「それじゃ、点数に縛られない戦いというものを見せてやるとしよう」
と、偉そうな事を言いながらナイフを投擲する。
「おわっと、危ねぇ」
「不意打ちとは良い度胸じゃねぇか!」
「いや、不意打ちも何も、既に試合は始まってるんだが」
「うるせぇ! 捻り潰してやんよ!」
坊主の召喚獣がこっちに突撃してきた。
速度こそ速いが……意味は無いな。
3ーA 夏川俊平 197点 → 115点
2-F 空凪 剣 100点
「なっ!? どういう事だ!!」
「やれやれ、敵に解説してやる必要は全く無いんだが、特別に解説してやるとしよう。
空間に適当にナイフを放り投げて距離を取った。貴様はそれに突っ込んだ。以上だ」
召喚獣というのは結構しっかりと物理的な法則にしたがっている。
こちらの攻撃力が弱くても、相手が勝手に突っ込んでくる分には大ダメージを期待できるというわけだな。
「ほらほら、解説してあげたぞ。どうした、来ないのか?」
「ぐ、この……」
何も考えずに突っ込んだらさっきの二の舞になるのは目に見えている。良い気味だな。
さて、明久の方はどうなってる?
「くそっ、このっ、ちょこまかとっ!」
「よっと、ほっと、せいっ!」
「畜生っ、試召戦争の時はせいぜい60点程度だったくせに!」
「今でもそんなもんですよ。この科目以外は」
「最初からこの科目に絞ってやがったのか!? じゃあやっぱり学園長と協力を……」
「さぁどうでしょう?」
順調のようだな。点数が優位になるのも時間の問題だろう。
「よそ見してんじゃねぇ!!」
「おっと」
坊主が再び攻撃してきたので軽くいなして投げナイフで追撃をかます。
3ーA 夏川俊平 115点 → 82点
2-F 空凪 剣 100点
う~む、思ってたよりも3年生って弱いな。
そりゃそうか。いくら1年間長く通ってると言っても召喚獣を操るのはほぼ試召戦争だけ。
そして、Fクラスみたいな蛮族でもなければ1年にそう何回もやるもんじゃない。敗北ペナルティが極めて薄くなる学期末……1学期の末と2学期の末の2回くらいだろう。学年度末はそもそも教室を獲得してもすぐ進級してしまうので除外する。
そういうわけで今の時点でも操作経験は実はFクラスの方が多いと言っても過言ではない。Fクラスの場合は格上相手に立ち回る経験を積んでいるから質も上々だ。
断言しよう。3年の連中は操作経験だけならFクラス以下だ。
3ーA 常村勇作 209点 → 141点
2-F 吉井明久 166点
お、あっちも逆転した。
「チィッ、仕方無ぇ。奥の手を見せてやる!」
何だろうか? ちょっとワクワクしながらモヒカンの挙動を見守る。
「お前たちの知らない戦い方って奴を教えてやるよ!!」
……経験については先ほど脳内でこき下ろしたばかりなんだが……まぁいいか。
で、経験豊富(笑)なセンパイの行動は……召喚獣を遠くに移動させ、何か妙な構えをしている。
「うぉぉぉぉおおおお!!!」
何かよく分からんが……セオリー通りに動くとしよう。
「明久! 何をしている。
「っ、オッケー!」
僕の指示を受けて明久はモヒカンに突撃……と見せかけて坊主に突撃。
僕のハンドサインによる指示の通りだな。
「隙アリっ!!」
「なっ!?」
3ーA 夏川俊平 82点 → 51点
そして、僕は逆にモヒカンに突撃……ではなく、ナイフを投射。
言うまでもない事だが……飛び道具の使い手を相手に距離を取るのは自殺行為と言っても過言ではない。
離れていると命中精度が落ちるが……それでも数本がヒットした。
3ーA 常村勇作 141点 → 131点
うむ、遠いから威力も落ちてるな。
だが問題ない。1本で足りないなら100本を、100本が足りなければ10000本を、いくらでも数を増やせば良いだけの話だ。
「はぁぁぁぁっっ!!!」
「なんっ、くっ、このっ!!!」
モヒカンの方も適当に武器を振るったり、回避行動を取ったりして対処しているようだが……徐々に押されていき、そしてフィールドの場外まで出た。
……あれ? 召喚獣の姿が消えたが、この場合ってどうなるんだ?
『おおっと! 常村くんの召喚獣がフィールドを抜けてしまいました!
滅多に見られる事ではありませんが……この場合は戦死扱い。つまり脱落となります!』
「な、何だと!? そんなルールがあったのか!?」
『え~っと……はい。ルールブックではそうなっております』
そんなルールがあったのか……
考えてみると、こんなの確かに激レアな場面だ。
召喚獣は普通は自分より前に呼び出され、戦う時も基本的に自分の足元だ。
召喚獣が場外になるには召喚者より後ろまで吹っ飛ばす必要があるが、そんな事をしたら普通に戦死する。
今回みたいに遠くの方に動かして何か変な事をしようとしない限り発生しない事だ。
「くそっ、常村!!」
「よそ見とは余裕ですね」
「くおぉっ!!」
ここで、現在の点数を確認してみる。
[フィールド:日本史]
3ーA 夏川俊平 51点
3ーA 常村勇作 Dead
2-F 吉井明久 166点
2-F 空凪 剣 100点
最初の心配はどこへやら、メチャクチャ余裕そうだ。だからと言って油断はしないが。
距離を取った坊主を追撃する明久に対して追加で指示を出す。
「よし明久、
「っ! 分かった!」
指示を受けた明久は坊主に一気に近づく。
そして、相手の間合いの寸前で思いっきり横に移動した。真っ直ぐ来ると読んでいたらしい坊主の攻撃は空振る。
「なんっ!?」
全く、僕が何でわざわざバレやすいハンドサインを使ったと思ってるんだ。バラす為に決まってるだろう。
内容を読み取る事は流石に不可能であっても『何か秘密の指示を出している』という事は簡単に伝わる。一回やられた後なら尚更な。
だから今回はひっかかるまいとして正面突破だと読んだようだが……甘かったな。
大きく空振りして隙を晒した召喚獣相手にわざわざ挟撃する必要も無いだろう。
「よし明久、そのまま殺れ!!」
「OK!!」
ボカリという木刀で相手をぶっ叩いた音と共に、試合は完了した。
3ーA 夏川俊平 51点 → Dead
『なんとなんとなんと! 2年の最低辺たるFクラスが! あの最上位クラスのAクラスを降しました!!
勝者は空凪くんと吉井くんのペアです! 皆さん、惜しみない拍手を!!!』
これで、目的の1つであった『Fクラスの悪評を取り除く』は概ね達成できたか。
『教室の問題』についても学園長が何とかしてくれるだろう。
当然、『設備の問題』もクリア済み。あそこまで収益を挙げていたらヤバい設備の更新は可能だ。
後は……学園をしっかりと存続させる事くらいか。
「というわけで常夏戦終了!」
「あの点数差で無傷で倒すとか……君達が強すぎるのか、常夏が弱すぎるのか……」
「まぁ、両方だな。あいつらの戦闘経験なんて高得点でゴリ押しするくらいだろうからメチャクチャ弱い。
僕達観察処分者のような点数詐欺相手では尚更な」
「ヒドい詐欺があったものね……」
「そんな状況で点数2倍差しかない。勝つべくして勝った戦いだな。
霧島戦の方がまだ苦労したよ」
「では、次回もお楽しみに!」