第1回戦第1試合。最初の試合こそが僕達の試合だ。
相手はBクラスの女子コンビ。今後戦う相手に比べたら大したことは無いが、舐めてかかると負ける危険があるだろう。
「頑張ろうね、律子」
「ええ勿論、真由美」
仲が良さそうな2人だな。
Bクラスとの試召戦争では僕は後半しか前線に居なかったが……あの2人には見覚えが無いな。
序盤でアッサリやられたのか、それともあの底知れない副代表のように隠れていたのか……いや、無いか。
「ではこれより、召喚大会第1回戦第1試合を始めます」
立会い教師が開始を宣言する。最初は確か数学だったはずだ。
「2回戦までは一般公開もされていない予選のようなものなので緊張せずに頑張ってください。
それでは、承認します!」
「「「「
フィールドの展開と同時に4つの召喚コマンドが響く。
さて、まずは彼我の戦力の確認だ。
[フィールド:数学]
Fクラス 空凪 剣 400点
Fクラス 吉井明久 63点
Bクラス 岩下律子 179点
Bクラス 菊入真由美 163点
……まぁ、勝てるな。
「ちょ、ちょっと!? 何その点数!? Fクラスなのに!?」
「腕輪持ちって事!? そんなのどうやって戦えば良いのよ!!」
相手の方は慌てふためいているようだ。
僕の腕輪は基本的には腕輪持ちにしか効果を発揮しないから怯える必要は無いんだが……放っといた方が有利なんで放っておこう。
……ん? 腕輪の能力は何かって? 後で分かるさ。
「それでは、試合開始!」
「くっ、片方は腕輪持ちでももう片方は雑魚よ! 2対1なら勝機はある!」
「そ、そうね! まずは頭数を減らしましょう!」
「いや、あの、雑魚って……」
「事実だから仕方ないな」
そんな事より、一瞬で意思疎通を済ませた事を評価すべきだろう。
片方は明久に真っ直ぐ向かい、もう片方は僕に武器を突きつけて牽制しているようだ。
なかなかのチームワークだ。僕達が相手じゃなかったらそこそこ良い線まで行っただろうに。
……そう言えば、賞品って優勝者に対してだけなんだよな。準優勝とかでも何かくれればいいのに。あの学園長じゃ無理か。
「ちょっと! 剣!? ボーッとしてないで戦って!!」
「おっと、スマン」
サッサと片付けるとしようか。
まずは僕の目の前で牽制した気になっている召喚獣を蹴散らすか。
召喚獣を一直線に走らせ、武器を振るう。
その程度の動きは当然想定されており、相手はバックステップで回避する。
そしてその回避に合わせてナイフを投げた。
Bクラス 菊入真由美 163点 → Dead
「んなっ!?」
「僕の射程は無制限だ。後ろに躱すのは失敗だったな」
さて、これで2対1だ。どうとでもなるな。
「そんなっ、真由美っ!」
「よそ見してるヒマは無いよ!」
「っっ!」
Bクラス 岩下律子 179点 → Dead
……とか考えている間に向こうも終わったようだ。
流石は明久だな。邪魔の入らない1対1であればこの程度は余裕か。
「勝者、空凪・吉井ペア!」
立会い教師が僕達の勝利を宣言して第1試合は終了した。
さっさと帰って仕事するとしようか。
僕と剣の活躍で第1回戦は難なく勝てた。
次回以降もこんな感じで上手く行くといいけど……とりあえずは模擬店の方の手伝いだね。
第1回戦の試合は沢山あるから次の試合まで時間はかなりある。
剣の妹の光さんにホールも厨房もやれとかって無茶振りされてるから仕事はいくらでもある。
「ただいま~」
意気揚々とAクラスの扉を開けて中に入る。
するとそこには……
「お、お帰りなさいませごちゅっ……って、よ、吉井くん!?」
……天使が居た。
「ごふぁっ!!」
「え、アレ? あの、だ、大丈夫ですか!?」
す、凄い破壊力だ。メイド服姿の姫路さんっ!
