バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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本日2話目です。読み飛ばしにご注意下さい。




06 愚者

「明久、貴様がビリのようだな」

「お、おかしい。セオリーに従って動いてるはずなのにチップがどんどん減っていく……」

「基本的にカジノは胴元が勝つようになってるからな。期待値的には最適な行動を取っていても減る時は減るもんだ」

「くっ、こうなったら……オールイン! 勝負に出るよ!!」

 

 瀕死……と言うか何回か破産して借金してる明久がチップ全賭けという勝負に出てきた。

 良かろう、ならば全力で打ち砕いてやろうじゃないか! って言ってもディーラーは何もできないんだけどな。

 通常通りに全員に1枚ずつ配る。明久のカードは……A。

 

「……ほぅ?」

「よし、流れが来てる! ここでブラックジャックを引き当てる!!」

 

 今からイカサマして止める事も不可能ではないが……そんな事をする理由は皆無だな。

 通常通りに、2枚目のカードを全員に配ろうとデッキに手をかけ……

 

 突如、ドバンという音と共に入り口の扉が勢いよく開かれた。

 

「全員手を頭の後ろに組んで伏せなさい!!」

「うるせぇ今良い所なんだよ! 邪魔すんな!!!!」

 

 思わず反射的に怒鳴ってしまったが何事だろうか? 何かドラマに出てくる警察の台詞みたいなのが聞こえた気がするが。

 入り口の方を振り返ると、Cクラス代表の小山と、その他複数の女子が突入してきた。

 ……ああ、もう他のクラスが到着する時間だったか。ブラックジャックに夢中ですっかり忘れてた。

 

「な、何事じゃ!?」

「木下はこっちに来なさい! そっちのバカ3人は動かないで!!」

 

 島田の鋭い声で窓に向かっていた3人のバカが動きを止めた。

 ここ、3階なんだけどな……

 

「フゥ……やれやれ。仰々しくぞろぞろと、一体何の真似だ?」

 

 雄二がクールに台詞を吐くが、さっきまで窓に全速力で向かっていて、今もなお貴重品が入った鞄を抱えている男が発するべき台詞ではないのは気のせいではないだろう。

 目的はよく分からんが、サッサとカード配りたいんだよな……いや、配っても良いんだけど、皆が注意してない時に配ると雄二とか康太がカードをすり替えそうなんだよな。

 ……カードだけでも確認しとこ。明久が引くカードは……あ~、そう来るか。

 

「副代表、アンタ全然動じてないな」

「この騒動に興味が無いだけだ。今のところうるさい事以外の実害は無いし」

「そうやってスッパリ切れる時点でまともじゃないよ」

 

 で、結局何の騒ぎなんだこれは? うるさいんでサッサと片付けて欲しいんだが。

 そんな僕の心を読んだわけではないだろうが、小山が語り出した。

 

「よくもまぁそんなシラが切れるものね。あなたたちが犯人だって事くらいすぐに分かるというのに」

「犯人だと? 僕の罪科を問おうとは良い度胸だ。その蛮勇に免じて聞くだけは聞いてやろう。貴様は一体何の罪を問うている」

「そんなメチャクチャな言い回しでシラを切り通せるとは思わない事ね。コレの事よ!」

 

 そう言って小山が自信満々に掲げたのは……何だアレ? 何かの機械っぽいが。

 

「…………CCDカメラと、小型集音マイク」

「平たく言うと盗撮、盗聴キットって所か? で、それがどうしたんだ?」

「まだシラを切るつもり? これは女子風呂の脱衣所に設置されていたのよ」

「な、何だって!? それって犯罪じゃないか!!」

「そうだな。で?」

「『で?』じゃないわよ! あなた達が仕掛けたんでしょう!?」

「…………は?」

「誤魔化そうとするんじゃないわよ! いい加減に認めなさい!」

 

 ……なるほど、大体分かった。

 

「違う! ワシらはそんな事はしておらん!」

「そうだよ! 僕達はそんな事しない!!」

「…………」コクコク!

