「という訳で大会で絶対に優勝してくれ!」
「……その訳とやらが貴様の為なのか姫路の為なのかはあえて訊かんでおこう」
鉄人先生から程々に説教を受けた後、雄二と合流して『召喚大会で優勝しろ!』と言われた。
事情は概ね把握したが……キナ臭いな。
「しかし、どういう事だ?」
「そうだよ雄二! どういう事?」
「……どういう意図で言ったのかちょっと説明してくれ。まず明久から」
「え? うん」
明久と台詞は被ったが、その意図までは被ってない。
……そう信じたい。
「あのさ……雄二の方が僕より点数高いよね? 一応代表なんだし。
だったら僕が出るよりも雄二が出た方が良いんじゃないの?」
「何だそんな事か。理由は2つある。
まず1つ、認めるのは少々癪だが単純にお前の方が強い。
今回はタッグマッチなんで連携が肝になる。多少点数が高いよりも器用に動かせる事の方が重要だ」
「そ、そうなんだ……もう1つの理由は?」
「今回は合同企画だからな。代表と副代表が揃って居ないとなると『やる気が無い』と見なされて収益をカットされる危険がある」
「え~? それくらいは融通効かせてくれるんじゃないの? 仕方ないんだから」
「仕方ないってのは俺たちの事情であってAクラスは関係ない事だ。
それに、俺たちのどっちかが常に睨みを効かせておかないと突拍子もない行動を取る奴が間違いなく出てくるだろう。なんたってFクラスだからな」
「……凄く納得できたよ」
良かった。明久とはちゃんと被ってなかったようだ。
それじゃあ僕の意図を言うか。
「僕が気になったのは学園長の意図だ。はっきり言って異常だ」
「お前も感じたか。だったらやはり何か隠された意図があったんだろうな」
「えっ、どういう事?」
学園長の発言には色々と、それはもう色々と異常な所が存在する。
ペアチケットに関する噂はでっちあげの可能性すら有り得るな。事実でもおかしくはないが。
「この学校は色々と注目されてる試験校だから敵も多い。
出場者を狙った闇討ちとかも有り得そうだ。明久、注意しろよ」
「え、ええっ!? どういう事!?」
「そのままの意味だ。Fクラスの連中相手にいつもやってる事だから簡単だろう?」
「あ、そっか。簡単だね」
……とりあえず今できる事はこんなもんだな。
後は当日に頑張るとしよう。
そして一週間後……清涼祭が始まった。
「壮観だな。たかが学園祭の模擬店でここまでの人数が動員されているとは」
「AクラスFクラス合わせて100人だからね。勿論部活とか委員会とかで居ない人も居るけど。
……ところで、坂本くんはどうしたの? うちの代表も大会に出てるからアンタが出るのに文句は無いけど、両方居ないってのは文句を言わせてもらうわよ」
「ああ、安心しろ。もうすぐ帰って……きたようだ」
光と雑談していたら雄二が帰ってきた。
学園長の所で科目の指定をしてきたようだ。後で見せてもらうとしよう。
「うぃ~っす、店の準備はどうだ?」
「順調だ。唯一の難点はお客様をおもてなしする執事の数が少ない事か」
Fクラスのほぼ全ての男子は光の面接を受けてほぼアウトを喰らっているので厨房班に回されている。
そして生粋のAクラスの男子はそこまで数が多くない。うちの学年の男女比はほぼ半々だが、Fクラスに男子が集まってるんで他のクラスは女子率が高めになっている。
「まぁ、なるようになるだろう。メイドは潤沢だし」
「そうか。大会の方の準備はどうだ?」
「バッチリだ。明久も……お~い明久!」
厨房の方に呼びかける。
少し待つと明久が駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「もう間もなく召喚大会が始まる。準備は万端か?」
「うん、バッチリだよ! いつでも対戦相手を闇討ちできるよ!」
「やめい!!」
「……あれ? あ、そっか。あくまで警戒するだけだった! ついいつものクセで……」
……とりあえず準備はできているようだ。多分。
「雄二、トーナメント表は持ってこれたのか?」
「ああ。ババァが一応人数分くれた。
俺と、お前たちと、あと島田と姫路の分もついでにな」
「……そうか。そう言えばあいつらも出るんだったな。すっかり忘れてた」
「おいおい、一応優勝候補だぞ……?」
それは置いておいて、トーナメント表を確認する。
順調に勝ち上がった場合、試合数は決勝を含めて5回。シード枠は特に無いようだ。
順当に進めば3回戦で姫島コンビ、4回戦で霧島と木下姉のペアと当たりそうだ。
1回戦はよく分からん2ーBの女子2名のペア。2戦目は……まぁ、BクラスとCクラスの代表ペアになりそうだ。
決勝は…………う~む、見知った名前は無いな。Bクラスの御空とか、Aクラスのトップクラスの連中はさっき言ったペアを除いてどこにも名前は無い。
単純に考えるのであればAクラスのペア……3年生の『夏川』とかいうのと『常村』とかいうのが勝ち上がってくるかもな。
「とりあえず配ってやろう。
お~い、姫路~、島田~」
教室に向かって呼び掛けてみるが返事が無い。
どこ行ったんだあいつら?
そんな疑問には光が答えてくれた。
「あの2人なら今頃更衣室に居ると思うわ。アンタ達より試合時間が微妙に遅いんでそれまで仕事する気みたい」
科目入りのトーナメント表は今配られたが、科目抜きの仮トーナメント表は2~3日前にほぼ完成して出場者には配られている。
事前に特定の科目を集中的に上げさせるのを防ぐ為に科目だけは伏せられているが、試合時間の予定だけは告知してあるというわけだ。
さて、今は2人が居ないなら後でもいいか。科目を伝えるのは僕達が帰ってきてからでも十分間に合う。
「更衣室か。なるほど。
……姉さん、1つ頼みがある」
「……何?」
「姫路を、絶対に厨房に入れないように」
「……アンタが私を『姉さん』って呼んだ上に下手に出て頼み事をするって事は相当重要な事なんでしょうね。
分かったわ。ホールの仕事に専念させておく」
「助かる」
「別にいいわ。姫路さんだったらホール班の方が向いてそうだし」
……さて、そろそろ時間だ。行くとしよう。
「学園長とのやりとりに関する違和感は原作通りなんでカットだ。こんな序盤でネタバレする話でもないし」
「原作読んでない人が居るかもしれないんだけど……」
「流石に居ないだろう……と思うが、もしそういう人が居たら自分で考えてみるといい。
ヒントとしては……学園長の立場に立ってみてペアチケットを回収したい場合、どういう手段を用いるのが最善かを考えてみる事だな」
「今回はちょっとトーナメント関係で地味な変化があるわね」
「原作だと6試合が一応存在する設定だが、3戦目は相手が食中毒で不戦敗になるんで存在意義が皆無と言っても過言ではない。
だから面倒だから元から5試合って事にした」
「そして……決勝の相手がアッサリと特定されてるわね」
「原作では全トーナメント表の1/4しか確認できないから何とも言えんが……とりあえずAクラスペアはアイツら以外には居なかったとしてみた。
そしたら……まぁ、アッサリと」
「今後の会話内容が微妙に変わりそうね。微妙に」
「そうだな」
「では、次回もお楽しみに!」