しばらくして、昼食の時刻になった。
立食形式の昼食を根こそぎ食べてやりたい所だが、一応バイトである僕は食べる事はできない。
秀吉と光のペアはお客さまにまぎれて大げさに楽しむ役割なんで普通に食べていたが。
『これから、クイズ大会を開催したいと思います!
それでは希望者は壇上に上がってください!
成績上位1名が本格体験、それ以降の数組が簡易体験ができます!』
さて、このクイズ大会、本来なら僕が司会をやる予定なんだが……
「面白そうね。一緒に出てくれない?」
「結婚体験したいのか?」
「いや、そういう訳じゃないけど」
「……まあいいだろう。
ネタバレしておくと最後の問題を外せば実質的な辞退になる。それ以外は全力でやっても構わんぞ」
「ん、分かった。ありがと」
こんな感じでお客様からの要望があったんで工藤に丸投げ……信頼して後を託した。
本人は何か不満そうにしてた気がするが、きっと気のせいに違い無い!
で、そのクイズ大会の詳細は……語るまでもないか。
御空が無双してたけど最後にしっかりと外したよ。
「最後の問題はこういう趣向で来るのね。
う~ん……何て答えましょうか」
「いや、そんなの分かりきってるだろ。
一見正解に見える不正解を答えるのが一番真っ当な答えだ」
「……なるほど、確かに」
「尤も、誰か書きたい名前があるなら止めはしないが」
「いーえ、それで行きましょう」
お次は結婚式体験のリハーサルだな。
ヒマそうだった御空と、これまたヒマそうだった明久と木下姉を連れて会場へと向かった。
扉を開けた瞬間に花瓶が投げつけられて来た時は一瞬焦ったぞ。うっかり左腕で防いだら大惨事になる。
うちの姉は無駄にプライドが高くて素直になれない性格だが決して無能ではない。
『『姉は秀吉の事が好きだ』という事を僕が知っている』という事はお互いに暗に認めている。
だから『アホな勘違いをしている僕に無理矢理結婚体験させられた』という体にすればプライドを守りつつ欲望を叶えられるというわけだな。
だからこそ怒ってるフリ……いやまぁ実際怒ってたか。そんな感じの態度を取っていた。
そうやってキスさせられればそれがきっかけになって何か上手いこと行ってくれないかな~って考えていたんだが……あろうことか秀吉が邪魔しやがった。
『リハーサルなのだからキスまでする必要は無い』という秀吉の紛うこと無き正論にどう反論しようか迷ったが……結局主張を受け入れる事にした。
ここで僕が諦めれば後は光が自力で何とかするしかない。さぁ、どうする?
……と、様子を伺ったら何か凄い目つきで睨まれた。
う~ん……どうしたもんかなぁ……
仕方がないから、秀吉に利を説いてみた。ダメだった。
だが、少なくともこれで『秀吉は自分が嫌だからキスを拒否した』というわけでは無さそうだと推測できる。
それはつまり、ほぼ間違いなく光に気を遣ったという事だ。新郎の演技を無視してまで、な。
秀吉の好感度はそこそこ高そうだ。姉さんにはそれくらいの情報で満足してもらおう。
リハーサルを終えると電話が鳴った。ディスプレイにはまた『霜月』と表示されている。
「もしもし?」
『リハーサルお疲れさま。見てたよ。しっかし、アレは本当に男子なんだろうね?』
「はい。少なくとも戸籍の上では男なので女性と結婚できます」
『生物学的に男子である事は保証しないんだね……』
「あいつの服をひん剥いたりDNAを詳細に調べたわけでもないので」
『…………こちらの方は向こうと違って真っ当に進んでいるみたいだね』
「はい」
ああそうそう。僕は最初の霜月さんとの交渉でカップルを2組紹介すると言った。
1組目は勿論雄二たちだが、2組目というのが実は光と秀吉の事だったりする。
この事は僕と霜月さんしか知らないけどな。
