バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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02 来場者たち side優子

 不意に携帯の音が鳴り響いた。

 アタシの、ではない。すぐ近くに居た剣くんのものだ。

 

「っと、もうこんな時間か」

 

 着信音ではなくアラームだったみたいだ。

 

「今日来た奴には立食形式の昼食が用意してある。

 強制する気は無いが……まぁ、来た方がおトクだな。来るか?」

「剣、念のため訊くけど、料金は?」

「当然、無料だ。プレオープンした施設内でカネを取る程ケチじゃない」

「よっしゃぁあああ! カロリー取り放題だ!!

 当然行くよ! ねぇ木下さん!」

「カロリー取り放題っていうのはちょっと嫌なんだけど……そうね。行きましょうか」

 

 お弁当を持ってきてるわけでもないし、無料で良いなら有難く頂きましょう。

 ……タダより高いものは無いって言うけど……大丈夫よね? 剣くんが関わってる事を考えると少し不安だ。

 

 

 

 

 

「うぉ~! ご馳走だぁ!!」

「これは……凄いわね」

 

 流石は天下の如月グループだ。豪華な料理が所狭しと並んでいる。

 もっとも、これはプレオープンだからこそであって正式オープンの後も無料で利用できるなんて事は無いでしょうけど。

 それだけ今日のプレオープンという名の宣伝に力をかけてるって事ね。美味しかったら友達に宣伝するくらいはしてあげよう。

 

「んじゃ、僕達は適当にぶらついてるんで何かあったら携帯で呼んでくれ」

「じゃあね~」

 

 そう告げて剣くんと御空さんは去って行った。

 それじゃ、私たちも楽しみましょうか。

 

「あ、木下さん! コレとか美味しそうだよ!」

「……あら? 意外とカロリー抑えめな料理ね。てっきり吉井くんの事だから脂っこいのを推してきそうだと思ったけど」

「そりゃそうだよ。僕がちょっと、ほんの少しだけ貧乏だからカロリーは大事にしてるけど、他の人にとっては違うって事は分かってるから」

 

 『ほんの少し』貧乏という点がほんの少し気になったけど深くは突っ込まないでおきましょう。

 吉井くんとアタシの『ほんの少し』では大きな隔たりがあった気がしたから。

 

「お気遣いどうも。それじゃあ頂くわ」

「僕が作ったわけじゃないけどね」

「……うん、美味しい。吉井くんもどう?」

「う~ん……カロリーが少ないのが気になるけど……まぁ、食べ放題だしいっか!

 はむっ……お~! 美味しいね!」

「……ええ。そうね」

 

 食べ放題であれば、ヘルシーな料理であっても大量に食べれば、それは十分なカロリーになる。

 吉井くんだけじゃなくてアタシにも言える事ね。暴飲暴食する気は無いけど、一応ちょっとだけ気をつけておこう。

 

 

 

 

 しばらく一緒に歩いていると見知った顔が見えた。

 その人……うちの代表こと霧島さんがチケットを貰うのは目の前で見ていた事を今思い出した。日付も指定されてるこのチケットなら遭遇するのも当然の事ね。

 

「こんにちは代表」

「……優子も来てたの?」

「ええ。運良くチケットが手に入ったし、代表も貰ってたから。折角だから来てみたわ」

「……優子は吉井の事が好きなの?」

「はいっ!? 何でそんな事に……って、そりゃそうなるか。

 誘う丁度いい相手が吉井くんくらいしか居なかったから、それだけよ」

 

 代表の冗談(だと信じたい)を聞いて、ふと考える。

 吉井くんの事は決して嫌いではない。嫌いだったらこんな所に連れてこない。

 でもねぇ……『好き』ではないし、ましてや付き合う何て事も無いでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 歩いていたらまた見知った顔を発見した。

 ……おっかしいわね。アイツがチケットを持っていたとは思えないんだけど。

 まぁ、話してみればわかるでしょ。

 

