バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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03 観客の視点

 しばらく経つとアナウンスが響いた。

 

『え~、皆さん! 本日は如月ハイランドへとご来場頂き誠にありがとうございます!』

 

「……おかしいわね。何か聞き覚えがある声だわ」

「う~ん……言われてみれば僕も聞いたことある気がするような……しないような……」

 

 放送機材を通したやや荒い音質なのでイマイチピンと来ない。

 けどどこかで聞いたことがある気がする。う~ん……

 

『それでは、本日の目玉イベントである『如月ハイランドウェディング体験』を行いたいと思います』

 

「そんなイベントがあったのね……吉井くん知ってた?」

「ううん、全く」

 

『……が、申し訳ありませんが時間の関係で全組が行えるわけではありません』

 

 あら? やたらと気合が入った宣伝をしている割にはいい加減な……

 ……いや、逆なのかも。本格的過ぎて時間が足りないのかもしれない。

 それはそうと、どうやって絞り込みをする気かしら?

 そんな私の疑問に答えるかのようにアナウンスが続いた。

 

『と、いうわけで……これから、クイズ大会を開催したいと思います!

 それでは希望者は壇上に上がってください!

 成績上位1名が本格体験、それ以降の数組が簡易体験ができます!』

 

 なるほど。勝負して勝ち取らせると。

 クイズ大会ねぇ……面白そうではあるけど……

 

「クイズかぁ……面白そうだね、木下さん! 僕達も参加してみる?」

「……吉井くん、キミはアタシと結婚したいの?」

「えええっ!? いやいや、そんな事は無いよ!?」

 

 そこまで強く否定されるとそれはそれでモヤモヤする。

 尤も、肯定した所でアタシの方も乗り気になるわけでもないから理不尽な話だと自分でも思うけど。

 

「体験とはいえ結婚するのもどうかと思うから、アタシたちは観客でいましょう。

 別に問題を聞いて勝手に答えを考える事はできるし」

「あ~、それもそっか。よ~し、やってみよう!」

 

 

 ……とは言ってみたけど、この手の問題って真っ当なクイズだけじゃなくてカップルのお互いの理解度を測るような問題が出たりするのよね。

 それだけって事は無いでしょうから、楽しめそうな問題だけ考えましょうか。

 

 

『それでは、第一問!』

 

 

 お、始まったみたいだ。一体どんな問題が……

 

 

『ヨーロッパの首都はどこですか?』

 

 

 …………えっ?

 

「……木下さん、僕の記憶が正しければヨーロッパは国じゃないんだけど……」

「……奇遇ね。アタシの記憶でもヨーロッパは国じゃないわ」

 

 製作ミスだろうか?

 と言うか、こんなバカげた問題を淡々と読み上げる出題者にも問題がある。

 一体どんな人なのか……そう思って視線を向けた。

 

「んん? ええっ!?」

「ど、どうしたの?」

「……いや、その……あの出題者、愛子じゃないかしら?」

「アイコ? 誰?

 って、工藤さん!? 何故に!?」

 

 出題者としてマイクを手に喋っていたのは、紛れもなく愛子だった。

 何でそんな所に……

 

「……ああ、そういう事。剣くんと一緒の立場って事ね」

「剣と? バイトしてるって事?」

「そういう事ね」

 

 剣くんも愛子もお金が目的だとは思えないけど……何らかの意図があってここで働いているんでしょうね。

 ……あれ? でも……

 

「愛子があんなバカげた問題を平然と読み上げるわけがない。

 って事はまともな答えが用意してあるって事?」

「た、確かに。

 ……でも、一体何だろう?」

 

 

 

 ……その後『答えなど無い!』が正解で、ヨーロッパの国々の首都を列挙するのが裏正解だと発表された。

 分かるわけ無いでしょうがそんなもの!!!

 

「どうやら真面目に考えちゃいけないタイプのクイズみたいね」

「そ、そうだね……って言うか、裏正解に辿り着いた霧島さんと御空さんって一体……」

 

 

 

 

『さて、続けて第二問!

