バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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15 襲撃

「まさかチケットを売り飛ばす気で居たなんて……それならそうと早く言いなさいよ!!」

 

 意識を取り戻した島田に建前の事情を告げた時の反応である。

 だって仕方ないじゃないか。姫路と話してた時はまだ設定が固まってなかったからな。

 

「ご、ごめん……」

「でも、そういう事情なら分かったわ。

 吉井、絶対優勝しなさい! そしてウチに売って!!」

「ええええっっ!? ……あれ? 相場以上で買い取ってくれるならそれもアリかな?」

「み、美波ちゃんズルいです! 私に売ってください!!」

 

 なるほど、こういう切り返しをされるのか。これは少々面倒だな。

 予定通りに事が進めばチケットは学園長に変換するので売るのはどうやっても不可能だ。

 ならばどうすれば良いかと言うと……

 

「貴様ら、ペアチケットの相場分かってるのか? 諭吉さんが数枚、下手すると数十枚単位で飛ぶぞ」

「ええっ!? あのチケットってそんなに高いの!?」

「だって、あの霧島がわざわざ出場して取りにくるくらいだぞ?

 実家が金持ちで有名な霧島が」

 

 まぁ、霧島が『自力で手に入れたい』という思いがあって参加してる可能性は十分にあるが。

 ただ、霧島が優勝を逃した場合は冗談抜きで数十枚の諭吉さんを突きつけてくる可能性は十分有り得る。

 何せ『値段が付けられない』ってレベルの貴重品だからな。持ち主の言い値になるだろう。

 

「……おこずかいってレベルじゃないわね……」

「……ごめんなさい。買えません」

「だろうな。ここで買うって言い出したら逆にビックリだよ」

「諭吉さんがそれだけあったらアレもコレも買い放題じゃないか!! ヒャッホウ!!」

「……貴様は少し落ち着け」

 

 そのチケットを返さなきゃならん事は……コイツの頭からはすっぽ抜けてるんだろうな。

 まぁ、いいか。その方が都合良さそうだし。

 

「でも、本当に売っちゃうの? 何だか勿体なくない?」

「今月は……と言うか今月も生活費が苦しくてね……それに、一緒に行く相手も居ないし」

「そ、それだったらウチが……」

「さ、誘ってくれれば私が一緒に行きますよ!!」

「え、2人ともそんなに行きたいの? う~ん……」

「……お前たち、そういう話はまず勝ってからにしろ。取らぬ狸の皮算用という言葉を知らないのか?」

「知らないわ」

「……そうか」

 

 島田に諺の意味を懇切丁寧に説明してから話を再開する。

 

「全力で優勝を目指すつもりだが……あまり期待はしないでおいてくれ。

 期待し過ぎるとダメだった時のショックがデカくなるからな」

「それはそうですけど……」

「こういう時は『絶対に優勝してくる!』とか言えないの?」

「不確定な事を話すのは好きじゃなくてな」

「……ところで、アンタの方はどうなの? チケットって確か2枚貰えるはずよね」

「まぁ、いくつか考えてはいるが……少なくとも貴様らに渡す事は無いな。

 売るにしても霧島に売りつけた方が高く買ってくれそうだし」

「……確かに無理だわ。勝てる気がしない」

 

 ……実際の所どうなる事やら。

 まぁ、とりあえず勝ってから考えるとしよう。

 

 

 

 

 

 準決勝まではそんなに時間は無いが、それまでの間は店で働く事にする。

 

「副代表、厨房の土屋から伝言だ。砂糖持ってきてくれって」

「いいだろう、倉庫から取ってくる」

「ちょい待ち。何か種類まで指定されてる。

 黒砂糖と角砂糖とグラニュー糖と上白糖を2kgずつだそうだ」

「……何でわざわざそんな細かく指定するんだ?」

「さぁ、オレにもよく分からん」

「と言うか量が多いな。お前も手伝ってくれ」

「むしろ副代表の方が手伝いだけどな」

「……それもそうか」

 

 というわけでこの……えっと……手伝いの人と一緒に倉庫へと向かう。

 

 

 

 

