バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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19 Fクラス流・強さの証明

 翌日。

 誰かが誘拐されただとか、あるいは誰かが襲撃されただとか、そういった問題も無く開店までこぎつけた。

 昨日ボロボロにされたチンピラ達を見て諦めてくれたのか、それとも虎視眈々と隙を伺っているのか。

 何にせよ警戒しておくに越したことは無い。

 

「しかし教頭の奴、どうしてくれようか」

「ホントに迷惑かけられたから借りはキッチリと返さないとねぇ。

 教頭の部屋を爆破するとか?」

「流石に殺すのはどうかと思うが……居ない時にやるのは割とアリか。

 あ、いやでも今回の件の証拠とかも残ってるかもしれないんで後々面倒になりそうだな」

「それもそうね……せいぜい防犯用カラーボールぶつけるくらいで勘弁してあげましょうか」

「調査の口実にもなるからアリだな」

「よし、それじゃあ次の案を……」

 

「……お前たち、どんだけ執念深いんだよ」

 

 僕達が教頭の抹殺方法を話していたら雄二からそんなコメントを頂いた。

 

「ん? 何かおかしかったか?」

「部屋でカラーボールを爆破するだけでも十分大惨事になると思うんだが……まだ足りないのか」

「そうねぇ。私の意見としては教頭にはもうちょい痛い目を見てほしいわね。

 今後の調査次第では司法の手が及ぶでしょうけど、その前に個人的に恨みを晴らしたいわ」

「個人的に? そこまで恨むような事があったか?

 Aクラスの生徒からは特に被害は出てないんだろ?」

「ええ。生徒にはね。

 ただ、営業妨害のせいで店の収益に被害が出たわ。これは学園の存続なんかよりもよっぽど大事な事よ!」

「……そ、そうか。やっぱり兄妹だな」

 

 些細で個人的な事であっても、いや、だからこそここまでの執念を燃やす。

 自分で言うのもどうかと思うが、実に困った性格だ。

 

「そうだ雄二、何か案無いか?」

「案ねぇ……

 鉄人に愛の告白とか、輪ゴムでバンジージャンプとかか?」

「……お前、そんな奇抜な発想どっから拾ってきた」

「須川が言ってた。何か今度風紀委員会を立ち上げるとか言ってな。

 何でも、不純異性交友を取り締まり、女子と仲良くしている男子にはさっき言ったようなオシオキをするらしい」

「……逆にそいつらが風紀を乱す集団になりそうな気がするんだが」

「そうかもしれんが、教頭に嫌がらせしたいなら相談してみると良いかもな」

「そうだな……やってみるか」

 

 

 ……その後、須川とやらに相談し、ついでに『教頭のせいで女子たちが酷い目に遭った』という事も教えてあげたら教頭がエラい目に遭ったのだが……その辺は割愛しておこう。

 ホラ、アレだ。言語化すると情景が固定されてしまうからな。あえて語らない事によって無限の可能性を生み出すというアレだ。決して目を逸らしたかったとかじゃない。

 

 

 

 

 

 

 ……そしてしばらく時は過ぎ……

 

「剣、そろそろ召喚大会の時間よ」

「ようやくか。決勝に勝ちさえすれば襲撃の心配はほぼ無くなるだろう。

 ……破れかぶれで道連れを狙ってくるかもしれんが」

「店の方の警備は任せなさい。店員には指一本触れさせないから」

「頼もしい限りだ。それじゃ行くとしよう。

 明久! 行くぞ! 準備はできているな?」

「当然さ! 行こう!」

 

 現在時刻は昼を少し過ぎた頃。

 一般の来場者がかなり多い時間帯であり、PRに最も適している時間と言えるな。

 さぁ、始めようか。最後の試合を。

 

 

 

 

 

『皆さん、お待たせしました!

 これより試験召喚システムによる召喚大会の決勝戦を始めます!』

 

 昨日も観客は結構居たが、今日は更に多いな。

 召喚大会が試験召喚システムそのものの宣伝なわけだが、この大会の宣伝にも結構金使ってるんだろうな。

 

『それでは、選手入場!』

 

 係員に促されてステージの上へと上がる。

 数多くの視線が集まってくるが、特に危機感を感じるような視線は無い。吹き矢で射抜かれるとかの警戒はしなくても大丈夫そうだ。

 

『まず、Aブロックを勝ち抜いてきたのは2年Fクラスの空凪剣くんと、同じく2年Fクラスの吉井明久くんです!

