バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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18 学園長の真意

 無事に学園まで戻り、通常通りに店の営業を続け、1日目の終了時刻になった。

 皆、2日目の準備の為に今も頑張ってくれているだろう。

 

 ……何故推測なのかというと、今僕はAクラス教室には居ないからだ。

 

 雄二と明久、光、そして僕の4人はFクラス教室である人物を待っていた。

 

「ねぇ雄二、誰が来るの?」

「ババァだ」

「学園長が? どうして」

「吉井くん、どうして学園長って通じるの」

「え? だってババァだし」

 

 明久の中ではババァという単語と学園長という単語がイコールで結ばれているようだ。

 まぁ、別にいいか。どうでも。

 

「ところで光、今この場に居るという事は……事情は全て把握しているという事で良いんだな?」

「ええ、勿論。坂本くんから全部聞いたわ。

 学園長が変な取引を持ちかけてきた事も、一連の事件の原因が学園長にある事も」

「えっ、原因がババァに!? どういう事!?」

「……明久、気付いてなかったのか」

「え? えっと……ももも勿論気付いてたよ! 全部ババァが悪いんだね!」

 

 そんな明久の台詞と同時にドアが開き、その向こうから学園長が現れた。

 

「やれやれ、随分な言い様だねぇ。せっかく来てやったってのに」

「ようやく来たか。ババァ」

「出たな! 諸悪の根源め!」

「おやおや、いつの間にかアタシが黒幕扱いされてないかい?」

「厳密には黒幕ではないだろうが……巻き込まれたこっち側からすれば大して変わらん」

「兄さんの言う通りね。サッサと白状してもらうわよ」

「ふぅむ……どうやらそこのバカ以外はアタシの考えに気付いているようだね」

「雄二、言われてるよ」

「お前の事だバカ」

「なにおう!?」

「……コホン。明久への説明と、学園長への確認も兼ねて僕達の推理を発表させてもらおう。

 何かおかしな所があったらその都度補足してくれ」

 

 さて、学園長とのとりひきにおける矛盾点を指摘していけばいいか。

 たくさんあるからな……一個一個潰していこう。

 

「学園長の目的は優勝賞品のチケットとの事だが、アレは嘘だ」

「えええええっ!? そうだったの!?」

「ああ。だろ?」

「……ああ。その通りさね。どうして気付いたんだい?」

「まず1点。優勝の見込みの薄いFクラスの生徒に取引を持ちかける意味が無い。Aクラスの奴から適当に声をかければ良い話だ。

 まぁ、ダメ元で僕達にも頼んだ可能性も一応あるが……如月ハイランドの件なんてそんな言いふらす事でもないからな」

「あれ? 確かにそうだ。わざわざ僕達に頼まなくてもいいのか。

 優勝した人に事情を話して譲ってもらう事もできるし」

「そういうコトだ。続いて、教室の設備の改修を渋った事。これも普通なら有り得ない事だ。

 わざわざ渋る事で僕達に召喚大会に参加させた。

 下手すると訴えられるリスクがある行為だ。優勝するかも分からん雑兵への待遇ではないな」

「え? えっと……つまり、本来なら何もしなくても教室を直してもらえたって事?」

「そういうコトだ」

 

 ここまでが、学園長からの提案の不自然な部分だ。

 そしてもう一つ。雄二が引き出した非常に重要な情報がある。

 

