「流石にそろそろキツくなってきたか」
フィールド:化学
Fクラス 空凪 剣 23点
乱戦状態にあって無傷で立ち回るのは今の僕には不可能だ。
少しずつ、少しずつ削られて今に至る。
可能なら科目を変更して対応したいが、別の先生を呼ぶという事は戦線の拡大に繋がる。
雰囲気やら何やらで頑張ってごまかしてはいるが、それでもFクラスとDクラスには確かな地力の差が存在する。戦線の拡大は自らの首を締める行為に等しい。
「おーい副代表、今話せるか?」
「…………一旦フィールドを抜ける」
戦場は一旦別の誰かに任せて離脱する。
フィールドから脱出してから話を聞く。
「何だ?」
「さっき伝令があった。どうやら
「木内先生? 確か採点が速い先生だったな?」
「そ」
試験という物は採点されて初めて価値が出る。まぁ、当然の事だな。
で、これも当然だが、採点スピードというものは先生によって個性が出る。ついでに採点の辛さ、甘さとかもな。
採点が速いという事は大人数の点数を比較的速い時間で補充する事が可能だ。短期決戦に持ち込みたいなら相性最高だ。
そしてもう一つ。『数学の教師』を連れ出した事も重要だ。
今のフィールドは化学。数学を補充しても意味は無い。
ではどういう事かと言うと……話は単純で、数学フィールドを追加しようとしているという事だな。
う~む、どうしたもんかなぁ……
「ちなみに、雄二は戦況を把握してるのか?」
「多分な。斥候だってオレらみたいな前線部隊じゃなくて本陣に真っ先に情報を送るだろうし」
「ふむ……まぁ、丁度いいか。
ちょっとひとっ走り本陣まで行って、あっちの情報を確認してくる」
「りょーかい。早く戻ってきてくれよ。
副代表が居るのと居ないのとじゃ安定感が段違いだからな」
「努力はしよう。じゃあな」
無事にFクラスまで退避し、相変わらず教壇の上で偉そうにしている雄二に話しかける。
「おっす雄二。戦況は把握できてるか?」
「ん? 戻ってきたのか。
ああ。まぁ大体は把握している。
数学教師が呼び出されて戦線が拡大しそうな状態だろ?」
「まぁそりゃ把握してるか」
「ああ。数学の木内と船越が呼ばれた所まで把握している」
「……僕より詳しいな。木内先生の情報までしか把握してなかったよ。
で、対策はしてあるのか?」
「ああ、勿論だ。
丁度今須川に放送室に向かわせ……」
ピ~ンポ~ンパ~ンポ~ン
『船越先生、船越先生』
丁度いいタイミングで須川の声が聞こえてきた。
放送……という事は偽情報でも流すつもりか。
『2年Fクラスの吉井明久くんが体育館裏で待っています』
……うん?
『生徒と教師の垣根を越えた大事な話があるそうです』
………………えっと……脳内辞書では……
船越先生 (45歳♀独身)
婚期を逃し、ついには単位を盾に生徒に交際を迫ったとか何とか……
あくまで噂だが。
「…………明久、大丈夫かな?」
「ま、大丈夫だろ。明久だし」
「…………だといいな」
放送が終わった後、遠くの方から『須川ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』という怨嗟の籠もった叫び声が聞こえた気がした。
……気のせいだな。きっと。
「ところで雄二、この放送の内容を考えたのって……」
「当然、俺だ」
「デスヨネー」
さて、戦況と対策の確認もできた事だし前線に戻るとするか。
しかし、前線行っても細かい指揮を取るくらいしかできないんだよな。まぁ、居ないよりはマシか。
「んじゃ、また前線に行ってくる。
代表サマから何か要望とかあるか?」
「そうだな……明久をなるべく戦争に専念させてくれ。
今のアイツなら包丁持って須川に飛びかかるくらいやりかねない」
「なるほど。じゃあ犯人は貴様だとそれとなく伝えておこう」
「……そちらの方がマシか。そうしてくれ」
そして、再び前線。
「お~、副代表。戻ってきてくれたか。
さっきから隊長が使い物にならなくてな」
「フフフフフ、須川クン。ああ、遭いたいよ。ああ、きっと殺れる。僕なら殺れる……フハハハハ……」
明久がイカれているが、割といつもの事なので大した問題ではない。
とりあえず……伝えておこう。
「おーい明久。あの放送を指示したのは雄二らしいぞ」
「雄二ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「まぁ落ち着け。貴様があいつを殺したい気持ちは分かるが、今は戦争中だ。
あいつが倒れたらFクラスの負けになっちまう。そうしたら姫路は今よりも酷い環境に身を置くハメになる」
「うぐっ! ひ、姫路さんが……?」
「ああ。だから、まずは戦争に勝とう。
そして、後腐れ無い状況で雄二を殺害しよう。そうすればハッピーエンドだ。な?」
「そ、そうだね! ありがとう剣!
