バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

66 / 183
01 カップルではない2人組

 親切心からチケットを優子さんに渡したはずなのに、気付いたら脅迫されて日曜の予定が埋まってた。

 何を言ってるかよく分からないと思うけど僕にもよく分からない。

 ……え? 完全に理解できてる? ハハッ、無理しなくてもいいよ。この僕ですら全く理解できてなかったんだからさ!

 

「うぅぅ……眠い……」

 

 7時半に駅まで来いって言われたから少し早めに出発して7時過ぎには着いた。

 すっぽかしたらどういう事になるか全く想像が付かないから根性で起きたよ。

 う~ん……何をやらされるんだろう? 買い物の荷物持ちとかかな?

 良く分からないけど怒らせてしまったみたいだからそのくらいなら喜んで引き受けよう。

 

 

「あら? 吉井くん早いわね。ちょっと見直したわ」

「え、あっ、木下さん! おはよう」

「おはよう。待たせちゃったかしら? もしそうならごめんなさい」

「ううん、全然待ってないよ」

「本当に?」

「うん」

「そう、なら良かった」

 

 今の時刻は7時15分くらいなので気遣ったとかではなく本当に大して待ってなかった。

 そもそも待ち合わせは30分だから優子さんが謝る必要は一切無い。

 

「それじゃ、行きましょうか」

「え? どこに?」

「は?」

「な、何でもないよ! さぁ行こう!!」

 

 何だか不穏なオーラを漂わせてきたので同意しておく。行き先は全く分からないけど!

 

「はぁ、それじゃあ行きましょうか。

 ……話は移動しながらでもできるし」

 

 

 

 優子さんが買ったものと同じ乗車券を買って、同じ電車に乗り込んだ。

 帰りのお金足りるかなぁ……いざとなったら歩いて帰るしかないか。

 電車の中は幸い空いていて、優子さんと2人で隣り同士で座れた。

 

「……さてと、一応、分かってるとは思うけど念のため説明しておくわ。

 アタシたちの目的地は『如月ハイランド』よ」

「も、勿論分かってるさ!」

 

 そっか。目的地は如月ハイランドだったのか。

 ……えっ、ええええっっ!?

 

「どうかしたの?」

「いや、あのえっと……1つ訊いてもいいかな?」

「何?」

「その……木下さんは剣と付き合ってるって話を聞いたんだけど……」

「はい? 一体誰がそんな事言ってたの」

「Bクラスで噂話してるのを小耳に挟んだだけだよ。違ったの?」

「違うわよ!! 誰が好き好んであんな狂人と付き合わなきゃいけないのよ!!

 あんなのと積極的に関わってたらストレスで寿命が消し飛ぶわよ!!」

「そ、そこまで!? ……そこまでか。確かに」

 

 剣は決して悪人ではないんだけど……『面白そうだから』という理由で事件を起こしたり、突拍子もない行動を取ったりするので巻き込まれる方は堪ったもんじゃないだろう。

 そんな災害みたいな奴と優子さんが付き合う……確かに無いや。

 

「……ああ、だから吉井くんには他人事だったのね。

 チケットを渡したらアタシと剣くんとで一緒に行くと思ってたと」

「う、うん。そうだよ」

「……それじゃあ、アタシからも質問。

 キミは確かチケットを手に入れたら誘いたい人が居るって言ってなかった?」

「あれ? そうだっけ?」

「……よく考えたら『チケットが欲しい』とは言ってた気がするけど『誘いたい』とまでは言ってなかった気がするわ

 もしかして、最初からアタシに渡すつもりだったの?」

「ううん、最初は売る気だったよ」

 

 という建前でチケットを求めていた。学園長との事は言うべきじゃないからそういう事にしておこう。

 

「……はぁー……そういう事」

「な、何かゴメン。それより木下さんも欲しがってたよね」

「……今だから言うけど、もし優勝できてたらキミに渡すつもりだったのよ」

「ええっ!? どういう事?」

「試召戦争の時のお礼みたいなものよ。

 ほら、あの時キミは何でも命令できたのに、凄くささやかなお願いだけで片付けてくれたでしょ?

