バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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05 クレーマー撃退劇

『オイゴラァ! どうなってんだこの店はよぉ!!』

 

 僕が厨房に居ると店の方から怒鳴り声が聞こえてきた。

 全く、ホール班が何かやらかしたか? まぁ僕以外にも指揮を取れる奴は居るはずだからそいつらに丸投げ……

 

『このケーキクソマズいんだよ! 料理人を出しやがれ料理人を!!』

 

 ……僕が見てる限りでは調理に問題は無かったはずだ。

 明久と康太もしっかり見ているから見落としはまず有り得ない。

 悪評をでっち上げるタイプの悪質なクレーマーか?

 

「お~い副代表。お前さんの妹が呼んでるぞ」

「ん? 分かった。すぐ行く」

 

 悪質なクレーマー対策か、それとも全く関係ない話か、行けば分かるか。

 

 

 

 

 

 と、ここでオレ視点に変えさせてもらおう。

 何故かって? オレ視点じゃないとツッコミが追いつかなかったからだよ!!

 ……さて、話を戻そう。副代表の妹さんから副代表を呼ぶように頼まれて、せっかくだから何をするのかを見物してる最中だ。

 

「来てやったぞ妹よ」

「兄さん、さっきの声聞こえた?」

「ああ。バッチリな」

「穏便にブチのめしたいんだけど、何か良い案ある?」

 

 おい、矛盾してませんかねそれ。

 って言うか兄が兄なら妹も妹だな!!

 

「ふむ、無いわけではないぞ」

「へ~、言ってみるものね。どうするの?」

「演劇部の部長を呼んでくれ。小道具をいくつか借りたい。

 あと、お前の事だから普通の包丁だけじゃなくて包丁っぽくない包丁も持ってきてるだろ? それも貸してくれ」

「……なるほど、大体把握したわ」

 

 そう言えば調理に使ってる包丁はほぼ全て妹さんの私物だって誰かが言ってたな。

 いや、それより包丁っぽくない包丁って何だよ!!

 

「秀吉くーん」

「どうかしたかのぅ?」

「大至急部長とコンタクト繋いで。詳しくは兄さんから聞いて。

 私は包丁取ってくるから。じゃっ!」

「なぬっ? ……剣よ、どういう事じゃ?」

「あいつめ、せっかく機会を作ってやったのに。

 まあいい。部長の所に案内してくれ」

「??? 分かったのじゃ」

 

 そう言えば木下は演劇部の部員だったか。

 演劇……穏便にブチのめす方法の察しは何となく付いたが包丁がそれとどう関わってくるんだ?

 

 

 

   ……そして数分後……

 

 

「よし、準備完了だな」

「完了したのはいいけどさ……何でコレまで着いてきたの?」

 

 副代表と木下が連れて帰ってきたのは3年の先輩だった。恐らくは演劇部の部長だろう。

 

「フハハハハ! 我らが部活の名誉部員たる空凪剣が劇をやるのだからな!

 この部長たる俺様が観ずして誰が観るというのだ!!」

「……今日はこういうキャラなのね。相変わらずウザい」

「うむ、こういう妙な所と妙な台本を書く癖さえ無ければ優秀な先輩なんじゃがのぅ……」

「と言うか、僕はいつから名誉部員になったんだ」

「無論、あの台本を読んだ時からだ!!」

「…………サッサと片付けよう」

 

 どうやら副代表も妹さんも部長さんと知り合いだったらしいな。

 副代表は衣装と刀を手に更衣室に向かって……って、刀!?

 い、いや、芝居用の小道具だろう。きっと。

 

 

 そしてしばらくして、教室に副代表……らしき人物が入ってきた。

 何かこう……素人がイメージする『幕末の藩士』みたいな着物を着て、顔には何故か戦隊ヒーロー物のお面を被っている不審人物が入ってきた。

 こんな奇抜な格好を素でするような奴がこの世界に居るとは信じがたいので恐らくは演劇中の副代表だろう。多分。

 

「……お帰りなさいませ、ご主人様」

『うむ、ご苦労』

「……空いている席へご案内します」

 

 Aクラス代表の霧島さんが眉1つ動かさずに丁寧に接客をしている。シュールだ。

 例のクレーマーの近くの席は丁度空いている……と言うよりクレーマーがうるさかったから避けて案内してたのでしっかりと空いている。

 

「……ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さい」

『待たれよ。この店のお勧めは何かな?』

「……愛情たっぷりふわふわシフォンケーキプレミアムになります」

『カッカッカッ、小癪な。良かろう、1つ貰おう!!』

 

 あの代表、さり気なく一番高いメニュー勧めたな。

 本人が考えたのか、それとも誰かの入れ知恵だろうか?