「秀吉、アンタこんな所で何してんの?」

「あっ、姉上!? どどどうしてここに!?」

「それはこっちの台詞よ。チケットなんていつの間に手に入れてたのよ」

「い、いや、チケットで入ったわけではゲフンゲフン、た、たまたま道に落ちててのぅ!」

 

 明らかに誤魔化されたけど姉として寛大な心で気付かなかった事にしてあげよう。

 それより気になるのは、誰と来ているかって事。

 シングルのチケットが無いわけではないと思うけど……この施設の性格を考えたらペアチケットと比べてかなり少数でしょうから秀吉も誰かと来てるはず。

 食事の場でずっと別行動する事は無いでしょうから、今は料理を取りに行ってるだけですぐ帰ってくるはず……

 ……帰ってきたけど、これはちょっと予想外だったわね。

 

「ゆ、優子!? どどどどうしてここに!?」

「……光、まさかアンタが秀吉のパートナーだったとはね」

「っっっ!! そそそそっちこそ誰かと来て……って、吉井くん? えっ?」

「ええ。吉井くんよ。人数合わせを頼んだら快く引き受けてくれて……ん?」

 

 光に説明しながら吉井くんの方を振り向くと何故か顔を青ざめさせて汗をダラダラと流していた。

 

「ひ、秀吉? ど、どうして女子と一緒に……ま、まさか秀吉は男子じゃなくて女子が好きなの!?」

「当たり前じゃが……何故そんなに驚愕しておるのじゃ?」

「う、ウソだ! 秀吉が百合が趣味だったなんて!」

「待つのじゃ明久。百合というのは女性同士の恋愛の事じゃ。ワシはそもそも男であって……」

「うぅぅ!! 秀吉だけは信じていたのに!! これから僕は何を信じて生きていけば良いんだ!!」

「いや、信じられるものくらいいくらでもあるじゃろうに」

「こうなったら玉砕してやる! 秀吉! 好きだー!!」

 

 何を血まよったのか吉井くんがうちの愚弟に告白っぽい事を言い出した。

 ……何か、イラつくわね。

 一応パートナーであるアタシの目の前でよりにもよってアタシの弟に告白するとか。

 アタシと秀吉の何が違うと言うのか。吉井くんこそホモなんじゃないか。

 ムカついたので吉井くんの腕を引っ張ろうとして……

 

 

 ……空気が、凍った。

 

 

「……吉井くん? 今、何て言った?」

 

 強烈な冷気……と言うか殺気の源は、秀吉のパートナーである光。

 

「え、あの、その……」

「……吉井くん、もし今後そんな寝ぼけた事を言ったら……斬るわよ?」

「は、はいっ! わ、分かりました!!」

「……宜しい。

 さ、秀吉くん。行きましょ!」

「う、うむ……そうじゃな。

 ありがとうのぅ、助かったのじゃ」

「べ、別に秀吉くんの為じゃないんだから! 勘違いしないでよね!!」

 

 そんな会話をしながら愚弟たちは去って行った。

 う~ん……あの光が愚弟とねぇ……ま、今は置いておきましょう。

 

「吉井くん、大丈夫?」

「こ、怖かったよ……Fクラスの連中の殺意よりも怖かったよ」

「そ、そう」

 

 普段は常識人な光もあの狂人の姉である事を忘れてはいけない。

 適当な刃物を与えてあげれば胴体を真っ二つとか普通に可能だろう。流石に実際にはやらないだろうけど。

 

 しかしまさかこんな所で顔見知りと遭遇するとは。

 これ以上の偶然は……流石に無いと信じたいわね。






「という訳で昼食時の遭遇イベント、Side優子だ」

「坂本くんの方でもあったんだから当然こっちでもあるって話ね。
 クイズ大会は……次か」

「もう既にやったクイズだからな。巻きで進めていくんで1話で十分だろう」


「では、次回もお楽しみに~」
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