バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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07 集結する来場者たち

 秀吉に案内された先はパーティー会場のような広間だった。立食形式で食事が並べられている。

 スタッフらしき連中だけじゃなく一般客っぽいのもそこそこ混じっているようだ。

 

「ふ~、ようやく少しは休憩できるわ。さぁ食べましょ~」

 

 空凪妹は秀吉を置いてサッサと行ってしまった。

 

「う~む……嫌われておるのかのぅ? ワシと一緒に居る必要が無い時はすぐにどこかに行ってしまうのじゃ」

「……心当たりでもあるのか?」

「いや、無いのじゃ。だからこそよく分からぬのじゃ」

「……ふむ」

 

 俺の予想では……いや、下手に首は突っ込まないでおくか。

 今は自分自身の事で手一杯だ。

 

 

「……雄二、美味しい?」

「ああ。流石は如月グループだ。ここまでのものを用意するとは、太っ腹だな」

「…………そう」

 

 さっきから翔子の元気が微妙に無いな。剣の自爆特攻を差し引いてもだ。

 原因は……察しは付くが、今はそっとしておくとしよう。

 

 

 

 しばらくうろついていると見知った顔を見つけた。

 何であいつが……いや、不自然な事ではないか。

 

「よう明久。テメェも仕掛け人か?」

「えっ、雄二……ああ、そっか。霧島さんと一緒だもんね。そりゃ居るか」

「スッとぼける必要は無ぇよ。お前も呼ばれて来てるんだろ?」

「……? 何の事」

 

 どうやら意地でもとぼける気みたいだな。まぁ、別に良いか。どうでも。

 

「……優子も来てたの?」

「ええ。運良くチケットが手に入ったし、代表も貰ってたから。折角だから来てみたわ」

「……優子は吉井の事が好きなの?」

「はいっ!? 何でそんな事に……って、そりゃそうなるか。

 誘う丁度いい相手が吉井くんくらいしか居なかったから、それだけよ」

 

 微妙にリアルな理由をでっち上げているな。

 この2人が組んでいるのは恐らくは剣の指示だろうが、姫路や島田は納得したんだろうか?

 ……いや、そもそも来てないのか? 木下姉を呼んであるくらいだから2人も呼ぶと思うんだが……

 

 

 

 更にうろついていると、意外な人物が意外な人物と共に現れた。

 

「やっほ~お2人さん、たのしんでる~?」

「お前は……Bクラスの御空!? どうしてこんな所に居るんだ」

「たまたまチケットが手に入ったから来てみただけ」

 

 剣が御空を巻き込むとは思えない。という事は本当に偶然なんだろう。

 チケットは激レアではあるが、入手方法が皆無というわけではない。そういう事もあるだろう。

 問題なのは……

 

「……おい剣、何でテメェがこんな所でうろついてるんだ?」

「何でと言われてもな……僕はここのバイトだぞ? お客様を案内してて何か問題があるのか?」

「それは良いんだよ! 問題はだな……」

 

 俺の意見をようやくすると『大怪我してるんだからサッサと病院に行け』というものだ。

 そう怒鳴りつけたかったんだが……

 

「? どうしたのそんなに見つめて。私の顔に何か付いてる?」

「……いや、何でもない」

 

 翔子がやらかした事を部外者が居る前で暴露する気にはなれない。

 

「……貴様が何を言っているかよく分からんが……

 仮に僕が転んで骨折したとしてもだ、そんなもんテーピングと包帯で十分だ」

「十分じゃねぇよ!? どんな体の構造してやがるんだよ!?」

「仮定の話だ。ハッハッハッ」

 

 ……要するに、応急処置だけをして治療は完了したと言い張ってるらしい。

 

「……空凪くん、まさかとは思うけど、その左手の真っ赤な包帯って……」

「クッ、寄るな! 我が左腕に封印されし《鮮血なる熾天使 ブラッディーアークセラフィム》が目覚めようとしている!

 うぉぉぉおおお!!」

「……それで誤魔化せると思ってるの? 露骨過ぎて逆に怪しいよ」

「ワンチャンあるかなと」

「無いよ」

「……そうか」

「何か事情があるんだろうから言いふらす気は無いわ。ただの中二病って事にしといてあげる」

「借りができたな、くそっ」

 

 隠そうとしていた事がバレた……という事は無く、剣のさり気ないミスリードで『転んで軽く骨折した』という認識になってくれているだろう。それでもテーピングと包帯だけというのは十分おかしいが。

 御空の言う通り、ちょうど折れたはずの部分に微妙にゴツゴツしたものと真っ赤な包帯が巻かれている。本来なら違和感がハンパないが、元から白髪眼帯とかいう奇抜な服装なので凄く馴染んでいる。

