な、なんだって!? そ、そんなっ!!」

 

 ふぅむ、転校か。妥当な選択だと言えるな。

 姫路の親は正しい判断が下せる人間のようだ。

 

「くっ、こうなったらモヒカンになる前に秀吉に告白しないと!!」

「おい明久、僅か数秒の間にどういうロジックを働かせたんだ」

「って、違う違う!! どうして姫路さんが転校なんて!?」

「そうだよ、それが正しい反応だよ」

 

 納得するか疑問に思うかが正しい反応であって、可能性の話を断定的に妄想するのは決して正しい反応ではない。

 まぁそんな事はどうでもいい。一応理由を聞いておこうか。見当は付くが、僕の勘違いという事も十分有り得るからな。

 

「細かい話は聞いてないんだけど……どうやらこの教室の設備の問題みたい」

「やはり、そうか」

「え? どういう事?」

「……明久、深呼吸してから辺りを見回してみろ」

「すぅぅぅーーー……ゲホゲホッ!

 ああ、うん、そういう事か。よく分かったよ」

 

 あのバカの明久ですら咳き込む事があるレベルの環境の劣悪さだ。身体の弱い姫路が今日まで生きのびて居られるのが奇跡……と言うのは過言だが、親御さんが心配する気持ちはよく分かるな。

 

「という事は、貴様の目的は……」

「うん。清涼祭で頑張ってお金を稼げば設備の改善ができるはずでしょ?

 そして、今回の合同企画のお金の配分は貢献度で決まる。

 だったら霧島さんから逃げ回ってる坂本にもしっかりと働いてもらわないと!」

「だから仲の良い僕達に相談しに来た……と」

「うん。そういう事」

 

 学園祭の収益如きでどこまで設備を改善できるかは不明だが……何もしないよりはずっとマシだろうな。

 しかし、問題は設備だけではない。そこは理解できているのだろうか?

 

「島田、設備の改善は良いとして、他の問題の対策は練ってあるのか?

 僕の考えでは問題点はそれ含めて3つあるんだが」

「ええ勿論……って、3つ?」

「ど、どういう事?」

 

 この反応から察するに、島田は2つまでは考えてたんだろうな。

 そして明久は全く考えてなかったと。

 

「ああ、3つだ。

 1つ目は、当然『設備の問題』

 そして2つ目は『教室の問題』

 最後に『クラスメイトの問題』

 以上だ」

「……? 設備の問題と教室の問題って被ってない?」

「意味的には被ってるが、目的としては被ってない。

 仮にだが……今回の清涼祭で1億円くらいの収益を得たとしようか」

「そ、そんなにあったらゲーム買い放題じゃないか!」

「黙れバカ。んで、その収益を使って最高級の机やら椅子やら、あと畳やらも購入したとしよう。

 それで教室の環境、まともなものになるか?」

「…………確かに、不十分ね」

 

 島田がゆっくりと辺りを見回してからそう答えた。

 特に意図は無かったが、結果的にこの場所で会話して正解だったな。

 

「設備をまともにしても壁とかの建物そのものがまともじゃない。そういう事よね?」

「そういう事だ。コレは金の問題ではなく学園側をどう動かせばいいかという話になる」

「なるほど~。だから目的は被ってないって言ったんだね」

「でも、どうするの? 学園側を動かすって言われても……」

「いや、実は一番簡単だ。一番偉い奴に直訴すればいい。この場合は学園長だな」

「ええっ? そんな事で大丈夫なの?」

「ここは一応は教育期間だ。高校として運営していく以上は学問に支障を来さないレベルの設備を用意するのは義務と言って良い。

 設備に関しては自力で改善できるチャンスがあるから問題は無いが、自力でできない部分で学園側が動くのはむしろ当然の事だな」

 

 設備に差を付けるというのはこの学校の方針だ。

 しかしそれはあくまでも『学習意欲を向上させる為』であり、不便や不快を通り越して病気にでもなったら本末転倒だ。

 ただ、あの学園長だからな……すんなり行くかは少々疑問だ。

 

「設備と教室については分かったけど、3つ目の『クラスメイトの問題』ってどういう事?」

「明久、Fクラスの連中をどう思う?」

「バカだと思う」

「大正解だ。お前も入ってるが」

「ハハッ、冗談が上手いね」

「……まぁ、バカなお前でも分かるくらいFクラスの連中はバカだ。

 そんなバカに1年中囲まれてるんだぞ? うちの娘に悪い影響が~って考えるのが普通の親だ」

「えっ、そこまでかな……?」

「元々バカなお前だと感覚が麻痺してるかもしれんが、本来姫路は学年順位1桁の優等生だ。

 そういう連中からしてみれば『学力最低クラス』ってだけでとんでもなくマイナスのイメージになる」

 

 そしてこれが一番厄介な要因だ。

 他2つは物理的に解決できるが、『集団の悪評』なんてものを取り除くのはかなり厄介だ。

 Fクラスを全員鉄人に洗脳してもらえば解決するかもしれんが……いや、逆に不安が増すな。

 

「……そう言えば島田、お前はこっちの問題は気付いてたんじゃないか?」

「うん。そっちはちゃんと気付いてた……って言っても瑞希が言ってただけなんだけどね」

「対策も考えていたようだが……一体何をする気だ?」

「清涼祭は毎年『召喚大会』が開かれるの。

 そこで私と瑞希で活躍して両親を見返してやろうって計画よ」

「なるほど。その手があったか」

 

 うちの学園祭は外部の人間に一般公開される。そこでPRの為に毎年召喚獣による対戦が行われている。

 人気が無くなったら即座に瓦解するという危なっかしい性質を持つうちの学校はそういう事にかなり力を入れてるんで、そこで優勝できればかなりの効果が期待できるだろう。

 

「姫路なら頑張れば優勝も不可能ではないな。

 できれば姫路抜きのFクラス生のみで優勝するのが最善だが……流石に無茶か」

「皆バカばっかりだからね」

「なんたってFクラスだもんなぁ……」

 

 一番点数が低くて一番召喚獣が弱いクラスだ。

 Aクラス戦では科目を絞って戦えたが、今回の大会は1戦毎に科目が変わるルールらしい。厳しいな。

 

「まぁ、とりあえずそっちはそっちで頑張ってくれ。優勝に届かずとも良い成績を残せば効果はある」

「やる前から負ける話をしないで欲しいんだけど……」

「そりゃ済まなかったな。それじゃあこっちはこっちで動くとしよう。

 学園長に直訴……の前に雄二探しだな。クラス代表が居た方が良いだろう」

 

 というわけで、ひとまず雄二を探す事になった。

 そんなに時間はかからないだろう。サッサと見つけ出そう。






「原作やリメイク前だと島田の話を秀吉も聞いていたりするが、本作ではカットされてる。
 単に面倒くさかったらしい」

「まぁ確かに要らないと言えば要らないでしょうね……」

「原作では秀吉の協力が無いと雄二が協力してくれなかった可能性があるが……本作では僕が居るから割とどうとでもなる。
 そもそも雄二の協力も絶対条件ではないし」

「扱いが軽いわね……

 え~、それでは、次回もお楽しみに!」
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