バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

84 / 183
07 中立

 明久も康太も、ついでに宮霧も拘束され、秀吉も保護という名の拘束を受けている。

 雄二は霧島に拉致られ、自由に動けるのは僕1人だけ。いや、包囲されてる状況だから決して自由ではないか。

 僕一人で、なおかつ手段を選ばなければ包囲を突破する事は不可能ではない。襲ってくる女子の眼球を抉り出すとかすれば萎縮するだろうから強行突破も可能だろう。

 そんな事したらかなり恨みを買いそうなんで自重しておくけどな。リスクとリターンが全く釣り合ってない。

 

 結論、自力での突破は不可能。

 

 だが、悲観する事は無い。この状況の解決方法は実はかなりシンプルだ。

 それは、ひたすら時間を稼ぐ事。それだけで解決だ。

 何故かって? 時間が経てば確実にやって来る人が居るからだ。

 

「お前たち! 何をしている!!」

 

 それは試召戦争の激戦区でよく聞く声。

 補習担当こと西村先生……鉄人の声だった。

 

「西村先生! 丁度良かった。この盗撮犯たちを捕まえて下さい?」

「盗撮だと?」

「はい! 女子更衣室にカメラとマイクが仕掛けてあったんです!」

「…………なるほど。お前たちがやったのか?」

 

 僕達は一斉に首を横に振った。嘘の自白をするメリットなど無いからな。

 

「そうか……分かった。話は補習室でじっくり聞かせてもらおう」

「えっ、ここって補習室なんてあったんですか?」

「学園の補習室ほどじゃあないが、そこそこ頑丈な部屋が用意されている」

「ちょっ、何で補習室!? 僕まだ何もしてないのに!!」

「まだ?」

「あ、いや、今のは言葉の綾で……」

「……まあいい。どちらにせよじっくり話を聞かせてもらうとしよう」

 

 こうして僕達(秀吉含む)は補習室へと連行されていった。

 運ばれるのは初めての経験だな。こんな感覚なのか。

 

 

 

 

 

 

 補習室の扉が閉ざされ、中からしっかりと鍵がかけられた。

 これで妙な妨害は入らない。今この部屋に居るのは、鉄人先生と運ばれた5名。そして先客の2名だけだ。

 

「お前ら、無事だったか?」

「この通りピンピンしてる。助かったよ雄二」

 

 そう、先客とは、霧島に拉致られていた雄二と拉致った霧島だ。

 鉄人先生があれだけ早く駆けつけてきたのは雄二が手を回した結果だろう。そうじゃなかったらもうちょい時間がかかってたはずだ。

 

「あれ? 雄二生きてたんだ……」

「人を勝手に殺すな」

「だって、霧島さんに連れていかれてたからてっきり拷問の果てに富士の樹海に棄てられたのかと……」

「……私は、そんな事はしない。

 ……雄二の言葉をちゃんと聞くって決めたから」

 

 ほぅ……素晴らしい成長だな、涙が出そうになるよ。

 へし折った左腕はまだ疼くが、無駄ではなかったようだな。

 

「あの……どういう事なのじゃ? 西村先生はワシらが盗撮犯だと思って連行したのではなかったのかのぅ?」

「そんな事は無い。片方だけの言い分を聞いて人を犯罪者扱いするなど教育者としてあるまじき行為だ。

 お前たちが疑わしいのは確かだが、聞く耳持たないという事は無いし、ましてや痛めつけるなど以ての外だ」

「えっ、て、鉄人がまともな事を言ってる!? ま、まさか偽物!?」

「吉井、そんなに補習がしたいのか? タップリ用意してやるぞ?」

「スイマセンデシタッ!!」

「西村先生は意外と……っていう言い方も失礼だけど、ゴッツい見た目に反してかなり真っ当な教師だ。少なくともオレはそう思ってる。

 あんな拷問紛いの事を見過ごす訳が無い。

 ……そう言えば吉井、アンタだけ先に拷問受けてたよな? 脚は大丈夫なのか?」

「うん、平気だよ。頑丈さには自信があるからね」

「頑丈ってレベルなのかアレ……?」

 

 先生の立場はあくまでも中立。相手が暴走している時に来てくれれば非常に助かる。

 逆に言えば、こっちが何かやらかした時は敵になる。先生を巻き込んで動くのであれば、慎重に事を進めないとな。

 

「それじゃあ、さっきも確認した事だがもう一度聞かせてもらおう。

 お前たちは盗撮犯では無いんだな?」

「無論です」

「ああ」

「そんな事はしてません!」

「…………」コクコク

「ワシもやっておらぬ!」

「そんな面倒な事はしません」

 

 僕達6人が同様に否定する。

 それを聞いた鉄人先生はうんうんと頷いている。

 

「なるほど。やっていない……と。分かった。

 念のため、お前たちがいつ頃合宿所に来て、何をしていたのかを話してくれ」

「アリバイ確認ですか。残念ながら、僕達は早めに到着してずっと部屋でブラックジャックをやっていました。

 証明は僕達の相互の証言だけ、カメラを仕掛ける事は不可能では無かったです」

「そうか……分かった」

 

