そしてなんやかんやあって召喚大会3回戦の時間になった。
この回から一般公開がされて観客が集まってくる。
「ふ~む……」
「どうしたの剣」
「いや、観客席からはそこそこ離れてるから何か物をぶつけられるとかはあんまり無さそうだなと」
「剣は一体何と戦ってるの……?」
警戒しておくに越したことは無いからな。
太陽の光を鏡で反射して攻撃してくるとかなら普通に可能だろう。用心しておこう。
『それではこれより、召喚大会第三回戦第一試合を行います!
出場者は前へどうぞ!』
名前もよく知らない立会い教師に促されてステージの上へと上がる。
反対側から姿を現したのはよく見知った顔だ。
「吉井っ! ここなら逃げられないわよ! じっくりと話を聞かせてもらうんだから!!」
「吉井くん、じっくりと話を聞かせてもらいますよ♪」
僕が保健室送りにした2人組である。ついさっき目覚めたらしい。
う~む、もうちょい強く首トンしていれば不戦勝にできただろうか? いやいや、流石に学園長に怒られそうだ。
……まぁいい。舞台の上に立った以上は戦うだけだ。
「御託は要らん。話したい事があるならサッサと終わらせるぞ。どうせ僕達が勝つからな」
「随分と自信満々ね」
「相手が空凪くんであっても簡単には負けませんよ!」
「ならその台詞を証明してみせるがいい」
『それでは、承認します!』
立会い教師の合図と同時にフィールドが広がり、それと同時に召喚を行う。
「「「「
さて、何度も言っているようにこの2人が勝ち上がってくるのは読めていた。
この第3回戦で当たる。
その事実さえ分かって居れば対処は意外と容易だ。
[フィールド:古典]
Fクラス 島田美波 6点
Fクラス 姫路瑞希 399点
「ってえええっ!? 3戦目は数学じゃなかったの!?」
「いや、数学は1戦目でやっただろう?」
「でも、このトーナメント表では……あれ? 科目の所が剥がれる」
島田がペリペリと剥がすとその下から本当の科目が現れた。
雄二による偽装工作だな。
「ま、悪く思うな。知るのが今になっただけで科目は変わらないさ」
「うぐっ、確かにそうだけど……」
「はっはっはっ、6点しかない島田さんの召喚獣なんて居ないも同然さ。
これで2対1だよ!!」
「戦いというものは往々にして始まる前から勝敗が概ね決まっているものだ。
というわけで、サッサと終わらせると……」
と、そんな台詞を吐いていた時、ソレが視界に入った。
Fクラス 吉井明久 9点
Fクラス 空凪 剣 400点
「…………おい明久」
「…………正直、悪かったなって思ってる」
「「…………」」
何だか凄くいたたまれない雰囲気になっている。
う~む、どうしたものか。一応点数では勝ってるんだが……戦いに100%の勝利を求めるのは無茶だが、50%というのもそれはそれでツラいものがある。
何か事故ったら負けるというレベルだ。不安だ。
「……仕方あるまい。盤面が互角なら卓外戦術を挑むまでだ。
お前たち! 良い事を教えてやろう」
「良い事?」
「何ですか?」
この2人を動揺させて戦力を下げられるような会話を……
「僕はちょっと前に明久はエア彼女と如月ハイランドへ行くという話をしたが……アレは嘘だ」
「いやいや、2人ともそんな事は当然分かって……」
「えええええっ!? う、嘘だったんですか!?」
「そ、そんなっ、瑞希から聞いてウチもすっかり信じ込んでたわ!!」
「……アレ?」
ひとまず興味を引く事には成功。
ここで誰の名前を出せば効果が高いだろうか?