「……ここに来てからオレ達はずっと一緒に居たから不可能だ」

「ふざけないで! こんなこと、あなた達以外の誰がやるって言うのよ!!」

 

 誰って言われてもな……

 この部屋の現状で最も怪しい人物なんて1人しか思いつかない。

 

「いや、第一容疑者は貴様だろ」

「…………は?」

 

 僕の言葉を聞いた小山と、その取り巻きの女子たちが『何を言ってるんだコイツは』という視線を向けてくる。

 いや、だってさ……

 

「そのカメラとマイク、貴様の指紋が付いてるだろ? 今素手で触ってるんだから」

「確かにそうだけど……それでどうして私が犯人になるのよ!」

「いや、自分の指紋で犯人の指紋を消すとか、どう考えても犯人か共犯者の行動にしか見えない」

「ぐっ……い、いえ、そもそも指紋が付いてたという証拠が無いわ!」

「そりゃそうだ。貴様が隠滅したんだから。

 指紋が付いてない事を皆で確認してから触ったなら……それでもどうかと思うがまだ分かる。けどその様子だとそれすらやってないらしいな」

 

 手慣れた盗撮犯が証拠品に指紋を残すかは微妙だ。残ってたらむしろ偽装工作を疑う。

 だけど、問題はそこじゃなくて、証拠品を雑に扱ったという事だ。指紋に限らず何か分かったかもしれないのに。

 

「そんな事をしてるのは犯人か共犯者か、あるいはよほどの愚か者しか居ないと思うんだが……」

「なっ!? 私をバカにしてるの!?」

「貴様が犯人ではないならそうなるな。何だ、違ったのか?」

「違うに決まってるでしょう!! だいたい、何で私が盗撮なんてしなきゃいけないのよ!!」

「んなもん、適当に売りさばくとか、こうやって殴り込んでくる理由付けとか、いくらでも理由は考えられるだろ。

 自分が女子だからといって疑いが晴れると思ったら大間違いだぞ?」

 

 個人的な意見だが、犯罪の動機って犯人の絞り込みや有罪の根拠としては使えると思うけど、無罪の根拠としては結構弱いと思う。動機が無い事の完全な証明って簡単じゃないし。

 女子が女子の裸を盗撮する理由などいくらでも……ん? 何か聞いたことある話だな。

 …………あ、この件の犯人ってもしかして明久の脅迫犯と同じ奴か?

 だとしたら小山は犯人ではなさそうだな。本当にアホだっただけだ。

 

「貴様が犯人なのかアホなのか、僕にとってはどうでも良い事なんだが……とりあえず帰ってくれないか?

 証拠を自ら隠滅してる有様を見るとどうせ他の証拠なんて無いんだろ?

 僕達を怪しむのは勝手だが、ちゃんと考えてから行動するんだな」

 

 そう告げて追いやるような仕草をしてやる。

 これで引き下がってくれるなら終わりなんだが……そんな理性的な行動ができるならそもそもこんな事にはなってないわけで……

 

「って、待ちなさい! あなた達が犯人じゃない根拠なんてどこにもないじゃない!!」

「そうだな。で?」

「分かってるならサッサと根拠を言いなさい! 根拠を!!」

「だったら僕達が犯人だという根拠を示してくれ。根拠を」

「っ~~~~……もういいわ。こうなったら力ずくでも吐かせてやる! 皆! 取り押さえて!!」

「おいおいおいおい」

 

 何か物騒な事を言い出した。

 そしてそんな物騒な言葉に反応して取り巻きの女子たちが動き出した。

 

「え、ちょっ、ここは剣が論破して凌ぐ場面じゃないの!?」

「あんなので言いくるめられるわけが無いでしょう! さぁアキ! 白状してもらうからね!!」

 

 島田はどこからか持ってきたロープで明久を後ろ手に縛り、これまたどこからか持ってきた石畳に正座させ、以下略の重石を……おい、周到過ぎないか?

 

「吉井くん……信じていたのに……まさかこんな事をするなんて」

「姫路さん? 信じてたならそんなものは断じて持ってこないよね!? って言うかそんな重そうなの運べたの!?」

 

 姫路が抱えていたのは石抱きの拷問セット。何キロあるんだあれ?

