バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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06 とあるバカの戦場

  ……時は少し遡り、試召戦争開戦直後……

 

 やあ皆。僕だよ僕。

 え? 誰かって? そうだなぁ。じゃあヒントをあげよう。

 不幸な事故により振り分け試験を途中退席せざるを得なくなった、ある意味ではあの優等生の姫路さんと同格とも言えるイケメンの男子生徒。

 そう、僕の名は……

 

「吉井、バカな事やってないでちゃっちゃと指揮を取りなさい。一応隊長なんだから」

「ちょっ、島田さん!! せっかく僕がカッコよく名乗りを上げようとしていたのに!!」

「はいはい。分かった分かった」

 

 僕の扱いが軽い。解せぬ。

 さて、そういうわけで何故か雄二から中堅部隊の隊長を任せられた。

 ちょっと面倒だけど任せられたからには頑張ってみよう。

 

「島田さん、現在の戦況は?」

「木下率いる前線部隊が敵とぶつかったみたいね。

 もうちょっと近付けば詳しい状況も分かると思うけど……とりあえずはまだ待機かしらね」

 

 この学校は試召戦争を前提に建てられてるらしいけど、極端に広い造りになっているわけでもない。

 あんまり人が密集しすぎると身動きが取れなくなる。だからせいぜい10人ずつくらいの部隊に別れて戦うんだ。

 ……って、雄二の受け売りだけどね。

 それはさておき、戦場に近付かなくても遠くから声を拾ったりする事は可能だ。少し耳を澄ませてみるとしよう。

 

 

『Fクラス三宮(さんのみや)、討ち取ったり!!』

『お前が記念すべき最初の戦死者か。よし、補習だ』

『ぎぇっ!? て、鉄人!? どこから現れたんだ!!』

『そんな事はどうでもいいだろう。さぁ、補習室に行くぞ』

『い、嫌だ!! 補習を受けるくらいなら地獄に行った方がマシだ!!!』

『抵抗するなら力づくで連れていくまでだ。

 安心しろ。補習が終わる頃には『趣味は勉強、尊敬する人は二宮金次郎』という模範的な生徒に仕立て上げてやる』

『そ、それって洗の……い、嫌だぁぁぁぁぁぁぁ………………』バタン、ガチャッ

 

 

 ……ふむ、なるほど。

 

「よし、島田さん。全員に伝えてほしい」

「何? 新しい作戦?」

「総員退避、と」

「このいくじなしっ!!」

「ふぎゃっ!? 目が! 目がぁぁぁ!!」

 

 そんなバカな。一番合理的な作戦がっ! っていうか目が痛い! シバくにしてもせめてチョキじゃなくてパーかグーにしてよ!!

 

「ウチらの役目は前線部隊が消耗した時に安全に撤退させて、その上で敵を抑えておく事でしょ!?

 ここで逃げ出したらアイツらが補給できないでしょ!!」

「うぐっ、島田さんにしてはなかなか合理的な意見を……」

「ちょっと? ウチにしてはってどういう意味?」

「ごめん。僕が間違ってたよ。たとえ相手がDクラスでも、これは戦争。集団戦なんだ。

 皆で頑張ればきっと勝機はある!」

「何か釈然としないものはあるけど……その意気よ!」

 

 流石は島田さんだ。僕よりもずっと男らしい。

 さて、それじゃあ頑張って……

 

『伝令! 前線部隊が後退を始めたようです!』

「総員退避よ」

「……えっ?」

「総員退避よ。吉井? 問題ないわよね?」

 

 う~ん、何だか凄く問題がある気がするけど……きっと気のせいだろう!

 

「そうだね! 僕達には荷が重すぎたんだ!」

「そうよ。ウチらは精一杯の努力はしたわ!」

 

 いや~、頑張った頑張った。教室に戻ってのんびりしてよう。

 そう思って方向転換したら教室の方から誰か走ってきた。

 

「あれ? どうしたの?」

「代表からの連絡です。

 『逃げたらコロス』と」

「総員突撃!!!」

 

 やっぱり前線部隊の皆を見捨てるなんていう極悪非道な真似は僕には無理だったよ!

 他の皆を殺したくは無い一心だったんだけどね! やっぱり僕みたいな清廉潔白な人間には無理だ!

 決して雄二が怖いからじゃないんだかねっ! 勘違いしないでよねっ!

 

 

 前線の方へ駆けつけると丁度秀吉が撤退してくる所だった。

 

「秀吉! 無事だったんだね!」

「うむ。何とか戦死はせずに済んだのじゃ。今から補充試験を受けたいのじゃが……ここは任せて構わぬか?」

「うん! 勿論だよ! その為の中堅部隊だからね!」

「そうじゃな。明久の事じゃから逃げ出したりせぬか不安じゃったが……流石に失礼じゃったな」

「そ、そそそそうだね!!」

「……では、頼んだのじゃ」

 

 そう言って秀吉はFクラスの方へ去って行った。

 ふ~危ない危ない。僕が逃げ出そうとした事がバレる所だったよ。

 

「吉井! 試召戦争のルールは分かってるわよね?」

「勿論さ!」

 

 簡単にまとめると……

 

 ・召喚獣は召喚許可を出した先生の近くでしか召喚できない。

 ・得意科目だと召喚獣が強くなる。逆に苦手科目だと弱くなる。

 ・戦って相手の点数……と言うかHPを0にすれば『戦死』になる。

  戦死したら戦争が終わるまでずっと補習漬けになる。

 ・死にさえしなければ補充は何度でもOK!

 ・相手の代表を先に戦死させた方が勝ち!