 今からコインを5回ほど投げます。

 この時、4投目までに表・裏・裏・表という順番で出てくる確率は1/2の4乗で1/16となります。

 では、5投目に表が出る確率はいかほどでしょうか?』

 

 

 随分と簡単な引っ掛け問題ね。さっきみたいに裏正解は……無いと信じたいわ。

 

「吉井くん。勿論答えは分かるわよね?」

「うん! 1/37だね!!」

「……えっ?」

「え? だから、1/37」

 

 ……お、おかしい。この問題の典型的な誤答は『1/32』であって37なんていう数字は一切出てこない。

 まさか何かアタシが気付いていないロジックがあるの!?

 

「……吉井くん、その数字どうやって出した?」

「え? どうやってって言われても……16×2だから……あれ、32だ」

「…………」

「ご、ごめん! 1/32だ!」

 

 どうやらただの計算ミスだったらしい。ホント安心した。

 

「……ちなみに正解は1/2よ」

「えええええっ!?」

 

 

 

 

『では、第三問!

 それではまたコインを使った問題です。

 今回使用するこのコイン、ある人が適当に鋳造したものなのですが……何を間違えたのか、両面とも表になってしまっています。

 では、このコインを投げた時、表・裏・裏・表・表となる確率は何分の一でしょうか?』

 

 

「……愛子、何言ってるのかしら」

「えっと……さっき『両面が表』って言ってたよね……?」

 

 深読みするのであれば、両方とも絵柄は同じだけど裏表はあるという事だろうか?

 もしそういう事であれば表裏裏表表になる確率は1/32だ。

 けど……それを誰が判定するというのか。両面が同じ絵柄だったらコイントスした時の判定がまず無理だろう。

 

「……単純に0%かしらね」

「そういう事になるのかなぁ……」

 

 

『はい、そこまでです!

 う~ん……今回も何組かが裏正解に辿り着きましたね』

 

 

 えっ、裏正解あったのこれ?

 

 

『そう、私は『何分の一か』と訊ねたのです。

 0%という答えも間違ってはいませんが……分数で答えるのなら分母は『無限』となります。

 裏正解に辿り着いた方は、先ほどと同じく2点を差し上げます!』

 

 

「騙されたっ!!」

「む、無限分の1……どゆこと?」

「吉井くん。1個しか無いものを無限にバラバラにし続けたら残った1欠片の大きさってどれくらいになる?」

「えっと…………ほんのちっちゃな欠片が残って……いや、それも更に分けるのか。0になるのかな?」

「そういうコト。正確にはゼロ除算と同じく真っ当な数学の式じゃないんだけどね。

 確率ゼロを強引に分数で表すなら1/∞が答えになるわ」

 

 無限の概念は下手すると数学じゃなくて哲学の領域に足を突っ込む分野だ。

 数学だけで考えて計算をするのであれば極限を使って『1÷ほぼ∞=ほぼゼロ』という風にするべきね。これならただの数学で対応できるから。

 

「一応分かったよ。なるほど……」

 

 しっかしまぁ、まるで学校のテストみたいな回答ね。

 一応ただのゼロでも正解で、正確な回答はあくまでもボーナスなのはある意味学生らしい設定かもしれない。

 

 

 

 

 

 『では次の問題です!

  ここに3枚のコインがあります!

  ……が、1枚は偽物のコインで、見かけは全く同じですが重さが違います。

  この偽物を天秤を使って判断する時、計測の最小回数は何回でしょうか?』

 

 

「……一瞬だけ1回かと思ったけど、それだと無理なのね」

「え? どうして?」

「だって、偽コインが本物より重いのか軽いのかが明言されてないんだもの。

 どうやったって2回必要よ」

「あ、そっか……っていやいや、1回でイケるよ!」

「…………」

 

 また誤答に引っかかったパターンだろうか?

 単純に間違えるならまだしもアタシの回答を否定しておいてそれはどうなの?

 

「あ、もしかして疑ってる? でも絶対に1回で済むよ!