 だから、運良くチケットが手に入ったらあげようと思ってたの。どうせ誘う相手も居ないし、言い方は悪いけど代表を手伝うついでに手に入ったものをあげるだけで借りを返せると思えば安いものよ」

「そ、そうだったんだ。別に気にしなくても良かったのに」

「これはアタシのけじめみたいなものよ。

 キミが欲しがってるって言うからそう答えたんだけどね。まさか売り飛ばすつもりだったとはねぇ……」

「うぐっ……ごめんなさい」

「別にいいわよ。嘘吐いてたわけでもないし」

 

 まさか僕に渡すつもりだったとは……

 …………あれ?

 

「……あの、木下さん。

 結局僕達2人で如月ハイランドに行く事になってるけど……どうしてこうなったの?」

「……何か、他人事でいたキミがちょっとムカついたんで巻き込んでやろうかなと。

 遊びに行く事自体は気分転換になるし、ペアチケットだからパートナーが必要だけど、他に誘う相手も居ないし」

「そうなの? 木下さんだったら誰でも付いてくると思うけど」

「そりゃ適当な人に声をかけたら一緒に行ってくれる人は居ると思うけど、如月ハイランドってカップル向けの施設じゃない。

 告白だとか勘違いされたら凄く面倒。キミならそんな事は無いでしょ?」

「なるほど……要するに人数合わせ?」

「平たく言うとそうなるわね」

「……あれ? だったら女子と行けば良かったんじゃない?」

「…………それは盲点だったわ。

 吉井くん。今から帰りなさい」

「えええええっ!? もう電車乗っちゃってるのに!?」

「フフッ、冗談よ。今から追い返すような事はしないわ。

 ここまで来たんだから、一緒に楽しみましょう」

「よ、良かった……うん、そうだね。

 遊園地に行くなら、楽しまないとね!」

 

 

 

 

 

 電車やバスを乗り継いでおよそ2時間。ようやく如月ハイランドに到着した。

 遊園地なんだからもっとアクセスを良くしてくれてもいいのに。

 

「イラっしゃイまセ! 如月ハイランドへヨーこソ!」

 

 受付には怪しげな喋り方の係員が立っていた。

 少し不安になってきたけど、優子さんは顔色一つ変えずにチケットを取り出した。

 

「これ、お願いします」

「拝見イタしマス。

 ……ハイ、OKデス! ごユッくりオ楽シみくだサイ!」

 

 特に問題なく通してもらえた。チケットの無害化は剣から聞いてはいたけど、ちゃんとやってくれてたんだね。

 僕達は受付を抜け、園内地図の前まで進んだ。

 

「それじゃ、まずはどこから行きましょうか」

「う~んと……結構色々あるみたいだね。誰か教えてくれれば良いんだけど……」

 

 そんな事を呟いた、その時だった。

 

「あ、お~い!」

 

 突然響いた女子の声。どこかで聞き覚えがある声だ。

 聞こえた方向に視線を向けると、これまた見覚えのある顔が2つ並んでいた。

 

「御空さんと……剣!? どうしてここに!?」

「……それはこっちの台詞だ。貴様ら、どうしてここに居るんだ?」

 

 

 

 

 

 

 ……おっかしいわね。剣くんのチケットは代表に渡される所をこの目でハッキリと見てたはずなんだけど。

 良く似た別人である可能性を一応疑ってみたけど、白髪に黒い眼帯、それに加えて真っ赤な包帯を腕に巻いている重度の中二病患者がそうそう居るとは思えない。

 どうして……と言うよりどうやってここに入ってきたのかしら。

 そして、どうしてBクラスの副代表と一緒に居るのかしら。

 ……なんて考えてても分かる訳が無いわ。直接訊いてみましょう。

 

「剣くん、どうしてここに居るの?」

「一言で言うと……バイトだ」

「……御空さんもバイト?」

「知り合いか?」

「知り合いってわけじゃないけど、愛子と同じく転校組って事で少しは噂になってたから」

「そういうもんか。コイツは違う。客として1人でやってきて偶然遭遇しただけだ」

 

 こんな所で嘘を吐くとも思えないから多分本当に偶然だったんだろう。

 意外な組み合わせ……でもないか。案外お似合いなのかも。

 

「それよりもだ、明久。貴様がコイツを誘っていたとはな」

「いや~、誘う予定は全く無かったんだけど……気付いたら成り行きで……」

「どんな成り行きだ」

「あ、アハハ……そ、それより、バイトって言ってたよね!