「そ、そうだ! それじゃあ吉井くんは一体誰と行くつもりなんですか!?」
「フッ、知りたいか? ならば教えてやろう」
ここであえて男子の名前を出せば意気消沈してくれるだろうか? いや、そもそも信じられないかもしれない。
女子の名前を出した場合……この2人の場合は怒り狂うか。
……アリだな。
「あれ? 今何か悪寒が……」
明久に攻撃を引きつけてその隙にまとめて撃破。十分アリな戦術だ。
となると適当な女子の名前、リアリティがあり、なおかつ嫉妬させられる名前。
さっきの女の子……葉月とか言ったか? あいつはダメか。姫路に伝わらん。
Bクラスの御空……胸も結構あったんで島田を挑発する事ができそうだが……明久との接点が少々薄い。
Aクラス……霧島は論外、光も厳しい。工藤か木下姉……その2択だったら……
「教えてやろう。明久が誘う相手。それは……木下優子だ」
「「「えええっっ!?」」」
明久までもが驚いているが、気にせず続ける。
「いやぁ、僕もビックリだった。あの明久が『優子さんをデートに誘いたいから協力してほしい!』なんて言うんだもんな。
召喚獣バトルなんてFクラス生には厳しい戦いだっていうのに、それだけ本気だって事だろうな」
「…‥吉井、どういう事かしら?」
「吉井くん? じっくりとオハナシさせてもらいますよ」
「いやいやいやいや、ちょっと待って! 落ち着いてよ!!」
「無駄だ明久。こちらの声は届いていない」
「いや、剣のせいだよね!? どうしてくれちゃってるの!?」
「安心しろ。2人を引きつけてくれれば後は僕が何とかする」
「何て無茶振りを……分かったよ、やるよっ!!」
というわけで戦闘開始だ。いや、既にお互いに召喚してるんだからとっくに戦闘は始まっていたな。
2人の意識は明久に集中している。軌道予測は容易であり、僕の投げたナイフは簡単にヒットした。
Fクラス 島田美波 6点 → Dead
Fクラス 姫路瑞希 399点 → 312点
島田はアッサリと戦死。だが逆に言えばこれと同じくらいに簡単に明久も戦死するという事だ。油断はできない。
「くっ、やられた……瑞希はそのまま吉井の召喚獣をお願い! ウチは本体をボコにする!!」
「はいっ、分かりました!」
「ちょっと!? 姫路さん分からないで!? 島田さんも……審判!! コレって反則じゃないの!?」
『ちょ、ちょっと待ってください。ルールブックでは……アレ? 書いてない……』
通常の試召戦争では召喚者による物理攻撃は反則だが……召喚大会では別ルールで動いているからな。
補習とかが免除されているのが良い例だな。そんなのがあったら誰も参加しなくなる。
だからこそこういう漏れがあったと。反則なのは当然の事過ぎて書き忘れたんだろう。
「だがそういう事なら話は簡単だ。
明久、反撃してしまえ! こちらから殴りかかるのは流石にヤバそうだが正当防衛なら面目は立つ!」
「無理だよ!! 僕が島田さんに肉弾戦で勝てると思ってるの!?」
「……スマン」
「謝らなくて良いからとにかく早く何とかして!!」
そうだな。何とかしよう。
明久にとっては姫路も島田もどちらも脅威だが……とりあえず試合を終わらせる事を優先して姫路を処理する。
ナイフの投射ではダメージはそこまで稼げない。直接叩くっ!
