バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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14 副代表と副代表

  ……合宿4日目……

 

 長かった合宿も今日明日で終わりだ。明日は部屋の掃除と荷物整理があるんでほぼ今日で終わりだな。

 そして、今日の予定は完全に自由な自習だ。この機会に他のクラスと交流するも良し。1人で黙々と自習するも良し。

 サボって遊ぶも良し。鉄人の鉄拳が怖くないのなら……だが。

 

 そんな中、僕は予定通りに優子さん(Dクラス副代表)に会いに……行っていなかった。その前にやる事があるからだ。

 何の事か分からない? ではヒントをやろう。

 

 それは姫路と2人で行う事だ。

 それは密室で行う事が望ましい。

 

 フフッ、もう分かったか? 答えは簡単だな。

 そう……補充試験だ!

 

「それでは、物理の補充試験を始め……む?」

「どうかしましたか? 鉄人先生」

「……すまない。どうやら試験問題を切らしているようだ。すぐに用意するので少し待っていてくれ」

 

 意気揚々と試験を始めようとしたのに出端を挫かれた。試験問題が無いなら仕方ないけども。

 ……すぐに用意って何をするんだ? まさか今から作るとか……いや、無いな。学校からデータ送ってもらってプリントアウトするとかそういう話だろう。

 なにはともあれ、ヒマな時間ができた。のんびりすると……

 

「空凪くん。丁度いいですね。昨日の話の続きをさせて下さい」

「…………く~……」

「寝ないで下さいよ!」

「…………もう食べられない……おかわり……」

「そんな漫画みたいな寝言を現実に言う人が居る訳……って、前後が矛盾してませんか!?」

「…………はぁ、分かった分かった。何の用だ姫路」

 

 寝たふりをしてあしらってみたがそれでも食い下がってくるので素直に応じてやる事にする。

 普段は優等生な姫路がここまで食い下がるのはそれほど大事な用件だからなのか、あるいは僕の事を雑に扱って良い存在として扱っているのか……

 

「何度も言うようですけど、昨日の話の続きです。

 吉井くんが盗撮の犯人ではないというのはどういう事ですか?」

「そのままの意味だが?

 昨日も言ったように、僕の感覚では奴は犯人ではない。

 奴が僕の想像も付かないようなトリックを用いて僕を出し抜いた可能性もあるが……それがどれだけ現実的かは自分で判断してくれ」

「どうして犯人ではないと思ったんですか?」

「いくつか理由はあるが……一番の理由はアリバイがあるからだな。

 僕達は早めの電車でここに到着してからずっと部屋に引きこもっていた。

 トイレも各部屋に設置されているんで、部屋そのものからの出入りは無かったと断言しておこう」

「と言うことは……カメラを仕掛ける時間なんて無かった……と?」

「ああ。ちなみに、部屋に荷物を置いた後に緊急時の避難経路の確認とかの為にうろついたが、浴場のある地下の方には行かなかった事も述べておく。

 当然その時も全員一緒だった。明久だけ居なかったとか、それ以外に誰か消えてたという事も無かった」

「それじゃあ……吉井くんにはどうやっても無理じゃないですか!」

「そうだな。まず無理だ。

 事前に仕掛けておく事は理論上不可能ではないが……それがどれだけ現実的かは以下略だ」

「自分で判断しろ、ですか。

 …………事前に休日に電車を使ってここに来る事自体は不可能ではないと思います。思いますけど……」

「まぁ、考えにくいわな」

 

 仮に辿り着いた所で門前払いを喰らうのがオチだ。そしてここのセキリュティは素人が忍び込めるほど甘くは無いだろう。

 付け加えて言うのであれば、カメラとマイクのバッテリーの問題もある。

 あの小型の機器のバッテリーとなると容量は限られてくるだろう。24時間保つかも怪しく、実行可能なタイミングはかなり限られてくる。

 詳細なスペックは調べてないからハッキリした事は言えんけどな。

 

「それじゃあ、吉井くんは本当にやっていない……?」

「僕視点ではそうなる。貴様の視点だと僕達全員が共謀してるとか、あるいは僕がでたらめを言っている可能性を疑えるが……どこまで疑うかは貴様次第だな」

 

 これで明久が盗撮犯ではない一番の理由は説明できたか。

 別の盗撮犯が捕まった事を説明しても良かったが……盗撮犯が2人以上居る可能性は否定できない。アリバイの説明の方がより強い根拠だろう。

 さぁ、どうする姫路。貴様はこの話を聞いて何を思った? そして何を成すんだ?

 

「…………」

 

 姫路は黙ったまま動かない。

 瞑目し、険しい顔をして考え込んでいた。

 そして、やがて口を開く。

 

「……あのっ」

「遅くなって済まない。補充試験を始めるとしよう」

 

 何とも間の悪いタイミングで鉄人が入ってきた。

 

「……続きは、試験の後になりそうだな」

「……そうですね。試験の後、またお話しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、主人公である空凪くんが補習室で足止めされている間は私の話をしましょうか。

 誰の事かって? 私よ。Bクラス副代表の御空零。

 

 こう見えて、私は記憶力にはけっこう自信がある。完全記憶能力を持ってるって噂の霧島さんほどじゃないでしょうけどね。

 それでも興味深い情報をしっかりと覚えておくには十分だ。例えば、昨日の土屋くんの報告で『Dクラス副代表は粛正には参加していなかった』とか。

 幸い今日は自由な自習だ。どういう意図があったのか聞かせてもらうとしましょうか。

 

 

「あなたがDクラス副代表の小野寺優子さんね?」

「ええ! 私こそが優子よ!

