バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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16 準備

 この合宿所は結構な予算を割いて改装されていると聞いている。

 その内容とは、『召喚獣が呼び出せるようにする』という物だと専らの噂だ。

 そして、空凪くんが召喚獣でCクラスを撃退したと聞いてその噂は確定事項になった。

 

「確かに試召戦争は学校じゃないとできないなんてルールは無い。

 設備的にも戦争は不可能ではない。

 戦争であれば教師から横槍を入れられる事も無い。

 そして補習室送りは報復としてはそこそこ十分だし設備のランクダウンも同様。

 けど……だからってねぇ」

「ちょっと待て御空。何でナチュラルに俺たちの所に居るんだ?」

 

 ああ、そうそう。私は今Fクラスの首脳陣達が集まってる所に何食わぬ顔で参加していた。

 ちなみにうちの代表も一緒だ。

 

「何でって……恩義の押し売りに来ただけよ。

 いくらAクラス相手に一応は勝ったあなた達だけど、それは事前の準備があっての事。

 こんな唐突にCクラスに攻め込まれたら結構大変でしょ?」

「それはそうなんだが……そもそもお前たちってCクラスと同盟結んでなかったか?」

「同盟って言っても代表同士の個人的な繋がりみたいなモンだし、今は実質私が代表だから自然解消されてるわね」

「……おい、それで良いのか根本……」

「仕方ないだろう! 嫌われ者の俺よりも御空が指示を出した方が効率よく回るんだから!!」

 

 最近の代表はそこそこ頑張ってるから『そこそこ無能な代表』くらいの指揮能力はある。けど、その程度であれば私の方が断然上ね。

 クラス単位での動きを独断で決めるとかはまず不可能だ。私にはできるけど。

 

「ところで坂本くん、あのバカは居ないの?」

「? 明久ならそこに居るが」

「ちょっと雄二!? どうして『バカ=僕』になってるの!? 御空さんは僕の名前は出してないよね!?」

「そうよ坂本くん。そっちの吉井くんは『すっごいバカ』だからバカと一緒にしたら失礼よ?」

「そうそう……って違う! 御空さんまで乗らないで!」

 

 吉井くんが相当なバカらしいという事は今年からの転校組である私も噂で知っている事だ。

 けど、私が訊いてるのはそっちのバカの事じゃない。

 

「ほら、副代表を名乗るあのバカよ」

「剣の事か。あいつなら補充試験を受けている。

 補習室とかいう密室で受けてるから外から呼ぶ事もできん」

「……いつ終わるのそれ」

「姫路と一緒に受けてるらしいから……あと45分くらいか。小山が指定した開戦時刻は30分後だから間に合わないな」

 

 何で居ないのかと思ってたけど、納得の理由だった。

 そっか~、それじゃあ仕方ないわね。

 

「なるほどね。それで、この戦争。どうやって勝つ気?」

「お前たちに言う気は無い。Cクラスにバラされたら堪ったもんじゃないからな」

「あらあら、信用されてないのね」

「お前はまだしも、根本を信用できる訳が無いだろ」

「実に真っ当な判断ね」

「おいお前たち、本人の前で言う事か……?」

「ん~、分かった。もし手が必要ならすぐに呼びなさい。この部屋の外で待ってるから。

 さ、代表、行きましょ」

「え? ああ、分かった……」

 

 ボサッとしてる代表を引っ張って部屋の外まで移動する。

 ここからでも頑張れば盗み聞きできそうだけど……そんな事をしても意味もない。呼ばれるまでは待機ね。

 

「おい御空、アッサリ引き下がって良かったのか? Fクラスに恩を売るチャンスだって嬉しそうにしてたのに」

「今は時間が差し迫ってるからね。アッサリと引き下がるだけでも多少の恩を感じてくれるはず。

 それに、作戦の全貌を知らなくても手助けくらいならできるし、手助けの内容を知れば作戦の全貌を推測する事はできるから」

「もしあいつらがその『手助け』すら頼まなかったら?」

「それだったらそもそも恩を売れるような場面じゃなかったって事ね。

 だからどう転んでもここで待つのが最善。理解した?」

「そうなるのか……お前はいつもこんな事を考えてるのか?」

「このくらいは感覚でどうにかなるわ。代表だって相手の嫌がる事をする事に関してはトップクラスなんだから、慣れればその逆だってできる筈よ」

「……それ、褒めてるのか?」

「まぁ一応」

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄二、良かったの? 御空さん達を追い出して」

「ああ構わん。どうせ直接的な戦力は期待できないしな」

「どうしてじゃ? Bクラスの代表と副代表なのじゃからCクラス相手にかなり優位に戦えると思うのじゃが……」

 

 秀吉の言う通り、優位に戦う事は可能だろう。戦えればの話だが。

 

「今回の件、実情はどうであれ表向きはただの試召戦争だ。

 そして、試召戦争のルールでは関係の無いクラスが横槍を入れるのは不可能だ。

 まず間違いなく召喚した瞬間……いや、召喚前に教師に止められるし、強引に召喚できたとしても相手を傷つけた時点で鉄人が呼ばれて補習室に軟禁されるだけだろう」

「そんなルールあったんだ……」

「当たり前過ぎて逆に普段は意識しないルールだな」

 

 もし他クラスからの介入なんていう暴挙が許されると5クラス連合でAクラスを攻めるとかできてしまうからな。極めて妥当なルールだろう。

 

