「……と、いうわけだ」
「なるほど、ご苦労」
「オレが失敗するのは予想通りってわけかい。まぁ好都合だけどさ」
俺が急ピッチで戦略を練っている間、元副代表である宮霧と情報収拾のスペシャリストである康太には別の任務を頼んでおいた。
それぞれの任務は『自軍の戦力の調査』と『敵軍の戦力の調査』だ。
敵軍はともかく自軍を今更調査するのか? なんて事を思うかもしれないが重要な事だ。
今回は普通の戦争とは事情が違う。だからこそ……
「雄二、困ったね……まさか誰も僕達に味方してくれないなんて」
「いや、予想通りだ。あの目の前の事しか考えられない短絡的なバカどもが簡単に味方してくれるとは思っちゃいないさ」
「……代表、仮にも自分のクラスの奴らに言うことか? いや、事実だけども」
今回の件が俺たちと女子との対立である以上、須川や横溝といったFクラスの捨てご……仲間たちには期待しちゃいない。
奴らが好んで女子と対立する訳が無いし、戦死のリスクがある戦争に積極的に参加しようとも思わないだろう。
設備のランクダウン? そんな遙か遠い未来の事を気にするような連中ではない。
「でもさ、それだったら宮霧くんじゃなくて秀吉に説得してもらったら良かったんじゃないの?」
「なぬ? ワシがか? ワシは男なのじゃが……」
「ハハッ、こんな時まで冗談を言う必要は無いよ!」
「決して冗談ではないのじゃが……」
勿論、それも考えた。重要なのは秀吉が名乗っている性別ではなくあいつらがどう思っているかという事だからだ。
しかし、元々やる気の無い奴らを秀吉の力で引っ張り出しても敵の女子に説得される可能性は十分にあり、突然裏切られるリスクを考えたら元々居ない方がマシと言っても過言ではない。
試召戦争で他クラスが横槍を入れるのはルール違反だが、同士討ちの自滅までは流石にルールに規定されていない。されていた所で違反者が戦死するだけなので意味も無い。
今この時に協力しなかった落とし前は後で何らかの形で付けさせてもらうが、ひとまず今は居ないものとして扱わせてもらう。
「って事は僕達6人だけでCクラスと戦わなきゃいけないって事……? いくら雄二でも流石に厳しいんじゃないの?」
「確かにそうだな。だが、やる気が無いのはうちのクラスの捨てご……仲間たちだけとは限らない」
「雄二、今『捨て駒』って言おうとしなかった?」
「さーどうだろうなー。
そんな事よりもだ。そろそろ康太が……」
「…………戻った」
「噂をすればだな。報告を聞かせてくれ」
「…………雄二の予想通り、Cクラスは丁度半数、25名しか参加しないようだ」
「ええっ!? どういう事!?」
「結論から言うと、『男子は参加するつもりが無い』という事だな」
今回の件はCクラス代表の小山と初めとした女子たちが暴走しているだけ。
しかもFクラスは大半が参加する様子が無い。パッと見余裕で勝てる戦いだ。
よって、俺たちには何の恨みもない男子達が参加する理由は全く無い。勿論、突然襲われる事に対する警戒くらいはするだろうがそれだけだ。
こういう意味でも捨て駒達の参戦は無い方が助かるな。
戦力が少ないというのはデメリットばかりではない。いやまぁ、大半がデメリットではあるが。
「さて、戦力の確認が終わった所で作戦を発表させてもらおう。
俺たちの基本戦略は『籠城』だ」
「籠城? って事は自分の部屋に立てこもるの?」
「そういう事だ。
……どうした明久、何か言いたいことでもあるのか?」
「何て言うか……雄二にしては随分と消極的だなと思って」
「消極的も何も……戦力が今は居ない剣を含めて6人しか居ないんだぞ?
それ以外の選択肢を選んだ時点であっという間に捻り潰される」
「う~ん……でも……」
「とにかく、これは決定事項だ。
俺たちはまず俺たちの部屋である301号室に籠城する!」
「わ、分かったよ……あれ? でもさ、籠城するにしても他の部屋の方が良いんじゃないの?