 残念ながら僕達が即座に無罪になるような証拠は無い。

 むしろ、早めに来てるからかなり疑わしい立ち位置ではある。そういう意味では真っ先に問い詰めに来るのも理解できなくはないな。

 

「質問は以上ですか? なら、報告したい事があります」

「何だ?」

「多分ですけど犯人が分かりました」

「何だと!?」

「確証があるわけではありませんが、Dクラスの清水が犯人である可能性が高いです。

 動機のある女子なんてそいつくらいしか居なさそうなので」

「清水……なるほど。確かに動機はあるな。

 しかし、何故女子に限定するんだ? 動機を持つ生徒など男子にはいくらでも居るだろう」

「簡単な事です。カメラが見つかるのがあまりにも早すぎる。

 早めに来た僕達が犯人でないのなら、カメラを仕掛けられるタイミングは限られている。

 姫路か島田が犯人の可能性もあるけども、僕の感覚ではさっきの殺意は本物だった。

 犯人が仕掛けたカメラを……いえ、仕掛ける前のカメラを自作自演で見つけ出したのだと考えた方が自然です」

 

 若干こじつけ臭い所もある推理だ。証拠もないしな。今は。

 

「この推理が正しければ、誰か1人『カメラを見つけた!』と声高に叫んだ奴が居るはずです。

 その『誰か』が犯人本人なのか、あるいは唆されただけの一般人なのかは分かりませんが。……聞き取り調査をすればそんな奴が居たか居なかったかくらいは簡単に分かるでしょう」

「……分かった。よく調べてみるとしよう。

 他に何かあるか?」

「…………」スッ

 

 静かに挙手をしたのは康太だ。それに対して鉄人は無言で頷いて言葉を促す。

 

「…………さっきの推理が正しいなら、いや、正しくなくても今回のアッサリ見つかったカメラは囮だと思われる。

 …………遅くとも次の女子の入浴のタイミングで本命のカメラが仕掛けられるはずだ。注意して欲しい」

「分かった。他の皆にも伝えておこう。他にはあるか?」

「……では僕から一つ。

 今後の方針についてですが、犯人が確定したら警察に通報したりするんでしょうか?」

「う~む……生徒を警察に突き出すような真似はできればしたくは無いが……あまりに悪質であればそれも止むなしだろう。

 盗撮が未遂であれば穏便に済ませられるんだが……」

 

 この言葉は鉄人の私見も入ってるだろうが、概ね学園側の要望と見て良いだろう。警察沙汰になったら冗談抜きで犯人よりも学園が困るし。

 僕としては怪しい奴には犯罪の既成事実を作ってもらった上でとっ捕まえる方がスッキリするんだが……まぁ、世の中そんなもんか。

 盗撮犯の件は学園側の要望に沿って対応するとしよう。

 

「となると、犯人を速攻で確定した上で厳重監視、牽制するのがベストか。

 清水が犯人である証拠……う~ん……」

「おい副代表、ちょっといいか。

 オレとしては学園の要望よりもオレ達に着せられた汚名を晴らす事を優先したいんだが」

「……そう言えばそうだった。すっかり忘れてた」

 

 盗撮犯が仕向けたのか、あるいは小山あたりが勝手に暴走したのかは不明だが僕達は既に喧嘩を売られている。

 そこら辺も勘案した解決方法となると……

 

「……鉄人先生。ちょっと試してみたい事があるんですが、協力して頂けないでしょうか?」

「一体何をやらかす気だ?」

「ダメ元で1手ほど仕掛けてみます。成功すれば犯人確定、失敗してもノーリスク。そんな手です」






「無事に脱出できたわね。流石は鉄人」

「リメイク前では僕が強行突破してたんだが……今回の僕は戦闘力は前回よりはやや低めに設定されている上に腕がまだ完治していないという設定をしっかり覚えていたんで鉄人を頼る方向に変えたそうだ。
 霧島の手柄にもできるしな」

「如月ハイランドの教訓が生かされてるわね。
 ……坂本くんだけを救出して他を見捨てたとも言えるけど」

「まぁ、そこは仕方ないだろう。一兎を追う者は二兎を得ずという奴だ。雄二だけを救出したからこそスムーズに進められたんだろう」

「それもそうねぇ」


「……さて、本文中では鉄人が盗撮犯の扱いについて述べていたが、現実の学校でも大体こんな感じだろうと考えながら書いたようだ。
 まぁ、学校次第と言ってしまえばそれまでなんだがな。
 鉄人であれば、厳しさはあるものの誰よりも生徒の事を考える鉄人であれば、生徒を犯罪者にして将来を閉ざそうとは考えないだろう」

「それで犯人がまたやらかしたら庇った先生は大変な事になるんでしょうけど……西村先生なら問題なさそうね。
 あのヒトの補習を受ければ再犯なんて……しないと良いなぁ……」

「アレを受けてなおやらかしそうなのが多数居るのがバカテスクオリティだな。
 そういうわけで、『可能なら助けたい。しかし犯罪を見逃すのは厳しい』というスタンスだな」


「では、次回もお楽しみに!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。