 これは剣の血で染まった……と言うよりもとから染色してあったんだろう。本物の血が滲み出てもバレないように。

 コレを予め用意していたって事は……コイツが翔子にチケットを渡した頃には既にこうなる事を読んでいたんだろうな。

 

「……あの、剣……」

「話なら後でいくらでも聞いてやる。今はちょっと時間が押してるんで後にしてくれ」

「……分かった」

 

 

 

 

 またしばらく経つとアナウンスが響いた。

 

『え~、皆さん! 本日は如月ハイランドへとご来場頂き誠にありがとうございます!』

 

「どっかで聞いたことのある声だな」

「……愛子の声」

「そうなのか? 言われてみれば確かに」

 

 そう言えば今まで見てなかったな。空凪妹よりもここに居そうな人物なのに。

 現場での実働班ではなく裏方の司令塔でもやっていたのだろうか?

 

『それでは、本日の目玉イベントである『如月ハイランドウェディング体験』を行いたいと思います。

 ……が、申し訳ありませんが時間の関係で全組が行えるわけではありません』

 

「そんなイベントがあったのか。知ってたか?」

「……うん。人数制限がある事まで告知されてた」

 

 人数制限ねぇ。どう絞り込む気だ?

 じゃんけんでもするのか?

 

『と、いうわけで……これから、クイズ大会を開催したいと思います!』

 

 工藤のアナウンスとともにどこかからクイズ番組のセットがガラガラと運ばれてきた。

 クイズか……こういう時はカップルのお互いの理解度を測るような問題が出たりするが、黒幕はあの剣だ。

 あの狂人がお化け屋敷の仕込みを行うだけで満足する訳が無い。間違いなく手を加えられているだろう。

 

『それでは希望者は壇上に上がってください!

 成績上位1名が本格体験、それ以降の数組が簡易体験ができます!』

 

 何だ。希望者だけか。じゃあ別に行く必要は無いな。

 ……と、普段の俺なら言っているんだが……

 

「……翔子、行くぞ」

「……え? うん……?」

「おい、どうした?」

「……いつもの雄二だったらきっと抵抗してた」

「今日は遊ぶって決めたからな。ほら、あの剣が仕掛けたクイズだぞ? 全問正解して悔しがらせてやろうぜ!」

「……うん。分かった」

 

 

 

 ……と、意気揚々と壇上に登ったんだが……

 

「……何でお前がこっち側に居るんだ?」

「……『体験に興味は無いがクイズに興味がある。だから人数合わせに付き合え』という要望を隣のお客様から頂いた。

 本来僕は今頃は工藤が居る位置で問題を読み上げているはずだったんだがな。まぁ、工藤なら大丈夫だろう」

 

 何故か剣と御空が俺たちの隣で席に座っていた。

 お前、まさか問題と答えを把握していない訳が無いよな?

 

「ん? ああ、安心しろ。僕は一切口出ししない。一緒に考えるフリくらいはしておくがな」

「そういうコトだから、宜しくね。お二方」

 

 口出ししないって事は答えを知っているのは確定だな。

 どんな問題が出てくるのやら。

 

 

『それでは、第一問!

 ヨーロッパの首都はどこですか?』

 

 

 いきなり度肝を抜かれた。

 

「おいテメェ!!」

「適当におちょくりたいところだが……今回は黙秘させてもらおう。平等じゃなくなってしまうからな」

「ぐっ……」

 

 とんでもない問題をぶつけてきやがった剣に反射的に怒鳴ってしまったが、出題者である剣と今話すのはアウトか。続きは後でやろう。

 しかし……何だコレ?

 

「なぁ翔子、俺の記憶では『ヨーロッパ』という名前の国が一時でも存在していたという記憶が無いんだが」

「……」コクリ

「どうするよ、これ」

「……剣ならまだしも、愛子が自信満々に読み上げてるという事は真っ当な答えが用意されているという事でもある。

 という事は……」

 

 翔子はフリップボードに手を伸ばし、凄い勢いで答えを書き始めた。

 

 

『……時間です! ペンを置いてください!』

 

 

 周りの答えを確認すると殆どが無回答、又は『そんなものは無い!』という旨の回答だった。

 その中で異彩を放っている回答が3つほどあった。

 俺たちから少し離れた所に居るチンピラっぽい男とギャルっぽい女のカップルの答え『ドイツ』。

 そして翔子と御空が出した答え。

 

『レイキャビグ・タブリン・ロンドン・パリ・(中略)・ブカレスト・ソフィア・アテネ』

 

 ヨーロッパ州に存在する全ての国の首都を並べるという回答だ。

 

「……ふぅ、間に合った」

「流石は翔子だな。俺には無理だ」

 

 翔子の能力が遺憾なく発揮された回答だが……果たして判定は?

