バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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優等生の物語 プロローグ

 前回までのあらすじ!

 

明久「優子さんとあの中二病が付き合ってるって!?

   よし、僕が応援してやらないと!!

   まったく、世話の焼ける副代表様だなぁ~」

 

 

 

 

「姉上、ちょっと良いかのぅ?」

 

 アタシがそんな声をかけられたのは、剣くんと愛子が何かの悪だくみを始めてから数日後の事だった。

 

「何? 今良い所なんだけど」

「読書なぞいつまで経っても終わらぬではないか」

「それはそうだけど……まあいいわ。何?」

「うむ、明久からの伝言なのじゃ。明日の昼休みに屋上で話せないか、と」

「……何でわざわざアンタにそんな伝言を……普通に言ってくれればいいのに」

「う~む、実際にそうしようとしたそうなんじゃが……」

 

 

 

  ~~~~~~~~~~

 

 

「すぅぅぅ……はぁぁぁ……よっしっ! まずは木下さんを屋上にでも連れ出して……」

『吉井っっ!!』

「うわっ、だ、誰!? その声は……須川くん!?

 どうしたのそんな黒い服着て!?」

『女子に声を掛け、あまつさえ屋上に呼び出して告白しようとは言語道断!!

 風紀委員改め異端審問会の名の元に裁きを下す!!』

 

『『『『『『死刑! 死刑! シケイ!!』』』』』』

 

「い、いや誤解だよ!? どっから出てきたの告白!? 事実無根だ!!」

『告白スポットである屋上に呼び出す時点で告白のようなものだ!!

 一億歩譲って告白では無かったとしても……女子に声をかけようとした時点で死刑だ!!』

「そ、そんな理不尽なっ!! うわぁあああ!!!」

 

 

  ~~~~~~~~~~

 

 

「……というようなやりとりがあったようじゃ。

 ちなみに明久はその後何とか逃げおおせたようじゃな」

「……Fクラスって、個性的な人が多いみたいね」

「うぅむ……否定出来ぬのぅ」

「事情は分かったけど……一体何の用なの? まさか本当に告白じゃあるまいし」

 

 もし告白だとしたら愚弟経由で連絡するんじゃなくてせめて自分で伝えてほしい。下駄箱に置き手紙とかでもいいわけだし。

 そして呼び出す先は屋上とかじゃなくて伝説の木にして欲しい。ベタかもしれないけどだからこその良さがあると思う。

 更に鈍器を手に待っていたら完璧ね。

 

「内容までは聞いておらぬのぅ。できれば行ってあげて欲しいのじゃ」

「ん~……吉井くんなら変な事にはならないでしょう。明日の昼休みだったわね。屋上は旧校舎と新校舎があるけど、どっち?」

「それも聞いておらぬのぅ……」

「じゃあ、新校舎の方に行くように伝えておいて」

「了解じゃ。では失礼するのじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 という訳で翌日昼休み。

 

「さてと、待ち合わせ場所はここのはずだけど……」

 

 屋上への扉を開いて辺りを確認する。吉井くんの姿はまだ確認できなかった。

 このアタシを呼んでおいて待たせるとはね。まぁ、新校舎の屋上は同じ新校舎にあるAクラスの方が近いから仕方ないと言えば仕方ないけど。

 こういう時はヒマを潰すものがあれば良いんだけど、読みかけの本は学校には持っていていないし、ゲーム機の類も持っていない。

 のんびりと日向ぼっこでもして待ちましょうか。

 

 そして数分後……

 突然、屋上の扉が勢いよく開け放たれた。

 そこから現れたのは、勿論吉井くんだった。

 

「ハァ、ハァ……や、やっと着いた……」

「大丈夫? どうしたのそんなに慌てて」

「あっ、木下さん。ごめん、待たせちゃった?

