バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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06 束の間の会話

「ちょっと待った!!」

 

 そんな声を上げて誓いのキスを止めたのは……壇上の秀吉だった。

 

「これはあくまでもリハーサルなのじゃからそこまでやる必要は無いじゃろう!」

 

 真っ当な正論が秀吉の口から飛び出した。と言うかアタシも考えていた事だ。

 さて、剣くんはどうするのだろうか?

 

「なるほど……確かに。

 ……じゃあ、いいか♪」

 

 あっさりと、諦めた。

 え? いいの? 何か企んでたんじゃないの?

 

「……と、大人しく引き下がっても良いんだが……まぁ、少しだけ語らせてもらおうか。

 秀吉。ここで女子とキスしておけば男子からの告白が減るぞ」

「いや、確かにそうかもしれぬが……しかしのぅ……」

「それを理解した上で、合法的にキスできるこの機会を蹴ると」

「う、うむ。そうじゃ!」

「……そうか。なら良いだろう」

 

 そしてやっぱりアッサリと諦めた。

 今の問答、何か意味があったのかしら?

 

 

『それでは、結婚式体験を終了します!

 ……ふぅ、本番もこの調子で行きましょう!』

 

 

 

 

 秀吉たちの結婚式体験も終わり、もうしばらくしたら代表たちの結婚式体験が始まるらしい。

 その僅かな時間でどこかに行く当ても無い。

 剣くんは何か用事があるらしくどこかに行き、御空さんもテキトーに辺りを散歩してくるとか何とか。

 秀吉たちも戻ってこないので吉井くんと2人でのんびり過ごす事にする。

 

「秀吉は女子とのキスを拒否した……つまり僕にもまだチャンスが!」

「無いと思うわよ。っていうか何がキミをそこまで駆り立てるの。一体全体秀吉のどこが好きなの」

「う~ん……頭のてっぺんからつま先まで全部かな♪」

「吉井くん。適当にごまかしてない?」

「そんなつもりは無いけど……」

 

 吉井くんがボケているだけだと信じたい気もするけど、うちの愚弟は本当に男子に告白されるような奴だからなぁ……

 この発言も多分本気なんだろうな。

 

「それじゃあちょっと質問を変えてみましょう。

 吉井くんは秀吉のどこが好きなのか。顔? 性格?」

「う~ん、両方かな」

「……そう。

 ……ちなみにだけど、アタシの顔はどう思う?」

「え?」

「親でもたまに間違えるくらいアタシと秀吉は外見が似てるけど、どう思う?」

「う~ん…………秀吉の方が可愛いかな!」

 

 ……お、落ち着きましょう。先に質問したのはアタシだ。

 たとえ貶されたからといって怒るのは良くないわ。

 男である秀吉の方が可愛いとか言われたくらいじゃアタシは動じないわ!

 

「……そう。ふーん……」

「うん。そうなんだよ。

 木下さんはどちらかというか可愛いと言うより綺麗って感じだからさ。2人を比べるならそんな感じだよ」

「えっ、そうなの?」

「うん! 何て言うか、木下さんの方がクール? な感じ。

 確かに顔はほぼ同じだと思うけど、滲み出る雰囲気みたいなものが全然違う。

 ってアレ? これだと性格にも関係してる……? まあいっか。

 顔も性格も含めて、秀吉は可愛い。優子さんはクールで綺麗だね!」

「そ、そう、なんだ。ふ~ん……」

「あれ? 何か顔が赤いけど、風邪でも引いた?」

「にゃっ、なんでもないわよ!!」

 

 吉井くん……天然の女タラシなんじゃないだろうか?

 一旦深呼吸をして落ち着きましょう。こんな風に口説かれた経験くらいアタシにも……いや、無い気がするけど、とにかく平常心、平常心……

 ……ふぅ、落ち着いた。

 

「秀吉についてはこんなもんにしときましょう。

 それじゃあ……そうね……最近勉強は捗ってる?」

「とっ、とととと突然何を!? い、いや、も、ももも勿論だよ!!」

 

 会話の主導権を握る為にも適当な話題を考えてみたけど、効果は劇的だったようだ。

 一応言っておくけど、吉井くんの家庭科の点数だけがやたら高くてそのせいで負けた事を恨んでこんな話題にしたとか、そんな事実は無い。無いったら無い。

 

「キミねぇ……Fクラスになっちゃったんだから、せめて来年に向けて頑張ろうとかいう気持ちは無いの?」

「いや、ホラ、そこは試召戦争があるし」

「確かに教室の設備を交換する事はできるけど……代表と副代表の2人は純粋に腕試しがしたいだけみたいだからそれだけに頼るのも良くないと思うわよ?」

「え? そうなの?」

 

 何故アタシに察せて吉井くんには察せないのだろうか? ちょっと鈍感過ぎやしないだろうか?

 

「絶対に交換しないってわけじゃないけど、そればっかり頼りにするのは良くないって事。

 それに、将来の為にも勉強はしておいた方が良いわ」

「で、でも! 将来古文だとか三角関数だとかなんてそうそう使わないよ!」

「確かにそうだけど、勉強っていうのは内容じゃなくて『自力で努力して身に着ける事』が大事なの。

 将来使わないからってだけで逃げるべきではないわね」

「むぐぐぐぐ……」

 

 討論でアタシに勝とうだなんて100年早いわね。

 これで心を入れ替えて勉強してくれると良いけど、流石にそんな都合良くは……ってアレ? 何でアタシは吉井くんの心配をしてるの?

 

「そ、それだったら木下さんが勉強を教えてよ!」

「え? いいけど」

「……えっ?」

 

 ある種のキラーパスのつもりだったのかもしれないけど、アタシにとっては全く問題ない。

 手取り足取り勉強を叩き込むとなると流石にちょっと困るけど、ある程度教えるだけならむしろ自身の勉強の再確認にも繋がるからだ。

 そうする事で基礎的な問題の回答速度を上げる事ができるし、ケアレスミスも削減できる。残念だったわね。

 

「うぅぅ……分かったよ。しっかり勉強します」

「本来ならアタシに説得される前にやる事のはずなんだけどね……

 携帯は持ってきてる? 貸しなさい」

「うん……うん? 何に使うの?」

「いや、連絡先を交換する為に決まってるでしょ。

 って言うか、今日の待ち合わせの前にやるべきだったわね」

「……確かに」

 

 そうすれば急用で遅れるとか、待ち合わせ場所で見つからない時に連絡する事ができたはずだ。

 尤も、そんな必要も無かったけど。

 

「これで完了っと。はい、返すわね」

「うん。ありがと」

 

 新しく番号が登録された携帯をふと眺める。

 異性の連絡先……か。

 まぁ、だからどうしたって話だけどね。






「結婚式なんてサラッと終わらせて明優のターンだ」

「ホントにサラッと終わったわね……アレで大丈夫だったの?」

「詳しい事は後の僕視点の話で補完する予定だ。
 それはそうと、今回もラブコメ成分が強かったな」

「吉井くんは天然タラシ。下げて上げるとかいうテクニックすら無意識でやらかすっていう」

「今すぐ恋愛なフインキになる事はまだ無いようだな。きっと優子が真面目だからだろう」

「雰囲気ね」

「細かい事は気にするな。
 次回は代表どもの結婚式:優子Sideになるな」


「では、次回もお楽しみに!」
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