 Fクラスというとこの学校では最下位クラスという扱いですが……ここまで勝ち上がってきた実力は偶然では無いでしょう。

 最下位ならではの戦い方というものを見せてもらいましょう!」

 

 割とゴリ押しが多かった気がしないでもないけどな。

 まぁ、やるからには勝つだけだ。

 

『続いて、Bブロックを勝ち抜いてきたのは3年Aクラスの夏川俊平君と同じく3年Aクラスの常村勇作くんです!

 奇しくも2年の最低辺対3年の最上位のペア同士の戦いとなっております。

 果たして彼らは上級生の、Aクラスの意地を見せつける事ができるのでしょうか? 要注目です!』

 

 僕達の反対側からやってきたのは見覚えのある坊主とモヒカン。

 よかった。0.001%くらいは同性の別人を疑っていた。杞憂だったようで何よりだ。

 

『え~、それではまず、召喚獣の特性について説明させて頂きましょう。

 召喚獣とはテストの点数に比例した強さを持つ……』

 

 こっから先は外部向けの説明だな。僕達は既に知っている内容だから無視して構わんだろう。

 実況は無視して正面に立つ連中に話しかけるとする……と言うか向こうから話しかけてきた。

 

「チッ、まさかここまで勝ち上がってくるとはなぁ」

「Fクラス風情か。どんな手を使いやがったんだ? カンニングでもしたんじゃねぇのか?」

 

 適当に言葉を返そうとして……ちょっと詰まる。

 そう言えば、公的な立場としては僕達とコイツらに何か因縁があっただろうか?

 学園長の密約を無視すれば、せいぜいクレーマーとその店員くらいの関係だ。

 そして、Aクラスで騒いでいる時は明久は普通に居らず、僕も居なかった設定だし、Bクラスでは明久は居たけど居ない設定で、僕と雄二が女子にセクハラする変態を追い回しただけだ。

 ……って事は、そこまでの因縁無いな。公的には。

 だから、こう返答してみよう。

 

「……? どこかでお会いしましたか?」

「はぁっ!? なんだとテメェ! 俺たちの事を忘れたってのか?」

「……どこかで会ったかなぁ……明久、分かるか?」

「ええっ? えっと……

 …………そう言えば初対面だ!!」

 

 そうだな。お前がクレーマー達と会ったのは女装してた時だもんな。

 アレを黒歴史として葬り去るなら間違いなく初対面だ。

 

「う~む…………

 …………あっ、思い出した! 女子にセクハラしてた変態!!」

「ふざけんな! アレは冤罪だ!!」

「犯罪者ってのは皆そう言うんだよ。

 ったく、今通報したら色々と問題になりそうだから勘弁してやるが、試合終わったら覚えておけよ」

「ふざけんなよ!! って、そうじゃねぇ!!

 お前たち、学園長と取引してんだろ? スッとぼけるなよ!!」

「……? 何の事だ? 明久、分かるか?」

「え? う~ん……

 ……さぁ? 僕達があんなクソババァと取引なんてするわけないじゃん」

 

 密約だもんな。明久でもちゃんと伏せられる頭は持っていたようだ。

 

「もしかして、誰かと勘違いしてるんじゃないのか?」

「いやいや、そんなハズは無ぇ!! 確かにお前たちだって聞いたぞ!!」

「そんな事言われてもな……一体何の取引をしたって言うんだ?」

「詳しくは知らねぇよ! ただ、学園長がお前たちに優勝しろって頼んだハズだ!」

「……あの、もしかしてだけど……ウチの営業妨害してたのってそれが原因か?

 ハハッこいつは傑作だ。人違いで営業妨害とか……何のコントだ!」

 

 あまりに僕達が堂々としているからか、常夏コンビがうろたえ始めた。

 恐らく、取引の内容を詳しくは知らないというのは本当。何故なら、教頭からの伝聞だから。

 だからこそ、絶対の自信は無いはずだ。教頭が聞き間違えた可能性が脳裏をよぎるはずだ。

 そして、そこまで揺さぶられた心に付け込むのは、実に容易い。

 

「……まさかとは思うが、うちのウェイトレスをさらったのは貴様らか?

