『では次の問題です!
ここに3枚のコインがあります!
……が、1枚は偽物のコインで、見かけは全く同じですが重さが違います。
この偽物を天秤を使って判断する時、計測の最小回数は何回でしょうか?』
「これも引っ掛け問題……だろうな。どっかで聞いたことあるようなメジャーな問題だが」
「……偽物のコインが重いか軽いか。それさえ分かっていれば1回でできる。
だけど、今回はその指定が無い」
「つまり、2回必要になるな」
「……」コクリ
……大丈夫だよな? 2回で判定できるよな? 実は3回必要とか……無いな。大丈夫だ。
『それでは時間です! 答えをどうぞ!』
他の連中の答えを確認すると殆どが『2』と答えているようだ。
しかし極一部、2組だけだが『1』と答えているペアが居るようだ。
そのうち1組はさっき『ドイツ』と答えていたチンピラカップル。そしてもう一組が……
「……空凪くん。性格悪すぎない? 警戒してる人を狙い撃ちって」
「……のーこめんと」
すぐ隣の、御空だった。
「な、何だと? 1回で判定できる方法が……あっ」
「……雄二?」
「……とりあえず、答えを聞こう」
『それでは答えを発表します。
最小回数、それは1回です!
だって、1/3の確率で天秤は釣り合い、残り1つが偽物だと一発で看破できますから』
「っ!!」
「してやられたよ。今回の問題は『最小回数』。
2回ってのは頭の良い奴が運に頼らずに効率よく進めた場合の『最大の最小回数』だ」
警戒してなかったら何も考えずに1と答える回答者も居そうだが……警戒しているからこそ刺さったな。
『さて、次で最後の問題です。
ですが、次の問題に移る前に皆様に質問させていただきます。
この問題の製作者に殺意を覚えた方はいらっしゃいますか?』
奇妙な質問であり、そして愚問だ。
何故なら……ここまでおちょくられて殺意を覚えない奴が居るはずが無いからだ。
『該当する方は挙手を……ああいえ、心の中で同意するだけで結構です。
問題を深く疑わせて、更に嵌めるという行為。殺意を抱かないはずは無いですから。
そんな製作者ですが、皆さんに『疑う』という事をやってほしかったそうです。
疑う事は何も恥ずかしい事じゃない。世の中にはこんな問題を出すひねくれた奴も居るんだから。と。
……では、改めて問います。今、あなたの隣に座っている人は、信用に足りますか?』
隣に座る人、か。それはクイズに共に挑むペアの相方の事。俺の視点では翔子の事だ。
それは信用に足るか。疑って確かめろと。
『それでは第五問です。
まず、テーブルの下にもう1枚のフリップボードが置いてあります。それを手に取ってください。
そして、それぞれのフリップボードを手に取り、自分が最も信頼する人物の名をそこに書いてください。
この場に最も相応しい回答を出した方々に10点を差し上げましょう。
回答の制限時間は2分です。それでは始めてください!』
言われて確認してみると足元に確かにフリップボードがもう1枚用意されていた。
元々テーブルの上にあった1枚と合わせて2枚。俺と翔子がそれぞれに答えを書き、相応しい答えなら10点が貰える。
ここまでの累計得点よりも多い得点だ。身内だけのクイズ大会での最後以外が茶番と化すあるあるネタ……と言うより、ここで正しい答えを言えない者にウェディング体験をする資格など無いという事だろう。
この場での模範回答なんて分かりきっている。それはお互いの名前を書く事。
書いた事が本当か嘘かも出題者からは判断できないし、そもそも名前の把握も流石にできていないはずだ。模範回答を書くだけなら実に容易い。
……が、それは果たして本当に『正しい』答えだろうか?
「翔子。お前はどうする?」
「……私は……」
翔子はペンを持ったまま動かなかった。
何も考えてないわけではないだろう。俺と同じように『模範回答』には辿り着いているはずだ。
それでもなお、その手は動かない。
「何やってるんだ。いつものお前なら迷わず俺の名前を書いていただろうに」
「……雄二、私は、雄二の名前を書いても良いの?」
「そんなの俺が知るか。お前にとっての回答がそれなら書けば良い」
「……分かった」
翔子は少し迷いながらも俺の名前を書いた。
さて、俺は……どうするかな。
この問題で問うているのはあくまでも『信頼する人物』であり、『好きな人』とかではない。
だったら……まぁいいか。
『あと30秒です!』
時間も押しているので画数の多い『霧島』は省略して『翔子』とだけフリップボードに記入した。
『時間です! それでは、答えをどうぞ!』
他の回答者の回答を見回すと見慣れない名前が並んでいた。そりゃそうだな。
ちなみに、隣の席の剣と御空のコンビの答えはそれぞれこんな感じだった。
『剣くん』『零さん』
一瞬正解に見えたが、何か違う。
「フッ、本当に信頼できるのは自分だけという事だな!」
「ホントそれ。最後に頼れるのは自分自身だけね」
ウェディング体験の権利は自分から放棄したらしい。そもそもこの2人はカップルじゃないんだから当たり前だが。
『え~っと……何組かを除いて全員正解ですね。
皆さん、どうか忘れないで下さい。この日、信頼していると書いた事を。その気持ちさえ忘れなければ、きっと幸せなカップルになれますから。
……さて、最終的に1位を獲得したのは……坂本雄二さん、翔子さんのペアです! おめでとうございます!』
どうやら俺たちが1位だったようだ。天秤の問題以外は満点だったから当然と言えば当然だが。
『雄二さんと翔子さんは準備がありますので係員の指示に従って動いてください。
2位以下の方々も順次お呼びさせて頂きます。園内放送でお呼び致しますので、それまでご自由にお過ごし下さい』
「いや~、答え甲斐のあるクイズだったわ。
……製作者には殺意が湧いたけど」
「何気に裏正解含めて全問正解してる貴様がそれを言うか?」
「だから言ってるじゃないの。答え甲斐があったって」
「それと同時に殺意を抱かれているんだが」
「? 何か問題でも?」
「いや、無いな」
「それでは、次回もお楽しみに!」