「セイッ!!」
「っ」
ナイフを使って切りつけたが、直前に小手でガードされた。
Fクラス 姫路瑞希 312点 → 265点
Fクラス 空凪 剣 400点 → 392点
姫路の召喚獣は西洋鎧を纏っている。動きは少々鈍いが、その分硬い。反動だけでダメージを食らうくらいには。
鎧に覆われていない顔等を狙えば大ダメージを与えられそうだが、そう簡単に当てられるかという。
「退いてください!」
「断るっ!!」
姫路の狙いが完全にこっちに移ったようだ。
不意を突けなくなるのは残念だが、明久がフリーになる事で適当な援護が期待でき……
「さぁ、キリキリ吐いてもらうわよ!!」
「ちょ、島田さん! ギブ! ギブッ!!!」
……あかん、これ結構マズイ。
強い相手との一騎打ちという意味ではAクラス戦を思い出すが、アレは工藤の召喚獣が軽装であり、なおかつ僕の『集中』を後先気にせずに使えたからこそ楽勝だった。
同じ戦法を重装備の姫路に使うのは少々厳しいし、今日はこの後霧島戦が控えてるからペース配分も考えなければならない。
…………仕方ない。切り札を1つ、切らせてもらおう。コレは姫路の召喚獣と相性が良さそうだしな。
突然だが、召喚獣は特定の点数……400点以上になると個々人固有の『腕輪』を持つようになる。
この点数は補充試験の時の点数が参照されるので多少ダメージを受けた後でも腕輪は問題なく使える。
「
Fクラス 空凪 剣 392点 → 292点
僕の腕輪のコストにより一気に100点ほど持っていかれた。
そしてコレ自体は戦闘に何ら影響を及ぼさないという。クソ重いコストだが、それ相応の価値はちゃんとある。
「仕切り直しだ。行くぞ!」
今度は急所を狙う必要は無い。
相手の攻撃を丁寧に受け止める。それで十分だ。
バヂィッ!
Fクラス 姫路瑞希 265点 → 193点
Fクラス 空凪 剣 292点 → 262点
お互いの武器が接触する直前、火花が散り姫路の召喚獣の点数が大きく削れた。
「えっ!? 一体何が……」
「考える暇は無いぞ」
この隙に畳み掛ける。僕の武器が相手の武器や鎧に接触する度に火花が散り、そしてアッサリと決着が着いた。
Fクラス 姫路瑞希 193点 → Dead
Fクラス 空凪 剣 262点 → 172点
『しょ、勝者、吉井・空凪ペア!
決着は着きました! 島田さんは吉井くんから離れてください!!』
おっと、忘れる所だった。明久を助けてやらんと。
「島田、どけ」
「うるさい! 黙ってて!!」
「…………」
言葉で説得しようとしても無駄っぽいので頚動脈を絞めて落とす作戦に切り替える。
え? 首トンしろって? いや、アレってムチャクチャ疲れるんだよ。あの時は緊急時だから使っただけで、今回みたいに余裕がある時はこっちの方が簡単だ。
「ふんっ!」
「フムギュッ!」
ジタバタしていたが、しばらくすると意識が落ちたようだ。
「ふぅ、明久無事か?」
「…‥た、多分……」
「はぁ、負けちゃいましたか……
それはそうと吉井くん! どういう事なんですか! 木下さんと行くって!!」
「いや、僕に訊かれても……」
「その件は島田が起きたら話して……いや、先に話しとくか。お前が島田に伝えてくれ」
「以上、姫路&島田戦だ。
便利だが決め手に欠ける僕の召喚獣にとって、重装備で固めた姫路の召喚獣が相手では意外と相性は悪いようだ」
「リメイク前では君の攻撃力にバグ疑惑がかかるほど普通に強かったけどリメイク版では自重してるみたいね。
装備の大切さがよく分かる戦いだったわ」
「姫路ほど重武装で、更にリーチの長い大剣を装備している奴はそうそう居ない。
そして普段の戦争では味方だからそこまで問題にはならないんだが……こういう所では苦労するハメになるな」
「……ところで、君の腕輪の能力って……」
「フハハハハ、そうだ。詠唱する事によって帯電し、金属を通して相手にダメージを与える能力だ!!」
「……あの10点がここで生きてくるのね。
これって前章からの仕込みよね。筆者さんの事だから何も考えずに仕込んでたんでしょうけど」
「ああ。全く考えずに仕込みをしたら無駄に相性が良い場面で無駄に活躍してビビっているそうだ」
「無駄って……無駄ではないでしょう。決して」
※注記
剣くんの腕輪の能力は帯電とか電気操作とかではありません。
リメイク前を読んでいる方はすぐに理解できたと思いますが……そうでない方は自由に想像してみて下さい。
もしノーヒントで当てられたら……おめでとうと言って差し上げます(笑)
「それでは、次回もお楽しみに!!」