 これが間違ってたら鉄人に告白したって良いね!」

「そんな事されてもアタシには何の得も無いんだけど?」

「た、確かに。それじゃあ……何か美味しい物でも奢るよ!」

「……大丈夫なの? チケットを売ろうとしたくらい切迫してるみたいだけど」

「それくらい本気って事だよ」

 

 大丈夫ではなさそうね。まぁいいか。奢ってもらうにしても適当に安い所で済ませてあげましょう。

 

「それじゃあ、アタシが間違ってたら……そうねぇ、何でも言うことを1つ聞いてあげるわ」

「う~ん……それはそれで微妙に扱いに困るような……」

「どう使うかは勝ってから考えれば? そろそろ発表されるわよ」

 

 

『それでは答えを発表します。

 最小回数、それは1回です!』

 

 

 …………えっ?

 

「ほら言ったじゃん!」

「ちょ、ちょっと待って!? ええっ!?

 い、一体どうやるの!?」

「簡単だよ。天秤に1枚ずつ乗せて、釣り合ったら残りが偽物だよ」

「いやいや、それくらいは分かるわよ。もし釣り合わなかったらどうするのよ!?」

「それ、考える必要ある?」

「……えっ?」

 

 そう言えば、確かに。

 アタシは無意識の内に『最悪のパターンの中での最小回数』って考えてたけど、良く考えたらただの『最小回数』しか問われていない。

 だからむしろ『最良のパターンの中で』考えるべきだった。

 

「……吉井くん、どうして分かったの?」

「う~ん……木下さんが2回って言ったからかな」

「どういう意味?」

「だって、問題製作者ってほぼ間違いなくあの剣だよ?

 ここまで散々変な問題ばっかり出してたんだから、そろそろ皆慣れてきて警戒するはず。

 だったら、答えが簡単に出せるとは思えない。

 だから、木下さんの事をあえて疑ってみた。もしかしたら1回で済む方法があるんじゃないかなって。

 そしたら思いついたよ」

「……なるほど」

 

 問題製作者がほぼ間違いなくあの狂人だという事はアタシも同意できる。

 アレを相手に勝利を確信した時点で負けてたって事ね。安直な答えに飛び付かずに考え続けた吉井くんの勝利だ。

 

「はぁ、仕方ないか。

 吉井くん。何でも1つだけ言うことを聞いてあげるわ。ただ、あんまり無茶なのは止めてね」

 

 テキトーに放った言葉だけど、言っちゃったものは仕方ない。

 試召戦争の時の事を思い出すわね。今度こそ付き合ってくれって言われたらどうしよう。

 ……吉井くんに限ってそれは無いか。

 

「微妙に扱いに困るんだよね……

 ……あ、そうだ。それじゃあ今度何か奢ってよ。僕が負けた時の約束はそんな感じだったし」

「それだけで良いの? あんまり高い店は無理だけど……程々の所に案内させてもらうわ」






「というわけで、クイズ大会4問目までの優子視点だ」

「優子さんの成績は○○○×
 吉井くんの成績は○×○○
 競ってるわね」

「どちらも裏正解は出していないようだな。
 まぁ、それが普通なんだが」

「ちなみに私の成績は◎○◎○だから圧倒的に勝ってるわ!」

「全問正解者に勝てる奴が居る訳が無いだろうに」

「まぁそうだけど。
 しっかしまぁ……この2人、恋愛っぽい雰囲気が無いわねぇ」

「リメイク前では急過ぎたんでな。その反省をもとに進めているようだ。
 ……あんまりのんびりし過ぎると他のキャラのフラグ管理が厄介な事になるんでそれはそれで問題なんだがな」

「筆者さんがまたギャルゲーやってる……」

「いつもの事だ。
 ……ちなみに、具体的には学力強化合宿編までにフラグが立たないとルートが1つ潰れる事になる」

「近っ!? もうすぐじゃん!!」

「正確には『予定しているルート』が潰れるだけで、上手いこと迂回できる可能性は十分あるけどな。
 まぁ、なるようになるさ」


「ホントかなぁ……
 では、次回もお楽しみに!」
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