バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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13 純心と疑心と

 ……合宿3日目 夜……

 

「……おい、ハートの6を止めてる奴は一体誰だ!」

「クックックッ、一体誰だろうなぁ」

「ぐぬぬ……いい加減厳しいのじゃ。パス2つ目じゃな」

「…………パス3」

「ムッツリーニはこれでリーチだね。ほいっと」

「くっ、明久のくせに余裕そうだな……パス3!」

 

 今日のトランプの内容は七並べだ。

 今現在、ハートの6が何故か出てこなくて厳しくなってる状態だな。

 う~む、一体誰が持ってるんだろうな~。

 

「くそっ、出せるカードが無い。パス4つ目だ」

 

 今回のルールはパスを3回まで許容するものとなっている。

 オーバーしてしまった場合はリタイアして持ってるカードを全て並べる事になる。

 宮霧が吐き出したカードは……ハートの5、ハートの4、ハートの3……何というか……不幸だった……のか?

 

「おっ! ハートの5以下が出たか。誰かジョーカー使って出せる奴は居ないのか!」

「…………」スッ

 

 1個飛びのカード+ジョーカーを出す事も可能。ジョーカーで代用されたカードの持ち主は強制的に提出させられる上にジョーカーを押しつけられる。

 便利なカードではあるが……最後までジョーカーを持っていた場合はリタイアよりも悪い負けとなる。万能カードであると同時にババでもあるわけだ。

 康太が出したのはジョーカーとハートの2。ハートの6の持ち主は強制的に吐き出させられる。

 

「ほら剣、サッサと出しやがれ」

「いや、僕ではないが」

「…………えっ?」

 

 だって、さっきから誰なんだろうなって言ってるじゃないか。

 それが嘘だと思われていたとは、心外だな!

 

「じゃあ一体誰だ!?」

「…………すまぬ、実はワシじゃ」

「ええええええっ!? う、裏切られた! 秀吉に裏切られたよ!!」

「いや、アンタは一番余裕があんだろ。ここまで来てパス0とかどういう事だよ。

 あの副代表でさえパス1なのに」

 

 七並べの場合は他のプレイヤーの動きによって有利な手札というものが変わってくる。今回のルールだと6や8を独占していてもジョーカーを押しつけられたら一巻の終わりだ。

 決定的な初期手札のパターンがあれば僕の強運が猛威を振るっただろうが、『運の良い手札』というものが無い以上はそれなりになる。それでもそこそこ良い手札だったが。

 

「よし、今日こそ勝つ!! これで上がr」

 

 

ドバン!(扉が勢いよく開かれる音)

 

 

 ……扉が開く音によって明久の上がりが掻き消されたようだ。残念だったな。

 

「いやいや、僕上がったよ!? 上がったからね!?」

「宮霧、ちょっとバトンタッチ。雄二、あと腕輪頼む」

「ほいよっと。起動(アウェイクン)

試獣召喚(サモン)っと」

 

 昨日と同じく女子たちが入ってきたので昨日と同じように対処する。

 七並べは先にリタイアしていた宮霧へと押しつける事にした。残り2枚だしきっと勝ってくれるだろ。

 

「うわっ、ダイヤの9止めてたのアンタだったのかよ。オレには関係ない所だけどさ」

「なぬ? そうじゃったのか……ではジョーカーとダイヤの10じゃ」

「うげ」

 

 ……勝ってくれる、はずだ。

 

「ちょっとあなたたち、何をしているの! こっちを見なさい!!」

「ん? ああ、そうだったな。ヒマそうで羨ましいよ」

「全っ然ヒマじゃないわよ!! とにかく、今日こそ引導を渡してあげるんだから!!」

「そうかそうか。で、どうする気だ? 1人が戦死するだけで昨日の二の舞になるだけだが」

「そうやって済ました顔をしていられるのも今のうちよ!