そう言えばここってメイド喫茶だったよ。正確にはメイド&執事喫茶だけど!
「おい明久、何してる。営業妨害になるからさっさと退け」
「あ、うん。そうだね……」
「姫路も頑張ってるようだな。その調子で頼んだぞ」
「は、はいっ! が、頑張ります!
……あ、そうだ! ちょっとお訊ねしたい事があったんです」
「何だ?」
「その……空凪くんと吉井くんは召喚大会に参加してるんですよね?」
「……ああ。そうだな」
「もしかしてですけど……優勝賞品が目的なんですか?」
う~ん、確かに優勝賞品が目的と言えば目的だね。
でも、学園長との取引をバラすわけにもいかない。剣はどう答えるんだろう?
「……当然だ。じゃなかったらこんな面倒な事誰がやるか」
「そ、そうですかね? いや、そうじゃなくて……
その……どなたと一緒に行く気ですか?」
姫路さんの質問は『ペアチケットをどう使うか』って事だね。
剣に特に恋人とかは居ないはずだ。居たらFクラスの皆が黙ってないし。
「どなた……? ああ、そういう事か、スマン。
僕の目的はそっちじゃない。腕輪の方だ」
「う、うでわ? そう言えばそんなものもありましたね」
「ああ。雄二の指示でな。
次の試召戦争に向けて使えそうなモンは回収しておきたいとさ」
「そうだったんですか……」
確かに雄二がいかにも言いそうな事だ。
そしてこの会話はすぐそこで何かの作業をしてる雄二にも聞こえている。口裏合わせも完璧だね。
「じゃあ吉井くんも同じ理由ですか」
「うん。そうだよ」
「それだったら……優勝賞品のチケットはどうするんですか?」
「うぇ!? えっと……」
や、ヤバいどうしよう。学園長に渡す予定ですなんて言ったら……色んな意味で大変な事になりそうだ。
僕はあんな妖怪ババァと結婚しようとするほど人生に絶望していない!!
そうやってうんうん唸ってたら剣が助け船を出してくれた。
「全く、察してやってくれよ。明久に具体的な名前を出させたら明久のエア彼女の設定が破綻するだろ」
ちょっと、剣?
僕は妄想で彼女を作らなきゃならないほど切羽詰まって無いよ!?
「そ、そうだったんですね……ごめんなさい、吉井くん」
「姫路さんも信じないで!! そんな可哀想な目で見ないで!!」
「えっ、違うんですか!?」
「違うよ!!」
「分かった分かった。そういう事にしておくよ。なぁ姫路」
「えっと……そ、そうですね……」
「ほら、まだ仕事があるんだろ。頑張ってこい」
「はいっ、行ってきます!」
何だか妙な誤解をされたまま、姫路さんとの会話は終わった。
「ちょっと!? 剣!? どういう事!?」
「困っていたようだから助け船を出してみたんだが……余計だったか?」
「いや、困ってはいたけど、もっとやりようがあったんじゃないの!?」
「ハッ、貴様はそんな事も分からんのか」
「ど、どういう事?」
「……ああした方が面白そうに決まってるだろう」
「剣ぃぃぃぃぃ!!!」
その後、剣に襲撃を試みたけど光さんに『うるさい!』って殴られた。
見た目は結構華奢なのに、意外と効いたよ。
「試合の方はあっさり片付けて、後半では女子とのイベントだったわね。
……そう言えばメイド喫茶だったわね、あそこ」
「僕視点だと女子の服装なんてほぼ全く気にしてなかったからな。
リメイク前だと放置されていたが、今回は明久視点を入れる事で回収してみた。
本当なら島田と秀吉も描写するつもりだったようだが……姫路との会話が長くなったんで中止したようだ」
「……まさかとは思うけど、秀吉くんの服装って……」
「当然、執事服だ。光は基本的に秀吉を男として扱ってるからな」
「……何か、ホッとしたわ。
では、次回もお楽しみに!」