「で? 何だっけ?」

「確か……黒砂糖とグラニュー糖と……」

「……面倒だな。甘そうなのを適当に持っていくか」

「いや、そういう訳にも……まぁいいか。いくつかはヒットするはずだし」

 

 そして僕達が砂糖系の調味料がしまってある辺りに近づくと扉が開き、3人ほどの高校生くらいの男が入ってきた。

 制服やその他の衣装は着ていない。今日の企画に『私服喫茶』等は無かったはずだ。

 ……完全な部外者のようだな。

 

「申し訳ありませんがここは関係者以外立ち入り禁止となっております」

「ああそうかい。だが関係ねぇ。俺はテメェに用があるから十分関係者だ!」

「僕に用ですか。何でしょうか?」

「ああ。テメェに恨みは無ぇが……死に晒せや!!」

 

 うん、まぁそうなるよね。

 こんな人気の無い場所にチンピラ風の男がやってきた時点でこの展開は簡単に読める。

 だから、対処もしっかりと考えてある。

 

「え~っと、あったあった。ほいっ」

 

 近くの棚にしまってあった真っ赤な粉末の入ったビンの口を開けて中身を適当に投げつける。

 

「ぐぎゃぁあああああぁあぁぁああああああああアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 ビンに書いてあった説明文によれば……

 『タバスコ等とは比べ物にならないほどの辛味を発揮する我が社の新商品!

  なんと従来の辛味調味料の1万倍の辛味!(当社比)

  ※注意!※ 大変危険ですので取扱いには細心の注意を払い、目に入った場合には直ちに医師の診断を受けてください』

 ……だそうだ。

 

「な、何だ! どうしたヤスオ!!」

「よそ見をしている暇は無いぞ」

「みぎゃぁあああああぁあぁぁああああああああアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 今度は真っ白なビンだ。

 『そんじょそこらの砂糖とは比べ物にならないほどの甘味を発揮する我が社の新商品!

  なんと従来の甘味調味料の1億倍の甘味!(当社比)

  ※注意!※ 大変危険ですので取扱いには細心の注意を払い、目や口に入った場合には直ちに医師の診断を受けてください』

 ……だそうだ。

 やべぇ調味料の1つや2つ置いてあると思って、僕の危機感知の直感から一番ヤバそうなのを選んで適当に投げつけたわけだが……予想以上だな。

 

「……さて、次はどれを試そっかな~」

「ひ、ひぃぃぃっ!! 勘弁してくれぇ!!!」

 

 軽く脅してやっただけで最後の1人は逃げ帰った。

 追跡は……まぁいいか。とりあえず床に転がってる連中を縛り上げて鉄人先生に引き渡そう」

 

「副代表……アンタよくもまぁ涼しげな顔で対処できたな」

「襲撃自体はもしかしたらあるかもしれないと考えていたからな」

「……アンタ何考えて過ごしてるんだ」

「そんな事より、疑問がある」

「?」

「……こんなゲテモノ調味料を持ち込んだのは一体全体誰なんだという話だ」

「…………確かにな」

 

 

 

  ………………

 

 

「へくちっ」

「あれ? 瑞希ってば風邪でも引いた?」

「いえ、そういうわけではないですけど……」






「というわけで姫島戦の事後処理と僕への襲撃だな」

「チンピラさん……可哀想に……」

「自業自得ではあるが……少々やり過ぎた気がしないでもない。
 あんなよく分からん物質が目に入ったら普通に失明とかしそうな気がするが……奇跡的に後遺症は残らなかったという事にしておこう」

「奇跡ね。
 そう言えば、ビンを選び出すのに何か超能力を使ってたみたいだけど……」

「僕の『危機感知の直感』だな。
 リメイク前の段階でもぼんやりとした設定はあったが、リメイク版では明確にそういう能力を持っているという設定で進めている。
 普段は敵の攻撃を躱したり、姫路の弁当に反応したりするが……今回使ったのはちょっとした応用だな。危険物の場所とその危険度をある程度把握できる」

「把握できてた割には容赦なかったわね……」

「ある程度把握できるだけだからな!」

「…………
 では、次回もお楽しみに!」
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