騒いでいるチンピラたちに向かって歩み寄る人影があった。
白髪眼帯で左腕に真っ赤な包帯を巻いた中二病……剣の姿が。
「あぁ? 何だテメェ」
「お客様。何卒、静粛にお願いします」
「んだと? 文句あんのかコラ! 俺たちゃオキャクサマだぞ!!」
「文句が無かったらわざわざ言いませんよ。
まったく、仮初のものとはいえ結婚式の場で騒ぎ出すとは。親の顔が見てみたいものだ」
「おいおい、もしかして喧嘩売ってやがんのか?」
「お客様も哀れな人だ。常識を教わらずに成長してしまったんですね。
これからも色々と大変でしょうけど、頑張って生き延びて下さい」
「よーし分かった。10秒やる。それまでに土下座したら許してやるよぉ!!」
内容が全然噛み合ってないけど、とりあえず剣が喧嘩を売ってる事は分かった。
単純に喧嘩するだけだと逆効果だとおもうんだけど……
「ここは牧師をいつでも呼べるように教会が併設されています。
そこならきっとあなたのような可哀想な迷える仔羊でも受け入れてくれ……」
「グチャグチャとうるせぇんだよ!!!」
剣が、アッサリと殴られた。
そして、思いっきり吹っ飛んだ。
「ちょ、ちょっと!? 大丈夫なの!? 意識はある!?」
どこからともなく現れた御空さんが剣くんに駆け寄った。
どうしよう。アタシも行った方が良いだろうか?
「う……ぐ、大丈夫だ。腕が痛い事を除いては……」
「えっ? そう言えば怪我して……って、何これ!? とんでもない事になっちゃってるわよ!?
……まさかとは思うけど元から……いや、有り得ないか。元々怪我してたのが悪化してこうなったって所でしょうね」
「そんな事より、医務室に連れて行ってくれないか? この施設は万が一お客様が怪我をしても迅速に治療ができるような設備が整っているからな!」
「そんな宣伝しなくていいから!! スタッフさん! 担架持ってきて!!」
「ついでに、暴れだす愚か者を捕える為の警備員も充実して……」
「まずは黙っときなさい!! 少しの振動でも相当痛むはずよこれ!?」
どうやらアタシが手助けする必要は無さそうだ。
医療スタッフらしき人達が剣くんを担架で運んで行った。
「ふ、ふん! 付き合ってらんねーよ! 俺は帰る!」
「あっ、リュータ! 待ってよ!」
そんな騒ぎの隙に元凶のチンピラたちが逃げ出そうとした。
けど、すぐに止められた。
「お客様、少々ご同行願えますかな?」
「なっ、何だテメェは!」
「申し遅れました。私、如月ハイランド警備課の
先刻の騒動について何点か質問がありますのでご足労願います」
「こ、断る! 俺は今から帰って……」
「では、行きましょう」
「なっ、ちょっ、引っ張るな! わ、分かった! 付いていくから放せぇ!!」
こうしてチンピラは迅速に連行されて行った。
もうちょっと早く動いてほしかった気もするけど、ちょっと騒いでるだけだとそうもいかないのかもしれない。
剣くんが怪我した事で初めて事件って事になったのね。
『え~、皆さん。予想外のハプニングはありましたが、結婚式体験を続行したいと思います!』
「ふぅ……良かった。吉井くん。ちゃんと続くみたいよ」
「そうだね……ありがとう、木下さん」
「え? 何が?」
「あの剣だったから上手い感じに収まったけど、僕が行ってたらきっと大変な事になってたよ。
だから、止めてくれてありがとう」
「そんな事、気にしないでいいのに」
吉井くんが分かりやすく怒ってくれたからアタシも冷静になれたという面もある。
いやまぁ、吉井くんが居なかったとしてもアタシがチンピラに殴りかかるような事は無いとは思うけど……怒る姿を見て気が晴れたのは確かだ。
何て言うか……格好良かったわよ。吉井くん。
『さて、本来なら牧師様を呼んで永遠の愛を誓う宣誓を行うのですが……今回は省略します』
『そしてその後の誓いのキスも……やっぱり省略します』
『誓いなんて必要ありません。何故なら、彼らが愛し合っているのなら、必ずまたここに来るからです。
この後簡易体験される皆様も、誓いは結構です。
今、皆様の隣に立つ人物が共に人生を歩むに相応しいと確信が持てた時、そして年齢的な条件を満たした時、またこちらにいらしてください。
私たちスタッフ一同、皆様の人生における一つの終着点を、そして新たなる始まりを全力で応援させて頂きます』
これも剣くんの台本なんでしょうね。
『共に人生を歩む』か。改めて考えると、結婚ってホントに重い。
でも、きっといつかは結婚しなくちゃならないんでしょうね。
一生結婚しないっていう選択肢もあるわけだけど……う~ん……
『以上で、如月ハイランドウェディング体験を終了させて頂きます。
ご来場の皆様、ありがとうございました!』
あら? 終わったみたいね。
「この後は……どうしましょうか」
「とりあえず、剣の様子を見に行きたいかな」
「……そうね。怪我してたみたいだし」
「結婚式後編終了だ」
「別名、当たり屋回ね」
「間違ってないから否定し切れんなぁ……」
「今回も別視点と流れ自体は変わってないわね」
「コメントしにくいなぁ……」
「じゃ、切り上げましょっか。
次回もお楽しみに!」