 

 少し待つと豪華に飾り付けられたケーキが運ばれてきた。

 だが店で働いている側のオレは知っている。アレは使いまわしの効く周りの食器や飾り付けが豪華なだけであってケーキ自体は安いシフォンケーキと何ら変わらないという事を。

 雰囲気の効果で多少は美味しく感じたりもするんだろうが……闇の深い店だな。

 ちなみに、一応メニューの隅っこの方に『ケーキ自体は変わりません』と注意書きがある。詐欺にはならないはずだから安心してくれ。

 

「……お待たせしました、ご主人様」

『待ちわびたぞ! さて、頂きます』

 

 丁寧な食前の挨拶をしてからケーキを口へと運ぶ。

 お面を被っててどうやって食べるのかと思っていたら口の部分がスライドして開いた。無駄に高性能なお面だな。

 ケーキの欠片を口に含み、しばらく咀嚼していたと思ったら突然机を強く叩いて叫び出した。

 

『これを作ったシェフを呼べい!!』

「……かしこまりましたご主人様。少々お待ち下さい」

 

 何かどっかの美食家みたいな事を言い出した。

 シェフか……誰を呼ぶ気だ?

 

「ほら、そこのアンタ、呼ばれてるわよ」

「……えっ、お、オレか!?」

「勿論よ。さっきからヒマそうにしてたんだから余裕あるでしょ。シェフって体で行ってきなさい」

「いや、オレは台本とか貰ってないんだけど……」

「そんなもん無いわよ。この劇って全部アドリブだから」

「うっそぉ!?」

 

 と言うことは霧島さんも完全にアドリブなんだろうか?

 事前に知ってるからこそ冷静に対処してるんだと思ってたんだが……何者だよ。あのヒト。

 

「ほら、適当にやってれば剣が合わせてくれるから」

「あ~、分かった分かった。オレもあの坊主頭とモヒカンのクレーマーにはイラついてたからな。

 直接ぶん殴るような度胸は無いけど、副代表が何かやってくれるんならスッキリする」

「その意気よ。ほら、行ってきて」

 

 と言う訳でオレも巻き込まれた。

 シェフっぽく、シェフっぽく……いや、所詮は学園祭の模擬店なんだからそこまで凝らなくていいだろう。

 

「お、お客様……じゃなかった、旦那様、いかがなさいましたか?」

『うむ、貴様がシェフか。素晴らしい出来だったぞ!

 このケーキが不味いなどと言い張る輩がもし居るならそ奴らは大嘘吐きかよっぽどの馬鹿舌に違い無い!

 カッカッカッカッ!!』

 

 こんな大声でそんな事を言ったら当然すぐ側に居るクレーマーの耳に入る。

 これですごすごと引き下がるような奴ならそもそもこんなに騒いでいない。と言う事はどうなるかと言うと……

 

「何だとテメェ! 俺たちをバカにしてやがんのか!!」

『む? 何だ貴様ら突然怒鳴って。カルシウム不足か?

 シェフよ、適当にカルシウムが多そうなメニューを持ってきて……』

「そういう事言ってんじゃねぇんだよこの仮面野郎!!」

 

 当然のように絡まれた。

 店の人間が(一応)客を追い出しにかかるのはちょっと問題だが、あくまでもただの客として入って、その客に絡んできたアホを撃退する事は問題にならない……っていう事なのか?

 いや、それだけだったらわざわざこんな大掛かりな事はしないか。

 

『やれやれ鬱陶しい奴らだ。

 おおかたこの店の評判に嫉妬して騒ぎを起こしてるだけのアホだろ? そんな事してるヒマがあるんなら自分の店でも手伝ってこい。この愚か者供め』

「んだと!? そんな下らねぇ事じゃねぇよ!!

 俺たちはなぁ……」

「おいっ! それ以上は止めとけ夏川!」

「……チッ」

 

 何だ? ただのバカじゃなくて何か目的があったのか?

 

『カッカッカッ、それっぽい理由をでっちあげようとして諦めたか。

 所詮は騒ぐ事しかできない能無しなら仕方ないか』

「テメェ、喧嘩売ってやがんのか!?」

『そー思うならそーなんじゃない?

 ねーねー、今どんな気持ち? ねぇどんな気持ちー?』

「……それはなぁ……こんな気持ちだよ!!」

 

 クレーマーのうちの片方、坊主頭が副代表に向かって拳を振りかぶった。

 このタイミングなら反撃しても正当防衛になりそうだな。そんな事を考えながら様子を見守り……

 ……クレーマーの拳が副代表のお面に突き刺さり……

 ……そして副代表がそのまま後ろに吹っ飛んだ。

 床に倒れた副代表はただの屍のようにピクリとも動かない。

 

 …………あれ?