よし、僕頑張って勝つよ!!」
「ああ。そうしてくれ」
「……副代表がキメ顔で恐ろしい事言ってるな。
まぁ、いいか」
船越先生を偽情報で遠ざけた甲斐もあって無事に下校時刻まで耐える事に成功した。
雄二の作戦ではここまで来ればほぼ勝ちは確定だ。
下校時刻という事は教室で授業を受けていた連中が廊下に溢れかえる事になる。
『人ごみを上手く使って奇襲するんだ!!』
『全員固まって動け!! Fクラスが襲ってくるぞ!!』
Fクラスは人ごみを生かしたゲリラ戦というなんとも姑息な手段を用いている。
本物の戦争だったら他クラスの一般人ごと虐殺されそうだな。戦場に入ってくるなんて自殺行為に他ならない。
まぁ、これはあくまでも試験召喚戦争だからそんな大惨事にはならないが。
これがルールが決められたゲームである以上、ルール外の存在は絶対的な壁になる。
ただ……この作戦はあくまでも体力がある生徒の方が有利になる程度の効果しかない。これだけで勝ち確とはいかない。
この作戦の真の目的は、今の作戦と同じくこの時刻になってようやく使えるようになる本命の作戦のカモフラージュと下準備。
本命の作戦、それは……
『Dクラス代表の
『ヒャッハー! 殺ってやるぜぇ!!』
「皆! 慎重に行動しろ!
相手はFクラス。しっかり正面から戦えば勝てる!」
どうやらDクラス代表が痺れを切らして出てきたようだな。
この状況なら優秀な指揮官がわざわざ前線近くに出てくるというのは雄二の読み通りだ。
「よし明久。代表に仕掛けに行くぞ」
「……確かに。これはチャンスだね。行こう!」
本命の作戦、それは敵クラス代表への奇襲だ。
他の余計な連中に挑まれる前に素早い動作で代表の前まで躍り出る。
「行くぞ! Fクラス副代表空凪剣がDクラス代表に……」
「Dクラス玉野美紀、
挑もうとしたら近衛部隊に邪魔された。
まぁ、そりゃそうだな。乱戦だからこそ奇襲は絶対に警戒する。近衛部隊が控えているのは当然だ。
当然なんだが……ちょっと慌てたフリをしておこう。
「くっ、近衛部隊か」
「そんな! もうちょっとで勝てると思ったのに!」
「君達は……大暴れしていた副代表と、船越先生の彼氏か」
「違うよ!? 事実無根だよ!!」
「そう照れる事は無い。しかし君達、本気で首を取れる気で居たのかい?
代表である俺が討ち取られたら終わりなんだから近衛部隊を配置しているのは当然の事じゃないか」
「いや~、ワンチャンあるかと思ったんだが、流石にそう都合良くはいかんか。
だが、こうなった以上は仕方ない。近衛部隊ごと貴様を葬り去る!!」
「ふっ、やってみればいいさ。できるものならね!!」
と、格好付けてみたが、僕に敵の代表の平賀を討ち取る気は微塵も無い。だって、必要ないからな。
そう、本命の作戦は奇襲。そしてその実行役は決して僕でも明久でもない。
「あ、あの……」
「え? あれ? 姫路さん? どうしたんだい?
Aクラスの人はこの辺は通らないと思うけど……」
「いえ、違います。私、Fクラスの姫路です」
「…………え?」
「平賀くんに試験召喚勝負を挑みます。
フィールド:現代国語
Fクラス 姫路瑞希 339点
Dクラス 平賀
「え、アレ?」
「えいっ!!」
姫路の可愛らしい声とともに、平賀の召喚獣が消し飛んだ。
これにて、Fクラスの勝利だ。
「基本的な戦術は原作やリメイク前と変わらないのね」
「まぁな。どう考えても一番効率が良いからな。
姫路単独でDクラス相手に無双できたらそっちの方が効率は良いが……流石に無茶だな」
「Aクラス代表でも……流石に無双するのは厳しいかしらね」
「そうだな。それに戦闘経験を積ませるという意味でも単騎無双作戦は却下だな。
後のFクラスの数少ない財産になるからな」
「では、次回もお楽しみに!」