「雄二はやはり天才だ。神童と謳われただけの事はある」

「おいおい、何だ突然」

「トーナメントの科目指定。そんな一石二鳥の提案をその場で考えつく自信は全くない」

「科目指定……? それがそんなに重要なの?」

「ああ。極めて重要だ」

「……そういうコトかい。アレでアタシを試してたってワケかい」

「チケットを回収したいだけであれば極論だが出場者全てに事情を打ち明けてしまえばいい。

 口が軽いから話せない人とかが居るにしても、何組か選別して事情を打ち明ける事は可能だ。

 しかし、科目の指定などという大技は1回しか使えない。2組以上が別の科目を指定したらアウトだからな」

「……つまり、どういう事?」

「学園長は正真正銘僕達だけにチケット回収を頼んだという事だ。

 な? 凄く不自然だろう? まるで賞品なんてどうでもよくて何が何でも僕達だけに優勝して欲しかったみたいだ」

「そこまで気付いていたとはねぇ……アンタ達本当にFクラスかい?」

「行こうと思えば上のクラスには行けたな。まぁ、ある意味全力でやった結果が今のクラスだが。

 ……さて、とりあえず『学園長が胡散臭い』という事は推理できる。しかし、アンタが何を考えていたかという事までは流石に分からん。

 営業妨害が現れたり、チンピラが襲撃してきたり、挙句の果てに僕達が居ない隙を突いてウェイトレスを拐っていくとか、尋常じゃないぞ」

「何だって!? そんな事までされていたのかい……

 ……そうだねぇ。アタシの見通しが甘かった。

 巻き込んでしまってすまなかったね」

 

 形だけのものかもしれないが、頭を下げる事はできるんだな。

 傍若無人な性格に感じたが……きっちりと筋を通す時は通せるらしい。流石は学園の長になるほどの人物というわけか。

 

「謝る先が違う。ここに居る連中自身はそこまで被害を受けちゃいない。

 事情が事情だから今すぐというわけにはいかないだろうが……全部済んだらアイツらに謝ってくれ」

「拐われたっていうウェイトレスの事だね。確かにそうだ。分かったよ」

「……んで、結局何が起こってるんだ? 洗いざらい吐いてもらうぞ」

「……はぁ、アタシの無能を晒すような事だからできれば伏せておきたかったんだけどねぇ……

 召喚大会の賞品、覚えているかい?」

「例のペアチケットと2つの腕輪……そう言えば、ペアチケットの噂って結局本当なのか?

 僕達を出場させる為のデマだったんじゃないか?」

「いや、それ自体は本当さね」

「……だそうだ、雄二」

「何故俺に振る!? いやいや、翔子はもう敗退したから関係の無い話だ!!」

「……だといいな。済まない、学園長、続けてくれ」

「ちょっと待て! 何だその不吉なコメントは……」

「五月蝿いね。話の腰を折るんじゃないよ。

 ペアチケットの方はアタシにはどうでも良い事さね。

 問題は、もう一つの方の賞品さ」

「腕輪か……まぁ、だろうな」

「そっちも気付いていたのかい?」

「そりゃそうだ。他の参加者に無い僕達の利点なんて『点数が低いこと』くらいしか無い。

 そして点数が関わるものといったら試召戦争。それに関わる腕輪が怪しいとは思ってた」

 

 まぁ、現在の僕の点数は非常に高いが……話をもちかけた時点では明久と雄二が対象だったので問題ないだろう。

 

「……続けてくれ。腕輪を一体どうするつもりだったんだ?」

「結論から言うと、アンタ達に勝ち取ってもらって客たちの前でデモンストレーションして欲しかったんだよ。

 あの腕輪には欠陥があってね。出力が一定以上を越えると暴走しちまうのさ」

「……なるほど。だからFクラス生が、明久が都合が良かったのか」

「え? もしかしてこれって褒められてる?」

「吉井くん、学園長の話を要約するとあなた達はバカだと言われているわ」

「なんだとババァ!!」

「言われないと気付けない時点で否定できないと思うんだけど……」

 

 出力が高い状態……つまり、点数が高い状態だと暴走してしまうという事だな。

 それが大丈夫だという事はつまり僕達の点数が低いと、つまりバカだとそういう事になる。

 

「フィールド作成能力を持つ『白銀の腕輪』の方はそこそこの点数でも何とか耐えられるんだけどねぇ……

 二重召喚の能力を持つ『黄金の腕輪』は下手すると平均程度でも暴走の恐れがある。

 だから、そっちは吉井専用さ」

「今度こそ褒められたよね!」

「いや、もの凄い勢いでバカにされているぞ」

「なんだとババァ!!」

 

 どこのコントだ。

 まぁ、僕達を擁立した理由までは分かった。しかし気になる事がある。

 

「僕の現在の総合科目の点数は同学年で五指に入るレベルだが……そんな欠陥品を使ったら一瞬で暴走するんじゃないか?」

「安心しな。出力に一番影響するのは振り分け試験の点数さ。アンタの得点はジャスト800点で、Fクラス上位レベルだろう?

