バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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03 2人の関係

「いらっしゃいマセ! 如月ハイランドへヨーコソ!」

 

 俺たちを待ち受けていたのは胡散臭い笑顔を浮かべた係員だった。

 日本語が微妙に片言だな。こういうキャラ付けなのか、実はアジア系の外国人なのかは不明だ。

 

「チケットを、お持チですカ?」

「……はい」

「拝見しマース」

 

 翔子が出したのは例のプレミアムペアチケット。

 これを出したら最後、人生の墓場まで強制連行されるという話だが……剣は果たして上手くやってくれたのだろうか?

 

「……ハイ、確認しマした。どうゾ、お通り下サイ」

 

 特に驚いたりする事も無く淡々と対処された。

 だからと言って安心はできないが……分かりやすく何かされるわけでは無さそうだな。

 

「……雄二、行こう」

「……そうだな」

 

 いつちょっかいを出されるか分からない。慎重に行動するとしよう。

 そう思っていた矢先にさっきの係員から声をかけられた。

 

「ア、少々お待チ下さイ」

「さぁ翔子行くぞ! どんなアトラクションがあるんだろうなぁ!! 楽しみだなぁ!!」

 

 聞こえなかった振りをして進む事にする。遊園地を積極的に楽しむ分には翔子も協力してくれるだろう。

 腕の痛みをこらえて翔子を引っ張り一歩踏み出す。

 

 しかしその直後、目の前に何かが落ちてきて石畳とぶつかってカランという軽い音を立てた。

 視線を落としたその先には……どこかで見たことがあるような投げナイフが転がっていた。

 剣の召喚獣がよく使っているナイフ。それを人間用のサイズにした。そんな感じのナイフが。

 

「おいおい雄二、係員の言葉くらい聞いてやったらどうだ?

 人としての常識が欠けているんじゃないか?」

「目の前にナイフを投げてくる奴に言われたか無ぇよ!!」

「安心しろ。峰打ちだ」

「峰なんて無いだろうがこのナイフ!!」

「え? ……あ、ホントだ」

「気付いてなかったのか!?」

「……そんなどうでもいい事は置いておくとして、ここをバッチリ楽しむ為にも係員の言うことくらい聞いておけ。

 ほら、わざわざ追いかけてきてくれたぞ」

 

 決してどうでもよく無いんだが……確かに係員に追いつかれてしまった事の方が重要だ。

 くそっ、この中二病患者のせいで撒けなかった。

 

「ゼェ、ハァ、ヒッヒッフー。

 坂モトサン。そんナに急ぐ事ナイじゃないでスか」

「そーだぞ。係員の人も大変そうじゃないか」

 

 明らかに演技で息を切らしているようだがツッコミを入れた所で適当にあしらわれるだけなので無視する。

 そして名前を教えていないにも関わらず自然な流れで名字を呼ばれた事に気付いたが、同様の理由で無視する。

 この似非外国人を無視して逃走することもできなくは無いが……次やったら本当にナイフが当たりそうだ。仕方ない。話くらいは聞いてやろう。

 

「一体何なんだ」

「ハイ。サイコーにオ似合イのおフタりの為ニ、愛の記念写真ヲ撮らせテ頂キたいと思イマース!」

「要らん」

「そう言うな雄二。仲の良さそうな男女の写真を飾っておくだけでも宣伝効果が期待できるものだ。

 これは『撮ってあげます』と言うよりも『撮らせて下さい』というお願いのようなものだ。協力してやってくれ」

「何で俺がわざわざ協力してやらなきゃならないんだ」

「シャッターチャンスを求めて園内で延々とストーキングされるよりずっとマシだと思うぞ?

 なんたってまだプレオープン期間だからな。そのくらいの人手の余裕はある」

「ぐっ……確かに一理あるな」

 

 やり込められているようで気に食わないが、確かにその気になればそういう事もできるわけだ。

 サッサと片付けた方が良いか。

 

「分かった分かった。サッサと撮りやがれ」

「アリガトござマース。それデは、カメらマンサン、カムヒア!」

 

 ……おかしいな。カメラマンの姿に何か見覚えがある。

 足音を殺し、気配を隠す歩き方。帽子を深く被って顔は見えないが、だからこそ醸し出される怪しさ。

 ほぼ間違いなくうちのクラスのある人物……ムッツリーニこと康太で間違い無いだろう。

 

「……この分だと、俺の知り合いが全員絡んでそうだな」

「さーどーだろーなー」

「……はぁ。康太、サッサと撮ってくれ」

「…………人違いだ」

「そうデス! 彼はここのスタッフのムッソリーニ・フォン・サトウ、通称ヤマダさんです!

 ムッツリーニさんデはアーりまセン!」

「……おい剣、こいつらはコレでごまかしてるつもりなのか?」

「……らしいな」

「テメェが開き直ってるのに他の連中がわざわざ係員のフリをする意味があんのか?」

「意味など無い。ノリだ」

 

 しかしまぁ、この似非外国人みたいなバカがFクラス以外で存在していたんだな。ある意味貴重だ。

 

 

 その後、撮影された写真はすぐに現像された。

 腕を極められている俺と、極めている翔子のツーショット。そしてハート型の枠と『私たち結婚します』という文字。わざとらしすぎて逆に引く。

 こんなアホっぽい事にまで剣が関わっているのだろうか? そう思って視線を向けると似非外国人の係員を無表情で睨みつけていた。

 

「……おい貴様、コレは没にしたはずだが?」

「アレ、オカしいですネ。間違えタみたいでス」

「すぐやり直せ! 素材が良いんだから加工も不要だ!!」

「ハ、ハイ! 失礼しマス!!」

 

 どうやら剣の仕業では無かったようだ。少し安心した。

 すぐに係員が新しい写真を持ってきた。さっきの写真から加工を抜いた代物だ。

 

「よし、良く撮れているじゃないか。流石は康……ヤマダさんだ」

「……ヤマダさんありがとう。雄二、ほら、私たちのツーショット」

 

 サングラス越しに見れば良い写真かもしれないな。裸眼だと全く良い写真には見えないが。

 

「これで写真撮影は終わりだ。しばらくは自由に楽しむと良い」

「……うん。ありがとう剣。行ってくる」

 

 しばらくは……ねぇ。また何か仕掛けてくるつもりだろうな。

 それまでに何とか逃げ出せないものだろうか?

 

 

 

 

 

 

「……ふむ」

 

 雄二と霧島の仲睦まじく見えなくもない後ろ姿を見送りながら考える。

 実際にあの2人が絡んでいるのを見るのは実は初めてだったりするんだが……予想以上に酷いな。

 

「……少し、計画を前倒しするか」






「以上で、本文は終了っと。ようやく如月ハイランドに入ったな」

「わ~、嫌な予感がビンビンだよ」

「だいじょーぶだいじょーぶ。死人は出ないから」

「いや、死人が出る直前でもアウト……あれ? バカテスだと臨死体験が日常茶飯事だったような……」

「うん。だからセーフだ!」

「ヒドい暴論を見たよ……

 では、次回もお楽しみに~」
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