バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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09 第6の問題

「いや~、最後の最後で逆転されちゃったわね~」

「おめでとー2人とも」

 

 隣の席の御空と剣がわざとらしく勝利を讃えてくる。

 最後の問題は拾おうと思えば簡単に拾える問題だったから実質負けだった。

 こんな性格の悪いクイズと学力が必ずしも結びつくわけではないが……こんなのが何故Aクラス入れなかったのか非常に疑問だ。

 ……まぁ、今気にする事じゃないか。

 

 ウェディング体験とかいう極めて不本意なイベントが用意されている。

 バッくれたい所だが、折角翔子が頑張って勝ち取った権利だ。本当に結婚するわけでもあるまいし、付き合ってやるか。

 

「坂本サン、翔子サン、どうゾ、こちらヘ!」

「……ああ、行くか」

「……」コクリ

 

 似非外国人の係員に促されて体験の会場へと移動する。

 ……が、その前に剣から声をかけられた。

 

「なぁ雄二。貴様はまだ、嫌っているのか?」

「何だと? 何をだ」

「……なぁ霧島。疑う事は悪い事じゃない。疑う事は知る事だ。

 疑う事で、理解は深まる。信じる事で、予測ができる。

 貴様なら、きっと理解できるだろう? このバカが嫌っているものが何なのかを」

「…………」

「僕からの第6問目の問題だ。じゃあな」

「あ、おいっ!」

 

 そんな言葉を言い残して去って行った。

 あいつの言葉はいちいち分かり辛いな。

 嫌っている……? どういう事だ?

 

「翔子、あいつが何を言っていたのか分かるか?」

「…………人の心は結局は予測するしかない」

「ん?」

「……絞れないのなら場合分けして仮説を立てていけば良い。

 その中で、雄二が何かを嫌っている可能性。候補は2つ。

 ……私は雄二を信じたい。だから答えは1つ」

「おい、剣の病気が伝染ったか? 分かるように話してくれ」

「……雄二、答え合わせをしよう。10分でいい。2人きりで話をさせて」

「あ、ああ、構わんが……」

 

 俺たちを案内しようとしている似非外国人には式場より先に2人になれる場所へと案内してもらおう。

 

「おい、ちょっと待ってくれ。2人きりで話したいんだが良い場所はあるか?」

「オオゥ、そんナ大胆ナ! フタりきリの場所にワたしを連れこンでドウする気デスか!」

「テメェじゃねぇよ! 翔子と話したいって言ってんだよ!!」

「オォッとしツれい。ニポンゴ、難しイネ」

「…………」

 

 一瞬ぶん殴ってやりたくなったが、確かに文面だけを見たら誤解しかねない台詞ではあったか。

 ……いやでもその勘違いは無いだろう。本当にぶん殴ってやろうか迷ったが、案内人が居なくなると困るので我慢する。

 

「ふム……でハ、式場の控エ室が良いデしょう。予備の空キ部屋がアるのデ、そこナら誰も来まセん」

「結局式場なのか……まぁ、無駄に歩き回らなくて済むのは助かるな」

「でハ、今度こソご案内しマス!」

 

 

 

 

 案内された空き部屋は隅の方に椅子と机が折りたたまれて置いてあるだけの殺風景な部屋だった。

 『客に案内する場所』ではないんだろうな。

 ここなら確かに誰も来ないだろう。

 

「で、翔子。何をするんだ?」

「……答え合わせ。雄二が『何かを嫌っている』という問題の答え合わせ。

 正解を知っているのは雄二だけ。だから私の考えを聞いて合っているか判断してくれれば良い」

 

 と言われてもな。俺自身にも心当たりが全く無いんだが。

 ……とりあえずやってみるか。

 

「分かった。聞くだけ聞かせてくれ」

「うん」

 

 

 

 

「まず初めに、これはウェディング体験を勝ち取る為のクイズの6問目。

 だからきっと、これは私と雄二に関わる問題。

 その上で『雄二が嫌っているもの』を当てるのであれば答えは1つしかない。

 それは……私の事」

「…………」

 

 俺が翔子を嫌っている? それはどうだろうか?

 ……そんな事は無いと言えるな。翔子の推理は的外れだ。

 

「だけど、これは剣が出した問題。

 『安直な答え』が答えである訳が無い。それに、これは願望が混ざってるかもしれないけど、私自身は嫌われていない。そう信じてる」

「翔子……」

「だから残された答えは1つだけ。

 剣の言う通り、雄二が本当に何かを嫌っているのであれば、それは雄二自身の事」

「っ!?」

 

 な、何だと!? それは確かに奇想天外な答え……っておいおい。

 

「どうしてそうなる。俺ほど自分勝手で自分が好きな奴はそうそう居ないぞ」

「……雄二はナルシスト?」

「違ぇよ!! そういう意味じゃねぇよ!!」

「……例えばどんな所?」

「例えば……そうだな……試召戦争で教室をお前たちから奪おうと……」

「あれは奪おうとしたわけじゃなくて挑戦したかっただけなのは戦後交渉を見れば明らか。そうじゃなかったらアッサリ教室を放棄するわけが無い」

「むぐぐ……じゃあそうだな、清涼際では剣に進行を押しつけて逃げ回って……」

「理由があったとはいえ後半はしっかりと参加していた。その時の雄二はむしろ人の為に働いてた」

「うぐっ!!」

 

 お、おかしい。どうやっても翔子に論破される。

 他にも例は色々と出せそうだが、強引にこじつけられて解釈されそうだ。

 

「……雄二、もう誤魔化さなくてもいい」

「いや、俺は誤魔化してなんか……」

「……自分を嫌って、自分を悪く見せなくてもいい。

 私はしっかりと見つけ出すから。本当の雄二を。

 だから、『雄二』を許してあげて欲しい。私の為に、これ以上傷付かないで欲しい」

 

 

 翔子の話を聞いて、思った。

 ……何を頓珍漢な事を言ってるんだ、と。

 確かに、翔子に対して自分を悪く見せようとしているというのは間違ってはいない。

 だが、それは単に俺という存在が『そういう存在』なだけであり、無理に悪く見せているわけではない。

 ましてや傷付いているなど、有り得ない事だ。

 

 

「……雄二、どう? 私の答えは、正しい?」

「不正解だな。残念だったな。

 ……残念と言うか、そもそも答えが無い問題だから意味が無い」

「……そう、雄二ならそう言うと思った。合ってても、間違ってても、きっとそう言うって」

「なんだそりゃ」

「……雄二を信じてるから、雄二の言葉は信じない。

 ……だから安心して? 必ず、雄二を理解するから」

 

 違うと言ってる事を一方的に言われたって困るんだがな……

 翔子がそれで満足なら、好きにさせてやるか。

 本当に俺を理解しようとするなら、きっとすぐに目が覚めて俺から離れていくだろうから。






「以上、霧島翔子の答え合わせだ」

「答え合わせって言うか霧島さんが一方的に意見を述べただけな気がするけど」

「リメイク前ではこの辺でこの2人はくっついたんだが……今回はまだ時間が必要なようだな。
 まぁ、無理をする事は無い。原作終了まではあと数ヶ月あるのだから」

「数ヶ月って意外と短いけどね」

「この日常がやたら濃い学園なら結構かかる」

「そりゃそうだけどさ」

「……さてと、今回の話で僕がやりたかった事は概ね達成されたな。
 あとはのんびりとウェディング体験を進めて、のんびり帰るだけだな!」

「空凪くん、わざとフラグ立ててるよね?」

「うん」


「……では、次回もお楽しみに!」
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