 ここのガイドみたいな事もやってる?」

「むしろそれがメインの業務だな。何だ、お勧めでも知りたいのか?

 あっちのカップル用ジェットコースターとか、

 そっちのカップル用メリーゴーランドとか、

 向こうのカップル用観覧車とか……

 ……まぁ、そんな感じのがお勧めだな」

「ちょっと待ちなさい! どうして悉くカップル向けって付いてるのよ!!」

「そういう施設だからな」

 

 いやまぁ、そういう施設なのはアタシも知ってたけど、ここまで徹底してるとは……

 いやいや、あくまでもカップル向けって名前が付いているだけで、内容自体はそう違いは無いはず。

 

「それじゃあ行くだけ行ってみましょうか。当てもないし」

「そうだね……そうしよっか」

 

 ひとまず、お勧めの中から手近な所に行く事にした。

 

 

 

 

「……空凪くん、良かったの?」

「何がだ」

「内容、ちゃんと教えなくて」

「行けば分かるからな。

 それに、あの2人……ちょっと面白そうだからな」

「うわぁ……悪い顔してる」

 

 

 

 

  ……そして、数分後……

 

「………………」

「き、木下さん……だ、大丈夫……?」

 

 ジェットコースターを降りた後、吉井くんが私を気遣ってくれた。

 別に絶叫系が苦手とか、そういう事は無い。無いけど……

 

「お客様、ご満足頂けましたでしょうか?」

「ふざけんじゃないわよ!! これ作った奴は頭のネジが2~3本ぶっ飛んでるんじゃないの!?」

 

 満面の笑みで話しかけてきた剣くんに八つ当たりする。

 いや、正統なクレームだろうか? うん、クレームだ。

 

 私たちが乗ったジェットコースターは『カップル向け』という名に相応しいものだった。

 ちょっと広めの座席に2人で座らせられた上に安全バーで拘束されてガックガックと揺さぶられる。

 考えたバカは紛れもなく天才だと思うけどバカだ。

 

「ただのバイトに文句言われてもな。僕が考えたわけでもないし。

 まぁ、ここの責任者の霜月さんに一応声は届けておくよ。改善はされないだろうけど」

 

 すまし顔でそう対応された。

 コイツ……いつか女子と一緒に乗せてやる。

 

「……ってあれ? 御空さんは乗ったの?」

「勿論!」

「……誰と?」

「1人で!」

「1人で乗れたのこれ!?」

「うん。数合わせに空凪くんを誘ってみたけど、1人で乗せてやるから乗れってさ」

 

 ……一応この人外にも人並みの羞恥心はあるのね。

 よし、絶対にいつか女子と乗せてやろう。






「というわけで、祝! 私登場!!」

「出さないのも勿体ないからと筆者がねじ込んだようだ。
 僕と絡めようとするから矛盾が生じるのであって、普通に単独で来る分には全く問題ない……と。
 ……何か数話前の後書きでも同じことを言ってた気がするが、執筆の時系列では実はこっちの方が早かったりする。
 昼食で合流する前にこっちを書き進めていたからな」


「本編中でも私たちの仲は決して悪くはないものね。
 バッタリ遭遇して適当につるむのは不自然ではないわね」

「あともう一つ言っておくと、僕がジェットコースターに乗らなかったのは決して恥ずかしかったからではない。
 単に腕が痛かっただけだ」

「……そう言えば、腕折れてたわね。こんな所で平然としてる方がおかしいっていうね」

「そう褒めるな」

「褒めてないって言おうかと思ったけど……う~ん……

 ……まあいいや。次回もお楽しみに!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。