 いや、その前に何で2セットもあるんだ?

 

「……どーすんだこれ? オレは巻き込まれたくないんだが……」

「そこの! 何を他人事みたいに突っ立ってるの! アンタもよ!!」

「えっ、オレも犯人扱いされてたのか!? このっ、寄るな!!」

 

 ボーッとしてた宮霧にも女子の魔の手は伸びる。襲ってきた女子を蹴り飛ばしたり殴り倒したりして逃れようとしたが、数の暴力にあえなく捕まってしまった。

 ……え? 女子に手をあげるな? 知らんがな。舌戦してたのに肉弾戦を挑んできたのは向こうの方だろう。

 ……現在進行形で躊躇無くぶん殴ってるあいつならそんな感じの事を答えるだろう。

 

 そうこうしているうちにそこまで腕力の無い康太も拘束される。雄二は……

 

「……雄二、来なさい」

「ちょ、待て翔子! 髪を引っ張る痛だだだ!!!」

 

 ……こんな感じになっているようだ。

 え? 僕は何してるかって? 女子が動き出したと同時に部屋の隅に退避して背後を取られないようにしながら牽制してるよ。

 スタンロッドとかがあれば良かったんだが、残念ながら竹尺くらいしか持ってきていない。どこまで凌げるか。

 

 しっかしまぁ……そうかそうか。そうなるのか。

 

「み、美波? ま、まさかとは思うけどそんな重そうなものを僕の膝の上に乗せたりはみぎゃぁああ!!」

「まだまだ重石はタップリあるわよ♪ アキは一体何枚まで耐えられるかしら?」

 

 健全な恋愛関係において、一番重要なのはお互いの信頼だと思う。如月ハイランドでも似たような事は散々言ったっけ。

 疑う事自体は悪いことじゃないさ。そして、疑いすらしないというのはただの決め付けに過ぎない。

 

「吉井くん? 悪いことをしたらしっかりと反省しなきゃダメですよ?」

「いや、だから僕達はそもそも盗撮なんてひぎゃぁあああ!!!」

 

 姫路と島田、この2人は一応明久の事が好きなんだと思っていた。いや、実際好きなんだろう。

 明久が最終的に誰と付き合う事になるのかは全く分からないが、どう転んでもこの2人は害悪にしか成り得ない。

 ……この事件を活用して、少々試させてもらうとしようか。






「ヒドい暴論を見たわ」

「原作において実は小山がゴム手袋の類を装着していた可能性もゼロではないんだが……そんな都合の良いものがそうそう転がってるとも思えないし、そんなキッチリした性格だとも思えないんで素手だろうと判断したようだ。
 その結果……小山の行動はミステリーのフィクションなら8割くらいの確率で犯人か共犯者になるだろうと判断した」

「小山さんは筆者さんに疑われる才能でもあるのかしら……?
 と言うかこれってギャグ小説なんだけどね……ミステリーじゃないんだけどね……」

「何はともあれ問題行動を取っているのは確かだ。証拠の隠滅も立派な犯罪だからな」

「犯人が証拠を隠滅するのは実は罪じゃないんだけど……その場合は普通に犯人だから関係ないわね」

 ※現在の法律では『犯人がバレたくなくて証拠隠滅するのはむしろ当然の事。もし自分が犯人だったら絶対そうするから犯罪じゃないよ』という解釈をするそうです。
  あと、親兄弟などが犯人の場合も『隠したくなるのも仕方ないよね』という解釈になるらしいです。
  皆さんが証拠を隠滅したくなったら赤の他人ではなく身内を頼りましょう! まともな身内なら即通報されると思うけど。

「さて、後半部分は……問題の場面だな」

「問題の場面ねぇ……」

「あいつら人の話を聞かないからなぁ……」

「苦労してるわねぇ……ホント」

「全くだ。貴様の所の代表が羨ましいよ」


「では、次回もお楽しみに!」





「……ところで、吉井くんが引くはずだったカードって何だったの? 10?」

「いや、Aだった。オールインしてるからスプリットもできないな」

「うわぁ、妙な所で運が無いのね……」
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