 須川くんを撒くのに時間がかかっちゃって……」

 

 ……本当に何があったんだろうか? それはそれで気になるけど本来の用事を済ませるとしよう。

 

「そんなに待ってないから気にしないで。

 それで、何の用なの?」

「ああ、うん! 木下さんにこれを渡したくて」

 

 吉井くんが差し出してきたのは一枚の封筒。

 この中にラブレターが……っていう事は無さそうね。何の色気もない茶封筒でのラブレターなんてムードもへったくれも無い。

 

「何これ? 開けてもいいの?」

「うん。開けちゃって。封筒に入れたのは汚さない為だけだから」

「それじゃあ遠慮なく」

 

 特に封などはされていないので普通に中身を取り出す。

 何だろうこれ、何かのチケット……の、裏面かしら。ひっくり返して表面を確認するとこんな文字が目に飛び込んできた。

 

 『如月ハイランドプレミアムペアチケット』

 

 ……という文字が。

 

「…………っ!?」

 

 ちょ、ちょっと待って。整理させてほしい。

 このチケットは代表が切望していたものであり、召喚大会の優勝者は剣くんと吉井くんだったから吉井くんが1枚持っているのは何も不思議な事じゃない。

 重要なのは……この『如月ハイランド』という施設がカップル向けの施設である事。

 遊びに興味の薄い優等生揃いのAクラスに居てもここに関する噂は届いてくるというかなり有名な施設だ。吉井くんが知らないという事は有り得ない……とまでは言わないけど考えにくい。

 これをアタシに……男子である吉井くんが女子であるアタシに渡す。

 それはつまり、告白のようなものなんじゃないだろうか。

 

「……えええええっ!?」

「うわっ、そこまで驚く?」

「いやいやいやいや、ちょっと待って、すーはーすーはー……」

 

 お、落ち着きなさい木下優子。

 自他共に認める優等生であるアタシはラブレターの類くらい何度か貰った事がある。この程度で取り乱す事は無いわ。

 そう、ラブレターくらい何度も……

 

 

  ……ある日の回想……

 

「き、木下優子さん! これを受け取ってください!!」

「……念のため確認しておくけど、アタシによね? 秀吉じゃなく」

「な、何言ってるんですか! 秀吉に渡せるわけが無いでしょう!!」

「……そう。気持ちは嬉しいけど今はそういう事に時間を費やす気は……」

「これを、秀吉に渡してください! 直接渡すなんて無理です!!」

 

 ピキッ

 

  …………………………

 

 

「ど、どうしたの木下さん! 何か凄く怖い顔してるよ!?」

「んっ、コホン。ごめんなさい。何でもないわ」

 

 何か嫌な事を思い出してしまったけど大丈夫。落ち着いて対処すれば問題ないわ。

 

「吉井くん。気持ちは嬉しいけど、こういう物を受け取るわけには……」

「そ、そんな! 木下さんじゃないとダメなのに!」

「え、そうなの? アタシ以外にも渡せそうな人は居るんじゃないの?」

「そんな事無いよ! 他の誰でもない、木下さんにしかこのチケットは渡せないんだ!」

「そこまで!?」

 

 そんなに好かれる要素なんてあったかしら?

 理由までは分からないけど……悪い気はしないわね。

 ここまで熱烈に誘いを受けた無かったと思う。

 別に一緒に遊園地に行ったからといって即座に『付き合う』って事になるわけでもないし、ましてや強制的に結婚させられるわけでもない。

 だったら、ちょっと付き合ってあげるのも悪くはないか。

 

「……分かった。貰ってあげる」

「ホント? 良かった~」

「でも、これを受け取ったからと言って即キミと付き合うとか、そいういう意味じゃないから。勘違いしないでね」

「え? うん。何言ってるの。そんなの当たり前じゃん」

 

 ポカンとした表情でそんな言葉を返された。

 どうやら完全に割りきってるみたいね。安心ではあるけど、ちょっと釈然としないわ。

 

「さてと……使える日付は決まってるみたいね。

 現地集合……には遠すぎるか。どこかで待ち合わせって事になるわね」

「え? う~ん……そう言えば遠いんだっけ。そうなるね」

 