「という訳で働いてもらうなら戦闘面ではなく他の事で働いてもらう。

 攻撃できないのは向こうも同じだからな。絶対に戦死しない伝令に仕立て上げる事も可能だ」

「う~ん……強いのか弱いのか微妙に分からない……」

「ケースバイケースだな。場合によってはとんでもない働きをするが、伝令が必要ない場面では全く役に立たない」

 

 本来なら試召戦争をしていない他のクラスは普通に授業を受けているからそんな事をやっているヒマなど無い。

 これもこの場所ならではの運用法だな。

 

「伝令ってのはあくまでも例の一つだ。他にも使える手はいくらでもある。恩を売りたいって言うんならせいぜいこき使ってやるさ」

「うわぁ、雄二が悪い顔してるよ……」

 

 さぁ、この特異な状況を生かした普段は没にしている戦術というものを見せてやろうじゃないか。






「どうも~。追い出された御空零です」

「戦争の存在すら知らない空凪剣だ。
 しかしこの後書き空間は現世の因果律から解放された特異空間だからコメントには問題ない」

「何それちょっと格好いい」

「さて、今回は主に貴様の立ち位置の説明とルール確認って所だな。
 一番効果的な協力をしてくれているようで何よりだ。有難い話だ」

「本当はもうちょっと介入していたかったんだけど、信用度を考えたらアレが限界ね。
 私はともかく代表がね~」

「貴様単体でもそこまで信用できるかは微妙だ。少なくとも頭ごなしに信用して良い相手ではない。
 貴様が積極的に裏切るという事は無いだろうが、やむを得ない事情があれば決断する事はできるだろう?」

「…………かもね」


「さて、今回はルールの確認もあったな」

「原作では姫路さんが嵌められかけたアレと同じようなルールね」

「うちの学校はルールが曖昧な所も結構多いんだよなぁ……
 と言うか、原作の姫っちが仕掛けられたアレは本当に反則なのか?
 改めて原作を読むと明らかに物理的に進路妨害されているようなんだが。戦争中で忙しい生徒に喧嘩を売ったBクラスのバカが真っ先に処罰されると思うんだが」

「実際には嵌る寸前で回避してたから何とも言えないわね……
 ともかく、原作での扱いがどうだったかは置いておいて本作では以下のルールを設けておくわ」


・試召戦争中、交戦中のクラス以外の生徒の召喚を原則として禁止する。
 これに違反した場合、発生中の全ての試召戦争が終了するまで補習の義務を負う。
 (観察処分者が雑用の為に呼び出すとか、ちゃんとした理由があればOK。その辺は教師が判断する)

・試召戦争中、交戦中のクラス以外の生徒が交戦中のクラスの召喚獣にダメージを与える行為を禁止する。
 これに違反した場合は以下略。
 (違反者が攻撃してきた際に反撃する場合には正当防衛として罰則無し。
  また、勝手に乱入してきた当たり屋等に対しても同様。その辺は教師が判断する)

・試召戦争中、戦争対象のクラスの生徒が居る部屋を人や物などの障害物で塞ぐ行為を禁止する。
 但し、部屋の中に居る人が教職員又は交戦中のクラスの生徒のみであり、なおかつ召喚フィールドを承認できる教師が近くに居る場合、人で塞ぐ事は可能とする。
 これに違反した場合は以下略。
 (『戦闘中のクラス』ではなく『交戦中のクラス』である事に注意。自身が所属するクラスと戦争をしているクラスの生徒相手でないと免責にはならない)
 (部屋を『完全に塞ぐ』行為がアウトという裁定なので2つある出入り口の内1つを塞ぐとかはOKとする)


「……まぁ、こんな所かしらね」

「軽く意訳すると……
 1番目は『関係ない奴は引っ込んでろ』
 2番目は『関係ない奴は邪魔するな』
 3番目は『人を閉じこめたり守りを厳重にするのは勝手だが召喚獣で突破できるようにしろ』
 こんな感じだな」

「1番と2番は微妙に被ってる気もするけど……2番だけだと隅っこで召喚する分には問題ないって事になるのね」

「システムの負荷とかも微妙に増えそうなんで野次馬を制限するルールは必要とまでは言わずともあった方が良いだろう。
 そして1番だけだと2つの試召戦争が同時に起こった場合に対応できないんで2番目もやっぱり必要だな。」

「ペナルティに関しては戦死とほぼ同じ扱いなのね。点数は減らないけど」

「そういうコトになる。この学校の目玉である試験召喚戦争を妨害しようとする者に対する罰としては妥当だろう。
 模範的な生徒になれて一石二鳥だな!」

「う~ん……まぁ、そういう事にしておきましょう」

「ちなみに、この辺のルールは当然教師達も熟知しているので違反する前に警告される。
 3番目はまだしも1番目と2番目はフィールドを承認している教師がすぐ近くに居るはずだからな」

「白銀の腕輪があれば居ない場合もあるけど……大抵は居るわね」

「原作の姫路も近くに教師が居れば進路妨害してるバカを退かせただろうに!」

「…………アレってフィールドが展開されてたから近くに居たはずよね。先生」

「…………あれ?」

 ※あくまでも本作独自のルールです。
  原作の設定を鑑みると試召戦争はまだ作られたばかりで細かいルール調整すら満足にできてなかったんでしょうね。
  ……雄二とか高城みたいな生徒が居なければ作る必要も無いルールですけども。


「では、次回もお楽しみに!
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