『さて、次で最後の問題です』
どうやら次の5問目で最後らしい。
捻くれきったクイズ大会の最後の問題だ。どんな恐ろしい問題が出てくるのやら。
と、覚悟を決めていたがその前に愛子からこんな言葉が飛び出した。
『ですが、次の問題に移る前に皆様に質問させていただきます。
この問題の製作者に殺意を覚えた方はいらっしゃいますか?』
……何を言ってるのかしら。そんな当たり前の事を質問するなんて。
『該当する方は挙手を……ああいえ、心の中で同意するだけで結構です。
問題を深く疑わせて、更に嵌めるという行為。殺意を抱かないはずは無いですから。
そんな製作者ですが、皆さんに『疑う』という事をやってほしかったそうです。
疑う事は何も恥ずかしい事じゃない。世の中にはこんな問題を出すひねくれた奴も居るんだから。と。
……では、改めて問います。今、あなたの隣に座っている人は、信用に足りますか?』
隣に座ってる人……通常であればクイズのパートナー……と言うかカップル。
アタシの場合であれば、吉井くんの事になるか。
信用に足るか、ねぇ……
『それでは第五問です。
まず、テーブルの下にもう1枚のフリップボードが置いてあります。それを手に取ってください。
そして、それぞれのフリップボードを手に取り、自分が最も信頼する人物の名をそこに書いてください。
この場に最も相応しい回答を出した方々に10点を差し上げましょう。
回答の制限時間は2分です。それでは始めてください!』
ここでお互いの名前を書く事が正解って事でしょうね。
あの狂人の事だから性格悪い問題が延々と続くものと思ってたけど、一応『カップルらしい』問題もちゃんと用意されてるのね。
これが最終問題らしいんで『らしい』問題は一つだけって事だけど、逆に『信頼さえあれば十分』というメッセージ……なのかもしれない。そんな裏の真意なんて問題作成者に訊いてみないと分からないけど。
「……吉井くんだったら、誰の名前を挙げる?」
「う~ん……信頼してる人かぁ……」
今現在付き合ってる人が……居るとは思えないけど、もし居るならその人だろう。
そうでないなら例えば……
「例えば……家族とか?」
「……何言ってるの木下さん。あの人達は悪い意味でしか信用できないよ」
「そ、そう」
真顔で返されてしまった。吉井くんの家族は一体全体どんな人なんだろう? 逆に気になる。
「それじゃあ……クラスメイトとかは?」
「……強いて言うなら秀吉かな。雄二も剣も信用しちゃいけないタイプの人種だし。
ムッツリーニは……まぁ、一応信用できるかな」
「ムッツリーニ?」
「うん。あ、えっと、本名は……確か、土屋康太……だっけな」
「ああ、土屋くんね。なるほど」
Fクラスの内情についてそこまで詳しいわけじゃないけど、試召戦争の5対5の戦いで出てきた人達の名前くらいは朧げだけど全員覚えている。と言っても、もともと顔見知りだった剣くんと、有名人だった姫路さん、あと代表の坂本くんは元から覚えてたけど。
土屋康太くん……確か、保健体育の点数がとんでもなかった人だったわね。
「……秀吉が信用できるかは置いておくとして、信用できない2人については完全に同意するわ。
しっかし、見事に全員男子ね。女子は居ないの?」
「え? だから秀吉」
……そう言えば、吉井くんも愚弟を女子扱いしてるアホの1人だったわね。
でもまぁ、アタシ経由で秀吉にラブレターを送ろうとしたり、あろうことか秀吉と間違えてアタシに告白してくるようなバカどもと比べたら実害は無いので置いておこう。
「じゃあ……秀吉と、男子全員を除いたらどうなの?」
「秀吉意外の女子って事? そうなると2人しか居ないけど……う~ん……
美波は何だかよく分からない時があるし、姫路さんも最近何か奇行が多い気がするし……『信頼できる』っていう人は居ないかな」
「ふ~ん。そうなの」
そりゃそうか。信用できる相手が居るなら今頃付き合ってるでしょう。
この場にもアタシとではなくその人と来ているはずだ。
「あ、でも……」
「?」
「学年全体で言うなら、強いて言うなら木下さんかな」
「…………ええっ!?」
ちょ、ちょっと待って!? この問題はカップルに互いの名を書かせる事が目的なのは明白だ。
そんな問題でアタシの名を挙げるというのは……ある種の告白のようなものじゃないだろうか?
「ど、どうしたの木下さん、顔が赤いけど……熱でもあるの?」
「にゃっ、ななな何でもないわよ!!」
「そう? 体調が悪くなったらいつでも言ってね」
「え、ええ。分かってるわ!」
お、落ち着けアタシ。相手は吉井くんだ。
もしかしたらまた何か変な勘違いをしているだけの可能性もある。
例えば……そう、問題の意図を理解していない可能性だってある!
…………何だかこれが正解な気がしてきた。何やってるんだろう、アタシ。
一応、確認しておきましょうか。
「……吉井くん。この問題の模範回答は当然分かってるでしょうね?」
「模範回答? 勿論だよ!」
「……じゃあ、言ってみて?」
「そんなの『信頼する人の名前を書く事』だよ!」
「…………」
正しく意図を理解していたなら、『好きな人の名前を書く』となるはずだ。
何だ、ただの思い過ごしだったか。
「どうしたの? 何だか少しがっかりしてる気がするけど?」
「ガッカリ? 気のせいでしょ」
「そうかなぁ……まぁいいか。
ところで木下さんだったら誰の名前を書くの?」
「誰って……そりゃあ……」
信頼できる人。
愚弟とかは論外として、誰か1人だけ挙げるのであれば……
「……っ! し、知らないわよバーカ!」
「えっ、何で突然罵倒?」
こんな事、言えるわけが無い。
候補の1つとはいえ、一瞬だけ吉井くんの名前を思い浮かべた事なんて。
「……前回と打って変わってラブコメしてるわね」
「うちの駄作者は大雑把な方針を立てた後はノリと勢いで書き進めるという方針で執筆しているが……このタイミングでフラグを立てる予定は皆無だったそうだ」
「じゃあ何でフラグ立ってるのよ」
「ノリと勢いで書いていたらこうなっていたらしい。
まぁ、恋愛的な要素は置いておくとして、単なる『信頼』であればこれまでの出来事で一定の評価は得られているはずだ。
優子→明久はいわずもがな、明久→優子に関しては……他の比較対象がアレなんでな」
「原作メインヒロインさんとサブヒロインさん……ただの当て馬になってる気が……」
「明久を落とせなかったヒロインどもが悪い。
その辺は置いておくとして、恋愛に関わらないイベントを積み重ねて印象を重ね、告白などの強イベントで一気に恋愛に変換させるのは筆者の常套手段だったりする。
なお、元ネタは明久と同じ声の人が主人公の某漫画」
「互換フラグの理論ね。リメイク前でも別の人相手に使ってたっけ」
「自称、ロジカルな恋愛描写を目指しているからな。理屈付けは面倒だが面白いとは筆者の弁だ」
「では、次回もお楽しみに!」