 ああいや、返答は要らん。正直に答える訳も無いし、怪しい奴を警察に伝えるだけで十分だろう」

「んだと!? ふざけんなよ!! アレは教頭が勝手にやった事だ!!!」

 

 よっしゃ、言質は取ったぜ。下っ端の捨て駒がホザいた台詞でどこまで追求できるかは分からんが、教頭への仕返しとしては十分だろう。

 ん? 単に聞いただけだと意味が無いって? 安心しろ。ステージに上がった瞬間から今の今までの会話は全て録音済みだ。

 手のひらサイズの機械で会話が録音できる。昔だったら考えられなかっただろうな。恐ろしい時代になったものだ。

 

 

『さて、説明はこの辺にして、後は実際に見てみましょうか。

 選手の皆さん、召喚をお願いします!』

 

「おっと、もう時間らしいな。ケリを付けようじゃないか」

「ぐっ、とにかく勝ちゃあ良いんだ! やるぞ!!」

 

「「試獣召喚(サモン)!!」」

 

 まずは3年生の2人が召喚を行った。

 Aクラスレベルとなると200点オーバーが妥当なラインだが、さて……

 

 

 [フィールド:日本史]

 

3ーA 夏川俊平 197点

3ーA 常村勇作 209点

 

 

 ……普通過ぎてコメントに困るな。

 

「へっ、俺たちの点数を見てビビったか?」

「空凪、テメェはまだしも吉井はザコだろう? サッサと片付けてたっぷりいたぶってやるよ!!」

「……貴様ら、何を舐めた事を抜かしているんだ?」

「あン?」

「この大会、僕達はFクラスの強さを知らしめる為に参加しているんだ。そうだろ、明久」

「うん。その通り。

 今までの試合では結構小細工も多かった。けど……この試合だけは違う。

 最初っから決めてたんだ。最後は、真っ直ぐに行くって。試獣召喚(サモン)!」

 

 そして、明久の召喚獣の点数が表示された。

 

 

2-F 吉井明久 166点

 

 

「なっ、何だと!?」

「Bクラス並の点数だと!? カンニングでもしやがったか!?」

「クハハッ、そんな面倒な事をする暇があったら普通に勉強した方が手っ取り早いに決まってるだろ!

 正真正銘、このバカの実力だよ」

「戦う理由と、戦う手段さえあるなら、後は突き進むだけだった。

 さぁ、ぶっ潰してやるから覚悟しろよ!!」

「くそっ、これで空凪の点数はおそらく400点だろ? この……チート野郎どもが!!」

「……ああ、安心したまえ。自分で言うのもどうかと思うが……僕は非常に厄介な性格でな。

 自分の成すべき事よりもやりたい事を優先してしまう。そういう困った奴なんだ」

「は? どういう意味だ」

「こういう意味だ。試獣召喚(サモン)

 

 

2-F 空凪 剣 100点

 

 

「……えっ、剣? どゆこと?」

「いや~、このまま戦ったら卑怯だとか言われる気がしたんでな。

 だから程々に点数を下げてやった。

 これでもFクラスにしてはちょっと多いんだが……まぁ、細かい事は気にしないでくれ」

「いや、点数が多い分には文句は無いよ!? 勝つ気あるの!?」

「当然あるさ。だって、これで負けたらあいつらは一切言い訳が効かない。

 正真正銘、Fクラスに負けたという事になる。こんな痛快な事は無いだろう?」

「それだけの為に!? 本当に困った奴だよ!!」

 

 なお、このせいで『確実に勝てる』という勝算は消えた。

 だが、後悔はしていない。

 Fクラス生として、勝ちに行くだけだ。

 

「な、なんだよビビらせやがって……」

「これなら楽勝だな。瞬殺してやんよ!」

 

『それでは、召喚大会決勝戦、試合開始ぃっ!!』

 

 実況の叫びと共に、戦いの火蓋が落とされた。






「というわけで常夏戦開幕だ」

「空凪くん、そんな性格だから私に怒られるんだよ」

「ナチュラルに未来視をするんじゃない。
 さて、リメイク前では僕が適当に点数を調整して合計点を概ね同じにするんだが……今回は思いっきり下げてみた」

「戦術的な意味は全く無いんでしょうね……相手が油断するとかの効果は見込めるかもしれないけど、デメリットが大きすぎるし」

「そうだな。ぶっちゃけただの自己満足だ。
 貴様が僕の立場だったなら、確実に勝ちに行こうとするんだろうな」

「そこが君と私の決定的な違いでしょうね。
 楽しい事は大好きだけど、確実な勝利を切り捨ててまでやる事じゃないって話よ」

「批判くらいは覚悟している、が、これが僕だ」

「ホントに困った奴ね……

 それでは、次回もお楽しみに!」
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