ある日の事だ。
私……空凪光が4コマ目の授業を終えて昼休みに入った時の事だ。
「ふ~、お疲れ。皆、購買行こう」
「ちょっと待って。ノートが……よし。これで大丈夫」
「優子は真面目だネ~」
「このくらい普通よ。普通」
「普通ねぇ。次は負けるわけには行かないって感じかナ?」
「……まぁ、ね」
そんな風に雑談をしながら椅子から立ち上がる。
そして扉へと足を向けたその時……
バキィッ ドォォン……
突然扉が吹っ飛んで、その奥から購買のパンを山ほど抱えた兄さんが入ってきた。
「チィーッス、失礼しまーす」
「え? あの、今扉を蹴破ったの!?」
「ん? ああ。その通りだが」
「何やってくれちゃってんの!?」
「ここの扉が自動ドアでないのが悪い。
高橋先生! 改修工事をお願いします!」
「なるほど、一理ありますね。手配しておきましょう」
「高橋先生も乗らないで下さい!!」
兄さんの行為に対して優子がフルにツッコミを入れている。
あと優子、高橋先生は割と本気で言ってると思う。この人意外と天然な所あるみたいだから。
「で、兄さんは一体何しに来たの?」
「見て分からんか? パンの移動販売だ。仕入れ値と同じ額で売ってやろう」
「……何でわざわざそんな事を?」
「購買まで往復するはずだった時間を稼げるだろ?
ちょっとお前たち……霧島と工藤に用事があってな」
「……私?」「ボクに?」
どうやら私は関係ないみたいね。それじゃあパンを頂きましょうか。
「コロッケパン貰うわね。はい、100円」
「まいど。さて、まずは霧島からだな。
こいつをくれてやろう」
「っ! それは……」
剣が突きつけたのは如月ハイランドプレミアムペアチケット。
あの召喚大会の優勝賞品だ。
代表に高値で売りつける気なのか、それとも……
「…………」
「おい霧島、無言で札束を出すんじゃない。安心しろ。これはタダで譲ってやる」
「……嬉しいけど、何が目的?」
「まぁ……気にするな。ただの自己満足だ」
「……分かった。ありがたく頂く」
よく分からない理由で代表にチケットを押しつけたようだ。
そう言えば企業と交渉するとか言ってたけど、代表に渡すって事は一応何とかなったのかしらね。
「よし、こっちはオッケーと。
工藤、ちょっと来てくれ」
「何カナ? 愛の告白とかカナ?」
「はいはい、好き好き。行くぞ」
「もうちょっと気の利いたボケかツッコミで返してほしかったよ……」
そして愛子は兄さんに引っ張られて行った。
愛子に用事か……何だろう。
「……そう言えば、チケットは合計2枚あったわね」
私が不用意に口にしたこの台詞のせいで後に変な噂が流れてしまうのだが……それはまた別の話だ。
剣くんに引っ張られて人気の無い所まで連れ出された。
いつものボクだったら『こんな所でナニするつもりカナ~?』とかからかうんだけど……相手がこのヒトだから逆に痛い目に遭いそうだ。自重しておこう。
「それで、どうしたの? わざわざボクだけ呼び出して」
「……貴様の代表についてちょっと質問がある」
「別にいくらでも答えるけど……どうしてボクに?」
「何だかんだ言ってAクラスの知り合いの中ではお前が一番常識人だからな。
一番真っ当な意見が聞けると判断した」
……おっかしいなぁ……転校してきた頃はこのキャラは絶対にイロモノになると思ってたんだけどネ。
確かに剣くんの言う通りボク以上に濃いのが集まってる気がする。
「あ、でも優子とかは? あっちの方が真っ当っぽいけど」
「木下か。悪くは無いんだが……この後の事も考えるとお前の方が都合が良いと判断した。まぁ、すぐに分かるさ。
まず質問だ。単刀直入に尋ねる。霧島と雄二の事、どう思う?」
「代表と坂本くん? どう思うって言われても……」
「では質問を変えよう。2人の関係、それは真っ当なものだろうか?」
「……真っ当かそうじゃないかって言われたらそうじゃないと思う。
試召戦争の時の命令で付き合ってるんだよね。『勝ったから付き合う』っていうならまだ分かるけど『勝ったから命令して付き合う』っていうのはどう言い繕っても真っ当ではないと思うよ」
「……やはり、そうだな。
次の質問だ。霧島は、雄二の事を愛しているだろうか?」
「う~ん、好きなのは確かだと思う。独占欲が凄く強くて、色々と変な所はあるけど、それだけは確かだヨ」
「…………なら、信じるとするか。
さて、それじゃあ次の用件だ」
代表達の関係については終わりカナ? 次は何だろう。
「実はだな、如月ハイランドの責任者とちょっと交渉する機会があってな。
如月ハイランドの企業戦略としては『ここを訪れたカップルは永遠に幸せになれる』みたいなジンクスを作っていきたいらしい。まぁ、良くある話だな」
「剣くん夢が無いなぁ……それがどうかしたの?」
「で、結論から言うと……2組ほどカップルを紹介し、プロデュースを手伝う事になった」
「……わざわざ裏から手を加えるんだネ。更に夢の無い話になったよ」
「夢があるかどうかは置いておくとして……知り合いのカップルを裏から煽ってくっつけるとか、お前好きそうだろ?」
「……なるほど。悪くないネ」
剣くんがボクに声をかけた理由がようやく分かったよ。
お互いの代表に関する問題だからまずAクラスの協力者が欲しかったって所だろうね。確かにボクが一番適任だ。
「企業の思惑は置いておくとして……どうだ? やるか?」
「モチロンだよ! あれ? でもさっきカップルを『2組』紹介するって言ってたよネ? もう1組は?」
「……そいつはちょっと伏せさせてくれ。敵を騙すにはなんとやらだ」
剣くんは一体何と戦ってるんだろうか?
もう一組については少し……かなり気になるけど、答えてくれる気は全く無さそうだ。
「……分かったよ。代表たちだけに専念する。それで、何からやる気?」
「そうだなぁ……まずは適当に頭数を集めるとするか。
お前はAクラスから適当に集めてくれ。僕はFクラスの連中に声をかける」
「おっけ~」
「とりあえず工藤への工作を完了した。次の話から如月ハイランドに入る」
「え、飛ばしすぎじゃない? 吉井くんサイドの話とかは?」
「後で分かるさ。今は雄二と霧島をくっつける事に全力を注ぐべきだな」
「うわぁ~、嫌な予感しかしない。
……ところでさ、如月ハイランド編って私の出番あったっけ?」
「…………まぁ、無かったな」
「よし! 如月ハイランド編なんて飛ばしましょう!!」
「飛ばすなバカ。
う~む……現状の状況だと貴様を絡ませるのは無理があるな。不可能では無さそうだが」
「不可能じゃないなら頑張りなさいよ! 私、ヒマになるじゃない!
私、メインキャラの1人なのに!!」
「……まぁ、考えておこう。本編に反映される保証は無いが」
「では、次回もお楽しみに!」