僕達の部屋だとすぐに居場所がバレちゃうよ」
「試召戦争中は常に代表の居場所が公開される。どこも変わらん」
「そ、そうだっけ……?」
代表の居場所は最寄りの教員に訊けば教えてくれる。教師全員が専用のタブレットを配られていて、それを使っていつでも情報を共有しているらしい。
「なるほどのぅ……了解したのじゃ」
「…………」コクリ
「ん~……それでも僅かとはいえ場所確認の手間をかけさせれば嫌がらせくらいには……あ、そういう事か?」
宮霧だけは何かに気付いたようだが、ネタばらしは後にしておくとしよう。
戦争開始までは……あと15分といった所か。
あとやるべき事は……
「……よし、頃合いだろう。明久、外に居る御空と根本を呼んできてくれ」
「おっけー」
「ようやく出番? 待ちくたびれたんだけど」
「ああ。お前たちに頼みたい事は3つだ」
予めノートの切れ端に書いておいた3つの頼みごとを御空に渡す。
御空は一度目を通した後、丁寧に破いてからポケットにしまった。
「1つ目と3つ目は簡単だけど、2つ目が少し厄介ね」
「できないのか?」
「ん~……何とかなるかな。
多分大丈夫。けど、安くは無いからね?」
「働き次第だな。貸しを踏み倒す気は無いから安心してくれ」
「それじゃあ早速準備にかかるわ。
……ちなみにだけど、トランプって持ってる? あるならちょっと貸してほしいの」
「トランプ? そんな物何に……まあいいか。5デッキほどあるぞ?」
「何でそんなに……って、ああ、皆が持ってきたらそうなるか。むしろ1人持ってきてな……」
「いや、剣が1人で5デッキ持ってきてる」
「何でそんなに!?
……ま、まあいいわ。ちょっと貸して」
「ああ。明久、持ってきてくれ。大至急」
「わ、分かった! 行ってくる!」
勝算はあるようだな。この有能な副代表であれば問題ないだろう。
さて、後は勝利の為の最後のピース……Aクラスの動きがどうなっているかだが……
「……雄二」
「おわっ、翔子!? いつの間に……」
「……例の準備が終わった。いつでも行ける」
「よし、これで勝てる。助かった翔子」
「……お礼は次の休みに私の家に来る事」
「んなっ!? 翔子、それは卑怯じゃないか!?」
「……じゃあ、準備したものは全部捨てる」
「ま、待て! それだけは勘弁してくれ!!」
翔子の家に呼ばれたら間違いなく両親とも顔を会わせるハメになる。そうすれば俺は人生の墓場一直線……
しかし、ここで蹴ると勝利の為の最後のピースが手に入らなくなる。もう間もなく3ヶ月の停戦期間が終わるというこの時期に戦争に負けるのは避けたいっ!
くっ……どうする! どうすれば良いんだ!!
そんな八方塞がりな俺に助け舟を出したのは意外な人物だった。
「こらこら代表、坂本くんを脅さないの」
「……光」
「ここでFクラスに協力するのはAクラスの事情でもある。
無料だとサービスし過ぎだけど、代表の要求はボッタクリ過ぎ。
お礼は……そうねぇ、次のデートは坂本くんが企画しなさい。代表を満足させられるような最高のデートを」
「そ、それくらいで良いのか? 分かった」
「……」コクリ
翔子も頷いてくれた。流石は剣の……妹……あれ、姉だっけ? どっちでもいいか。
……いや待て、翔子がアッサリ納得し過ぎてないか? まさか、最初から計算通りだった……?
「…………翔子?」
「……」ニコリ
嵌められたぁっ!!
ぐぬぬ……仕方ない。最高のデートを企画してやるよ。この戦争が終わったらな!
「もう間もなく戦争開始だな……
よし、明久が戻り次第配置に着く。全員準備は良いな?」
「「「(コクリ)/うむ/ああ」」」
「よし、じゃあお前たち、勝つぞ!」
こうして、Cクラスとの戦争の火蓋が落とされた。
「今回は彼我の戦力の確認と、戦術の確認だな」
「戦術の方は大分伏せられてるわね。ネタばらしが楽しみだわ」
「本編の貴様にすら伏せられているようだな」
「Aクラスの人達は把握してるのかしら?
……って言うか、いつの間にAクラスに指示を……」
「宣戦布告されてから貴様が来るまでにタイムラグがあったから、その時だろうな」
「……それって、その時には既に戦術を組み終わってたって事になるんじゃないの……?」
「そうなるな。流石は雄二だ」
「う~ん……いつもよりも戦力が少ない分、手札が絞られているからこそ勝ち筋は少なくなり、だからこそすぐに思いつけたって所かしらね」
「そういうコトだな。多分」
「では、次回もお楽しみに!」