 坂本くんが使っている『白銀の腕輪』は時間制限がある上に点数を消費する。無限に張りつづけられるわけじゃないんだから戦わずに外から待ってるだけで十分よ!」

「……枯渇するまで結構な時間がかかると思うが」

「枯渇するまで張りつづける気なの? 補充試験がかなり大変だと思うけど?」

「……なるほど」

 

 特に何もせずに相手が勝手に消耗してくれるだけでも十分だと。

 そのうち教師が見回りに来そうだが……タイミングさえ分かれば逃げたり隠れたりする事は可能か。んで、また同じ事をすると。

 それでも結局時間切れの方が早そうではあるが……ここは手っ取り早くケリを付けさせてもらおう。

 

「貴様ら、何を勘違いしているんだ?」

「はぁ?」

「さっきも言ったはずだ。1人が戦死するだけで昨日の二の舞になるだけだ……と」

「それは勿論分かってるわよ。だから戦わないんでしょ。バカじゃないの?」

「……そう思うんなら勝手にしてくれ」

 

 召喚獣を操作し、ナイフを逆手に構える。

 それを正面に掲げ、そしてそのまま腕を振り下ろした。

 召喚獣の、心臓に向かって。

 

 

  [フィールド:物理]

 

Fクラス 空凪剣 400点 → Dead

 

 

 

「……はっ?」

 

 本当に、死ぬのは誰でも良かった。

 どちらでもいい。誰かが死ねば先生が来るのだから。

 

「戦死者は補習!!

 ……お前たち、まだ懲りていなかったのか。サッサと自分の部屋に帰れ!」

「くっ……皆、今日は撤退!!」

 

 小山の号令によりほぼ全員が撤退した。指揮能力だけは結構高いようだな。

 それでも従わない人が今日も2名ほど居たが。

 

「私は諦めません! 今日こそ吉井くんから自白の言葉を聞かなきゃならないんです!!」

「アキ! 引きこもってないでちゃんとウチと話しなさい!!」

 

 しつこいなこいつらも。諦めて帰ってくれりゃあ良いのに。

 言いたい事は色々とあるんだが……まずは一言言わせてくれ。

 

「……とりあえずどいてくれないか? 補習室に行きたいんだが」

「退くわけが無いでしょう!? アンタ達が大人しく罪を認めるまではフムギュッ!」

「み、美波ちゃん!?」

 

 ちょっと手段を選んでいられない状態なので顎を揺すって脳震盪で倒れてもらった。

 さっきから召喚獣のフィードバックの影響でナイフで刺した心臓が変な音立ててるんだよ。サッサと補習室で休ませてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空凪くんが自爆して、皆が逃げ出して、美波ちゃんもアッサリと気絶させられて、私1人だけになってしまいました。

 それでも一応頑張ったんです。頑張ったんですけど……

 西村先生は一体何者なんでしょうか? 数学だけじゃなくて物理でも単科目で700点オーバーって一体どんな事をしたら取れるんでしょうか……?

 

「戦死者は補習! ……と言いたい所だが、その前に島田を医務室まで連れていかねばならん。

 姫路、補習室の場所は分かるか? 先に行ってくれ」

「…………分かりました」

 

 その前に少しでも吉井くんと話す時間があれば……と思ったのですが、西村先生が通せんぼしてて進めません。

 どうやら私が移動した後で美波ちゃんを運ぶみたいです。仕方がない、今は従いましょう。

 まだチャンスはいくらでもあるはずですから。

 

 

 

 

 重い足取りで補習室に辿り着くと中は真っ暗でした。

 おかしいですね。空凪くんが先に来ているはずですけど……

 電気のスイッチは出入り口の近くにあるはずです。携帯の小さなライトを頼りに……あった。ありました。

 そう言えば補習室に入るのは初めてです。皆さんは何だかとても恐ろしい場所のように噂してましたけど、こうして見ると普通の教室と変わらない、むしろFクラスよりも真っ当な設備みたいですね。

 普通の学校にありそうな椅子。

 普通の学校にありそうな机。

 机に突っ伏して微動だにしない人影……

 

「って、空凪くん!? 居たんですか!?」

 

 電気が点いていなかったので無人かと思っていましたが普通に居ました。

 

「……ん? ああ、姫路か。どうしたんだ? こんな所に」

「西村先生に挑んだら戦死してしまって……あの、空凪くん? 何だか汗が凄いですけど大丈夫ですか?」

「ククッ、気にするな。大した事じゃない。西村先生はまだ来ないのか?」

「美波ちゃんを医務室に運んでから来るとの事なのでもう少しかかると思います」

「そうか。分かった」

 

 再び訪れる、沈黙の時間。

 この部屋は防音がしっかりしているのか他の部屋からの音も全然聞こえません。完全な無音でした。

 