 

 

『なるほどなるほど……

 え~、皆さんお分かりの通り、ヨーロッパは国ではありません。だから空白か『そんなものは無い』という回答が模範回答となります。

 ……が、問題製作者が冗談で作成した裏正解がございます。

 ヨーロッパ州の各国の首都全てを書いてくださった2組のペアの方々には倍の2点を差し上げます!』

 

 

「成功だったみたいだな」

「……うん。良かった」

 

 ……しかし、隣の席の御空も裏正解を出していたな。

 何者なんだ、こいつは。

 

 

『さて、続けて第二問!

 今からコインを5回ほど投げます。

 この時、4投目までに表・裏・裏・表という順番で出てくる確率は1/2の4乗で1/16となります。

 では、5投目に表が出る確率はいかほどでしょうか?』

 

 

「よし、更に半分の1/32だな!

 ……と答える奴は果たしてどれほど居るんだろうか?」

「……この問題、さり気なく表か裏の確率が1/2だと明言されてる。コインが垂直に立つとかは考えなくて良い。

 ……性格の悪い引っ掛け問題だけど、良い問題」

「そういう見方も出来るのか」

 

 工藤が述べた『1/16』というのはあくまでも4投全ての流れでの確率の話だ。

 それを一切切り捨てて5投目だけの確率を論じるのであれば1/2となる。単純な引っ掛け問題だな。

 

 

『では、第三問!

 それではまたコインを使った問題です。

 今回使用するこのコイン、ある人が適当に鋳造したものなのですが……何を間違えたのか、両面とも表になってしまっています』

 

 

 それは意図的に間違えたのか? それとも普通に間違えたのか?

 多分剣が用意したんだろう。意図的だな。

 

 

『では、このコインを投げた時、表・裏・裏・表・表となる確率は何分の一でしょうか?』

 

 

 ……何を言ってるんだ? あいつは。

 さっき両面とも表と言っていたじゃないか。途中で裏が出るわけが無い。どう考えても0%だ。

 

「……翔子、どうするこれ」

「………………この問題は、やっぱり性格が悪い」

「そんな事は分かってるが……ん?」

 

 翔子がおもむろにペンに手を伸ばし、答えを大きく書いた。

 そう、『∞』と。

 

「……んっ!?」

「……これが正解」

「いや、しかし……どういう事だ?」

 

 

『はい、そこまでです!

 う~ん……今回も何組かが裏正解に辿り着きましたね。

 そう、私は『何分の一か』と訊ねたのです。

 0%という答えも間違ってはいませんが……分数で答えるのなら分母は『無限』となります。

 裏正解に辿り着いた方は、先ほどと同じく2点を差し上げます!』

 

 

「……性格、悪いな」

「……うん」

 

 気付かねぇよそんなもん!!






「祝! 私登場!」

「僕と絡めようとするから無理が生じるのであって、個人で勝手に来る分にはどうとでもなる事に執筆中に気付いたようだ」

「筆者さんやればできるじゃないのよ」

「さて、本編のコメントに戻るか」

「色々と言いたい事はあるけどさ……
 空凪くん、性格悪すぎ」

「ハハッ、そんなに褒めるな。照れるじゃないか」

「褒めてないから」

「今回の問題は全てリメイク前のものの流用だな。
 没にした問題もあるが」

「何だっけ?」

「ああ、これだ」


 没問題

『さる筋では有名なクソゲー、『ファイナルクエスト』では最初のチュートリアルバトルからいきなりラスボス戦に飛べる裏技が存在します。
 それはどういった操作でしょうか?』

A.ヒロインに『捕食』を使った後、ダレイオス三世と勇者アークに『お前はもう死んでいる』を使う。


「明久に回答させる為の問題だが、今回はわざわざ狙い撃ちする動機が皆無なんで泣く泣く没にした」

「1行だけで醸し出されるカオス感。何なのこのクソゲー」

「原作バカテストに出てきた単語を超適当に繋ぎ合わせ、胡散臭さを1行に込めたようだ。
 ちなみに明久の家には明久が発売日に並んで買ったものが保管されている」

「わざわざ並んだのね……それだけ期待値は高かったはずなのにどうして……」

「なお、グラフィックはかなりリアルで綺麗だ」

「無駄に綺麗なグラフィックで捕食なんてするんじゃないわよ!!」

「ごもっとも」

「……ところで、素朴な疑問なんだけどさ。
 こんな性格悪い問題出してて如月ハイランドの評判が落ちたりしない?」

「……さぁな」


「さてと、それじゃあ前回と同様に4問目の問題を書いておくわ。
 最終問題の5問目は……明日のお楽しみにとっておくわ。
 それじゃ、次回もお楽しみに!」


Q4.ここに3枚のコインがある。
   この内1枚は偽物のコインで、見かけは全く同じだが偽物のみ重さが異なる。
   この偽物を天秤を使って判断する時、計測の最小回数は何回か?


「またコイン……」

「筆者の趣味だ」
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