 如月ハイランドはこの学校の近辺から電車やバスを乗り継いで2時間はかかるくらいの場所にある。

 田舎にある……のはどちらかと言うと文月学園の方かしらね。如月ハイランドに比べたらだけど。

 

「それじゃ、どこで待ち合わせる?」

「……え?」

「いや、待ち合わせ場所決めておかないと一緒に行けないでしょ」

「そりゃそうだけど……何で僕に?」

「……ん?」

 

 会話が微妙に噛み合ってないみたいだ。

 何となく、吉井くんの態度が他人事っぽく見えるけど……

 

「……吉井くん、念のため確認させて欲しいんだけどさ。

 このチケットは『キミとアタシで一緒に行こう』っていう意味で渡してくれたのよね?」

「え? 違うけど……」

「…………」

 

 確かに、振り返ってみると『一緒に行こう』とは一度も言ってなかったわね。『渡したい』とは言ってたけど。

 

「……つまり、『コレをあげるから自由に使って』っていう事?」

「は、はい、そうデス!」

「……そう、分かったわ」

「そ、それじゃあ僕はこれで……」

「まぁ待ちなさい。そんなに慌てて帰る事は無いわ」

「ひぃっ!?」

 

 吉井くんが逃亡しようとしたのでガシッと肩を掴む。

 あらやだ吉井くんったら。そんな怯えた顔をして。

 まるでか弱い乙女であるアタシに怯えてるみたいじゃないの。

 安心しなさい。熱烈に告白されてたのが実は勘違いだったと分かって怒ってるとか、そんな事は全く無いから。

 吉井くんがチケットを自由に使えと言うなら、お望み通りにしてあげましょうか。

 

「吉井くん、来週の日曜の予定、空いてるかしら?」

「え、えっと……その日は……」

「良かった。空いてるのね。それじゃあ7時半に文月駅に来なさい。文句無いわね?」

「いや、ゲームの特売が……」

「返事は?」

「は、はいっ! 行きます!」

「よろしい。それじゃあ、また週末に会いましょう」

 

 そう告げてアタシは屋上から颯爽と去った。






「優子編開始だな」

「リメイク前ではキミが色々手を回して吉井くんと優子さんの間を取り持ってたみたいだけど、リメイク版では吉井くん本人が動くしかないから大変ね。
 何か異端審問会が発足してるし」

「仮に異端審問会が居なかったとしても、Aクラスに乗り込んで呼びつけたらそれはそれで色々と面倒なんで結局秀吉経由で連絡して待ち合わせする事になっただろうな。
 ……さて、せっかくだから冒頭の明久の誤解について解説しておくか。真相が分かるのは僕と、あと噂してた女子たちくらいしか居ないんで本編では解説できないし」

「キミと優子さんが付き合ってるとかいう根も葉もない噂の事ね」

「葉っぱくらいなら普通にあるけどな。優子さんに『ありがたく付き合わせて頂きます!!』って言われたのは本当だし」

「……えっ、そんな場面あったっけ?」

「あったぞ。Dクラスで」

「えっ、AクラスじゃなくてDクラス……?
 ……あああああっっ! あの時の!?」

「ああ。『小野寺優子』に条件付きで大量注文してやった時の台詞だ。
 感想では一名だけ看破してくれたようだな。
 ……まぁ、そもそも感想自体が少ないんだが」

「優子……確かに優子さんねぇ……」

「明久が木下優子に積極的に関わる理由を作るのはかなり厄介だったんだが……奇しくも小野寺のおかげでサックリ進んだ。
 小野寺優子を登場させる事を決断させてくれた某読者には感謝だな。
 ……もし小野寺が居なかったら最悪の場合は僕から木下に渡す必要があった。木下→吉井の好感度がリメイク前より低いんで少々強引だがな」

「その好感度が高かったら普通に渡すって時点でちょっとアレだけどね」

「僕だからな」

「……凄く納得したわ。

 では次回もお楽しみに!」
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