合宿2日目の自習も無事に終わり、僕達は部屋でくつろいでいた。
「トランプ5デッキ持ってきてるとか言ってた時はアホかと思ったけど、こういう使い方もできるんだな……」
「組み直すのと対応覚えるのがちょっと面倒だけどな」
トランプを4デッキほど組み合わせ、丁寧な意味で適当にカードを抜く。
するとコレが完成する。カード麻雀ならぬトランプ麻雀が。
麻雀牌を持ってくると結構かさばるし重いからな。
「よし、リーチだ!」
「明久、今度はちゃんと上がれるようになってるんだろうな?」
「も、勿論だよ!」
麻雀とは、素早く役を作って上がるゲームだ。役が無いと上がれない。
にも関わらず上がろうとすると罰金が取られる。と言うか取られていた。
ポーカーとかと違って14枚もの手札をやりくりするんで初心者だと意外と間違えたりするものだ。
「むぅ……ここは降りじゃな」
「…………」
「……コレだな」
「ふ、ふふ……見える、このカードが上がり牌である事が!
うぉぉぉおおお!!!!」
明久がアホみたいな事を言いながら気合を入れてカードをめくろうとした。
……うん、めくろうとしただけだ。実際にはめくれなかった。
何故かというと……再びドバンという音と共に女子が乱入してきたからだ。
「……お前ら、何しに来たん?」
「決まっているでしょう! 教師を騙して安穏としてるあなた達に引導を渡しに来たのよ!!」
呆れた声で放たれた僕の問いに答えたのはドヤ顔の小山である。相変わらずコイツが女子陣営の筆頭らしい。
その後ろには多分Cクラスの女子。そしてFクラスの女子2名も控えているようだ。他のクラスが混ざっているかはよく分からんな。
僕が知っている女子の顔なんてAクラス首脳陣とB・Dクラスの副代表、あと清水くらいなんでそれ以外はサッパリだ。
「はぁ……やれやれ……宮霧! アレをやるぞ!!」
「……えっ、オレ? アレって何だよ!!」
「アレと言ったらアレに決まっているだろう!
仕方あるまい、雄二、やれ!」
「一応俺の方が立場は上のはずなんだがな……んじゃ行くぞ、
雄二が腕を掲げ、中二っぽい言葉を唱える。その腕には僕達が清涼祭で勝ち取った賞品『白銀の腕輪』が嵌められていた。
音声認識でキーワードを読み取るとかいう誤爆が頻発しそうな機構のソレの効果は『召喚獣のフィールドの作成』だ。
なお、今まで一度も誤爆した所を見たことは無い。製作者である学園長の技術力の高さが見受けられる。
「……ちょっと待て。腕輪も何も持ってないオレに真っ先に声を掛けたのはどういう訳だ?」
「意味など無い。ツッコミ待ちだ!」
「いつからオレはツッコミ役になったんだ……?」
「……ともかく、これで召喚が可能になったというワケだ。
[フィールド:数学1A]
Fクラス 空凪剣 400点
「何をしてるの。召喚獣なんて所詮は立体映像……」
「忘れたのか? 僕は観察処分者。物理干渉能力持ちだ」
「っ!! だったら召喚獣で倒すまでよ!
小山と、その他数名が召喚獣を呼び出した。
召喚獣に対抗するには召喚獣。それ自体は何の問題もない。そしてこの人数を捌くのは僕には無理だろう。
だけどねぇ……このヒト達分かってるのかね? 1人でも死ねば終わりだって事を。
「くらえっ!」
『きゃっ!』
適当な召喚獣を強引に一体消す。するとどうなるか?
答えは簡単。戦死に反応したあの人がやってくる。
「戦死者は補習!!
……の前に、お前たち何をしている!」
「えっ? 私たちは盗撮犯を懲らしめて……」
「盗撮犯はこいつらではないと今朝言ったはずだぞ? サッサと部屋に帰れ!」
「ですけど……」
「それとも、補習室に行くか? 今なら何時間でも付き合ってやれるぞ?」
「くっ…………分かりました。失礼します」
こっちは何も悪い事をしていないのだから、教師が来れば解決だ。あの鉄人であれば尚更。
鉄人先生の警告を受けて小山は諦めたようだ。それに追随して他の生徒たちもこの場は諦めた。
……一部の例外を除いて。
「先生に何と言われようと退くわけには行きません!」
「そうよ! アキが白状するまで帰れないわ!!」
他のクラスの連中よりも同じクラスの連中の方が殺意が高いのは一体全体どういう訳だろうか?
いつの間にか召喚も終えているようで準備万端といった所か。
よし、じゃあ……
「……先生、バトンタッチをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「何だと?」
「僕は戦う動機が無いですが、先生にはある。
戦死させられれば手っ取り早く補習室送りにできますよ」
「一応筋は通っているな。いいだろう。
[フィールド:数学1A]
補習教師 西村宗一 782点
…………えっ?
「な、何ですかその点数!? 一体どうやって!?」
「先生は下がってて下さい! これはウチらとアキ達の問題です!!」
「そういう訳にもいかん。さぁ、掛かって来い!」
……その後の結果は……1分も経たないうちに平和な時間が戻ってきたとだけ述べておこう。
「以上、2日目夜の終了だ」
「西村先生……一体何をどうやったのよ……」
「文月学園のテストは一定の点数を越えると体力勝負になってきそうだな……
いや、華奢な見た目の高橋先生も点数的には同じくらいのバケモノなんだが」
「いや、実は高橋先生も服の下はムキムキの可能性も……?」
「そんな高橋先生は嫌だな。しかしこの世界だと有り得なくもないのが怖い」
「う~ん……うちの学校のテストのシステム、色々と問題があるわよね。
まぁ、テストなんてどれもそんなもんでしょうけど」
「個々人の学力の計測が主目的のはずだが、結構余計な要素も多い。
うちの学園の場合は単純に1回の試験でこなす量が桁違いだから単純に問題も増えるんだろうな。
「では、次回もお楽しみに!」