 御空さんまで私の名前を知ってるとは……私も有名になったもんだね!」

 

 土屋くんと空凪くんから聞くまでは名前すら知らなかった事は黙っておこう。いや、木下の方の優子さんなら知ってたけど。

 

「私の事を知っているの?」

「モチロン! あの根本くんを尻に敷いてBクラスを牛耳ってる影の代表でしょ?」

 

 これは……う~ん……間違ってはいない、いないけどさ……

 ……もういいや。本題に入ろう。

 

「ちょっと訊きたい事があるんだけど」

「何? 自己紹介の秘訣? まずは大きく胸を張って……」

「違うから! そういうのじゃないから!!」

 

 この会話の微妙な噛み合わなさはどっかのFクラス副代表を彷彿させる。

 私以外にまともな副代表は存在しないのだろうか?

 

「昨日と一昨日の盗撮犯への粛正、あなたは参加してなかったって聞いたけど……どういう意図があったのか確認しておきたいのよ」

「あ~、アレね。理由はいくつかあるけど……一番のは彼氏からの忠告」

「彼氏?」

「ええ。一昨日の騒動の少し前にメールが来てね。

 確か『小山がそっちに向かうけど早まるな』って感じの。

 私のカレは変な所もあるけど、大事な所ではしっかりとしてくれてるからね。忠告に従ってのんびりしてたわ」

「なるほど……他の一般生徒を止めようとはしなかったの? 一応は副代表でしょうに」

「そこまで明確な根拠があったわけじゃないし、それに、副代表が権力を発揮できるのは試召戦争の時くらい。

 御空さんは違うみたいだけどね」

「……そっか、私みたいなのの方が少数派か。

 ごめんなさい。責めるつもりは無かったの」

 

 私の場合は代表がアレっていう事もあってBクラスの代表っぽい扱いになっている。ルール的な意味じゃなくて普通に日本語的な意味で。

 副代表が代表を越える発言力を持っているケースは稀みたいね。本っ当に地味な役職だし。

 

「気にしないで。そんな事より、有名人の御空さんに私も訊きたかった事があるのよ。

 どうすればもっと私の名前を広められると思う!?」

「う~ん……勉強を頑張って上位のクラスに行くとか」

「……はぁ、簡単な方法なんて無いのね」

「うん、何でもかんでも地道に頑張るのが一番の近道よ」

 

 Dクラスの副代表かぁ……指名で選ばれたのでなければこの学年の300人中152位のほぼド真ん中の人だ。

 だからこそ普通の人かと思ったけど、妙な所で尖ったヒトだったわね。

 どうやら名前に凄くこだわりがあるらしい。木下優子さんに対する劣等感でもあるのだろうか。

 

 そんな事をしみじみと考えながら雑談を続けていたら突然扉が勢いよく開いた。

 

「ここに居たか御空! 探したぞ!!」

「……どしたの代表、そんな息を切らして」

 

 扉を開けたのはうちのクラスの代表の根本くんだ。

 よっぽど急いで走ってきたのか肩で息をしている。

 

「例の盗撮騒ぎの続き……なのか? とにかく大変な事になった!」

「?」

「試験召喚戦争が始まる! Cクラスと、Fクラスの!!」

「…………はあっっ!?」






「久しぶりの私視点の話だ!!」

「確か清涼祭のクレーマー撃退時以来だったか。貴様の事は結構優遇しているつもりらしいが、意外と本編では出番少ないんだよな。
 違うクラスだから仕方ないと言えば仕方ないんだが」

「筆者さんはもっと私視点の話を増やすべき。そうすれば物語に厚みも出てくる!」

「そして筆者の労力も跳ね上がるな……
 まあいい。本編に対するコメントをしようか」

「前半は姫路さんとキミの会話だったね。
 キミは吉井くんが盗撮犯である可能性を完全には捨ててないみたいね」

「あらゆる可能性を検討しているだけだ。疑った上で『限りなく低い』という結論を出している。
 思考停止で盲信するよりはよっぽど理に適っているだろう?」

「理には適ってるでしょうね。無実だった場合にどっちが楽かと言われると確実に後者だけど」

「かもな」

「後半はキミの代わりに私が優子さんに話を聞きに行っていたわ。いやまぁ、代わりだなんて認識は全く無かったけど」

「優子さんの彼氏は実はリメイク版の執筆開始時から決めていたらしい。
 その上で『彼氏』だったら間違いなく優子さんに警告を送るだろうと判断したようだ」

「で、その『彼氏』って一体誰なの?」

「ククッ、決まっているとだけ言っておく。
 ……リメイク前を読んでいた人は察せるかもな」


「では、次回もお楽しみに!」
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