 

 こんな感じだね。

 ゲームに例えるなら『ファイ○ーエムブレム』みたいなSRPGが近いかな。

 相手の数を減らして優位に立つ事は勿論大事だけど、それ以上に死なないようにするのも重要だ。戦死しちゃったらどうやっても復活できないから。

 こういうゲーム関係の知識が多少は活かせると良いんだけど……そう都合良くはいかないかな。

 

「で、今の科目って何?」

「どうやら化学みたいよ。吉井、自信ある?」

「フッ、当然じゃないか!」

 

 当然、自信なんて無い!

 いや~、国語と数学と理科と社会と英語だけは苦手なんだよね。誰にだって苦手科目はあるよね♪

 

「……何故か意味が正確に理解できた気がするわ」

「そういう島田さんはどうなの?」

「国語系に比べたら大分良いけど……そこまで自信は無いわ」

「そっか……それじゃあ、下手に召喚獣は出さずに指揮に徹するとしようか」

「そうね!」

 

 指揮官が居なくなったら大変だからね。これが一番合理的な選択だ。

 ……と、思っていたのだが……

 

「あっ、美波お姉様見つけました! 先生、こっちに来てください!」

 

 何か縦ロールの女子が近づいてきた。どうやらDクラスの生徒っぽい。

 

「あれ? 島田さんって同い年の妹が居たの?」

「……あの子は妹じゃないわ」

「その通り! 姉妹だと結婚できません!!」

「そういう問題じゃないでしょうが!! 姉妹以前に女同士で結婚できるわけが無いでしょ!!」

「お姉様への愛があれば性別の壁など無いも同然です!!」

「…………えっ? あの、島田さんってそういう……?」

「違うわよ!! ウチは普通に男が好きなの!!」

 

 島田さんの性癖については今は置いておくとして、どうやらこの女子のターゲットは島田さんらしい。

 となると、僕がすべき事はただ1つ!

 

「島田さん、ここは君に任せたよ!」

「いや、アンタも手伝いなさいよ! 集団戦なら勝機はあるとか言ってたのはアンタでしょ!」

 

 むぐぐ……また地味な正論を。

 だけど、戦って怪我すると痛いからなぁ……

 そんな事を考えながらFクラスの方を振り返るとまた誰かが走ってきた。

 

「お~い隊長、副代表からの連絡だ」

「え、剣から?」

「ああ。

 『後で討ち取った人数を報告しろ。

  満足の行く結果でなかったら……お前の家のゲームを全て磨り潰して燃えないゴミに出す』と」

「さぁ島田さん! 協力してこの人を倒すよ!!」

 

 あの剣なら夜中にピッキングして侵入するくらいやりかねない。

 そして朝起きたらゲームの棚が空に……

 そんな事が普通に有り得るから怖いんだよ!!

 

「吉井にとってはウチの命よりもゲームなのね……

 まあいいわ。行くわよ美春(みはる)!」

「ブタ野郎が1匹増えた所で変わりませんわ!」

「ぶた野郎って……まあいいや。行くよ!」

 

「「「「試獣召喚(サモン)!!」」」」

 

 キーワードの発生と共に魔方陣が浮かび上がる。

 そこから現れるのは僕達の召喚獣だ。

 そう言えば、今年度の召喚獣はまだ見てなかったな。振り分け試験毎にリセットされるらしいから確認しておかないと。

 

 まるで昏い夜空の闇のような漆黒の、学ラン。

 全てを拒絶するかの如く暗黒に染まった、木刀。

 

 ……何か無駄に黒く、明らかに不良っぽい装備の召喚獣がそこに居た。

 

「って、ちょっと!? どうなってるのさ!!

 せめて金属製の装備をちょうだいよ!!」

 

 ちなみに、島田さんは軍服とサーベル。清水さんは金属鎧と剣だ。

 何気に一緒に召喚してるさっきの伝令のヒトは……鎖帷子と剣みたいだね。

 ……何故僕だけ金属装備が無いっ!!

 

「おーい隊長。ボーッとしてないで戦ってくれ。ゲームが消えるぞ」

「ハッ、そうだった! 清水さん覚悟!!」

 

 戦闘態勢に入ると同時にお互いの点数が浮かび上がった。

 

  フィールド:化学

 

Fクラス 吉井明久 42点

Fクラス 島田美波 66点

Fクラス 伝令の人 97点

 

Dクラス 清水美春 125点

 

 う~ん、流石はDクラス。点数は完全に負けている。

 って言うか伝令のヒト強いな! もうこのヒトが部隊長やればいいんじゃないだろうか?

 もうこのヒトに全部任せれば……いやいや、そんな事してバレたらゲームが砕ける!

 

「よし、皆、行くよ!!」

「「ええ!/ああ!」」







「この辺はリメイクで加筆された場面だな」

「微妙に原作と点数が違うみたいね」

「各クラスの点数域も再定義したからな。
 主要科目の平均点はFクラスが0~89点、Dクラスが122~149点だ。
 尤も、苦手科目や得意科目があるから各科目の点数はこれを上回ったり下回ったりするが」

「……伝令のヒトが強いわね」

「学年を代表するバカと問題文すらまともに読めない帰国子女が比較対象だからな」

「……そりゃ比べたら強くなるか」

「まぁ、Fクラスの中でも上位ではあるようだが……それでも所詮はFクラスだな」

「……ところで、これって本当に『伝令の人』って表示されてるわけじゃないよね」

「ああ。実際には名前が表示されているが、明久視点では名前なんて興味は無いだろうから差し替えだ。
 いちいち名前なんてつけてらんないしな」


「では、次回もお楽しみに!」
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