バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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05 開戦

 昼食を終え、Dクラス戦が始まった。

 明久の食事は本人曰く『ソルトウォーター(塩水)』と『幸せの白い粉(上白糖)』との事だ。まぁ、いつもと大して変わらんな。

 開戦直後の他の連中の様子を軽く説明しておくとしよう。

 

 秀吉は先鋒部隊として出撃。

 明久及び島田は中堅部隊として少し遅れて出撃。

 康太は……姿が見えないな。まぁ、何かどこかで頑張ってるんだろう。

 姫路は教室で待機。まだ出番ではない。

 雄二は代表らしく教卓に座って偉そうにふんぞりかえっている。あんまり体重掛けると壊れそうなんだが……まぁ、いいか。

 

 で、僕はというと……

 

「補充試験をお願いします。

 科目は……日本史と物理を除く主要科目全て。社会は世界史、理科は化学で。

 1枚ずつ下さい」

「一度に受けても制限時間は1時間ですよ? 構いませんね?」

「はい。お願いします」

 

 そう、補充試験を受けていた。

 補充試験というのは試召戦争のある文月学園ならではの特殊なテストの事だ。

 召喚獣にとってテストの点というのは攻撃力とHPを兼ね備えた数値となる。戦っていてダメージを受けると減っていき、最終的には0になる。

 点数はテストによってのみ補充……と言うか上書きが可能だ。しかし、定期試験なんていちいち待っていられないのでいつでも好きな時にテストを申請して受ける事が可能だ。先生が忙しい時には無理だが。

 今の僕は訳あってほぼ全ての科目が0点なので補充しなければ使い物にならない。そういうわけで開幕と同時に試験を受けているというわけだ。

 

 僕の目の前には8枚の答案用紙が配られている。

 『現代文』『古文』『数学I・数学A』『数学II・数学B』『世界史』『化学』『英語』『英語W(ライティング)

 サクサク片付けるとしよう。

 そんな事を考えながら、僕はそっと眼帯を外してポケットに突っ込んだ。

 

「それでは、始め!!」

 

 

 

 

 

 さて、剣は試験を始めたようだな。その間に、俺は俺でできる事をやっておくとしよう。

 

「高橋先生、ちょっといいでしょうか?」

「何でしょうか? 坂本くん」

「召喚フィールドの承認をお願いできますか? それとも、試験の立会い中はできませんでしたっけ?」

「別にルール上は問題はありません。

 ただ、試験中の生徒が戦闘を挑まれた場合、強制的に試験は無得点扱いになりますよ?

 呼び出された召喚獣が0点だったら即座に戦死扱いになります。それでも宜しいですか?」

「大丈夫です。流石にこんな所までDクラスが来るとも思えませんので」

「それもそうですね。では、承認……どの科目にしましょうか?」

「ん~、じゃあ数学の1Aで」

「分かりました。承認します」

 

 通常、教師は自分の担当科目のフィールドしか作成できない。しかし、学年主任の高橋先生は『総合科目』を含めた全てのフィールドを作成可能だ。

 自由に作成できるから指定する必要があるが……『数学の1A』って何だよと思う人も居るだろうからちょっと解説しておくとしよう。

 

 うちの学校では『センター試験』が強く意識されている。

 俺たちみたいな新2年生はよっぽど意識の高い奴じゃない限りルールを熟知してる奴は居ないだろうが、試召戦争にガッツリと組み込まれているので否が応でも意識せざるを得ない。

 かなり細かい所まで話そうとするととんでもなく長くなるので割愛するが……一般的な『数学』って科目にも4種類あって、それぞれ『数学I』『数学II』『数学A』『数学B』となっている。そしてセンター試験では『I』と『A』を複合させた『数学I・数学A』という1つの科目として扱われている。

 だから、科目の指定をする時はわざわざ『数学の1A』と指定しなきゃならん。『数学の1』だけだと別科目になっちまうからな。

 

 以上、説明終了。ただでさえ若干面倒なセンター試験を更に面倒にしてるから無駄にややこしいな。

 まあいい。早速召喚するとしよう。

 

試獣召喚(サモン)!」

 

 コマンドの発音とともに魔方陣が浮かび上がり、そこからデフォルメされた俺自身のような召喚獣が現れる。

 身長は膝の高さくらいか。小さいと転びやすい気がするが、どうなんだろうな?

