バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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11 狂人の最終問題

 騒いでいるチンピラに向かって剣が一直線に歩みを進める。

 歩きながら右手で乱雑に眼帯を外し、チンピラ男の正面に立った。

 

「あぁ? 何だテメェ」

「お客様。何卒、静粛にお願いします」

「んだと? 文句あんのかコラ! 俺たちゃオキャクサマだぞ!!」

「文句が無かったらわざわざ言いませんよ。

 まったく、仮初のものとはいえ結婚式の場で騒ぎ出すとは。親の顔が見てみたいものだ」

「おいおい、もしかして喧嘩売ってやがんのか?」

「お客様も哀れな人だ。常識を教わらずに成長してしまったんですね。

 これからも色々と大変でしょうけど、頑張って生き延びて下さい」

「よーし分かった。10秒やる。それまでに土下座したら許してやるよぉ!!」

 

 剣がチンピラの発言を徹底的に無視して挑発しているせいで会話が微妙に噛み合っていない。

 尤も、あいつらがやっているのはディベートの類ではないから全く問題ないが。

 

「ここは牧師をいつでも呼べるように教会が併設されています。

 そこならきっとあなたのような可哀想な迷える仔羊でも受け入れてくれ……」

「グチャグチャとうるせぇんだよ!!!」

 

 とうとう我慢が効かなくなったようだ。チンピラが剣を殴りつける。

 それを当然のように予期していたらしい剣はその拳をしっかりと左腕で受け止め……そして後ろに吹っ飛んだ。

 そんなに強い拳には見えなかったから恐らくは自分から後ろに吹っ飛んだんだろう。

 …………いやいや待て待て。もっと大事な所を見落とす所だった。

 

 剣は、左腕で、防いだ。

 

 ……そう、折れているはずの左腕で。

 

 

Q、さっきまでピンピンしてた人間が腕を殴られ、検査したら骨折してた。骨を折った犯人は?

 

A、腕を殴った人。(真犯人:翔子)

 

 

 剣らしい、非常に捻くれた問題だ。チンピラに少し同情しそうになるが、そもそも最初に騒ぎ出したのはあいつらだったな。自業自得だ。

 

「ハッハッハッ、参ったかこのガキが!」

「キャー、リュータかっこい~!」

 

 チンピラどもがそんな呑気な事を言っているが、どうも自分のやらかした事が理解できていないようだ。

 剣は倒れたままピクリとも動かないというのに。

 そんな剣に向かって近くに居た女子……御空が駆け寄った。

 

「ちょ、ちょっと!? 大丈夫なの!? 意識はある!?」

「う……ぐ、大丈夫だ。腕が痛い事を除いては……」

「えっ? そう言えば怪我して……って、何これ!? とんでもない事になっちゃってるわよ!?

 ……まさかとは思うけど元から……いや、有り得ないか。元々怪我してたのが悪化してこうなったって所でしょうね」

「そんな事より、医務室に連れて行ってくれないか? この施設は万が一お客様が怪我をしても迅速に治療ができるような設備が整っているからな!」

「そんな宣伝しなくていいから!! スタッフさん! 担架持ってきて!!」

「ついでに、暴れだす愚か者を捕える為の警備員も充実して……」

「まずは黙っときなさい!! 少しの振動でも相当痛むはずよこれ!?」

 

 そんなこんなで医療スタッフが駆けつけ、辺りが騒がしくなる。

 ようやく事態を察したらしいチンピラが顔色を変えた。

 

「ふ、ふん! 付き合ってらんねーよ! 俺は帰る!」

「あっ、リュータ! 待ってよ!」

 

 そそくさと逃げ帰ろうとするが問題ないだろう。

 理由は……ついさっき剣が瀕死の状態で宣伝していたからだ。

 

「お客様、少々ご同行願えますかな?」

「なっ、何だテメェは!」

「申し遅れました。私、如月ハイランド警備課の叢雲(むらくも)と申します。

 先刻の騒動について何点か質問がありますのでご足労願います」

「こ、断る! 俺は今から帰って……」

「では、行きましょう」

「なっ、ちょっ、引っ張るな! わ、分かった! 付いていくから放せぇ!!」

 

 警備員のご登場だ。

 もうちょい早く来てくれれば剣が更に怪我する事も無かったかもしれんが……まぁ、どのみち酷い状態だったから大して変わらないだろう。

 と言うか、警備員の存在を把握していたなら待てば良いだけの話だ。自分の身を犠牲にしてまで冤罪を吹っかけるとか、よっぽど腹が立っていたんだろうな。

 

 

『え~、皆さん。予想外のハプニングはありましたが、結婚式体験を続行したいと思います!』

 

 

 おっと、そうだった。そう言えばまだ式の最中だった。

 翔子の方に視線を向けるとコクリと小さく頷いた。

 さっきまでの泣きそうな顔ではなくなったようだな。少々癪だが後で剣に礼を言ってやろう。

 

 

『さて、本来なら牧師様を呼んで永遠の愛を誓う宣誓を行うのですが……今回は省略します』

 

 

 なんだと? いや、助かるが……最初に省略した新郎プロフィールと違ってこっちはほぼ手間がかからない代物だ。

 それをわざわざ省略するというのはかなり不自然だ。

 

 

『そしてその後の誓いのキスも……やっぱり省略します』

 

 

 そっちは理解できなくはない。ただの体験でそこまでやるのは重すぎる。

 しかし、如月ハイランドの宣伝戦略としては是非とも俺たちに結婚して欲しいはずなんだが……

 

 

『誓いなんて必要ありません。何故なら、彼らが愛し合っているのなら、必ずまたここに来るからです。

 この後簡易体験される皆様も、誓いは結構です。

 今、皆様の隣に立つ人物が共に人生を歩むに相応しいと確信が持てた時、そして年齢的な条件を満たした時、またこちらにいらしてください。

 私たちスタッフ一同、皆様の人生における一つの終着点を、そして新たなる始まりを全力で応援させて頂きます』

 

 

 『今のパートナーは本当に信用できるのか』

 司会の工藤の発言を要約するとこういう事になる。喧嘩売ってる台詞だな。

 これは……間違いなく剣が関わってるな。ちょっと疑わせる程度で破局するならそうなってしまえというあいつらしい過激な思考だ。

 尤も、本当にその程度で破局するようであれば結婚しても上手くは行かないだろう。

 如月ハイランドとしても『沢山の結婚を成立させたは良いが大半がすぐに別れた』なんて事になったら大損間違い無しだ。剣の独断かとも思ったが意外と企業の方にもメリットはあるのかもしれない。

 

 今のパートナー……か。

 翔子が信用できるか、なんて考えは無意味か。

 果たして翔子は信用できる人を見つけられるんだろうか。

 

 

『以上で、如月ハイランドウェディング体験を終了させて頂きます。

 ご来場の皆様、ありがとうございました!』






「何というか……チンピラも不幸だったわね。こんな狂人の逆鱗に触れちゃって。自業自得ではあるけども」

「不幸だったという点に関しては完全に同意できるな」

「しっかしまぁ……清涼祭の時といい……そのうちキミに『当たり屋』って称号が付くわよ?」

「言い得て妙だな。
 しかし称号ハントするのは嫌だな。どっかのストーカーモブと被ってしまう」

「……リメイク前で居たわね。そんな人」

「称号は『閃光の神滅剣』だけで十分だ。これ以上は勘弁してくれ」


「では、次回もお楽しみに!」
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