剣からペアチケットと休憩を貰ったわけだけど……何をしようかな。
こういう学園祭ってギャルゲーとかだったら女の子と一緒に回ったりするものなんだろうけど、声をかけた所で一緒に行ってくれる女子が居るとも思えない。のんびりと1人でぶらつこうか。
とりあえず……腹ごしらえから始めよう。手近な喫茶店なら水くらいあるはずだ。
「いらっしゃいませ。って、吉井くんじゃない。クレーマーは来てないわよ」
「え? ああ、御空さん。今は自由時間だからただの客として来ただけだよ」
「そうだったの。それじゃあたっぷりお金を落としていってね」
「ハハハ……期待はしないで……」
この流れで水だけを頼んだら怒られそうだ……
けど、無いものは無い! 堂々と注文しよう!
「ご注文は?」
「水を1杯!」
「…………えっ?」
「水を1杯!」
「……流石に客とは呼べない気がするわね……まあいいわ。
ご注文を繰り返します。水を一杯。以上ですね?」
「はい!」
一応メニューに目を通したけど、ミネラルウォーター等の水の注文は存在しなかった。
御空さんからも客とは呼べないとまで言われてるんで無償のはずだ。
「はい、どうぞ」
「頂きます!」
「あと、こっちはおまけ」
御空さんが1杯の水と一緒に持ってきたのはお菓子の切れ端だった。
「えっ? いいの?」
「どうせ破棄するか私たちのおやつになるだけだし。
食べ過ぎると太っちゃうから」
「ありがとう! 大切に頂くよ!」
「そ、そう」
思いがけずカロリーを摂取する事ができた。御空さんありがとう!
この切れ端は大事に、大事に頂くとしよう。
最大限の感謝を捧げながら、まずは水を一口頂く。
なんの変哲もない水道水だと思うけど、今の僕にはとても……そこそこ美味しく感じる。
続けて、お菓子の切れ端を一つまみ頂く。
Aクラスの喫茶店で作ったもののような高級感は感じないけど、それでも十分美味しい。
破棄する切れ端が他にもあるならもっと欲しいけど……一応Bクラスの皆のおやつらしいから自重しておこう。
ゆっくりと時間をかけて味わってから席から立ち上がる。
「随分とじっくりと味わってたわね……まぁ、空いてたから別に良いけど。
来年はちゃんとお金を持ってきてね」
「前向きに善処するよ!」
「……もうちょっとまともな事言えないの?」
おかしいな。政治家がよく使う言い回しだってテレビでやってたのに。御空さんには不服だったみたいだ。
さて、次はどこに行こうか。
……そう言えば、剣から受け取ったのは休憩時間だけじゃなかった。
ポケットに入ってるこのペアチケット。誘うとしたら、もしくはあげるとしたら、誰だろう?
丁度そんな事を考えていた時、こんな会話が耳に飛び込んできた。
『ええっ、そんな事があったんですか!?』
『うんうん。そうなのさ』
Bクラス女子2人の会話みたいだ。
聞き耳を立てるまでもなく耳に入ってくる。
『昨日、優子さんが男子と話し込んでて、そしたら優子さんがえらく感激した様子で『付き合って下さい!』みたいな事を言ってたらしいよ』
『ほえ~、その男子っていうのはどんな人なんですか?』
『白髪に黒の眼帯着けてたって話だから、まず間違いなくFクラスの副代表さん。意外な組み合わせだよね~』
『ホントですね~』
そっかー。優子さんとFクラスの副代表がねぇ……
…………え?
「えええええっ!?」
「吉井くんうるさい。どうしたの?」
「う、ううん、なな何でもないよ!」
「……そう。ならいいけど」
白髪眼帯の人ってどう考えても剣の事だよね。
そんな奇抜な恰好をした人を僕は他には知らない。
「ご、ご馳走様でした!」
「うん。またね~」
とりあえず喫茶店を出てから考える。
そう言えば優子さん自身も渡したい人が居るって言ってたっけ。
まさかあの中二病の剣と優子さんが付き合ってたなんて、ビックリだよ。
う~ん……剣には結構世話になってるもんなぁ。この機会に少しでも借りを返しておくのも悪くない。
じゃあこのチケットは剣に……いや、自分の分をわざわざ霧島さんに渡すくらいだ。普通に渡しても受け取ってくれない気がする。
だったら、優子さんに渡そうか。そっち経由で誘われたら流石の剣も断らないだろうし。
よし、そうしよう。剣からの連絡を待って、普通のペアチケットになったら渡すとしようか。
「以上、少々短いが清涼祭編は本当に終了だ」
「……おっかしいなぁ……一応ずっと見てたけど、優子さんとキミが付き合ってるような描写ってあったっけ……?」
「さぁどうだろうな。その辺は深くは語らんでおこう」
「今回のモブ2-B女子の口調、何か聞き覚えがある気がするんだけど……」
「某学校の2-Bの生徒を持ってきてみたようだ。あいつらがそこまで成績優秀なわけが無いんでよく似た別人だろう。きっと」
「……そう言えば2-Bだったわね。あの人たち」
「何のことか分からん人は気にしないでくれ。今後出てくる事も多分無いし」
「多分ってのが怖いわね……
では、また次回お会いしましょう!」