『まだ付き合ってすらいないようだけど……この後の事は君に任せても良いんだね?』
「当然です。近いうちにまた報告させて頂きます」
さ~て、どんな小細工を仕掛けてやろうか。楽しみだな。
そして本日のメインイベント。雄二と霧島の結婚式体験だ。
とは言っても、体験自体はそこまで重要じゃなかったりする。本物に近い結婚式を間近で見せるだけでも十分な効果が期待できるだろう。
一応クイズの第一問は裏正解を霧島向けに用意した。最後に辞退しなければ勝ち取れるように調整はしてあった。
最後の問題に関しては五分五分だったが……正答を答えてくれたようで何よりだ。
この結婚式体験であいつらの進むべき道を、目指すものを、見つけてほしい。
……だと言うのに、どっかのチンピラが邪魔しやがった。
アレ放っといて良いのか? どう見ても良く無いよな。
そう判断した僕はすぐに携帯を引っ張り出した。
「……もしもし」
『やぁ、ちょうど電話しようと思ってた所だよ』
「あいつら、排除して良いですか?」
『そうしたいのは山々だけど、あの手の連中は不当な扱いを受けたとすぐ騒ぎ出す。
私語厳禁と事前に通達したわけでもないからアレだけでつまみ出すのはちょっと厳しい。出来なくはないけど』
「じゃあ、理由があれば良いんですね?」
『そうなるけど……何か案でも?』
「なぁに、人の腕を折るような凶暴なチンピラは隔離しないとマズいでしょう」
『……そういう事か。大丈夫なのかい? あいつらを追い出す事よりも君の左腕の方が価値が高いよ?』
「治れば良いんでしょ? 許可を頂けますか?」
『……ふぅ、まあいいだろう。やってみたまえ』
「りょーかい」
通話を切り、ポケットへと仕舞う。
「許可は降りた。執行開始だ」
僕の計画を邪魔してくれやがったチンピラ共にはご退場頂くとしよう。
その後僕は医務室へと運ばれ、
何故かお見舞いに来た雄二から一発『お見舞い』され、
更に何人かから普通のお見舞いを受けた。
その後、のんびりとしている内に時間は過ぎ、僕のバイトは終わった。
今後の学校生活では2組のカップルの動向を見守るとしようか。
後は……明久と木下姉か。手を貸す義務は無いが、気が向いたら2人をくっつける方向で動いてみるとするか。
その方が、面白そうだからな。
「いじょ、如月ハイランド編完全終了!」
「意外と短かった……と言うより短くしたのね」
「同じ場面を2回も3回もやっても面倒なだけだからな。
2つの視点では語られなかった所はそこそこ真面目にやったが、それ以外はサクサク進めさせてもらった」
「何はともあれ、これで本当に完了っと。
次は何だっけ?」
「実は少々悩んでるらしい。
リメイク前ではカットしたプール回とかバイト回をどうするか……とな」
「あ~……時系列的にはこの辺なのか」
「ただなぁ……水着回やっても原作以上に面白くできる気が全くしないし、と言うか折れた腕で参加するの大変だし、
バイト回にしても無難にこなすだけになりそうなんだよなぁ……
そういうわけでカットされる可能性濃厚だ」
「あくまでも可能性……と」
「もしかしたらそっちを書けるかもしれんが……恐らくは第三巻の内容である学力強化合宿編になるだろう」
「……アレねぇ……」
※ 実際そうなりました。
剣くんの怪我が治ったら後でプール回とかもやるかも。夏が終わるまでならセーフだし。
「原作ではヒロインたちが石抱きとかいう大昔の拷問をさせてたアレだ。
ギャグ小説だから冗談で済んでいるが、真面目に考えたら足が一生使い物にならなくなりかねない凶悪な拷問だな。
しかも冤罪だったし」
「アンチ・ヘイトが流行るきっかけを作った章と言えるかもね」
「どういう流れであの流行ができたのか、詳細はサッパリだがな」
「それでは、また次回お会いしましょう!」