「……ところで、一つだけ気になった事があるんだが」

「何でしょうか?」

「貴様は僕とは普通に話すんだな。明久はあれだけ目の敵にしてるのに」

「それは吉井くんが罪を認めないからです! あなたは……えっと……」

 

 吉井くんは罪を認めてないですが、それは空凪くんも同じです。

 では何故普通に話せるのかと言うと……

 

「う~ん……単純に犯人だと思ってないから……ですかね」

「ほぅ? 明久と同室の僕は容疑者ではないのか」

「はい。吉井くんなら盗撮くらいやりそうなイメージがありますけど、あなたの場合は全然想像できません。だからだと思います」

「……なるほどなぁ。てっきり明久以外は眼中に無いだけかと思ったが」

「そ、そんな事は無いですよ!」

 

 反射的に否定してから、考えます。空凪くんの言った事もあながち外れてはいないのではないか……と。

 私自身は吉井くんのオシオキに集中して、他の人については他の人に任せた……と言えば聞こえは良いですが、単純に興味が無かったという事でもあります。

 ここに居る空凪くん、そして同室の坂本くん、木下くん、土屋くん、そして……えっと……ごめんなさい、名前が分からない男子生徒。彼らが盗撮犯だったかまでは気にした事も無かったです。

 

「空凪くん。少し、質問させて頂いても宜しいでしょうか?」

「どうした? 答えられる範囲で答えさせてもらおう」

「まず……あなたは盗撮犯ですか?」

「……その質問、意味があるのか? さっき違うと思うって自分で言ったばかりじゃないか」

「そうですけど……本人の口から聞いておきたいんです」

「……まぁいいだろう。答えはNOだ。盗撮の類はこれまでの人生でやった事が無い。今後は知らんが」

「そうですか。分かりました。

 では次の質問です。同室の皆さんは盗撮犯でしょうか?」

「……悪いがそれは分からん。僕の目を盗んで盗撮した可能性はゼロじゃない。

 その質問に対して正確に答える事は不可能だ」

「じゃあ……空凪くんの感覚で結構です。同室の皆さんは盗撮犯だと思いますか?

 あ、『これまでの人生で』とか長い話じゃなくて、今回の合宿での件についてです」

「それだったら答えられそうだ。明久、雄二、秀吉、宮霧。この4名に関しては99%無いと断言できる。

 康太は……90%くらいかな。ほぼ無いと確信している」

 

 そうでしたか。空凪くんの感覚での話ではありますけど、他の皆さんは盗撮犯ではないんですね。

 土屋くんは若干怪しいけど、それ以外の4人は……アレ?

 

「あ、あの……吉井くんも犯人じゃないんですか?」

「そう言ったつもりだが」

「ど、どうしてそんな事が言えるんですか!?」

「……どうしてだと思う?」

「質問しているのはこっちです!!」

「それに答えるかどうかは僕次第だ」

「どうして教えてくれないんですか! 教えてください!!」

「少しは自分で考えたらどうだ?」

 

 そんな事を言われても、空凪くんが考えている事は空凪くんにしか分かりません。

 私はさらに問い詰めようとしますが、その直後に扉が開きました。

 

「遅くなって済まない。補習を始めるとしよう」

「お疲れさまです鉄人先生。

 ……姫路、この話の続きはまた今度な」

「…………はい。分かりました。また今度、絶対ですよ!」

 

 モヤモヤした気持ちを抱えながら、補習が始まりました。






「以上、2日目……じゃない、3日目夜の終了だ。
 ……実は2日目の物として書いてたけど色々検討した結果3日目に移行したらしい」

「と言うか、ここで終わりなのね」

「補習した後は普通に部屋に戻って普通に寝るだけだな。
 ちなみに、七並べは明久がトップで宮霧が2位だったようだ」

「残り1枚とジョーカーの状態から何とかしたのね……」

「残った1枚は13だったからな。アッサリ出せたようだ」

「……運の良い手札だったみたいね」

「さて……で、ストーリーの方だが……まぁ、語る事は無いか」

「キミと姫路さんとの会話だったわね。今後どうなるのやら」

「のーこめんと」

「…………あ、そうだ。西村先生の呼び方だけど、わざわざ自爆なんてしなくても携帯で事足りたんじゃないの?」

「…………えっ? あっ」

「…………
 では、次回もお楽しみに!」
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