 

「これをこうして……意外と難しいな」

 

 俺がやりたい事は非常に単純。召喚獣の操作練習だ。

 1年の頃に召喚獣を使った実習は何回かあったが……せいぜい片手の指で数えられるような回数でしか無い。

 しかも、召喚獣の操作方法は思考による操作とかいうぶっ飛んだものだ。いやまぁ、格ゲーみたいなノリでゲームのコントローラーを渡されてもそれはそれで困るがな。あんな限られたボタン数で召喚獣を操作とかできる気がしない。

 まぁそういうわけで……召喚獣ってのは素人にはムチャクチャ扱い辛い。走る、武器を振るくらいはまぁ何とかなる。しかし、歩くのは逆に難しいし、紙一重で敵の攻撃を避けてカウンターを食らわすみたいな達人技はまず不可能だ。

 基礎動作を練習するのとしないとだとかなりの差が出るだろう。

 

「……よし。手の空いてる奴、2~3人くらい操作練習に参加してくれ。

 衝突に気をつけろよ。こんな所で戦死したら目も当てられん」

 

 Dクラスがここまでやってくるとしてもまだ時間はある。今のうちに満足できるまで動かさせてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 試験開始から30分が経過した頃、ポケットに突っ込んだ眼帯を再び身に着けて、先生に告げる。

 

「……これで、終了です。採点お願いします」

「それでは採点します」

 

 補充試験は1回につき1時間の試験時間が与えられるが、任意のタイミングで切り上げても構わない。点数的なメリットは無いが。

 今回の試験監督は学年主任である高橋女史だ。彼女は全科目の試験監督になれる上に、採点速度も群を抜いて早い。

 8枚もの答案用紙は1分も経たないうちに帰ってきた。

 

「はい、どうぞ。全て100点です」

「ありがとうございました」

 

 全て100点と聞くと超エリートに聞こえるが、この学園では点数には基本的に上限は無いのでこの程度は普通に居る。

 あくまでも大雑把な目安だが……Eクラスの上位6割くらいは既に平均点が100点くらいらしい。

 ちなみにAクラスは最低でも200点程度。トップクラスは400点近くになるらしい。

 

「剣、終わったか?」

「ああ。行ってくる」

「おう、頼むぜ」

 

 30分で合計800点が取れる事を考えると1科目に絞って真っ当に1時間受けた場合、単純計算で1600点になるわけだが……2つの理由からそう都合良くは行かない。

 第一の理由として、文月学園の試験は解いた問題の数に比例して難易度が上がっていく。なので、単科目に絞ってもせいぜい400点程度しか取れない。

 第二の理由として、僕の体質の問題だ。

 簡潔に言うと、僕は30分ちょいしか集中力が続かない。このバカみたいな点数の代償だな。それを越えて気合と根性で頑張ろうとすると強制的に意識が落ちる。

 今日はもう補充試験は受けられないな。慎重に立ち回るとしよう。







「結構システムが改革されてるわね」

「『センター試験準拠』は本来は終盤のみだったが、本作では最初からガッツリとセンター試験が意識されている」

「あれ? でも違ったら悪いけど、数学2って2年生の範囲なんじゃないの?」

「筆者の高校生時代の記憶なんて既に忘却の彼方なんでハッキリとは言えないが、もしそうだったとしても問題ない。
 文月学園なら先取り学習くらい普通にやってるだろうからな」

「……なるほど」

「ちなみに、今回は『数学の1A』のフィールドを指定しているが、1Aフィールドを作れる教師相手なら『数学の1』のフィールドも指定可能だ。
 その場合、基本的には1Aの点数が参照されるが、1の試験を事前に受けていた場合のみそちらの点数が優先される。
 原則として絞った方が点は取りやすいから、ひたすら『数学の1』の方だけに絞って勉強するというのもアリと言えばアリだな」

「う~ん、でも、それって逆はダメなんだよね?」

「ああ。
 『1A』で400点取れれば『1』でも400点で戦えるが、
 『1』でたとえ1000点取ろうとも『1A』の点数は0だ。
 役に立つ場面が限定されるという意味でも現実のセンター試験らしいな」

「まぁ、確かに」

「ちなみに、本文では割愛したが数学にもまだ種類がある。
 『簿記・会計』及び『情報関係基礎』だな。
 これらの細かい裁定は……設定だけは作ってあるが読者が意識する必要は無い。
 筆者も今のところは活用するつもりは無いしな!」

「じゃあ何で細かいルール作ったのよ……」

「……さぁな。
 一応、設定資料集みたいなのを作って投稿しようかという案もあったらしいが、無駄に長くなったから自重したそうだ。
 資料集の読み込みを前提にはしたくないからな」

「……それじゃ、次回もお楽しみに!」
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