 毎日のように使っていたら流石に安全とは言いきれないが、一回使うだけならまず間違いなく使えるさね」

「それを聞いて安心した。そういう事なら堂々と使わせてもらおう」

 

 とりあえず僕達が優勝すれば問題ない、と。

 

「さて、後は一体誰が邪魔しているのかという事だな。

 腕輪を暴走させて喜ぶ人間……か」

「学園長が問題を起こして得をするとなると、やっぱりライバル校の関係者かしらね」

「ほぼ間違い無いだろうが、内部の協力者……裏切り者も間違いなく存在する。

 腕輪の欠陥とやらを知ってる奴は相当限られてくるだろう」

「それもそうか。学園長、心当たりは?」

「あの……皆、僕を置いてけぼりにして話をするの止めてくれない?」

 

 だって明久の理解が追いつくのを待ってたら日が暮れちゃうし。

 

「恐らく、ほぼ間違いなく教頭の仕業さね。

 近隣の私立校に出入りしていたなんて噂も聞く」

「手回しの良い事だな。本気で学園を潰す気か」

「えっ、潰す……そこまでの危機なの、これ?」

「ああ。この学園の中核を成す試験召喚システムが暴走……何て事になったら最悪取り潰されるな。

 本当に最悪中の最悪の事態の話だが……選択肢に挙がるって事は誘導が可能って事で、ここまで準備してる連中の詰めが甘いという事は考えにくいな」

 

 後は引き金さえあれば学園が潰れると見ておいた方が無難だろう。

 腕輪の暴走という引き金さえあれば、な。

 

「うーん……でも最悪僕達が負けても優勝者に事情を話せば……」

「残念ながら無理だ。僕が最初に目を着けておいた奴が順調に勝ち上がってるらしい。

 この『夏川俊平』とやらと『常村勇作』とやらがな」

「えっ、それってもしかして常夏コンビ!?」

「十中八九な」

 

 もしかしたら名字が同じだけの別人の可能性がゼロではない。

 そんな奇跡はそうそう無いだろうが。

 

「連中はほぼ間違いなく教頭の手駒だ。むしろ嬉々として暴走を起こすだろうな」

「そんな……」

「安心しろ。勝てばいいだけの話だ。

 つまりは最初の予定通り。何も問題ない」

「そ、そうだね! 勝てば良いんだ!」

「ふむ……一応訊いておくけど、相手はAクラスのペアだよ? ちゃんと勝てるんだろうね?」

「元々貴様との契約は優勝して賞品を回収する事だ。学園の存続が関わろうと、僕達の勝利は揺らがないさ」

「そうかい……なら、明日は頼んだよ」

 

 こうして、学園長と話し合いは終わった。

 思ったよりも大事だったが……僕は僕のやるべき事をやるだけだ。さっきまでと何ら変わりは無い。






「そしてこの後、Aクラスの女子たちを家まで送るという非常に面倒な作業が待っていたという」

「あ~、誘拐が怖いもんね……」

「そして、一部のAクラス生徒にカップルが誕生したとかしなかったとか」

「……まぁ、そうなってもおかしくは無いでしょうね」

「そして、それをみたFクラスのバカ供が嫉妬に狂うという」

「いつもの事ね」

「……さて、面倒くさすぎてカットした描写の説明を終えた所で今回の解説だ」

「とは言っても、内容としてはほぼ原作通りね。
 原作ってギャグ小説だけど、こういう仕込みは丁寧よね」

「冷静に考えると学園長の提案が明らかにおかしい事に気付けるもんな。
 え~、さて、内容はほぼ同じだったが、そこに僕と光が一緒に居る状態だな。
 適当に合いの手を入れる役だ」

「役……まぁ、間違ってはいないか」

「ぶっちゃけ雄二さえ居れば進行できる場面だしな。
 関係者だから一応同席したって感じだな」

「その割には君は結構喋ってたけど」

「だって、退屈じゃないか!」

「……そ、そう。

 では、次回もお楽しみに!」
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