 

「な、夏川、少しやりすぎたんじゃないか……?」

「くっ、逃げるぞ常村!!」

 

 クレーマー達は客たちを押しのけて逃げようとする。

 しかし、それが黙って見過ごされるはずもなく……

 

「ご主人様? どこへ行くつもりですか?」

 

 メイド服姿ですっごくにこやかな顔を浮かべる光さんが進路を塞いでいた。

 

「他のご主人様を傷つけるような悪いご主人様には愛の鉄拳が必要なようですね。

 さぁ、覚悟は宜しいでしょうか?」

「な、何だと? いいから退け!」

「訊くまでも無かったようですわね。では、参ります」

 

 一度深呼吸をし、そして吐く。

 それが終わった直後……光さんの腕が霞んだかと思ったら2人のクレーマーは吹っ飛ばされていた。

 あれ、おかしいな。ちょっと寝てただろうか?

 

「さて、愛の指導はまだ始まったばかり……あれ? 気絶しちゃってるみたいですね。

 ん~、コホン。剣、起きなさい」

『ん? ああ、終わったか』

 

 さっきまで床で死んでた副代表が何事もなかったかのように立ち上がり仮面を外した。

 

「え~、以上で演劇部による即興劇、『クレーマーに張り合う強そうで弱い人と、実は強かったメイドさん』を終了します。

 皆さん、いかがでしたか?」

 

 周囲から拍手が沸き起こった。そうか、劇だったなこれ。名前が何か雑だけど。

 あのクレーマー自体も劇の役者だったという体にしたんだな。そうする事で合法的に殴れるしクレーム自体もただの演技だったという体にできる。

 ……でもこれ全部アドリブだったんだよな。失敗してたらどうする気だったんだ?

 

「巻き込んでしまったようだな、助かったぞシェフ」

「ああ、うん。まあいいよ。少しはスッキリしたし」

「早速で悪いんだが適当に人を集めてこのゴミを片付けてくれないか?」

 

 副代表が指し示したのは床で寝てるクレーマー2名。当然のようにゴミと呼ばれたな……

 しっかし何だったんだこいつらは。何か目的があったっぽいけど……まあいいか。

 

「片付けは良いんだけど1つだけ疑問がある」

「どうした?」

「……その腰の刀、意味あったのか?」

「おいおい、これは刀じゃないぞ。光が持ち込んだ包丁の一種だ」

「……人斬り包丁的なものか?」

「さぁな~。でも光が包丁って言ってるから包丁って体にしておこう」

「……で、包丁に意味はあったのか?」

「この方が強そうに見えるだろ?」

「それだけかい!!」

 

 ……その後、中途半端に強く見えた方が殴られやすくなるという説明をされた。

 普通はそんな事まで考えねぇよ。オレは悪くない!






「今回の話は無駄に遊んでるわね」

「自分の企画にクレーマーがやってきた場面だから原作だと雄二の常識を覆すような交渉術で撃退する場面だな。
 リメイク前は僕が交渉(物理)をやっていたんだが……せっかくだからおもしろおかしくしてみたようだ」

「ツッコミ所が多すぎって話よ……さり気なくあの部長まで出てくるし」

「演劇部の部長の活躍に関してはこちらのリメイク前の外伝を見ると良い。
 時系列は特に考えられてないんで今から読んでも矛盾無く読めるはずだ」

https://syosetu.org/novel/56321/


「……さて、製作秘話でも話すか」

「そんなのがあるのね……」

「今回は常夏コンビの撃退を可能な限り穏便かつ過激にする事を目指したようだ」

「矛盾してるはずなのに矛盾してないっていうね」

「そこですぐに演劇という案が浮かんで部長の登場が決定した。
 最初は演劇っていう体で僕がフルボッコにする方向で進めようかと思ったんだが……刀のようなものを振り回してたらどうやっても穏便に終わらなかったので殴られてやる方向にシフトしたようだ」

「学園祭で刀を振り回すんじゃないわよ!!」

「だいじょーぶだいじょーぶ。アレって逆刃刀だし」

「……何でそんな一周回って手に入れにくそうな代物を持ち込んでるのよ……」

「光だからな。
 ちなみに、今回のイベントで光の実力が向こうに知れ渡る事になった。その影響がどう出てくるかは……今後の更新を楽しみにしててくれ」


「それでは、次回もお楽しみに!」
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